Altered Notes

Something New.

日米首脳会談と台湾・尖閣問題

2021-04-22 16:16:00 | 国際
2021年4月16日に日米首脳会談が行われた。これについて経済学者で大学教授・内閣官房参与の高橋洋一氏が解説しているのでその内容を紹介する。なお、一部で筆者の意見も記す。

今回の首脳会談について、各新聞社は評価の仕方で二分されているようである。産経新聞と読売新聞はそこそこ評価をしているが、朝日新聞・毎日新聞・東京新聞は全く評価をしていない。予想通りだが。日本経済新聞はその中間である。

この差は何かと言ったら「中国との距離感」だけ、である。
中国に近い新聞社は「評価しない」のだし、それほど近くない新聞社は「評価している」のだ。

現に日米首脳会談の後に中国は猛烈に反発している。中国が反発しているということは「良い会談」だった、ということである。そんなものなのだ。逆に中国から褒められたりしたら「まずい」ということになる。

「台湾の話が書いてある」ということだけを言う向きがあるが、首脳会談の共同声明は原文がある。外務省のホームページに英文と日本語訳の両方が掲載されている。それを読めば判るのだ。その内容は「台湾の話」だけではなくて、今までの日米首脳会談から見ると、かなり包括的に書いてある。その内容を見ると、実はウイグルの話も書いてあるし、南シナ海の話も、香港の話も、台湾の話も書いてあって尖閣の話も書いてあるのだ。

上で挙げた5つのテーマは「中国の核心的利益」でもある。中国はかなり前から「これを目標にしている」と宣言していたものである。それらについて全部「駄目だ」と記されているのだ。これは中国の習近平主席からすると、自分達が今までやってきた話を「駄目だ」と書かれているのである。今回の日米首脳会談を仮に評価する人がいたら、中国との話を「良し」とする人は評価するだろうし、一方でこれを全然評価できない人は「=中国に近い人」ということになる。非常に判りやすいのである。

中国にしてみれば「核心的利益」を放置する事自体が問題であり、中国の言い分は
「核心的利益は俺たちの内政だから文句言うな」
である。
しかし、これが中国の国内だけの話なら文句は言わないが、外にまで出張った話になっているから「そりゃ駄目だろ」となるのだ。これは「内政どころじゃないレベルの話」になっているからである。


さて、日米首脳会談に於いて「共同声明」がリリースされたが、これにはどのような意味と価値があるのだろうか。

まず、「文書にした」事自体に意味がある。首脳会談と言っているが、実は首脳同士で話をしている訳ではない。国の総力を上げて下から全部積み上げたものとして文書になっているのだ。口頭で言いました、というレベルとは全く違う。外部に公開されるし、あらゆるレベルに於いて「一致したところ」だけしか文書にはならないのである。そういう意味では非常にきちんとしたものなのだ。会談の片方が記者会見で都合の良いことを言った、というケースとは全く異なるものだ。

共同声明が出されると、それをベースにしてこれからいろいろな事が行われていくことになる。具体的に言うならば、例えば気候変動の話が共同声明という文書の他に付属書というものがあり、その中にかなり詳細な話も書いてあるのだ。それに則ってこれから日米の共同作業が始まるのである。


もちろん共同声明の内容は両方の国において遵守される。もしも守らなかった場合は「あの国は嘘つきだ」とレッテルを貼られる事になる。「国家と国家の約束」というレベルで対外的にリリースしているという意味では、遵守しないと後で他の国から相手にされなくなる可能性が高い事になる。


中国はこの共同声明が日米の本気の姿勢と捉えたことで、それが中国の国益に反するものであるが故に真剣に怒りを表明したのだが、要するに「中国の国益」とは「尖閣と台湾を取る」ということである。これは大変なことだ。

中国から見た場合、「ウイグルはほとんど済んでいる」という扱いになっている。つまり民族弾圧をして民族浄化(先住民族を絶やして中華民族がそれに代わる)をしたのであり、それはほぼ完了に近い、ということである。南シナ海の件も数年前に人工島作って基地作って「全部中国のものだ」として終わっている扱いになる。香港はついこのあいだ、国家安全維持法を制定したことで「香港の中国化」が終わったのだ。そうして中国は着々と核心的利益を進めてきたのである。なので、次に「尖閣と台湾に来るのは時間の問題」である。中国から見れば順番に進めてきて、ここだけやらない理由は無いからである。

