日本銀行は今回の政策決定会合でも政策金利(0.5%程度)の据え置きを決定しました。
アベノミクスの異次元金融緩和からずっとゼロ金利で、1000兆円もの預金を持つ日本の家計は「銀行に預金をしても利息は付かないもの」というのが当たり前という感覚になっています。
住宅ローンを借りている人は低金利で有難いと思っていますが、個人の住宅ローンの残高は200兆円ぐらいだそうですから、日本の家計全体としては、少し金利がついてくれれば、それだけ助かるということになるのでしょう。
政府は貯蓄より投資ですよと言ってNISAなどを推奨していますが、政府は1400兆円も国民から借金をしていますから金利上昇は何とか避けたいと思っているのでしょう。
もし銀行預金に2%の利息がつけば、家計には、家計には年間20兆円の利息が入ることになって、家計の主な所得である雇用者報酬(賃金総額)300兆円に加えて家計に20兆円が入ることになります。
もし3%の利息が付けば、銀行預金は24年で2倍になり、老後の積み立てなどは、元本保証のないNISA のような心配は全くなく、老後の備えは極めて安定的なものになります。
我々の世代の若いころは定期預金の利息は5.5%でしたから貯金や金融債の威力は本当に大きかったと思います。
余計なことを書きましたが、黒田日銀以来、日銀は、経済成長のためには低金利であるほど良いという考え方で来ているようです。
黒田さんの10年も、円レートが正常化して景気が良くなり経済成長が始まり、賃上げもあって物価も上昇基調になり、2%インフレ目標などはすぐに達成して、金利を上げる事になるはずだ、という前提で出発したのに、ゼロ成長で物価が上がらない、仕方ないからゼロ金利で経済活動の活発化をという10年だったように思います。結果は企業設備先行、消費不振の片肺飛行でした。
植田さんの日銀の時代になって、賃金は上がるようになり、その中で物価が下がった昨年夏、金利の引き上げが行われさてこれからというところで、円安、コスト上昇の価格転嫁容認で物価が上がり始め、実質賃金低下に加えてトランプ関税で経済成長鈍化で先行き不透明になりました。
これでは症状的にはスタグフレーションです。さてここで何をするかが問題です。
日銀は景気を大事にと低金利据え置きを決めました。これは「経済→金利」という政策選択でしょう。
しかし、ここで「金利→経済」という形で考えてみる必要があるように思うのです。改めて、金利を経済の正常化のために動かすのです。
基本的には金利を上げる事が必要です。円高になります。物価には引き下げ効果です。日経平均は多少下がるかもしれません。しかし多分一時的でしょう。程度にもよりますが、企業は関税より適応しやすいでしょう。
円高になれば、日米関税交渉には有利でしょう。アメリカが金利を下げない代わりに日本が金利を上げましたということになります。
問題はやり方です。0.25%ずつ動かすというのはアメリカですから、日本はキメ細かく0.01%乃至0.05%ずつ動かして、投機資本などの動きをしっかり見ながら齟齬のないようにするべきでしょう。
日本の企業も家計も、政策金利の動きには柔軟に対応するでしょう。加えて、金利水準を上げるほど、これから心配なインフレに対する家計の対応を、物価安定と預金の利息収入増で助けられるという視点の重要性を見落とさないことが重要ではないでしょうか。