週刊浅草「江戸っ子瓦版」 -のんびりHiGH句な日々-

文学と食とRUNの日々を、PHOTO5・7・5で綴るエッセイ♪

弥生のさくら

2013年03月26日 | ★江戸っ子エッセイ★

  
             言問橋袂からの眺め

 今年の染井吉野。例年になく早く開花したと思ったら、あれよあれよと満開になった

 3月23日(土)、どんな様子かと早朝、隅田川沿いの側道を走る。

    
             山谷堀公園

 かつて吉原に向かいチョキ舟が通った堀である。

 おいらが高校生の頃まで、水が通っていた。末路はメタンの泡が湧いて、見るも無残な有様だったが…。

  

      
                  墨堤の千本さくら

 向島百花園、長命寺、弘福寺、三囲神社、牛島神社と続く、川向こうの墨堤の桜の下では、急ごしらえの出店の準備やら、花見の場所取りやら、花見客も大あらわのご様子。

 ひと足もふた足も早い船上花見に興じようと、屋形船も予約に大忙しのようだ。

 台東区側の隅田公園では突貫の工事中。そりゃあ、スカイツリーが完成して始めての花見だもの。

 当てが外れたのは、行政だけでなく、わが連も同じ。

 おいらが幹事を務める、わが全そ連の花見会も4月6日の地元さくら祭りの日を予定している。まぁ、花はなくとも気は心。水上バスのアトラクションもあるし、新緑の元の宴会もいいもんだ、タブン、ネッ!

   
                 ポップ三味線

 午後は電車に乗って、中野小劇場へ。

 〈べらんめえ〉という劇集団が演じる、江戸弁の朗読芝居。

 山本周五郎〈初蕾〉佐江衆一〈いぶし銀の雪〉立体落語〈大工調べ〉を観てきた。これも、時代創作のお勉強。

 「あたぼうよっ!」(当たりめえだ。べらぼうめ)

 山田二郎さんのべらんめえ調の言い回し。

 幼い頃聞いていたおっちゃんのようで懐かしい。

 また、その山田さんが縁あって誘ったという、マーサ☆リノイエさんのポップ三味線が秀逸だった。

 亜流の津軽っぽい節から、ベンチャーズ、洋楽メドレーまで多才な演奏である。

 リノイエの由来は、李家と書くらしい。なんでも秀吉の朝鮮出征の際に帰化したご先祖だといわれる。スゲエことだ。

 山口百恵さんのバックコーラス&ダンサーだったマーサさん。

 なんと地元では長唄の師匠とか。

 江戸の長屋文化の粋がこんな形でみられるとは、人生まんざらでもない。

  
  
               築山の花盛り

 突貫工事中の築山でパチリとやって、言問橋を越える。

 それぞれ持ち寄った弁当で、観測史上2番目に早いと云われる満開の花見と洒落込んだ。

 泡の後は、福井の銘酒〈伝心〉を冷やで飲る。

 満点の桜星の元、得も云われぬとはこのことか、と思う。

  
             物見台とツリーと桜

 スカイツリーのために出来た観覧席とさくらをバックに子供たちがいい感じだ。

 桜を好むのは秀吉だけじゃない。

 寒の末の暖。それは四季を日常とする、大和人の心の故郷だからかもしれない。

   
          色の変わるツリー
  
 この日のスカイツリーは、何色か、照明が変わった。

 これもさくらが特別の意味を持っているからだろう。

 川向こうには本所、業平橋。

 業平の歌がある。

 〈世の中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし〉

 桜の花に一喜一憂するのも太平ならでは。

 この花がなければさぞ長閑だろうとは、おいらは思えない。

 梅より、桃より、江戸っ子には桜の花が何より春の象徴なんだ。

 浮世の華やかであり、現世の儚げのようである。 

 季節の早過ぎた花見の宴の寒風は、まさに弥生の寒気そのもの。

 愉しい酒のおかげさまで、おんぼろのカラダに世にも恐ろしいノロが巣食ってしまった。 

  〈散ればこそ いとど桜は めでたけれ 憂き世になにか 久しかるべき〉

 このウィルスが休日の飲み食い、あれやこれやすべてを流してしまう。

 弥生のサクラ。

 散りゆくサクラに己の身を重ね見ゆ

  

  「眩しさや 白輝を舐むる 春の酒」 海光  



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