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tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

実質賃金をプラスにする方法

2025年06月07日 14時36分15秒 | 経済

昨日の毎月勤労統計の実質賃金指数の検討で、今春闘での賃上げが、昨年に続けてかなり活発だったことから、今年あたり何とか実質賃金がプラスになる可能性はありそうかという点を見てきました。

見当がつくには、もう少し時間は必要で、つまり春闘の結果が出つくして、名目賃金指数の上昇率が、どこまで行くかはっきりする。

もう一つは、この所コメの価格上昇などを中心に消費者物価の上昇が顕著でしたが、これが何とか落ち着くかどうか、その辺りにかかっています。

具体的な数字でいえば、今春闘の結果が平均の「月例給」(きまって支給する賃金)の上昇をもたらすのが、多分順調にいっても名目値で3%程度まで(昨年は2.5%程度)でしょうから、消費者物価の上昇が3%を切れば切った分だけ実質賃金の大前年比はプラスということです。

しかし消費者物価の上昇率を見ますと、今年に入って高止まりで4月は3.6%ですから、この分では、月例給で見る限り実質賃金は前年比低下が続きそうな気配です。

実質賃金が上がる月があるとすれば、それは去年のようにボーナスが良かった月ということになりそうです。

実質賃金が上がらない年がいつまで続くのですか、という情けない事になりそうですがそれも仕方ないのでしょうか。

経営側の総本山である経団連でさえ「物価上昇を上回る賃金上昇を」といっているのですがそうなるのは容易ではないのです。

日本経済全体から見てみれば、このところは殆ど実質ゼロ成長です。経済そのものが実質ゼロ成長ですから、その中で実質賃金が高くなるということは別の所が減らなければならないのですが、賃金に一番関係が深いのは企業利益です。

経団連が「物価上昇より高い賃上げ」といっているのは、賃金が減ってもいいという意味ではなく、GDPというパイを増やして物価上昇を上回る賃金上昇を可能にしようといっているので、それが最も合理的な方法だということは解かるのですが、経団連にも、経済成長を起こす力はないようです。結果は現状に終わっています。

ゼロ成長の中で物価上昇より高い賃金上昇を実現するためには、経済学的には利益を減らすしかないのです。

それでは生産・流通が元気を失い、経済が発展しないことになります。これが今の日本の状態でしょう(利益の出るのは輸出産業が中心)。

ということで、今考えられているのは、思い切って賃金を上げ、「国内の消費を活発にして」生産・流通を元気にし、GDPを増やして、それを皆で分けようというwin=winの経済です。

然し、そのレベルまで賃金が上がらないので、利益確保で上がる物価の上昇率のほうが賃金上昇より大きく、消費は増えないということになります。それを政府が、補助金や給付金で繕っているのです。

基本は、日本全体が元気を失っているというところにあるのではないでしょうか。


実質賃金:対前年増加の見通しはあるか?

2025年06月06日 14時19分36秒 | 経済

昨日、厚生労働省から4月の毎月勤労統計が発表になりました。

この統計について特に4月分の関心は、春闘結果が賃金水準の上昇にどの程度の影響を与えているかというところですが、4月の所定内賃金の上昇率は、対前年比2.2%でした。昨年は1.8%でしたので、昨年よりいくらか高めかなという感じです。

もちろん、四月から昇給というのは大手が中心で、実際の春闘は6月ごろにほぼ終了ということですから、春闘の影響は6月あたりで確定するということでしょう。

昨年で見ますと4月の1.8から次第に上がって2.5ほどになっています。今年はどうでしょうか。

ところで、この統計についての関心はこの所もっぱら実質賃金の上昇で、昨日の発表を受けてのマスコミの報道は「4か月連続のマイナス」といった指摘が多いようです。

実質賃金の推移は通常、総額人件費で比較されますが、昨年は残念ながら一昨年レベルを上回ったのはボーナス月が中心で、平月はやはりマイナスが多くなって年度平均でもマイナスでした。その実態は下のグラフです。

グラフの実質賃金指数では、ボーナスを含む「現金給与総額」と、ボーナスは含まず、残業代を含む「きまって支給する給与」との対前年同月比の推移を比べていますが、青い線の現金給与総額では6、7月と11、12月がプラスですがあとの月はマイナス、赤い線の「きまって支給する給与」の実質上昇率は過去1年間通して、マイナスの連続となっています。

厚労省では実質値を算出する際のデフレータの消費者物価指数を上昇率が低めの「持ち家の帰属家賃を含む」指数に変えたのでこの数字は、かつての25かあ月連続マイナスといわれた時の数字とは違いますが、大勢に変化はありません。

問題は、この先「きまって支給する給与」yの対前年上昇率がどこまで上がるか(昨年は2.5%)と、消費者物価指数の上昇率が鈍化するかどうかにかかっているわけです。

所定内給与の上昇率は4月の2.3%(昨年の1.6%より0.7%高い)が春闘終了の6月後の数字でどこまで上がるかですが、1%以上は多分無理でしょうから3.3%としてみれば、あとは消費者物価の上昇率が3.3%より低くなるかです。4月は3.6%ですが、問題はコメがどうなるか、千数百品目といわれる値上げ予定の日用品など、情勢は極めて厳しいところです。

