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tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

文化の日に:保守と革新について考える

2024年11月03日 11時44分12秒 | 経済

今日は文化の日です。11月3日は、明治節の昔から「晴れ」の特異日という事になっているようですが、今日も昨日までの大雨も上がって朝から日本中晴天です。

文化の日には、このブログでは、何か少し変わったことを論じてみようなどと欲張ったことを考えるのですが、そのなかで「競いの文化と争いの文化」「天皇誕生日の祝」など少し面白い事にも気づいて書いてきました。

そんな事で、今日は「保守と革新」という区別について、在り来たりかもしれませんが考えてみました。

「保守と革新」は主として政治に関連して使われる言葉で、通常、対立概念として使われることが多いようです。 

確かに「保守と革新」は対立概念というか、人間の持つ2つの主要な考え方、行動の仕方を表した言葉でしょう。

しかし、ここではこの2つを対立概念としてばかり考えるのは、必ずしも適切ではないのではないという視点で考えてみたいと思っています。

対立概念をあらゆるものに当てはめるというのは欧米流の思想と言いますか、典型的にはキリスト教の教えに根差すのではないかと感じています。

キリスト教は元々「神と悪魔」があって対立抗争が基本になっています。そのせいか欧米では二元論(dichotomy)がよく使われ、「相容れない2つのもの」といった解釈がされています。

これは物事を解り易くするという効果はあるかもしれませんが、いまのアメリカではありませんが、基本的にはどちらが政権をとっても「米国中心という基本」はほとんど変わらないのに民主党と共和党が些少(失礼!)の違いを強調し、国を二分するような状況すら生んでいるようです。

英語にも「wholistic」(全体的、総合的)という言葉もあり、全体を見る視点が重要との主張もありますが、こちらは正しいがマイノリティーといったところでしょう。

ところで、人間の意識や行動、文化の面から見ますと、現代人の性向としては、基本的に保守的な要素と、革新的な要素が共に本来備わっているようです。

もともと人間は、他の動物に比して体力的にはひ弱で、食物を得る事と共に、外界の危険から身を守る事が重要な関心事だったのでしょう。この安全欲求は、身を守ることが最重要ですから危険を避ける「保守的」な意識であり行動だったと思われます。

そうした生活を繰り返し、知識や技術の蓄積が進んだ結果、人類はより豊かな生活をしたいという意識を持つようになったのでしょう。

しかし多くの食料、より良い生活を実現するためには冒険が必要でした。冒険は保守的なものではありません。

例えば、より多くの食料、より美味な食糧を狙って縄文人の先祖はユーラシア大陸や南の島からナウマンゾウを追い、豊かな魚群や橘の実を求めて日本列島にまで移動してきたのでしょう。

これは新たな可能性を求めて保守的な意識を乗り越え、リスクを取って生活の進歩向上を求める「革新」の意識・行動の実践ということで、人間がより高い満足を得るために持っている「革新」という性向の発揮でしょう。

こうして見て来れば、保守と革新は、現生人類が長い進化の歴史の中で備えることになった本能に由来するもので、人間の個体の中に共存する性向で、人間が安定をベースにそこから進歩するという2つの重要な要素という事になるのでしょう。

現実に戻れば、保守と革新は、個人の生活でも、企業経営でも、国家の運営でも、大切に組み合わせて活用すべき2大要素と考えるべきでしょう。


日銀、いよいよ日本経済の正常化に踏み切るか

2024年11月01日 12時08分01秒 | 経済

今朝の日経平均は800円の下げで始まりました。理由は、皆様ご気づきのように、日銀が昨日の金融政策決定会合で、今月は政策金利には手を付けずに現状維持で行くことを明らかにすると同時に、来月には金利引き上げの可能性を示唆する発言をしているからです。

8月に、僅か0.25%への政策金利の誘導で、日経平均の乱高下を引き起こした経験から、政策金利についての発言には、大変慎重な植田総裁ですが、かといっていつまでも0.25%では、日本経済の正常化は進みません。

資本主義経済の基本的な構成要素である「金利機能」が、市場に対して適切に対応できなければ、資本主義本来の経済機能が働かないはずです。

その意味では12月に政策金利の引き上げもありうるという植田総裁の発言は、日本経済に正常な金利機能を復活させなければならないという意思表示と受け取るべきでしょう。

春闘の賃金決定も次第に正常化し、コロナ禍のタイムラグで一時的に高まった消費者物価指数の上昇も沈静化の傾向を示し、賃金上昇とインフレのバランスも次第に正常化する様子を見せている日本経済の中で、いよいよ金利の正常化のための金利の引き上げが実現可能な環境条件が整ってきているとの読みでしょう。

長く続き過ぎた日本のゼロ・低金利が、キャリートレードなどというマネーゲームを生み、日本の家計の持つ2000兆円の過半を占める貯蓄の利回りはゼロに近く、国際投機資本が巨利を上げるといった構図は、日本の家計のためになりません。

逆に、巨大な借金に押し潰されそうな日本政府は、低金利を利用して経済効果の上がらないバラマキ財政で当面の票を稼ぐといった不健全な財政に走ってきました。

こうした歪んだ日本経済を健全な形にしていくためには、金利機能を正常に働かせなければならないというのが健全な資本主義の基盤でしょう。

日銀の、その実行の過程では、種々問題が起きて来るでしょう。今朝の日経平均の下げが象徴的です。しかし、株価は本来それぞれの企業の成長を反映してきまるものです。今のマネーゲームによる株高は、いわば資本主義の仇花です。日本経済が成長を取り戻す事で日経平均が上がるのが正常の資本主義の姿でしょう。

もともと為替レートは、その国の国際競争力を評価して決まるものです。今は金利の動きが為替レート調整の手段になっていますが、金利正常化、経済の健全化が進めば、中・長期的には為替レートは、経済実態に従うでしょう。

