Altered Notes

Something New.

エジプト政変の真相

2013-07-06 21:29:11 | 国際
エジプトのムバラク政権が倒れて1年が経過する。
今、エジプトはクーデターの混乱の中にあるが、そもそも民主的に選ばれたモルシ政権になぜ国民は反発しているのだろうか?


日本で報道されるニュースを見ているだけでは判らないが、実はこれを国民の反政府運動と捉えることが混乱を招いているのだ。

実は反政府運動をやっているのは国民の一部である。
何が国民の一部を動かしているのか、と見たほうがいい。


イスラム原理主義に則ったムスリム同胞団によるモルシ政権を引きずり下ろしたいと考える人々が存在する。
それはどのような人々か?

30年続いたムバラク政権は親米政権であった。
従ってこの政権にいた人間は新しいモルシ政権のイメージを悪くしたいと考えている。
アメリカがモルシに反対しているという情報を流すことは彼らの思惑・利害と一致する。


こうした背景があるので、エジプトに於ける一連の動きが「国民(全体)の」と言われてしまうとエジプト国民としては心外に思うようである。

報道のされ方も偏っていて、モルシ政権を支持する側のデモも起きているのにそちらの数字(人数)は発表されていない。

今回の軍の動きはクーデターである。
なぜそのような結果に至ったのか。

そもそもモルシ政権になったからといっても大統領が変わっただけで、政府組織を構成する人間たちは変わっていない。

ムバラク政権からモルシ政権に変わったけれども1年間ずっともめている状態だ。
モルシがいまだ何の権限も持たせてもらえなくて何の政治もさせてもらえない状況が続いていた。そのような状況下で「モルシを引きずり下ろせ」というのはいかにもおかしい話である。



この関係性は日本の政治に置き換えてみるとさらに判りやすい。
自民党という親米の長期政権があった。これが政権交代して民主党政権になったが途端にガタガタして政府がうまく回らないようになった。
既得権益を持つ人達から揺さぶられる中で民主党自体が自壊してゆく…。
こうしたところが似ている。



アメリカはエジプトが親米政権だった時にはムバラク政権をサポートしていた。
今まだお金を持っている政府の人たちが貧困層にお金を渡して彼らをデモに参加させているのである。

エジプトは国家公務員が多い。
政権(大統領)が変わっても政府(を構成する人々)は変わっていない。
国家公務員は往々にして賄賂をもらう事に慣れた人たちであり、たいして仕事をしなくてもそれで食っていけたのだ。それが民主的に選ばれた大統領になった途端に賄賂が絶たれてしまい今までどおりのぬるま湯的生活ができなくなった。これは公務員にとっては困ること。そしてその状態になって一年…。

そうした不平不満が今爆発しているのである。
モルシを引きずり降ろして元の政権に戻したい、私腹が肥やせる政権の方がいい…そうした欲望で騒動を起こしクーデターを起こした・・・。
言ってみればそれだけのことなのである。

エジプトをイデオロギーできちんと変革したい人はいるのだが、そこは報道されない。こちらの勢力の方が多いにもかかわらず報道されないのだ。

モルシ大統領は長い独裁政権以降で最初の国民投票で選ばれた大統領である。
それでまだたった1年しかたってないのに引きずり降ろそうというのはこういうことなのである。


1年前にサッカー場での暴動事件があった。
襲撃した犯人たちは捕まったが、裁判で死刑の宣告をしたらその家族から「死刑は間違っている」という異議が出た。
家族は言った。「政府にやらされたのに」と。
え?…となって公安が調べたところ、ムバラクの息子サイドの連中が足をひっぱり混乱させるためにわざわざスタジアムで事件を引き起こした事がわかった。バレたのである。
つまりそういうことなのだ。裏で仕掛ける奴がいるのである。


今回の政変でもこういう肝心な真相は全然報道されずにドンパチやってるところだけ報道される。
日本の報道はエジプト国民の声を謙虚に聞くべきであろう。

間違った報道、ズレた報道は当事者であるエジプト人にしてみればネガキャンされているようで嫌な感じであろうと思う。


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エジプト政変の裏ではアメリカの関与は恐らくあるであろうと言われている。
ムバラク政権というのはアメリカ(とイスラエル)にとって都合の良い政権であった。
それがなくなってしまったので取り返したいという心理が働くであろうことは容易に想像できる。

モルシ政権下で大統領はソブヒという参謀総長を任命したが、この人は米国への留学経験がある。その時に書いた論文が
「いずれアメリカは中東から撤退すべきだ。イスラムのためのイスラムを実現すべきだ。そうしないと憎悪の連鎖が広まるばかり。」
という趣旨なのである。

このことがアメリカにとって一つのターゲット(ポイント)となったのではないか。
アメリカにとって非常に反米的な思想を持つ政権はひっくり返したい・・・と考える一つの引き金になった可能性はある。