tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

円高軽視は身を誤る

2010年08月11日 13時58分16秒 | 経済
円高軽視は身を誤る
 この所じりじりと円高が進んでいます。専門家筋は、$1=¥85 が当面の節目などといいますが、一体どうなるのか企業の心配は深刻です。
 しかし、どういうわけか、政府も日銀も、手を拱いて「静観の構え」のようです。

 ドルだけではありません。ユーロはギリシャやPIIGSのソブリンリスクをきっかけに大幅安になり、ヨーロッパ企業はユーロ安の恩恵 を満喫しているようです。
 かつては高かったフォルクスワーゲンなどが、最近日本車と変わらない価格になっていて、新聞のおり込みチラシを見て驚かれた方も多いと思います。

 世界景気はリーマンショックから回復してきました、金融危機によるものですから、金融を緩めれば回復するのは当然で、日本経済も多少の回復を見ました。
 日本の政策当局(政府・日銀)はこれを「経済が基調的に回復してきた」と誤認しているように思えてなりません。

 ショックからの回復は、金融危機でも、地震や台風の場合でも必ず見られます。問題はその後です。遮二無二頑張って復旧に頑張ったが・・・・・、問題はその後です。
 日本の円はリーマンショック前の$1=¥110~115に比べ、約3割の円高です。これはかなり恐ろしいことだと思われます。

 プラザ合意による円高を20年近くかけて、人員削減、採用抑制、非正規雇用の著増、福利厚生費も教育訓練費も削り、巷には生活不安の若者が、企業内には過労死予備軍とメンタルヘルス問題を抱えるといった極めて不健全な形 で乗り切ってきた日本企業です。

  「いざなぎ越え」という数年間のごく微弱な回復は、こうした社会的犠牲の上に成り立っていたのです。サブプライム・リーマンショックがなければ、こうした社会的問題も、その後、長い時間をかけて徐々に復旧されたかもしれません。

 しかし現実には、世界金融危機は起こり、そのはずみで、円は更に3割切り上げられました。日本の政策当局は、この日本の「国内コストの3割アップ」を、静観という形で、あっさり受け入れ、対策はすべて企業のとその従業員に「どうぞ宜しくお願いします」といっているわけです。

 日本企業と日本社会はまた何年か、「失われた10年」のような苦労を強いられる可能性があります。円高を軽視し、日本経済は強いと楽観するばかりで本当にいいのでしょうか。
 「円高軽視は、身を誤る」のではないでしょうか。すでに誤ってきたことからの学習 はないのでしょうか。