電気・ガスの補助金での引き下げがあっても、これは政治的なもので、経済の動きではありません。

さて、何とか今年は実質賃金のプラス化を願う所ですが何とかなるでしょうか。


狭い庭にも自然の溢れる季節です

2025年06月02日 14時22分39秒 | 経済

真夏日が来たと思ったたら、この所は涼しい日が続きます。また暑くなるのでしょう。 

人間の世界はごたごたばかりですが、自然は着実に、整然と季節の営みを続けています。

我が家の狭い庭も、花は咲き、木の枝のどんどん伸び、色々な草も伸び、雑草といわれるような草にも、よく見ると奇麗な花が咲き、それぞれに季節を楽しんでいるようです。

見ている人間にとっては、やっぱり自然はエネルギーを与えてくれたり、美しさに感動させてくれたり、素晴らしいなと思いながら、「伸び過ぎたら何とか手入れしなければ」と、だんだん落ちる体力とのバランスを心配したりします。

ところで、先ずご紹介は奇麗な花です。百合の花ですが。これは佐渡が島の土産に家内が20年以上前に買ってきた球根が原点です。幸い東京都下の関東ローム層にもなじんで、年々確りと沢山の花を咲かせます。

その上に伸びているのがノウゼンカズラです。背丈より少し高いところで幹はとめ、そこから毎年何本もの枝が伸びて、垂れ下がり沢山の花をつけるのですが今は、今はまさに青巒を盛るといった感じに枝を伸ばしその「緑」に圧倒される感じです。

7月から9月まで花を咲かせる百日紅(矮生)は新芽が伸びてきましたがその色は些か趣があるところです。

その下に伸びているドクダミは、雑草の類ですが、よく見れば純白の花は可愛く奇麗です。

今年、剪定具合でしょうか沢山もを付けた豊後梅は、そろそろ収穫期でしょうか、青い実が膨らんできました。今年は梅酒が出来そうです。

その下にはカタバミの花が咲いています。小さな花ですが、よく見るときれいな花で、小さな鉢に移して机に飾ってと思いながらやっていません。

もう歳だから、こういうことだけで過ごせばと思ったりするのですが、そう行かないのも損な性分だと思っています。


おコメの価格:問題点の理解が進みました

2025年05月29日 14時41分21秒 | 経済

おコメの価格が1年で2倍以上になりました。こんなことは経済現象としては、大凶作の場合しか考えられません。

それが平年作以上の中で、白昼堂々と行われ、消費者は「何だか分からないけれど仕方がない」と泣き寝入りかと思っていたところに、大臣交代で「なんだ、やれば出来るんだ」と知らされました。大変良かったと思います。

事の起こりは、農協が農家からの買い入れ価格を3割ほど上げました。限界農家は救われて様です。そしたら、小売価格は急上昇して1年で2倍になりました。小売価格も3割上昇なら、これほどの騒ぎにはならなかったでしょう。

小泉新大臣は、何はともあれ消費者の味方になって安いコメを供給するというのが自民党としても正義感からしても大事と考えたのでしょう。

備蓄米なら、流通の儲けを減らして、2000円でも売れると計算しました。ところが「変な意見」がいろいろ出ることになりました。

税金で買った備蓄米を安く売るのは国民の損失になる」(誰?)

国民が困っているから安く売るので,そのほうが国民のためになるのではないですか。政府が儲けるのですか。国民が困れば無償でも出すのが備蓄米でしょう。

「コメの再生産ができる価格でないとコメの供給が出来なくなる」(誰?)

だから農家からの買い入れ価格を3割上げたのでしょう。これでもう少し頑張れますというのが農家の声です。農家は米価が2倍になってコメ離れが起きるのが一番怖いと言っています。

「それでも、おコメは下がりませんよ。我々が高い価格で買ったコメが沢山あるのですから」

これは中間業者の声ですが、コメが上がると聞いて高く買ったのでしょう。株でも高値掴みは損をするのです。残念でした。早く売らないともっと安くなりますよ。

などなどいろいろありますが、一番の基本は、日本では米が主食で、これが日本人の活力の源ですから、出来れば自給したいという願望と、日本のコメは高いからトランプさんが攻めてくるという問題を、今後日本政府はどう解決していくかという事なのでしょう。

解決策は、コメの生産性を上げるしかないのです。何十年かけても農水省はそれを実現する責任があります。

今回の事件で、安いから買うコメもありますが、高くても売れるコメもあることがわかりました。これは既に、コメの輸出が増えてきていることからも実証されています。ワインやウィスキーと同じように銘柄、ブランドが価格差を作ります。日本のコメは抜群においしいのです。

生産性の向上には大規模化が不可欠です。これは米農家の高齢化・廃業と田圃の広域・規模拡大をどう組み合わせるかという課題です。

中山間地の小規模コメ作りの問題も大事でしょう。狭い田圃だった所が、現在は桃・ブドウ・梨・プラム、果汁飲料、ワインなどなどの豊かな果樹生産、関連産業地帯になっていることも参考にいなります。

こうした問題は農水大臣が何10人替わっても、政権党が何代入れ替わっても、一貫してやっていかなければらない問題でしょう。

今回のコメ価格暴騰事件がこうした問題への国民の広い理解に役立ったとすれば、転んでも只では起きない日本人らしい力の発揮となるでしょう。


格差拡大阻止の二筋道と政治家(続)