金利正常化のプロセスにおける従来の経済の歪みの是正に伴う為替レートや株式市場の乱高下は、ある程度は避けられないでしょう。

そうした波風は、日本経済正常化、健全化のために克服するべきもので、日銀もそのための十分な配慮をされるでしょうし、何よりも、金融・証券業界、産業界が冷静に対応することが大事でしょう。

そして、金利の正常化が実現した暁には、借金にまみれた日本政府は、財政の健全化のために本格的な努力をしなければならなくなるでしょうし、特筆すべきは、家計の巨大な貯蓄に適切な利息が付いて、これまでの将来に向けた貯蓄の努力が相応の果実を生み、家計を潤すというイソップの「アリとキリギリス」の寓話の世界が現実になる日が来るという事ではないでしょうか。


都区部10月の消費者物価に注目すれば

2024年10月30日 13時35分14秒 | 経済

来春闘はいよいよ,日本経済が長期不況からの脱却に成功するかどうかの正念場になるような気がしますが、それは今年から来年にかけての賃上げと消費者物価指数の動きにかかっているという見方が議論の中心になりそうです。

このまま消費者物価が沈静していけば、今春闘の賃上げでも実質賃金低下は止まります。今年に入ってボーナスの効果もあり実質賃金の連続低下は中断しましたが、まだその帰趨ははっきりしません。このブログでは、何とか黒字化の方向に行くのではないかと見ていますが、賃上げ幅の平均賃金押上が、あまり大きくなかったので、 頼りにするのは物価の安定化に大きく依存する状態です。

そんな訳で全国の消費者物価指数に先駆けて発表される東京都区部の消費者物価指数の示す沈静化傾向と今後の全国指数の関係を見てみようと数字を並べてみました。

先ず「総合」そして「生鮮食品を除く総合」、そして鎮静傾向の明瞭な「生鮮食品とエネルギーを除く総合」の主要3指標のグラフを見て頂きたいと思います。(資料「総務省」)

              資料:総務省「消費者物価指数」

ご覧いただきますと、主要3指標とも、それぞれ中身が違いますから、多少の違いはありますが変化の動き方は、ほぼ同じと言えそうです。

上の2つはエネルギーが入っていますから、輸入物価の影響と、政府の補助金政策で変動が大きく影響して実態が解りにくくなっていますが、純粋に国内要因で動く一番下の「生鮮とエネを除く」の鎮静傾向ははっきりしています。

注目は10月の東京都区部では3指標が同じ1.8%の上昇と安定化を示していることです。

大手スーパーの一部が、この2年ほどの異常な物価上昇からでしょうか、一部商品の値下げ路線に転換したようです。この延長線上で考えれば、政府、日銀の2%インフレ目標は達成の域に入るのではないでしょうか。 

この可能性を大事にして、生産、流通、消費、各段階が、差し当たって2%インフレ目標に協力する体制で、経済活動を行いたいものです。

<追記>

1、海外物価の変動は世界共通な範囲で国内経済に織り込むことで問題はないでしょう。

2、物価上昇を主要国(特に基軸通貨国)に比し、日本があまり抑え過ぎると、円高要請が起きる可能性があるので、この点には十分留意が必要です。

 

 

 

 


景気回復の原動力は「先ず賃上げ」のようです(続々)

2024年10月25日 14時26分58秒 | 経済

(21:00頃までグラフの掲載がなく失礼しました)

前2回は、理論編でした。今回は実務編です。2025年春闘ではこんなことが必要ですから、産業労使は、是非ともよく考えてみてほしいということです。

今年の春闘は労使ともに33年ぶりの大幅賃上げが達成できたと言い、確かにその通りでした。連合の集計では5.10%、経団連集計では5.58%(大企業、中小企業4.01%)厚労省集計では5.33%でした。

これらの数字を前提に、先ず下のグラフを見てみましょう。これは「毎月勤労統計」の所定内賃金(所定時間働いた場合の賃金)の名目賃金指数の対前年上昇率です。

春闘賃上げ率がどのくらい所定内賃金を押し上げているかが解ります。

                                   資料;厚労省「毎月勤労統計」

昨年春闘の賃上げ率は3%台後半でしたが、名目所定内賃金の対前年上昇率は1.0~1.4%という感じでした。今年の5月からは、今春闘の影響がはっきり出て来て、5%台の賃上げで、所定内賃金は2.2%から2.4%に上がってきています。

春闘賃上げ率が前年比1.5ポイントほど上がっているのに、所定内賃金は1ポイントほどの上昇という事になる原因は、定昇幅の計算、人員構成の変化など多様な原因があるのでしょうが、いずれにしても、春闘賃上げ率と所定内賃金の上昇とは、それなりの差があることは前提にして考える必要があるという事です。 

そこで、本題である、賃上げが消費需要を押し上げ、実質生活水準の向上させるという問題 、更にそれが国内消費需要増加となって日本経済の実質成長率を押し上げるには、という本来の問題を考えることになります。

関門は消費者物価指数の上昇です、今春闘で、実質賃金が25か月続いたマイナスからプラスに転じ、GDPのプラス要因になるかという問題には、未だ明確な回答が出来ない状態です。

毎月勤労統計によりますと、実質賃金指数は今年の6、7月はボーナスが良かったせいで総額人件費ではプラスになりましたが、残業代込みの「きまって支給される給与」や「所定内給与」ではまたマイナスに戻っています。

ただし、この計算では消費者物価指数として「持ち家の帰属家賃を除く総合」という指数がつかわれ、これが8月分は前年比プラス3.5%(総理府発表の生鮮食品を除く総合」は2.8%)という事で、3.5%の方は今後下がる可能性もあり、今春闘の賃上げで実質賃金が対前年比プラスかマイナスかは、まさに微妙なところになります。

