Altered Notes

Something New.

「CCDカメラ」という誤解

2018-03-15 04:10:36 | 放送
テレビ番組の中(特にロケ映像)でハンディタイプの小型カメラが出てくると、芸人やタレント等の出演者はそれをスタジオの大型カメラと区別する意味で「CCDカメラ」と呼んでいる。ときには通ぶって「CCD」と言ったりもする。

それは確かにその通りなのだが、しかし、ある意味ではこの呼称は間違いなのだ。

どう間違いなのか?

CCDは「電荷結合素子 (Charge Coupled Device) 」という固体撮像素子の事であり、イメージセンサー、つまりレンズから入ってきた光を電気信号に変換する重要なパーツ(*1)である。このパーツ(CCD)はテレビスタジオに配置されている大型のスタジオカメラにも入っているし、報道カメラマンが肩に担いで事件現場などで撮影する肩載せ式のカメラにも入っているし、そしてもっと小型のハンディータイプ(芸人等がCCDカメラと呼ぶ)カメラにも搭載されている。

なんのことはない、全てのテレビカメラ・ビデオカメラが「CCDカメラ」(*2)なのである。従って芸人たちが小型のビデオカメラを指して「CCDカメラ」と呼んでいるのは無意味であり知ったかぶりでしかない。カメラの種類を区別したことにはならないからである。そもそも彼らは「CCD」という言葉(文字列)の意味すら知らないで言いまくっているのだ。彼らが得意気に「CCDカメラ」という時、それは自らの無知無教養を晒しているだけであり実に恥ずかしいことなのである。


テレビカメラ・ビデオカメラにも歴史がある。
昔はイメージャーとして使われていたのは撮像管という一種の真空管である。撮像管も最初は非常に大きくスタジオカメラに用いるのが精一杯なサイズだった。(*3) それが年月とともに刷新されてかなり小さいサイズのものを作れるようになってきた。しかしそれでも小型化を図るには限界があった。

一方、1969年に米国で発明されたCCDだが、テレビカメラ・ビデオカメラに使える最初の実用的な固体撮像素子としてCCDを開発したのはソニーである。それは1985年頃だったと思うが、CCDを利用した最初の家庭用カムコーダーとして8ミリビデオが世に出た。

それ以降CCDは家庭用カムコーダーのイメージャーとして定着していったのだが、プロ用・テレビ局用としてはなかなか普及しなかった。初期のCCDは画素数が現在に比較するとあまり多くなかったので業務用・放送用映像のクォリティには遠く及ばなかったからである。

しかしその後ソニーだけでなく他のメーカーもCCD製造に参入してクォリティが磨かれていった。その結果として業務用ビデオカメラ、そして放送用テレビカメラとしても通用するCCDが開発されたのである。

こうして現代においては家庭用ビデオカメラから業務用・放送用テレビカメラに至るまで、すべてのビデオカメラがCCD(固体撮像素子)を使用するに至ったのである。


話を戻すが、その昔、そもそも最初に番組制作者(ディレクター等)が演者である芸人たちに対して小型のハンディーカメラを「”CCDカメラ”と呼べ」と指示したとすれば、その理由はイメージャーとして撮像管が全盛だった時代にスタジオのテレビカメラとの区別をつける為だったのかもしれない。

しかし私が記憶する限り、芸人等が得意気に「CCDカメラ」と呼ぶようになったのは既に撮像管カメラも使われなくなって固体撮像素子(CCD等)を使ったカメラが中心になって以後だったと記憶しているので、芸人等が小型ハンディーカメラを指して「CCDカメラ」と呼ぶのはやはり「おかしい」と言わざるを得ない。だから筆者も番組を見ていて(聴いていて)違和感を持ったのであろう。

いずれにしても、芸人は無知無学である。彼らはまさかスタジオで自分たちを撮っている大型のテレビカメラもまた「CCDカメラ」であることを知らないのだ。無知は罪である。



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(*1)
シネカメラならフィルムに相当する部分であり、レンズから入ってきた光(映像)が結像する場所である。


(*2)
イメージセンサーには大別してCCDタイプとCMOSタイプがあるが、ここでは固体撮像素子を代表してCCDとする。


(*3)
最初期の撮像管は両手を使わないと持ち上げられないほど大きかった。その後、技術開発が進み徐々にサイズは小さくなっていったが、カラーカメラは撮像管を3本搭載(*3a)するので小型化・ハンディサイズ化は到底無理だった。

(*3a)
最初期のテレビはモノクロ映像だったので撮像管は輝度信号用に1本だけ搭載すれば良かったのだが、1960年代半ばのカラー放送開始時に色信号も扱うようになったので1台のカメラに3本搭載されることになった。レンズから入ってきた光を光の三原色(R,G,B)に分解して各々別々に撮像したからである。ここの原理は今でも同じで光の三原色に分解された光は3枚のCCDによって受けることになる。