2025年05月27日 14時02分06秒 | 経済

前回は、最近のアメリカは格差社会化がひどく、大変心配ですが、日本の保守政権はどうもそのまねをしているような気がしていることを書きました。

人間の作る社会としては、節度ある自由思想をベースに、自由経済主義、賢明な民主主義といった社会の運営システムが最も適切と考えられているように思います。

理由は、そうした社会システムを努力して運営していくことが社会の安定と発展に適しているからでしょう。

適しているというのは、長い目で見て「サステイナブル」つまり安定して続いていくことができるということなのでしょう。

では、サステイナブルであるためには何が必要かといいますと「あの時代はよかった」といわれる大衆の多くが中間層に属する時代、「分厚い中間層の時代」が続くような心地よい生活実態の安定継続でしょう。

しかし、人間には欲望があり、競争心もあり、個人の能力も千差万別、それに運の良し悪しもあり、成り行きに任せていると格差社会化が進むのです。

資本主義自体がトマ・ピケティが指摘するように放置すれば、格差化は進むのです。

ということで、より多くの人達が満足するような社会の実現のためには、それなりのたゆまぬ努力が必要なのです。

解かりやすい例示でいえば、アメリカ型の社会か、北欧型の社会かということになるのでしょう。

日本では自民党などの保守党政治家の多くの方々はアメリカ型指向でしょう。例えば政治資金問題です。政治献金のためには企業利益が必要です。政治の姿勢は企業減税、金利は低く、株価は高くという状況が大事でしょう。民間の銀行預金も株式投資に誘導ということになります。これは格差拡大社会への政策です。

現状たトランプ関税で企業の心配は大きくなっていますが、これまで企業収益は順調に上がり、1億円以上の年収の経営者も順調に増えてきています

経済成長して、利益が増え、株が上がり、年収が増えるのなら結構ですが、GDPはこうにも増えません。サステイナブルではなさそうです。

一方、野党の多く.あほ属する政治家の方々の多くはヨーロッパ型、北欧型を良しとするのでしょう。

政策の中心は、格差縮小で、そのための政策として行われるのが低所得層の底上げで、賃金水準の引き上げ、更に一般の賃金水準上昇以上の最低賃金の引き上げ、基礎年金中心の社会保障の充実などです。

今、日本では、最低賃金1500円達成、基礎年金の引き上げが進められています。基礎年金の引き上げも実現の運びとなるようで何よりですが、ゼロ成長という実態の中ですから財源が常に問題になります。

表題で「二筋道」と書いていますが、その一筋は「底上げ」です。しかし現状は残念ながら財源がありません。財源のない底上げでは経済学的にはインフレが起きて実質所得が上がらないということになります。

そこで考えなければならないのが2筋目の道です。それは、所得の上層部の減額です。言いにくいことを言いますが、これを確りやらなければ格差の縮小はできないのです。

経済が成長していれば、上層部の増え方を少なく、底上げを大きくで済みますが、ゼロサムの中では、損得が目立ちます。

しかし、それをきちんと計画的にやらないと格差の縮小は不可能です。この問題へのコンセンサスを社会の中に作り出すことがきちんと行われる社会は、格差な縮小し、安定した社会になり、それは多分「経済成長を可能にする」というのが帰結ではないでしょうか。


格差拡大阻止の二筋道と政治家

2025年05月26日 15時13分23秒 | 経済

トランプさんは、アメリカは損ばかりしているといっていますが、アメリカは覇権国で、基軸通貨国で、その特権を利用して、あらゆるものをアメリカン・スタンダードにし、とくにIT関係の新技術などは、こうしてパソコンを使っていてもロヤリティーをMSやGoogleに払っているのです。

結果的にアメリカは、最も豊かな大国です。

その一方でアメリカは大変に格差が大きい国です。アメリカの連邦最低賃金は7.25ドルです。(1ドル=130円なら日本より安いですね)

良く言われますように「アメリカの下位50%の世帯は、国全体の富の2%しか持たない…上位1%が3分の1を保有」というのが現状のようです。(所得ではなく資産すからそうかもしれませんね)

結果的に「偉大なアメリカを取り戻す」というトランプさんが支持を集めるのですが、もしアメリカを格差の少ない社会すれば、今のGDPで十分住みやすい不満のない、世界にも迷惑をかけない国になると思うのです。

1960年代までのアメリカは、今よりずっと貧しかったのですが、国民が皆勤勉に働き中産階級が大多数だった当時のアメリカは世界の憧れでした。

トランプさんのやり方で、その時代が取り戻せるとは全く思いませんが、顧みれば、我が国日本も、何かその方向に進んでいるような気がしてなりません。

日本も1980年代前半までは、今よりも貧しいながら「一億総中流」などと国民自身が言い、外国からも「ジャパンアズナンバーワン」などといわれるところまで来ていたのです。 

しかしその後、大幅な円高に対応しようとバブルをやり、地価暴騰で格差社会が始まり、バブル崩壊で深刻な雇用問題が発生、就職氷河期の非正規増大で急激に雇用格差・所得格差が深刻化してしまいました。

その後アメリカ発のリーマンショックでさらなる円高に見舞われ、格差社会化は更に進みました。

そして、残念ながら、2013~14年にかけての円高是正後も、官民ともに格差縮小の政策はほとんど効果なく今日に至っているのではないでしょうか。

その元凶は、一言で言ってしまえば、日本をミニ・アメリカにするのが理想という政府の指導理念だったような気がしています。

アメリカはIT技術とマネーゲームでGAFAMといった高収益階層を作り上げ、製造業は鉄鋼、自動車など基幹部分を含め衰退しました。

一方、日本は、得意の「ものづくり」とアメリカ追随のマネーゲームで高収益部分を作りあげようと努力し、一次産業は飼い殺し状態で衰退しています。

こうして格差社会化は着実に進行しています。

これまでの所、政権にも多くの野党勢力にも、格差解消に本気で取り組もうという気迫は感じられません。そのための戦略・戦術が総合的に確立しようといった気配はどうにも見えてこないのです。