このブログでは、今後は消費者物価指数の方が下がりプラスに転じる可能性が大きいと見ていますが、実はその程度、「統計の取り方によってプラスマイナスが変わる」程度では、家計の実感や経済成長率に影響を与えるような効果を持ちそうにありません。

残念ながら、こんなところが、33年ぶりの高い春闘賃上げ率の結果だというのが統計から見た現実なのです。 

恐らく、連合も、経団連も政府も、これで実質賃金マイナスという状況から脱出出来ると踏んでいたのでしょう。見通しは些か甘かったのです。

いわば、今春闘は、慣れない中で何とか民間労使が一歩を踏み出したという所でしょう。

現状から見れば、物価上昇2%が何とか達成可能という環境も見えてきました。春闘賃上げ率何%を目指せば実質賃金が2%程度の黒字の定着になるかは、上の諸条件を勘案すれが皆様方にも具体的な目標値が想定可能でしょう。

連合の先日発表の要求基準(5%以上)では、多少、心許ない所ですが、個別単産の要求基準は恐らくより高いものになるでしょう。

経営者側は、すでに警戒色を示しているようですが、短期的な守りの姿勢でなく、労使協力しての、DXによる生産性向上などと組み合わせ、各企業の発展が日本経済の成長につながるような経営計画の中で、積極的な賃金上昇戦略を考えていくことが、ますます重要になる時期に入っているのではないでしょうか。

政府がどうかといった受け身ではなく、日本経済は日本の労使が責任を持つといった「経済活動担当者」としての責任意識と気概が望まれるところです。


景気回復の原動力は「先ず賃上げ」のようです(続)

2024年10月24日 15時46分24秒 | 経済

~「裏金」を「不記入」として 澄(済)まし顔~

選挙戦たけなわです。大きな課題は日本経済の再活性化で、各党党首は減税、補助金、給付金、大型補正予算などと、政権を採ったらこんなことをして、皆さんの暮らしを豊かにしますと宣伝戦を繰り広げています。

しかし、これまでも政府がいろいろとバラマキをやってきたのに、一人当たりGDPがベストテンから転落、アベノミクス以来10年頑張っても、ズルスルと、40位近くにまで下がってしまった日本経済です。

今までの政策は駄目だったのに、また同じ方法で回復!回復!言ってみても、巧くいかないと解っているはずなのにです。

そこで、何で日本がこんな事になってしまったかを考えてみます。まず、プラザ合意による円高、バブル崩壊、円高深刻化、回復努力を挫折させたリーマンショックという過去があります。

特にリーマンショックまでは自力回復の努力が明瞭ですが、リーマンショック以降、「努力するほど円高になる」という環境の中で、政府・日銀も企業経営者も、何をやったら良いのか解らなくなったという経験があると思います。

この状態は、黒田日銀の異次元金融緩和(少し遅過ぎたようですが)で解消したのですが、その後のアベノミクスが正常化した円レートの活用し方が解らず、政府の努力で経済が回復すると思い込んで民間活力の発揮を阻害し、政府主導の掛け声とバラマキの政策に終始したこの10年の失敗は大変残念でした。

この間、民間の活力は大幅に落ち、社会の劣化のひどく、政府の政策に寄りかかるという姿勢が国内では強くなり、仕事は海外でという形で、第一次所得収支(海外からの利子・配当収入)ばかりが増えることになりました。

中でも最も大きな失敗は、円安によって大幅に下がったドル建ての賃金水準の引き上げを労使が本気でやらなかったことでした。

これによって国内の消費購買力は一向に上がらず、消費不足の片肺経済がこの10年続いてしまった結果が現状です。

この間も、輸入品の国際価は上がっていますから輸入価格は上がり、消費購買力不足で値上げ出来なかった生活必需品産業が、コロナ明けを機に一斉値上げに踏み切り、毎月実質賃金の対前年低下が25か月も続くといった異常事態が発生しています。

そこに、日本のゼロ金利を利用した国際マネーゲーマーのキャリートレードといったマネーゲームや伝説の投機家の発言、円安差益も絡む日本株暴騰という現象が発生、企業利益が極大化、賃金支払い能力の大幅増加の中で、財界からも「少し賃金を上げた方がいいのではないか」という意見が出てきたのが今年の春闘だったのでしょう。

これは経済現象としては自然な動きで、経営者自身も、経済成長のためには国内消費の増加が重要と気付いたという経済理論上の意識の表れでしょう。

その結果、日本経済は少し動き始めたようです。この動きをさらに進める事が大事で、必要なのは、前回も指摘しましたように、民間労使の合意で円安に見合う賃金水準上昇の実現でしょう。

次回その実態を見てみましょう。


景気回復の原動力は「先ず賃上げ」のようです

2024年10月23日 13時39分48秒 | 経済

今回の選挙の結果で気になるのは、1つは当選すれば裏金問題の禊は終了ということになるのか、もう一つは減税や補助金、給付金などの公約が花盛りですが、それで本当に日本経済が良くなるのかという2つです。

国民がどう判断するかは解りませんつが、甘い選挙公約に乗せられずに、確りした国民の判断を見せてほしいと期待しているところです。

そんな中で連合が2025年春闘の賃上げ方針を出して来ました。要求は、初めてでしょうか「二本立て」で、基本的な賃上げ要求としては、昨年と同じ「5%以上」、それに加えて中小企業では「6%」という要求基準です。

格差社会化が進行している日本経済社会を意識して、二本立てにした事には、連合の格差拡大を止めようとする強い意識を感じ評価するところです。

日本経済の活性化に何が必要かという問題については、選挙戦の中で「政府に頼る」という意識が気になりますが、今までの実績が示していますように、政府に出来ることは限られていて、活性化のカギを握っているのは「民間産業界の活動」、端的に言えば、労使が少しでも高い賃金の上昇を志向し、その実現のために協力して技術革新、生産性向上のために知恵を絞り、汗を流すことを実践するという強い意識を持つことが必要なのです。