そして、実は「台湾と尖閣はセットになっている」のである。だから、中国は「台湾の事に口を出すな」と言うのだが、日本だって「尖閣のことで口をだすなよ」と言いたいのである。

そして、この問題になると左翼系の人は「中国とよく話し合うべき」とすぐ言う(*1)のだが、敢えて例えるなら、すぐ隣の人がナイフ持って身構えている状態なのである。だから「話し合え」と言われたところで、向こうはナイフ持って凶悪な眼差しでこちらを睨んでいるのに加えて、核心的利益と言ってる以上、中国は国家戦略として最優先する、と宣言しているのである。これはナイフを持って構えているのと同じである。ナイフを構えている時に「話し合え」って…そりゃ無理な話でしょ・・・という状況になってしまったのである。

この状況で隣にナイフ持って構えている人が居る時に、こちらはどのような行動に出たら良いのだろうか。

その答えは「近くで一番強い奴と組むこと」である。そしてそれがアメリカである。

好き嫌いの問題ではないのだ。一番強い奴と組むことでやられにくくなるからである。それだけのことだ。それを今回実践した…それが共同声明なのである。


共同声明の最初には尖閣を巡る日本の防衛力を上げることについて書かれている。「日本は防衛力を高めます」と書かれている。当然ながら防衛力を高めて、もし万が一攻撃された時に戦闘行為があって日本の自衛隊に残念ながら死者が出る状況になるかもしれない。そうなって大変な状況になってきたらアメリカは助けてくれるかもしれない。だが、アメリカがいの一番に動くことは”絶対にない”。アメリカ軍が先に動くことは有り得ないのだ。まず最初に海上保安庁・自衛隊が動いて、大きな犠牲が出てからじゃないと動かないと予想されるのだ。これが現実である。

防衛予算は今現在でも積んでいるのだが、声明で「防衛力を高める」と言っているので、当然のことながら「GDP1%」などというケチな数字ではないはずである。GDPの1%という制限枠は実は現実離れしていて、そんなレベルで防衛予算組んでいる先進国はほとんど無いのである。

GDP1%という制限枠は、かなり昔に「キリのいい数字」としてウヤムヤの内に決まってしまったものであり、特に意味はない数字である。予算上の慣習・慣行でしかないものである。

現状で防衛予算は1%を少し超えているがほとんど1%なので海外から見ると凄くおかしなものに見えるのだ。前述の通り、予算上の慣習に過ぎないので1%を超過しても全く問題はないのである。とやかく言われる筋合いは全く無い。後は財政状況を見ながら今までやってきた、と。それだけのものである。

今回の日米首脳会談は結構画期的だったと思われるものだ。
少し前(3月)に日米の2+2(外相+防衛大臣)の会合があって、実はそれと文言は一緒なのである。


今回の首脳会談で安倍/トランプ時代と何が変わったのだろうか。

変わったのはまずは顔ぶれ(バイデン氏と菅氏)である。トランプ氏は大統領はよく喋るのだが、意外に彼の配下の人間はあまり動かなかったのである。バイデン氏の場合は大統領は喋らないのだが、配下の国務省・国防総省はそこが凄く動くやり方になっている。認知症疑惑があり体力的にも不安があるジョー・バイデン氏であり、実質的な舵取りは既にカマラ・ハリス副大統領や周辺の民主党勢力が行っているので確かにそうなのだろう。(*2)

その意味ではトランプ氏は色々言うのだが、実際上、官僚機構は動かない事が多かったので「発言だけ」になるケースが多々あった。今回はどちらかと言えばバイデン氏が言ってるのではなくて、アメリカンの国務省なり国防総省が実は総出になってやっているのが違うところである。実務的にはこちらの方がはるかにパワフルであり、だから中国も焦るところがあるのかもしれない。ただ、トップが口頭で言っているのとは違うのである。首脳会談をやれば共同声明というきちんとした文書が出てくるのだが、トランプ時代は色々言う割には下の方の文書は作られなかった、ということである。