前置きが長くなってしまいましたが、このブログでは「ジニ係数」を毎月発表したらと書いたこともあります。格差の「見える化」です。

アメリカの真似は、日本社会の劣化につながるので厳禁です。

ということで、次回、日本らしい、格差縮小への道を考えてみましょう。


消費者物価上昇、問題は米・電気・ガス

2025年05月24日 14時49分51秒 | 経済

昨日総務省統計局より2025年4月分の消費者物価指数が発表になりました。

すでにマスコミで報道されていますが対前年に3.5%上昇という見出しが多いようです。3.5%というのは「生鮮食品を除く総合」の数字で、政府は最近この数字を使うようですが、お天気などによる生鮮食品の乱高下の影響を受けないからということでしょう。「総合」の上昇率は3月の3.6%と同じです。

4月の場合は下のグラフのように青・赤・緑の線が揃って上昇ですが、最も急角度は赤で、生鮮は除いても、おコメなど生鮮以外の食料が急騰しているからでしょうか。

小泉農水相が、英断をもってコメ5㎏2000円台と言いました。素晴らしいことです、自民党にもこうした大臣がいるのです。大声援を送ります。

物価が安定すれば、国民は安心しますし、日本経済としても金利や経済構造の正常化が進み、預金には金利がついて老後の安定も進みます。

ちなみに金利が1%になれば10兆円、2%になれば20兆円の預金金利が家計部門に入るのです。

6月からのコメの価格がどうなるか、コメの価格は影響範囲が広いですから、消費者物価がどうなるか、日銀の金利政策はどうなるか、しっかり見ていきましょう。

こうした先行きの可能性も考えながら、これまでの物価上傾向の中身を見てみましょう。

対前年同月比で見ますと動きが見やすくなりますが、下のグラフです。

青い線の総合は、昨年秋は生鮮食品の急騰、米価の値上がり、エネルギー補助金の期限などいろいろのものが重なって大きく上昇しましたが、今年に入っては生鮮以外の食料と光熱水道の上昇が目立つところです。

赤い線の「生鮮食品を除く」の場合は生鮮食品の急騰や低下は除かれています。除いたら、4月は0.1ポイント下がったということです。

緑の線の生鮮とエネルギーを除く」は天候や海外要因の影響は除かれますがコメや国内要因の影響が大きく出ます。現実の国内の物価要因の動きです。

四月には高校授業料の大幅低下の影響がいずれの線にも出ているはずです。

国内要因で物価が上がるのは通常、賃金コストの転嫁が一般的ですが、このところはコメ価格の影響が大きいようです。電気・ガス料金は海外依存ですが、政府の補助金次第という点で経済現象より政治現象で動くようです。

しかし今後は原油価格も下げ傾向で、併せて円高の進行ですからエネルギー価格は上がりにくいでしょう。

そのうえでコメの値段が下がれば、物価は安定するはずです。実質賃金上昇のためにも、物価安定を実現したいものです。


日米関税交渉いよいよ本格化へ

2025年05月23日 14時04分14秒 | 経済

昨日、赤澤大臣はワシントンに出発、いよいよ、日米間の関税交渉が本価格という様相です。

ただ、アメリカのベッセント財務長官が欠席ということで、理由は解かりませんが、アメリカが対日交渉ではかなり慎重になっているのかとも思わせます。

これまでのいろいろな日米の関係要人の話し合いの中で、為替レートの問題は出なかったとか、米国国債(日本は1兆ドル以上保有し世界一)の話も出なかったといった報告もあるようですが、本番になれば、アメリカが何を言ってくるかは予断を許しません。

アメリカがTPPのような多国間交渉を嫌い、二国間に持ち込むのは、そのほうが絶対有利という意識があるからでしょう。

先日のウォールマートの問題から見えてくるのは、アメリカ政府が関税をかけてその結果ウォールマートが商品の値上をするのは当然なのに、関税がかかったからその分値上げになるのは[けしからん」といって値下げを要求しているといったトランプさん言動がニュースになりました。

おそらく「関税分はお前がかぶれ」というのではなく仕入れを安く買い叩けという趣旨でしょう。

以前からトランプさんは関税をかければ海外からアメリカにカネが入ってくるといっていますが、それはアメリカが関税をかけた分は、輸出国が値引きしてかぶれという事だったのでしょうか。

そんな考えですと、交渉は容易ではありません。大体、関税をかけるからその分安く売れなどという要求自体筋が通らないのですから、多国間交渉の場では、そんなことは言えません。日米交渉ではどういうのでしょう。

現実問題として、アメリカの賃金は高すぎて、その賃金で車を作っても売れないというのが現実で、テスラでも当初の電池はほとんどパナソニック製だったり、現在は中国でほとんどの部品を作っているのでしょう。

イーロン・マスクさんは、中国とは関税はお互いチャラでと言っていたようですが、それがアメリカ製造業の実態でしょう。

日本の場合も、米中間ほどではないにしても、旅客機なども含めて日本製部品を使うから価格競争力のある飛行機ができるのではないでしょうか。

利害は絡み合っているのですから、アメリカの圧力にも限度はありましょう。しかし「相手が日本なら」という「甘え」もあるでしょうし、今は偶々の金利差で、円安に過ぎている面もあり、日本としては譲歩の余地のあることも確かでしょう。