政府が、あれもやってあげましょう,これもしてあげますと言って、民間がそれを待つようになったら、日本は終わりでしょう。

政府はプレーヤーではなくてレフェリーなのです。活発な経済活動ができるような環境条件やルールを作り、それを確り見張ることが政府の役割です。

今年の春闘でたとえれば、労組が5%以上という賃上げ要求をして、経営側が出来るだけそれに応えることでいくらか雰囲気が変わりました。

今年政府のやったことで特筆すべきは、公正取引委員会の出した「原材料や賃金コストの上昇を価格に転嫁するというルールの明示です。

昔は、下請け企業は専属が一般的で、親企業は、下請けを育てることが大事な仕事でした。今は下請けを買いたたくことが多くそれが問題と考えて新たな行動を起こしたのでしょう。こういうのが典型的な政府の役割です。

それでもまだ、うまくいかないという事で連合は中小企業により高い賃上げ基準を打ち出したのでしょう。残念ながら、ここで取り残されているのは自己中心の大企業という事になるようです。 

つまり産業活動というのは、その中の全ての部分が、夫々に望ましい生産性を上げられるような構造にしないとそこがネックになって全体が上手く回らなくなるのです。

これは親企業と下請けの関係だけではありません。素材産業と完成品産業、労組と経営者みな同じです、利益相反のように見えて、本当は最も合理的な関係が必要なのです。

政府と民間の関係も同じです。恣意的な補助金や給付金は、合理的な関係をゆがめ、健全な経済活動を阻害します。

経済活性化は、産業労使が力をつけることでしか可能にはなりません。その意味で、春闘における労使の緊張関係は大事なものです。

新しい政府は、そのあたりをよく理解して、日本経済の活性化のために何をすべきかを十分弁えてほしいと思うところです。


物価は落ち着くと予想しますが・・・?

2024年10月19日 15時06分34秒 | 経済

昨日、総理府統計局から9月分の消費者物価指数が発表になりました。

昨日からのマスコミの報道では、消費者物価指数の上昇は鈍化したが、政府の電気・ガス補助金のためとか、一方、コメの値上がりが目立つとか、家計から見ると何か気になる点が指摘されています。

という事で、まず消費者物価指数の基本的な動きを見てみましょう。

      消費者物価主要3指数の推移

 

青と赤の線は、9月は下降、緑の線は、緩やかですが上がっています、青は「総合」指数で赤は生鮮食品を除いた総合です。9月の上昇率2.4%とマスコミが書いてとるのは、赤い線で生鮮食品を除く総合の対前年上昇率です。政府はこの所この指数を使っていますが、天候不順で生鮮食品の価格が乱高下するからでしょう。

青線の下げた原因は、政府が電気・ガス会社への補助金を復活したこと、赤線の下げが大きいのは、値上がりしている生鮮食品も除いているからです。

緑の線は下がっている電気ガスと上がっている生鮮食品の両方を除いたコアコアと言われる生活の基本部分に関わる物価の動きで、天気や輸入品の動きや政府の恣意的政策の影響が除かれているからです。

政府が物価対策をやったりやめたりしますと、経済指標が不規則に動いて経済の実態が見えなくなり、景気判断などが歪む惧れがあるので、補助金や給付金、増減税などは緊急避難に限定、人気取りのバラマキ反対という意見は貴重です。

消費者物価指数の短期的な動きを、具体的にみるという意味で有用なのが、マスコミの見出しの「対前年上昇率」で下のグラフです。

   消費者物価主要3指数の対前年上昇率(%)

      資料:商務省、消費者物価指数

日本の消費者物価指数の対前年上昇率は昨年夏ごろから縮小傾向です。政府の2%インフレ目標というのは、これが2%まで下がるという目標ですが、青・赤の線は電気、ガス、石油などへの補助金で動くので実態がよくわかりません。

一番滑らかなのは緑の線で、これは政府の恣意的政策などの入らない国内中心の経済実態を示すのでしスムーズです。2022年、23年と続いた生活必需品の値上げの波が昨年秋から鎮静化かし、7月には1.9%になりました。

その後多少の反発で8月2.0%、9月2.1%となっていますが、これにはコメの値上がりの様な政府の政策の失敗、原材料費や人件費などの価格転嫁が中小企業での遅れを取り返す動き、インバウンド生協の影響などもあると思われます。

しかし、消費支出の10大費目で見ても一時の様な2桁上昇はなくなり日用品ベースでも特売のキャンペーンも増え、家計の財布の紐は予想外に固く、消費者物価指数は安定化の中での動きという予想が出来るのではないかと見ています。

こうした消費者物価指数の動きと、月が替われば発表になる毎月勤労統計の賃金指数の比較で、実質賃金の動向が議論され、来年の春闘に向けての労使の動きも含め気になる時期になってきたようです。


2025年には日本経済を成長経済に・続

2024年10月16日 12時55分57秒 | 経済

前回書いてきたことは、

政治改革では、まず今度の選挙で、投票率を90~100%に上げること。

成長経済のでは、賃金上昇の加速を労使でやること。政府は補助金や給付金などを出さない事です。

今回の選挙の公約でも、消費需要不足で経済が伸びないのだから、消費を増やすために給付金を増やせ、減税をせよという「政府の力で消費を増やす」政策を言っている政党がありますが、それは厳禁です。

政府支出を増やせばツケは結局国民に回ります。もともと国には金はないのです。国民はそれを知っています。

国民が消費を増やすのは、自分で稼いで収入が増えて初めてその気になるのです。労使が頑張って会社の業績が上がり賃上げが増えて初めて従業員は消費を増やす気になるのです。

