司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

監査法人の合併と会計監査人の地位の承継

2014-02-25 21:19:56 | 会社法(改正商法等)
 江頭憲治郎「株式会社法(第4版)」(有斐閣)には,会計監査人の解説がない!・・・と思ったら,「第5章 計算」⇒「第2節 決算の手続」⇒「2 計算書類等の作成・監査・取締役会の承認」→「(4)会計監査人(559頁以下)」に隠れていた。巻頭の目次にないので,びっくり。

 閑話休題,会計監査人である監査法人が合併により消滅する場合には,合併後の存続監査法人が会計監査人の地位を承継すると解されている(松井信憲「商業登記ハンドブック(第2版)」(商事法務)469頁)。

 監査契約も委任契約であるから,民法の委任の規定に従う。受任者の合併による消滅は,委任の終了事由ではないから,契約にそのような定めがない限り,契約上の地位は,存続監査法人に承継されると解されるのであろう。

 また,監査法人に関する準拠法である公認会計士法の合併に関する規定は,つぎのとおりである。

公認会計士法
 (合併)
第34条の19 監査法人は,総社員の同意があるときは,他の監査法人と合併することができる。
2・3 【略】
4 合併後存続する監査法人又は合併により設立する監査法人は,当該合併により消滅した監査法人の権利義務(当該監査法人が行うその業務に関し,行政庁の処分に基づいて有する権利義務を含む。)を承継する。

 したがって,合併により消滅監査法人の監査契約上の地位が存続監査法人に承継されるので,会計監査人の地位も承継されることになる・・・果たして,それでよいのか?

 会計監査人は,株主総会の決議によって選任される(会社法第329条第1項)。また,監査役設置会社においては,取締役が会計監査人の選任に関する議案を株主総会に提出するには,監査役の過半数の同意を得なければならない(会社法第344条第1項第1号)。

 であるにもかかわらず,会計監査人である監査法人が合併により消滅する場合に,合併後の存続監査法人が会計監査人の地位を当然に承継すると解してよいのか?

 例えば,ある株式会社が会計監査人を選任する際に,監査法人Aではなく監査法人Bを選択していた場合に,たまたま監査法人Bが消滅監査法人となり,監査法人Aが存続監査法人となる合併が行われたことにより,当該株式会社の意思と関係のないところで,会計監査人が監査法人Aに変更されてしまう,という事態は,好ましくないであろう。

 もちろん,株式会社としては,合併が効力を生ずる前に,会計監査人である監査法人Bを解任することはできるわけであるが,株主総会の決議を要する(会社法第339条第1項)のであり,甚だ迷惑な話である。実務的には,辞任のお願いをすることになろうか。

 妥当であるのは,監査契約において,監査法人が合併により消滅する場合を委任の終了事由として定めておくことであるが,聞くところでは,そのような条項を置いている例は,稀であるようである。

 会計監査人については,会社法上権利義務承継の規定がなく,会計監査人が欠けた場合において,遅滞なく会計監査人の選任がされないときは,監査役が一時会計監査人の職務を行うべき者を選任することになる(会社法第346条第4項)。

 本来は,会計監査人である監査法人が合併により消滅する場合には,合併後の存続監査法人が会計監査人の地位を当然に承継するという規律ではなく,会社の意思によって,存続監査法人なり,他の監査法人なり然るべき者を,会計監査人又は一時会計監査人の職務を行うべき者として選任するという規律を採用するのが妥当であるように思われる。
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共同相続された株式は,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはない

2014-02-25 20:12:42 | 会社法(改正商法等)
最高裁平成26年2月25日第3小法廷判決
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=83978&hanreiKbn=02

【裁判要旨】
1 共同相続された委託者指図型投資信託の受益権は,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはない
2 共同相続された個人向け国債は,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはない

 原審の福岡高裁は,株式についても,「相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割され,共同相続人の準共有となることがない」と判示しており,びっくりですね。

 よく考えると,これまでの常識を覆す大胆な判決であり,理由付けを読んでみたい気はしますね。

 これを受けて,最高裁は,

「株式は,株主たる資格において会社に対して有する法律上の地位を意味し,株主は,株主たる地位に基づいて,剰余金の配当を受ける権利(会社法105条1項1号),残余財産の分配を受ける権利(同項2号)などのいわゆる自益権と,株主総会における議決権(同項3号)などのいわゆる共益権とを有するのであって(最高裁昭和42年(オ)第1466号同45年7月15日大法廷判決・民集24巻7号804頁参照),このような株式に含まれる権利の内容及び性質に照らせば,共同相続された株式は,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはないものというべきである(最高裁昭和42年(オ)第867号同45年1月22日第一小法廷判決・民集24巻1号1頁等参照)」

と初判断(?)。

 上掲の最高裁昭和45年1月22日判決は,「株式を相続により準共有するに至つた共同相続人は・・・」とさらりと論じてあるだけなので,初なのでしょう。
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弁護士会役員の必要経費訴訟~その後

2014-02-25 00:24:19 | いろいろ
税務研究会記事
http://www.zeiken.co.jp/cst/newsDetail.php?tgtType=1&tgtYear=2014&newsid=2866

 国税庁は,「本件はあくまでも事例判断であるため,一般的な必要経費の取扱いが変更されるものではない」という見解らしい(上掲記事)。

 え~,そうなの?

cf. 平成26年1月20日付け「弁護士会役員の必要経費訴訟~最高裁が上告不受理決定~」
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