今、アメリカはドル高のほうが有利という意識はあるでしょう。日本にとってアメリカは大事な国という意識からすれば、ある程度の譲歩が必要という面もあるでしょう。

しかし客観情勢は、これから次第に円高という流れでしょうし、その方が日本経済としても望ましいという意見が主流でしょう。

いずれにしても、譲歩を迫られる面が多いかと思われますが、大事なことは、譲歩は貸しを作る事という意識、アメリカにとっては借りですよという意識を出来るだけ確認しておくことではないでしょうか。

プラザ合意の時のように、大幅円高という犠牲を受け入れ、欧米に大きな貸しをつくりながら、日本自体がその意識がないために、アメリカもヨーロッパも、日本はだめになったというだけで、プラザ合意で自分たちは助かったなどと言うのを聞いたことがありません

今問題になっている「就職氷河期」の後遺症も、根本原因は2倍の円高を黙って受け入れたプラザ合意に端を発しているのです。

交渉下手の日本ですが、そろそろ卒業する時期ではないでしょうか。


2025年1~3月期GDP速報を見る

2025年05月17日 16時38分27秒 | 経済

昨日、内閣府より今年1~3月期のGDP速報が発表になりました。

マスコミの報道のように1~3月期は対前期比-0.2%のマイナス成長で、年率換算マイナス0.7%という情けない姿になってしまっています。

昨年以来、政府が狙っているのは、春闘の賃上げを加速してサラリーマン家計の所得を増やし、それを消費拡大につなげ、消費不況からの脱出です。

企業収益の改善の割に、賃金が上がらず消費需要が増えず、内需が拡大しない日本経済の中で、企業は輸出で稼いできましたが、経団連も漸く内需拡大の重要性に気づき、トランプ関税も出て春闘賃上げに注力してきました。

賃上げ要求に臆病だった連合も漸く、5%以上を掲げ、傘下の単産も待ってましたと頑張り始め、昨年今年と春闘の賃上げ率は上がり始めました。しかし実質賃金がなかなか上がらないのです。

統計数字でいえば、春闘賃上げは5%でも、毎月勤労統計の賃金指数の上昇幅はようやく2~3%で、これは中堅以降の社員の賃金が、働き方改革、ジョブ型賃金化や定年再雇用などの影響もあるのでしょう。

現実問題として毎月勤労統計の平均賃金指数を年に3%以上に上げることは、今の日本の経済、企業にとっては、今年も難しいようです。

一方物価の上昇率のほうは、とうに政府目標の2%を超えて3~4%に向かっています。勤労者世帯の実質収入を1%引き上げるには消費者物価の上昇を2%以下に抑えなければなりません。

「手取りを増やす」という言葉に人気があるようですが、本気でやるには政府支出をその分減らさなければなりません。補正予算などは夢のまた夢になります。

これは実体経済を分析すればすぐにわかることで、結局は実質GDPを増やす以外にないことは自明です。

GDPの主な項目は下の表にあります。この中の最大項目の「実質家計最終消費支出」の伸びはゼロです。ご覧のように1~3月では実質GDPは-0.2%、年率換算-0.7%、「家計消費支出」は0.0%です。

この表の黒い字をあまり上げずに、赤い字を出来るだけ上げる事です。

ところが「名目家計最終消費支出」1.6%です。これは年率6.6%の大幅増加ですが、物価も同じペースで上がっているので「実質」の上昇率はゼロです。

前期比でなく前年比でみますと、1~3月の家計支出は、昨年比4.4%増で、その前の2四半期も3%台に乗っています(表なし)。家計は頑張って支出を伸ばしているのです。これですと消費者物価の上昇が2%であれば、家計実質消費は1%ポイント以上の実質増になります。

それなら、消費税を減税すればプラスになるということで今度の参院選の焦点は「消費減税」です。

ここで不思議なのは、なぜ消費減税で、物価抑制ではないのかです。

米価は1年の上昇率が100%を超えています。通常の経済現象ではあり得ないことです。政府が認めて生産者、流通業者とカルテルを結び、米価を2倍に上げ、それを着実に維持、出来れば今年度もと計画的やっているのでしょう。

農水省が、日本の農業の生産性を計画的に引き上げることで年1%程度の消費者物価上昇の抑制は可能でしょう。

それが国策となれば、実質賃金上昇も、消費不況からの脱出も、円高への備えも、トランプ関税への対応もすべてに役立つのです。


政府、年1%の実質賃金上昇実現を

2025年05月15日 15時55分21秒 | 経済

政府は2029年までの5年間で、毎年実質賃金を1%ずつ引き上げる方針を昨日の「新しい資本主義実現会議」で示したようですが、まだ中身ははっきりしません。

しかし、今までの来年度の系譜経済見通しだけではなく、1%と目標は低くとも具体的な数字で中期計画のようなものが出てきたことは大変結構なことと思います。

実質賃金の数字といえば、基準は毎月勤労統計の実質賃金指数で、昨年の5月まで25か月対前年同月比マイナスという不名誉な記録を作り、その後についても調べてみればボーナス関連月は何とかプラスでしたが年間平均ではやっぱりマイナス、さらに今年に入っても3か月もマイナス続きという惨状です。