つまり、政権を取っても、現実に減税ができる環境にないことは国民はみんな知っていますから、そんな公約はすぐ剥げてしまうと思っています。

頼りになるのは自分の働いている企業です。

企業は「労使」から成り立っています。株主もいますが、株主も企業が順調に発展してくれれば喜ぶはずです。

ただ、マネーゲームで株を持っている株主もいますから、そういう株主は要注意です。株価だけ上げたい株主の思惑に引っかからないようにしましょう。

話を元に戻して、では賃金を上げるにはどうするかです。これは今春闘の連合と経団連の意見や態度からも判断可能でしょう。

今春闘では、大手企業中心に満額回答が軒並みでした。要求以上の回答さえもありました。バブル以前でもこんな記憶はありません。

つまり企業には「賃金支払い能力」があるのです。しかし連合の要求が5%以上ですから、それ以上出したら連合に失礼と思う経営者もいるのではないでしょうか。

客観的にも2年ほど前まで、円レート110円ほどで経営をやっていたのです。一時160円まで行きましたが、今の140円台でもドル建ての日本の賃金は大幅に下がっていて、賃金支払い能力には余裕があるのです。

資源エネルギ価格が上がっているという意見もありますが、これは世界共通ですから日本だけ不利になることはありません。

つまり連合が、日本経済の低成長を気にして、賃金要求を控えめにして来ていたこともあって、労使の分配は「使」に偏り、「労」に行き渡っていなかったのです。

これは、国民経済レベルでも、法人企業統計レベルでも確認できることです。

経済活動を活発にするには軽度(2%)のインフレが良いというのは定説で、日本政府・日銀もそう言っていますが、これは経常的なホームメイドインフレを指すこと日銀はよく知っています。

アベノミクス以来の賃上げは、賃上げの担当者でない政府の「官製春闘」という「言葉」だけで終わっていて、「労使」は本気で参加していませんでした。今の分配の不均衡はその積み上げですが、消費不振が経済成長を阻害していましたから、一見「低成長、低賃上げ」がバランスしているように見えていたのです。

ここまで見てくれば、ご理解いただけると思いますが、今は、これまでの基調的低賃上げ経済を、賃上げ主導で逆転し、高賃上げ→消費支出増→経済成長実現→高賃上げ、という、高賃金決定主導の経済活動の方向への転換開始の時期なのです。

そんなことをしたらインフレになって…、などというご意見もあるかもしれません。しかしホームメイドインフレ(賃金インフレ)が2%以上になれば、日銀は金利引き上げでインフレ抑制が可能ですし、連合が、賃金要求を少し引き下げればいいのです。

という事で、当面の賃上げ要求は 7~8%というのはどうでしょうか。

経営者は、昔のように業績が上がれば報いる相手は従業員、株主には定期預金を多少上回る程度の利回りでご納得いただく、マネーゲームには出来るだけ与しないという経営方針、企業は社会のために存在する「公器」であるという自覚が必要なようです。


2025年には日本経済を成長経済に

2024年10月15日 13時39分49秒 | 経済

いよいよ選挙戦に入りました。選挙の争点は、国民の立場からすれば大きく2つでしょう。

1つは、政治改革です。はっきり言えば、自分のためではなく国民のための政治をしたい人が政治家になるシステムを作る事でしょう。

2つは、日本経済の活性化です。少なくとも2~3%の実質成長率が安定的に達成できる日本経済を作り上げることでしょう。

差し当たって、この2つについて、国民が納得できるような状態になれば、マスコミの報道が、聞きたくないような問題が次から次といったことも少なくなり、国民の表情も明るくなって、日本はさっぱりと住みやすく、誰もが何かやる気になるような社会になるのではないでしょうか。

お読みになる方々には、多分、それは大変結構なことだけれども、簡単に出来ることではないですね。それでみんな苦労しているのですから、と言われそうです。

確かにおっしゃる通りです。しかし本気になれば、方法はあります。

私は政治のことは素人なのですが、まず50%台の投票率を90~100%に上げれば、現状は大きく変わるように思います。これは国民が本気になれば出来ることです。

経済の方は多少知識もありますからアベノミクス以来(円レートが正常化して以来)の失敗を正す方法はほぼ解っています。

為替レートの正常化は政府・日銀の問題ですが、それが出来たら、あとは民間労使の問題です。政府・日銀はレフェリーかせいぜいアドバイザー役に回って、民間労使に「分配と成長の問題」への取り組みを「頼むよ」と任せるのです。

経済成長は、基本的には「分配の結果」として決まってきます。これは政府には出来ません。労使の分配、具体的には賃金決定(理論的には労働分配率の決定)が成長の最大決定要因なのです。

単純化すれば、労働分配率が高過ぎると利益が減って投資減少→成長阻害となり、労働分配率が低すぎると労働意欲の低下・消費不振→成長阻害となります。

労使が共通に望ましい成長率を目標に持ち、その実現のための適正労働分配率を労使交渉で実現したとき成長率は極大になるのです。

適正労働分配率より高めの分配になるとその分インフレになります。  

2%程度のインフレならば許容範囲というのが常識となるようです。逆に、低めになるとその分デフレになります。デフレには許容範囲はありません。理由は「デフレ3悪」をご参照ください。

アベノミクス以来日本の政府がやってきたのは、労働分配率が高すぎれば、企業に補助金を出し、労働分配率が低すぎれば家計に給付金を出すという政策です。

これは「政府の見える手」で、労使が適正な労働分配率を議論して、結果に責任を持つという経済活動についての労使の責任感を不要にし、経済の自然な動き、つまり自由経済原則、価格機構の働きを壊すもので、政府による「小さな親切・大きな失敗」なのです。