中国としてはどうだろうか。
今回の日米首脳会談ではトップ同士が口頭で言ってるだけでなく実務的であることが今回判った筈である。ただ、これを受けて中国が穏健になることは絶対にない。習近平主席はここでおとなしくなったら逆に国内で危なくなるであろうことが明らかだからである。中国はそもそも中華思想の実現という彼らの理想がある以上、日米が何を言おうと台湾と尖閣は取ろうと思っているのだ。それははっきりしていることである。

特に左翼系に多いのだが、「中国が尖閣を取る筈はないだろう」と言う人がいる。(*3) 向こうはガチで「取る」と言ってるのである。他の誰でもない、中国自身が「取る」と宣言しているのだから、日本としては防衛力を高めるしかないのである。放置していたら間違いなく取られてしまう。国際社会とはそういうものなのである。「取ろう」と言った時に抑える人、つまり警察官がいないのである。そして、いくら説得したって向こうは本気で「取ろう」と思っているのだから取るのである。

その状況がより切実になってきたので、アメリカとの間でこれに対応するようにしているのだ。そして、次に出てくるのは台湾も入れると予想される。なので、「日米台で守る」という風に次はなるのではないか、と思われるのである。



バイデン政権も今回は対中国でこのようなスタンスを見せてはいるが、しかしそうした表の顔とは別にバイデン政権は2トラックポリシーで動いている事を忘れてはならない。2トラックポリシーとは、相反する2つのポリシーを同時に走らせている意味である。表の顔で中国に厳しい姿勢を見せているかのように見えても、裏では中国に配慮・忖度した政策をこそこそ進める・・・それがバイデン政権であり、裏側では中国の孔子学院への規制を撤廃する動きを見せているのに加えて、今後予想される動きとしてトランプ政権が導入した中国への高関税の撤廃がある。これは恐らく気候変動対策に於けるCO2排出で中国に協力してもらう事とのトレードオフになるもとの予想される。なにしろバイデン政権にとって国家安全保障の1番目の問題は「中国」ではなく「気候変動」だからである。(蔑笑)

くれぐれも表面的な動きに騙されないことである。バイデン政権の中国への配慮・忖度が行われているのは確かであり、この政権のアメリカには注意が必須だ。何しろバイデン・ファミリーは中国にどっぷり浸かっている一家であり、ジョー・バイデン氏は習近平主席と親しい間柄であり、日本流に言えば昵懇の仲である。息子のハンター・バイデン氏の投資会社には中国から15億円の資金が提供されている。その他にもコンサルタント料として数百万ドルが次々と流れ込んでいるのだ。完全にずぶずぶである。極左であるカマラ・ハリス副大統領の夫はアメリカ国内で中国企業へのコンサルタントをしている会社の人間である。日本も台湾・尖閣問題で選択の余地なくアメリカと組む必要があるとは言え、バイデン政権への警戒を怠ってはならないだろう。







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(*1)
左派系の人が言うように数十年に渡って日本は中国にやさしく穏便に配慮に配慮を重ねてきた。その結果が今なのである。左派系の人にはそれが全然見えていないのだ。

(*2)
大統領職務のほとんどをカマラ・ハリス氏が采配を振るっているのが実態であり、ジョー・バイデン氏はカマラ・ハリス氏の事を「大統領」と呼んだりしている。既に認知症が相当程度進行している事を思わせる事実である。この状態で日本のマスコミなどは普通にバイデン氏が大統領として君臨しているように報じているが、これは笑えるほどおかしいのだ。アメリカが菅首相・バイデン大統領の会談前にカマラ・ハリス副大統領と会談させたのは、正にカマラ・ハリス氏が実質的な大統領として動いているからにほかならない。はっきり言ってジョー・バイデン大統領と会談したところで意味のある議論は不可能だろう。それほど認知症は進行しているのだ。

(*3)
左派系の人は中国や国際政治についてあまり知識が無く子供のような夢を見ている人が多い。ドリーマーと言われる所以である。中国、そして中国共産党の本当の実態・実情を知れば甘い見通しなど絶対に絶対に有り得ない事が自ずと判るからである。