春闘のほうは満額回答が並んでマスコミを賑わす所ですが、なかなかプラスになってくれません。

というのは、昨年夏まで日本の基本的な物価動向は、いよいよ安定期に入るかと思われたのですが、その後、電気・ガス料金の補助金政策がごたごたした結果の乱高下、おコメの値段がじり高から急騰の連続状態になり、今年にはいって米価は1年前の2倍を超えるようなことになりました。

コメは、おにぎり・すし、どんぶり物お弁当の値段にダイレクトに影響しますし、お酒や酢をはじめ、飲料、調味料にも影響します。

さらにコメの値段が2倍になっても、政府は本気で対策を打たないことが知れますと、全般的な値上げムードにつながりかねません。

それやこれやで物価は上昇基調に転じましたが、政府は補助金・給付金で当面糊塗するだけで、根本政策がありません。

ただし、消費者物価指数のうち、実質賃金の計算に使う「持ち家の帰属家賃を除く総合」からより上昇率の低い「持ち家の帰属家賃を含む総合」に変えて、その分実質賃金が上がるように変更して、実質賃金が0.5%程度上がるようにしました。

基本政策を考えれば、今、日本経済が不振なのは国民所得の配分に歪みが大きくなっているからで、その歪みとは

・雇用者報酬と営業余剰で、営業余剰が増えすぎている。

・個人所得で格差社会化が進んでいる。

・農業の生産性が低く、しかも上がらない。

・国の経営の間接部門である「政治」に金がかかりすぎている。

・人材育成・技術開発に資源が回らない。

といったところでしょう。

経済成長の原点は生産性の向上です。そして生産性を上げられるのは人間だけです。

人的資源の質の向上と、生産性の向上とは、基本的に比例関係にあるようです。


3月「家計調査」に見るインフレ傾向に注意

2025年05月12日 14時44分35秒 | 経済

2025年3月の家計調査の結果がさる9日に発表されました。

同じ日に3月の毎月勤労統計が発表になり3月の実質賃金指数が、前年同期比マイナス1.5%で、これが今年に入ってから3か月連続というニュースのほうが大きく、家計調査のほうは余りニュースにならなかったようです。

そんな訳で、ここでは、賃上げは進んでいるのに、家計の実質消費支出がマイナスを続けるという困った状態の原因も探ってみることにします。

まず二人以上の世帯の実質消費支出の対前年同月の増減を見ますと、年末の12月に2.7%と大幅に増えた後1月0.8%、2月は-0.5%とマイナスでしたが、3月は2.1%とプラスです。

3月の名目消費支出の対前年の伸びは6.4%でしたから家計はかなり頑張ってお金を使ったということです。

毎月勤労統計の現金給与総額は2.1%の伸びですから、賃金はあまり増えないが、物価が上がったのでということもありそうです。

一方家計調査の二人以上勤労者世帯の月収を見ますと3月の世帯の名目実収入は2.1%、世帯主収入3.7%です。配偶者の所得などが減っています。

一方、消費支出は8.2%と大幅な伸び(年度末?)で実質消費支出は3.8%の伸びになっています。

そのせいで二人以上勤労者世帯の平均消費性向は(非消費支出が多かったこともあって可処分所得は1.6%増)昨年の84.3%かあら89.9%に跳ね上がっています。

平均消費性向の上昇は、家計の消費支出積極化への意欲の増加とみれば、経済成長力の原動力で、望ましい事ですが、上記の3月の消費動向については何か不自然なものを感じさせるように思われます。

毎月勤労統計からみれば、昨春闘の賃あげ効果は大きいものではなかったようで、物価上昇に負けています。(しかも消費者物価の定義が変えられ、今年から上昇率の低い「持ち家の帰属家賃を含む消費者物価指数」になっています。

消費者物価指数は毎月取り上げていますが、このところ上昇基調です。原油価格下落やトランプ関税で国際物価が下がり、円レートは150円台から140円台に円高になる中で、下がるはずの消費者物価が上がっています。

マスコミでは12000品目が上昇などといわれる中で、特にコメの価格は1年で二倍、すでに今年度産米の買い入れ価格の30%増が既定のようです。

ゼロ成長の中で物価が上がるスタグフレーション、それも政府主導で国民の主食の価格が引き上げられるといった状況がリード役のようです。

見えて来るのは、選挙目当ての矛盾した政策が場当たり的にやられているのでは日本経済も国民救われないということではないでしょうか。


株式売買益と株主配当の課税:同じ20%はなぜ?

2025年05月10日 15時10分48秒 | 経済

政府が国を運営(経営)するために必要なコストを国民から徴収するのが税金で、課税の対象になるのは、基本的には、その年(実際には前年)に生産された付加価値であるということを書いてきました。

つまり、その国が1年間に生産した付加価値P(国内総生産)から減価償却を差し引いた国民所得(NI=国内純生産)に課税するという形で、税金は徴収されるのです。

「所得あれば課税あり」というのが原則ですから、ことのついでに考えてみれば、所得があるのに課税しない扶養控除制度は原則と矛盾するので、本当は103万円を引き上げるのはなく、基礎控除を共通に決め、それを超える所得については自動的に課税されるというのが、よりまともな課税でしょうと指摘しました。

ところで、今回は、最近、税率の引き上げが問題になっている金融課税について考えてみたいと思います。

金融課税というのは、株式や投資信託などの金融商品を売買したり、銀行預金の利息などとして発生する所得についての課税問題です。

所得の種類は、株主配当と株式等証券の売買益です。現状は配当にも売買益にも同じ20%の課税となっています。内訳も決まっていて所得税が15%、住民税5%(時限立法の復興特別税は無視)でこれを30%に引き上げる意見があります。 