勿論、労使にも失敗はあります。最近のアメリカのインフレはその好例です。そのときはFRBが出て金利政策で労使の誤りを正すことが必要(大きな回り道)になります。

オランダのワッセナー合意(1982年)は、かみ合わない労使の議論に政府がアドバイザー役を果たし政労使3者協力で成功した稀有の例で有名になりました。

さてそれでは、今の日本ではどうすればいいのでしょうか。この最も肝心な問題を書こうとしたのですが、長くなってしまうので、次回とさせて頂きます。


貯蓄の側面から見た我々の生活

2024年10月14日 16時18分03秒 | 経済

日本人は昔から若いときは苦労しても真面目に働いて将来ゆとりのある生活をしようという考え方強かったようです。

「若い時の苦労は買ってでもしろ」等という諺もありますが、そういう意味では、「先憂後楽」という生き方が、誰もの身に付くような社会を作ってきたのでしょう。

そのせいか日本人は貯蓄好きです。今も、日銀の資料を見れば日本の個人貯蓄が2200兆円もあって、その半分以上は銀行預金などの安定資産です。

勤勉に働くという事と、投機的なものには手を出さず、確実な貯蓄で将来の備えるといった考え方は、日本の雇用制度や、賃金制度にも組み込まれていたようです。

丁稚奉公から出発して、番頭を目指し、将来は暖簾分けや自立で店を持つといった考え方は、近代企業になっても、同じ企業に勤めていれば、年々上がる年功賃金システムや退職金という制度で残っていました。

今では、政府は欧米流の仕事別賃金で、同じ仕事をしていればずっと同じ賃金で、高い賃金が欲しければ、高い賃金の仕事を自分で身につけるという考えのようです。

しかし今でも、非正規従業員は別として、同じ会社に勤めて、企業の中で仕事をしながら、資格・能力を高め、次第に昇進し、賃金も上がる職能資格制度が一般的です。

これは、働く人には安心感を与え、経済的安定にもつながります。そんな現状を「貯蓄」という立場から見ると下のグラフです(総務省「家計調査」:2人以上世帯)。 

 

これは世帯主の年齢階層別の「平均貯蓄額」です。40歳未満では1千万円迄行きません。2023年は減少です。40歳代は1千万円をやっと越えています。50歳代では大分増え2000万円を越えますが.退職金の効果もあるでしょう。2023年は多少減。60歳代が退職金も加えて現状ではピークで70歳以上になると。少し減りますが、4年間多少伸びています

各世代とも低成長経済、コロナ禍の中で、その影響を受けながら何とか頑張っています。

ところで、この数字に、加えてみておかなければならないのは「負債」を差し引いた「純貯蓄額」です。(資料:仝上)

純貯蓄額は、40歳までのマイナスから出発。年代ごとに60歳代まで急速に増えて2000万円を越えています。負債の原因は殆んどが住宅ローンで約6割の世帯が背負っています、数字は背負っていない世帯も入れた平均ですから、住宅ローン負担の深刻さは解ります。

幸いなことに、この世代は働き盛りで、夫婦ともに働いているケースが多いこともあるのでしょうか、40歳代では純貯蓄のマイナスは大幅に減少します。

しかし50歳代に入っても純貯蓄は1000万円までほどが限界であまり増えません。子育て、学資の負担が大きいのでしょうか。

負債が減って純貯蓄額が貯蓄額に追いつくのは60歳代になってという事のようです。

もちろんこれは,同じ世帯がこうした経路をたどるというのではなく、現在のその年代の世帯の数字ですから、この世代別の数字の在り方は、これからの日本経済如何で変わるでしょう。

しかし、今までの日本経済の中で世代別の結果を見ても、殆んど成長のない30年ですが、日本の2人以上世帯は、その状況の中で、結果的には、着実に「我が家の将来はきっと良くなる」というに日本人らしい生き方を確り実践して来ているのではないか(特に高齢世代)という印象を受けるところです。

今後は国の方も頑張ってほしいものです。


9月企業物価2.8%、物価動向は?

2024年10月11日 14時31分58秒 | 経済

昨日日銀から企業物価が発表になりました。マスコミは一斉に前年比2.8%の上昇と報道しています。

物価動向の見方の基本として、企業物価の動向は海外物価と円レートの動きが大きく影響し、一方消費者物価は賃金コストの動向に大きく影響されるというのが一般的な見方でしょう。

今、日本経済は、新しい安定成長の時代への準備期間という感じの時期にありますが、これには物価動向、特に消費者物価の動向が大きく関係してくる状況です。

というのは日銀が政策金利を引き上げる条件に日本経済としての消費者物価の2%上昇という項目も入っているようだからです。

ただ、消費者物価は当然輸入物価や企業物価の影響も受けるわけで、この辺りを日銀がどう読んでいるかも重要な点でしょう。

消費者物価指数は総務省の調査ですが、輸入物価、企業物価は日銀が調査をしているのです。今回はそのあたりを見てみたいと思います。

企業物価2.8%の上昇がどんな状況を示しているかです。

そこで輸入物価と企業物価の今年に入ってからの動きをグラフにしてみました。

                                         資料:日本銀行

先ず、赤と青の線が輸入物価です。輸入物価は海外の物価の動きの上に、このところ乱高下する円レートの影響も受けます。円建ての輸入物価は青い線、契約通貨建ては赤い線です。青い線が赤い線より上になるのは、主として基準時点(2020年)より円安になっているからですが、このところの動きを見ると、取引の中で円レートの乱高下はかなり調整されているようです。

灰色の線が企業物価ですが、取引段階でのいろいろな調整があって平準化されてています。

円建ての青線の動きはずっと高めになっていますが、これは主に基準時(2020年)より円安になっているせいで、7月を境に円高になって大きく下がって、9月はマイナス2.6%です。9月には海外物価自体も下げているようです。

企業物価はと言いますと、8月は円高の影響が微かに見えるようですが9月は逆に上がって2.8%です。

上がった原因は、マスコミの解説にもありますがお米の値上がりのようです。これは為替レートは関係ありません。

為替の動きに馴れない石破さんの発言で円レートが乱高下しましたが、これからはそれはないでしょうから赤い線が落ち着いている限り物価は落着くのではないでしょうか。

若し日銀が金融正常化(金利引き上げ)を急いだり、FRBがサプライズの政策金利引き下げをやったりすれば、円高になり、企業物価、引いては消費者物価の下げにも通じるところですから、客観情勢としては物価は安定基調でしょうか。

残念ながら、家計の消費支出も値上げへの警戒感から伸びていません。政府は景気回復と言いますが、消費不振で、状況はそう簡単ではないようです。

期待するのは連合の賃上げ要求姿勢が強まることですが、それは来年の話です。年末にかけて景気はどうなのでしょうか。


実質賃金3か月ぶりマイナスに戻る・・?

2024年10月09日 16時39分40秒 | 経済

昨日8月分の毎月勤労統計が発表になりました。このブログでは家計調査の方を優先してきていますので、昨日は家計調査の平均消費性向が下がったことを書いていましたが、毎月勤労統計も見ていまして、賃金指数で「現金給与総額」も「決まって支給する給与」も「所定内給与」も共に対前年上昇率3.0%だなと確かめて、消費者物価指数の上昇は総合で3.0%、政府がいつも使う「生鮮を除く総合」で2.8%の上昇だから、実質賃金の低下は免れたなと思っていました。

ところが夕刊が来て、実質賃金0.6%の低下と出ているのでびっくりしました。改めてネットで見ると何処も「0.6%のマイナス」と同じ見出しで、名目賃金が3.0%上がって、実質賃金が0.6%下がっている同じグラフもあちこちに出しています。

そう言えば、そうかと気が付いたのは、毎月勤労統計は労働省の統計ですが、消費者物価指数については「持ち家の帰属家賃を除く」指数を使う事になっています。

我々が総務省統計局発表という事で使い、政府も消費者物価指数として発表しているのは「持ち家の帰属家賃を含む」消費者物価指数なのです。

ご承知の方には不要な説明ですが、「持ち家の帰属家賃」というのは自宅に住んでいる人は家賃を払っていませんが、その家を借りていると仮定し場合の家賃支払い額のことです。

それなら、その分は架空の収入として、払わないでいる家賃は所得に相当するという計算になるわけで結局、自分で払い自分がもらう「入り払いチャラ」という事ですが、GDPの計算では、もらって払った計算にしようというのが国際的に一般的な方法という事で、日本もそうなっているという事です。(GDPがその分大きくなる)

その際の家賃の推計は、民間の家賃の相当額という事だそうです。そしてこれが消費者物価指数のウエイトでは15%ほどもあるようで(殆んどが持ち家)、GDPにも消費者物価指数にかなりの影響を与えているようです。 

そして、この所、家賃はほとんど上がっていないので、架空の家賃支払いを入れた消費者物価指数の上昇は低くなり、「持ち家の帰属家賃を除く」と、その分上昇率が高くなるのです。

という事で、通常の消費者物価指数の「総合」と「持ち家の帰属家賃を除く総合」をこの1年ほど並べますと下のグラフです。

                資料:総務省統計局

確かに、持ち家の帰属家賃は現実に支払いをしているわけではないので、実際の支出の方が合理的という事でしょう、家計調査の消費者物価指数(デフレータ)でもこちらが使われています。

そうしますと、実質賃金の水準はその分だけ下がることになりますので、実質賃金の黒字化は、かなり難しくなるようですね。

このブログでも、解り易いより現実を正確に表した方がいいという意味で、通常の消費者物価指数を使っていますが、これまでの「グラフ」と「説明」を変えた方がいいのかなと迷っているところです。


2024年8月の平均消費性向は低下

2024年10月08日 12時23分06秒 | 経済

今日、総務省より今年8月分の家計調査「家計収支編」が発表になりました。

今春闘の賃上げが、3.56%(連合調べ)と33年ぶりの高さになったので、家計も少し元気が出て、消費需要も活発になるとかと期待していましたが、家計の財布の紐はなかなか緩まないようです。

家計の中核である2人以上の世帯で見ますと消費者物価指数の上昇を差し引いた実質消費支出が昨年比でプラスになった月は、4月の0.5%と7月の0.1%だけで、8月はまたマイナス1.9%と昨年より大きく落ち込んでしまっています。

2人以上世帯では、自営業も含むため、収入の統計がありませんので、消費支出の減少という現状しかわかりませんが、消費支出の増加での景気回復を期待している日本経済としてはいささか残念な状態です。

毎月報告していますように、2人以上勤労者世帯の場合は収入・支出の両方が取れ、収入が増えて消費も増えたかどうかが解る平均消費性向が算出されていますから、そちらの方を見てみますと結果は下のグラフです。

緑の柱が今年の平均消費性向ですが、5月以降平均消費性向は前年比低下です。8月は昨年の69.3%から66.1%と3.2ポイントの大幅低下です。

消費者物価指数の上昇は基本的には沈静化ですが電気・ガスなどの公共料金が政府の補助金廃止で上がったりするという事情もあり、消費者心理に影響を与えるようです。

2人以上勤労者世帯の収入と支出の関係を見ますと下のグラフです。

6月の可処分所得(手取り収入)はボーナスが良かったせいで大幅に増えましたが、多分、差し当たって貯金で消費は伸びていません。7月、8月とボーナスの分は消え、可処分所得は減りましたが3月まで(賃上げ前)よりは増えています。消費の方は、所得の動きとはあまり関係なく微増です。家計はやはり堅実指向のようです。