ところが一括して決められているこの2つの所得は全く違った性格のものなのです。

配当は企業が付加価値を作りその分配としての利益の中から株主に支払うもので、銀行預金利子と同様の性格のもの、つまり企業が生産活動をして生み出した付加価値の分配です。

これに対して株式や投資信託を売買して値上がり分を稼いだ場合は「付加価値」を生んでいないのです。取引の性格で言えばギャンブルで勝ったのと同じです。これは、本当は所得でなく利得です。

英語でも区別はあって,所得はincome、利得はgainで、売買益(資本利得)はキャピタル・ゲインです。

問題の第一は、付加価値という経済活動の成果からの所得と、「デイトレ」で得た儲けに同じ税制を適用することの非合理性です。

第二は、会社の将来を見込んで株式を10年保有し、100万円が200万円になり売って得た100万円とコンピュータの秒速取引で100万円儲けた場合の税金がなぜ同じかです。

今は多くの国で似た制度のようですが、金融市場は銀行から証券まで、本来の存在意義は産業の発展に役立つ、つまり付加価値生産(経済成長)の促進でしょう。ならば長期安定投資は高い利回り、短期不安定資金は低い利回りが当然で、現実がそうなっていなければ税制で誘導が必要でしょう。

そうした合理性を日本の金融税制で率先採用し、国際スタンダードを作ったらどうでしょうか。金融経済活動の正常化にも役立つでしょう。


付加価値と税金の話:稼いだら税金を払う

2025年05月09日 16時59分22秒 | 経済

人間はsocial animalで集団生活をしますから、そこには「ルールと管理」が必要になります。それは酋長や王様、今は政府ということになります。

ルールを決め、それに従って管理をするのが「政府」の役割です。

その役割を果たすためにはコストがかかります。そのコストを領民(国民)から集めるのが税金です。政治というのは、「社会資本」のようなもので、誰でも必要に応じて使えるのが一番いいということで、基幹的な公共財、公共サービスは、利用は平等、負担は応能ということになっています。

この「応能」というのは「支払能力」に応じてということでしょう。では支払能力」とはなにかといいますと、それはその人の「稼ぎ」という事です。稼ぎとはその人の生み出した「付加価値」ということになります。

「私の生みだした付加価値がわかるのですか?」といいますと、それは「賃金」 なのです。企業(法人)の場合は利益です。

定義によれば「付加価値」の合計はGDPで、GDPは「人件費+利益」となっていますから、理論的にはそれでいいのでしょう。

これは基本的には徳川時代の年貢と同じで、その年のコメの収量がGDP,それを「5公5民」とかで分けるのです。「公」が税金です。

つまり昔から税金というのは「稼いだら払う」ものなのです。稼がない人は税金を取られなくて、稼いだ人から取るというのは変だと思うかもしれませんが収入のない人は支払能力がないから払えません。当然そうなります。

こうして税金は、その年の稼ぎ(GDP=付加価値)の中から、それを稼いだ人や法人から取るのです。税率は累進性なども含め政府が決めます。

社会保障などの政府負担が多くなって欧州をはじめとして付加価値税が導入され今は日本でも10%です。

これは「売上高=原材料費+付加価値という定義に従って」サプライチェーンの段階ごとに付加価値の10%を付加価値税(日本では消費税)として払っていくという制度で、その合計額はGDPの10%になり最終消費者の支払う価格が10%高くなるという形ですべての段階で付加価値に10%課税するものです。

所得税も付加価値税も、ともに付加価値に課税するという点では同じで、税金は付加価値から取るという原則です。

この別枠として、昔の地租、今の固定資産税などには前回触れました。

以上のように、税金はその年度の日本中の個人・法人が、その年に稼ぎ出した付加価値から取るというのが原則です。 

しかし、日本には付加価値を稼いでも、税金を払わない人は大勢います。それは、今問題になっている103万円の壁の考え方です。

これは、専業主婦が一般的で、家族は世帯主に養われていて付加価値を生みだしていないという昔の常識に縛られたものです。

今では扶養家族といっても仕事を持ち付加価値を稼いでいる人は沢山います。

税金の原則から言えば、稼いだら税金を払うのが原則ですから、扶養控除を103万円から賃金や物価の変動に従って、どこまでも引き上げていくといった考え方は、今の社会に最も不似合なものです。

基礎控除の引き上げはいいでしょう。しかし福祉国家を標榜する国でもそれは少額で、所得を得ればそれに対してきちんと課税するのが本来です。

それによって男女の賃金格差をはじめ、低水準に低迷する日本の賃金水準も、企業の認識も変わり、雇用・賃金システムの正常化も進むのではないでしょうか。

最後に一言付け加えれば、古い社会の延長ではなく、新しい社会を構想することが政党の役割ではないかと思っています。


「マネー経済」と「実体経済」の違いは

2025年05月08日 17時14分30秒 | 経済

昨日「マネー経済」と「実体経済」をどんぶり勘定にしてしまうのは、あまり合理的ではないのでは?という趣旨のことを書きました。

今朝10時過ぎにアクセス解析を見ましたら、ヒストグラムが600に届きそうになっていたのでびっくりしました。

理由が何かは解かりませんが、私が以前から気にしているこの問題に、賛否はともあれアクセスしていただいたことに御礼を申し上げます。

この問題についての関心は、いろいろな面からのアプローチがありますが、最も大きな立場からはGDPやGNPであらわさる国全体の経済活動規模の問題でしょう。

企業経営の面では、企業の活動の成果を表す専門用語「付加価値」にかかわる問題として取り上げられます。

もちろんGDPやGNPは国レベルの付加価値ですから、経済そのものが付加価値の問題だということでもあるでしょう。

もう一つよく使われるもが税金の世界です。そこでは「付加価値税」という言葉が有名ですが、これは日本では「消費税」という名前になっています。

実は、法人税も所得税も、税金は付加価値から取るものという意識で、付加価値は「利益+人件費」ですから、利益と人件費に分けて取っているのです。

実は付加価値の要素はもう1つあります。それは不労所得(財産所得)です。それは持っているだけで価値を生む「地代・家賃・配当」です。本来は地租支払のもとである所有土地です。

つまり、付加価値というのは、昔の生産の三要素「土地・労働・資本」の要素費用として定義されるのです。この三要素を活用することで生まれた価値が新たに増えた価値である「付加価値」です。

このブログの副題には「付加価値をどう作りどう使うか」と書いてあります。国民はその国の生み出した付加価値で生活しているのです。

以上の経済の説明は「実体経済」の説明です。しかし、いま世界で盛況なのは、実体経済より何百倍(本当のことはわかりません)も大きな「想定元本」を活用して行われている「マネー経済」です。

必要な「生産要素」は、人間と1台のパソコンです。後は現代社会が無償で提供してくれる社会資本と有償・無償のアプリです。アプリは自分で考えれば無料です。そして、利用する貨幣は、実体経済のものと同じです。

マネー経済で稼いだ所得というのは、一般的に使われる社会の約束のもとに、価格差や、価格の変動による売買差額を利用しての貨幣価値の移転ですから付加価値は生みません「既存の富の移転」です。

いわば、社会保障などの形で国・政府がやっている所得再分配を、社会で認められたルールに従って個人が所得に加えて資産についても再分配を行えるシステムなのです。

基本的は、ギャンブルによる所得移転と同じですが、その手段としてサイコロやカードではなく日々の経済活動を利用することによって、価格機構の動きの活用ですから、何らかの形で経済発展、付加価値の生産にも役立つという趣旨のものだからでしょう。

しかし、例えば税制の場合、実体経済とマネー経済についての課税方式が現状でいいのか問いかけることも必要なのではないかと思っています。


マネー経済と実体経済を分けて考えたら

2025年05月06日 21時08分11秒 | 経済

1月に「新自由主義経済を高みの見物」と書きました。トランプさんのアメリカ経済復活の政策が始まるので、その中身をゆっくり見物しようというつもりでした。

100日を過ぎてみて、これはとても高みの見物とはいきそうもないなという感じになってきました。

世界中が大混乱になって、その混乱の余波で日本経済も低成長になり年金底上げも困難だと日本の一隅に住む老人にまで影響が及びそうです。「老人はあまり食わねど高楊枝」と行きましょうか。

アメリカの新自由経済とはこんなものかと驚くのは、物事の金額の大きさです。イーロン・マスク氏がトランプ選挙資金に出したのが2億4000万ドル、トランプ氏当選でテスラの時価総額が70%上がって1兆4000億ドルだったそうで十分元は取れたのでしょう。

ところが、マスクさんは政治家ではないのに政府効率化局のトップに就任、大量解雇などで評判を落としテスラの株は急落、8000億ドルが失われたといいます。 

1ドルは140円ですから140倍すれば円貨になりますがいずれにしても

テスラが電気自動車を作って稼ぎ出した金ではないようです。

以前にも書きましたが、年間1000万台の車をつくトヨタの株式の時価総額が3300億ドル程度で、年間180万台の生産量のテスラの株式の時価総額が1兆ドルを上下するというのはなぜでしょう。

多分日本の時価総額はその企業の稼ぎだす付加価値(人件費+利益)をベースにしたものでしょう。

それに引き換え、アメリカの場合は、その会社の将来などを見通したマーケットの人気といったものではないでしょうか。

株価というのは証券市場での顧客の評価価値です。この場合評価というのは人気という要素を多分に含むことになるのでしょう。

株式保有や取引の場合を考えて見ましょう。株式の価値は、本来は配当率で決まるというのが伝統的な考え方でしょう。

しかし、配当利回りが低くても、将来その株が上がると考えれば「買って損はない」ことになります。土地バブルの時の土地がそうでした。

ところで、株主への配当はその株が稼ぎ出した付加価値の分配です。一方、株式の売買益は、値上がり益、資本利得、キャピタルゲインです。これは損した人から得した人への所得の移転で、付加価値の分配ではありません。

配当は付加価値の分配ですから実体経済の裏付けがあります。キャピタルゲインは価格の変動による既存価値の移転です。これは「信用」の移転とも言われます。

日本には、昔から「額に汗した金」、付加価値を作りそれを分配するお金と「あぶく銭」、持ち主が変わるだけのお金、というお金の由来についての認識の違いがあります。今はその違いを区別しなくなって来ています。

さて、問題はどちらの方が、経済をうまく動かし人間の生活向上のために有用なものか、区別する必要は、もう本当にくなったのでしょうか。

アメリカが本当に豊かなのでしょうか。このあたりが、今後、人類がよく考えていかなければならない問題になって来るような気がしています。