今春の賃上げは、33年ぶりの大幅という事でしたが、家計が安心して消費を増やす所までは行かなかったようです。

連合は来春闘への準備を始めたようですが、今後の賃金と消費支出の動向からは目が離せません。


金利の機能する経済に向かって

2024年09月21日 13時55分33秒 | 経済

日本は長い間のゼロ金利で、貯金するのは減らさないためという意識が一般的になっています。

実はインフレ分だけ目減りしているのですが、下手に株や投信に手を出すと大きく減ってしまう可能性が大きいと恐れる人が多いようです。

そうした意識の結果は日銀の資金循環表に出ています。マスコミも家計の貯蓄2200兆円と言い。政府は株や投信への投資を推奨しますが、この2200兆円のうち、1100兆円は現金・預金(タンス預金含む)です。証券投資は4.6兆円です。

ところで、この1100兆円にやっと利息が付き始めました。

日銀の目標は差し当たって短期金利0.25%ですが、金融機関の中では定期預金0.5%、中には0.75%、1%をキャンペーン利息などとするところも出てきました。

銀行の場合は元本保証、確定金利です絶対安全です。

もう少し利息が高くならないかなと思う人も多いと思いますが、日銀は、急がないけれども、そうして行こうという考えを明確にしています。

これが金融正常化の方向です。もともと資本主義というのは金利の概念が一般化したから発展したのです。倹約して貯蓄をすれば、その金は、カネがないが仕事(ベンチャー)をやりたい人が借りて仕事をして経済が成長するという循環が生れたからです。

この循環をうまく回るようにしたのが銀行だったのです。

昭和恐慌の時代には乱立した銀行がバタバタ潰れて大変でしたが、銀行は潰れない、たとえ潰れても預金は保護されるというシステムが出来て、日本の戦後の高度成長は可能になったようです。

さらに資本主義が発展すると、景気が過熱すると金利を引き上げ、不況になると金利を下げるといった経済政策も一般的になり、銀行というシステムは大変重要なものになりました。

ところが、日本ではアベノミクス以来「ゼロ金利」ですから、金利を上げて景気を冷やすことはできますが、金利を下げて景気を良くすることは出来ません。正常な金融政策が取れないのです。

金利を下げる事が出来ませんから、景気テコ入れのためには政府が財政支出を増やすしかないので、結局、政府が日銀から金を借りてバラマキをやることになります。

銀行は経済活動を活発にする目的で資金を提供しますが、政府は選挙の票田に肥料(国家予算)を撒くのが主な目的ですから、経済効果は全く違います。これも、日本経済が成長しない理由です。

ということで、金利の正常化は極めて大事ですが、更に大きな利点もあります。

家計の貯金1100兆円に3%の利息が付けば3.3兆円の利息が貯蓄をしている家計に支払われます。これが消費支出に回れば、家計最終消費支出は300兆円ですから消費支出が1.1%増えます。一時的ではなく恒久的ですから、消費不振脱出の大きな力になります。因みに今年度の政府経済見通しの消費支出の伸びは1.2%です。

年金が心配だと2000万円貯蓄していれば、金利3%なら年に60万円の利息が付きますから、税金を取られも、月5万円近い安定収入があるのです。

日銀には「ゆっくり、確り」金利のある経済への復帰を進めてもらいたいものです。


8月消費者物価指数、基調は安定へ

2024年09月20日 14時51分19秒 | 経済

今朝、総務省統計局から2024年8月の消費者物価指数が発表になりました。

結論から言うと、現状、日本の消費者物価指数は安定基調で、それを乱しているのが政府の場当たり的な補助金政策と地球温暖化による異常気象だということです。

アメリカでは、雇用統計と消費者物価指数がFRBの金融政策を左右する主要な統計ということになっているようですが、それはこの2つの統計が、アメリカの実体経済の現状を反映すると、関係者みんなが理解しているから成り立つのです。

アメリカが立派ということではありませんが、経済関係の統計などはなるべく本来の経済の動きを示してくれた方が経済状態を理解するためには好都合でしょう。

ということで、発表になりました8月の消費者物価指数を見てみましょう。

マスコミは前年比2.8%の上昇としているものが多いようです。これはこの所、政府が消費者物価指数の「総合」の数値ではなく「生鮮食品を除く総合」の数字をメインの数字として使っているからのようで、「総合」は3.0%です。

   消費者物価指数対前年上昇率(%)

このところ天候不順などで生鮮食品や生鮮魚介や鶏卵の価格が上がっていたので、低い方にしたのでしょう。

政府は数字が低い方がいいと考えるのでしょう。政府が補助金を出して物価をさげたりします。エネルギーの価格が上がったとき石油元売りなどに補助金を出して、ガソリン、電気料金、ガス料金を下げました。  

上のグラフで見ても2023年の2月から2024年1月にかけて、青と赤の線が大きく凹んでいるのが解ります。その時説明しましたように、政府の補助金で電気・ガス料金が下げられたけっかです。

緑の線は上に膨らんでいます。青・赤の線はエネルギー料金が入っていますから下がっていますが、緑の線は「生鮮とエネを除く」ですから補助金の影響はなく、本来は緑の線の上に青・赤の線が来ているはずなのです。1年たつと対前年上昇率は本来の位置に戻り、また上昇を始めます。政策で統計が歪んでいます。

緑の線は、エネルギーと生鮮食品を除いていますから国内の正常な経済活動による物価の動きということで「コアコア指数」などといわれますが、これはこのところ下げてきて2%になりました。日本経済自体によるインフレは2%程度になったということでしょう。

8月の物価上昇は、補助金の期限切れ、電気代26%、ガス代11%、それに生鮮の野菜・果物の12%と0%の上昇によるものです。うるち米の30%の上昇は緑の線に含まれていますから、農政の不具合によるコメの値上がりがなければ緑の線も0.1ポイントほど下がっていたでしょう。

下のグラフは原指数の動きですが、次第に、もう少し緩やかな上がり方になるように思います。

   消費者物価指数の推移