長屋茶房・天真庵

「押上」にある築60年の長屋を改装して
「長屋茶房・天真庵」を建築。
一階がカフェ、2階がギャラリー。

明日(火)明後日(水)明々後日(木) 三連休

2010-12-06 07:39:12 | Weblog
今日の夜、カリスマ調律師のIさんが、ピアノの調律にくる。
明日からは木曜日まで三連休。ひさしぶりに京都にいく予定。10日(金)はダメ中こと、ダメから始める中国語。明るく元気な「まいこ先生」が、挫折しそうな
生徒をムーチをふりふりふりチーパッパと、教えてくれる日。

「まいこ」といえば、ぼくが最初に立ち上げたHPは「まいこさん・どっとこむ」
だった。自称・まいこさん?の視点から京都のことを、いろいろ書いた。その
中に「まいこさんのひとりごと」というのがあって、それが今の「文花的なひとりごと」に継承されている。「まいこさん・どっとこむ」は英語版もつくっていたので、
けっこう重くて、どっと疲れて途中で閉店した。

中国といえば、煎茶は中国の影響をもろにうけている。隠元禅師が中国から
お茶をもってきたこともあるが、日本の文人たちが、中国の文人趣味にあこがれ、
煎茶道具や掛軸の絵・書などもかなり影響を受けている。
先週の木曜日に、煎り番茶の手前をやった。ほうろくで番茶を煎って、
香ばしい香りのお茶を、ふたつきの茶碗に入れて、出す。お客さんは、
まずお茶碗のふたをとって、一口飲んで「けっこうなおかげんで(湯加減といった
らいけない)」という。その後ひとくち飲んでからふたをして、それからお菓子を
食べる。そして、お菓子を食べ終わってから、また残ったお茶を楽しむ。
そんな流れだ。「すすり茶」というのも、ふたつきのお茶碗に玉露を入れ、
ふたと茶碗のすきまから玉露を飲む。なんとも贅沢で優美なお手前だけど、
中国茶の入れ方の影響をもろに受けている。

流儀はないけど、お酒を飲むときに、酒肴を少しづつ食べ、残しながら盃を
すすめる人もいる。反対に、箸をつけたら、それをぜんぶ食べてから、盃を
空ける、というタイプもいる。十人十色でもあるし、酒肴の種類によって、
まちまち、というタイプもある。まさに一人十色だ。蕎麦の食べ方も、
箸でつまむ量や、汁のつけかた、すすりかた・・・ひとりひとり違っていて
おもしろい。



一人十色

2010-12-05 08:20:46 | Weblog
昨日の朝、仕込みが一段落したので、「帝国ホテル」(村松 友視著)
の本を読んでいたら、時間を忘れて、開店の時に、だいこんおろしも、チーズケーキもできてない、という状況だった。きまって、そんな半端な時は、お店は開店と同時に
千客万来状態になる。不思議なものだ。

帝国ホテルといえば、NHKの「今日の料理」を長いことやっていた
村上信夫さん。十間橋通のうちから徒歩1分のところに、甲州屋さん
という肉屋さんがある。コロッケやメンチかつが美味く、時々
勉強会のおかずになったりする。天真庵の「ほっととり蕎麦」の
鶏も、甲州屋さんからいただいている。元気のいいおじいちゃんと
おばあちゃんが、やっている気持ちのいいお店。

その甲州屋さんのお店の入り口に、額縁に入った色紙がある。
村上料理長が、為・甲州屋さんと揮毫したものだ。
「いい料理とは、いい材料と工夫と真心でつくるものだ」
と書いてある。後輩の料理人に「いい料理とは?」と
質問し、答えに戸惑っていると、「いい料理とは、(愛情
がたっぷり入った)お母さんの料理だ」といったというエピソード
を彷彿させるようなシンプルな内容だけど、やはり、
「ほんものはみな簡素」だとつくづく思う。

昨日読んだ中で、「十人十色といわれているけど、帝国ホテルでは
「一人十色」の気持ちで接客している、というフレーズが印象的だった。
「お客さまは神さま」、という言葉は、逆手に使われるとたちが悪く、
あまり好きな言葉ではないし、そうは思わないけど、
「一人十色」というのは、いろいろな意味で、奥深い言葉であるし、
言い得て妙だ。いろいろな人が、いろいろな色をもって生きている。
豪華絢爛で彩りあざやかな曼荼羅だ。


阿闍梨餅

2010-12-04 07:42:31 | Weblog
京都の比叡山で難行苦行をされた坊さんのことを「あじゃりさま」
という。その名にちなんで、「阿闍梨餅」という京銘菓がある。
ぼくらが学生だったころは、三条河原町の古色蒼然としたお店で
しか売っていなかった。京都駅近辺のエチカや、デパチカでも
売っているので、希少価値は減ったけど、丹波の大納言を、あまり
甘すぎず煮て、お餅でつつんだ味は美味で、これに勝る京土産は
ない、と昭和50年くらいから思っている。

そんな話を時々するので、京都から遊びにくる友だちは、必ず
「おたべ」ではなく、「阿闍梨餅」をもってこられる。昨日は、
宅急便が届いた。お歳暮の季節なので、それかと思いきや、
送り手の名前をみたら、「戦車くん」だ。(もちろん、本名が書いてあった)
彼が京都に出張にいき、土産に買ってきたが、
年末で忙しいので、おっくった、とのことだった。賞味期限が
近いので気をつけてください、とメモが。ほんとうに、こまかい
ところに気付く男だ。「戦車」とかいう無粋な渾名では、もったいない。
「洗車」にかえようかしらん?巷には、賞味期限ぎれみたいな男女が
あまたいるけど、この阿闍梨餅は、賞味期限がきれても焼いたらまた
別物になる。

そんなことを思いながら、ひとつ口に入れたとき、坊さんみたいな
風袋の男子がカウンターに座って、蕎麦を所望された。
食べた後に、「この店、京都みたいな味がありますね」と京都弁で
いうので、「おおきに」と答えた。藍染をやっている人で、友だちから
「あのお店は京都みたいなお店だからぜひ、いっておくれやす」みたいな
ことをいわれて、京都からわざわざきはったらしい。
藍染というのは、もともと「東寺」の中でやられていたのが起源らしい。
「徳島」だと思っていたら、「一京都、二灘、三阿波」だったらしい。
それが京都はほかの艶やかな染めに移り、灘は酒にうつりして、徳島が特産
になった、らしい。
ちょうど週明けに京都の骨董やに野暮用があり上洛する予定があるので、
時間があったら、工房にお邪魔しようかと思う。

本来は冬休みだったけど、今日・明日・明後日は営業します。
来週は火曜日・水曜日・木曜日が休み。



梅田に行ってきました。

2010-12-03 07:54:42 | Weblog
昨日は木曜日。お昼くらいまで焙煎をし、
それから、馬喰町へいって、話題になっているカフェ(名前はわすれた)で
昼食。界隈は衣料品の問屋街だが、最近カフェやギャラリー
などが、あまたできて話題のスポットになっている。ときどき、カフェの
オーナーたちが遊びにきてくれるのだが、こちらは無精で初めていった。

20年くらい前、友だち(といっても、親くらい年は離れていたけど)
の会社が店頭公開して、その子会社が小伝馬町にあり、周辺機器の製造などを
手がけていたが、「その会社も上場させたい」とのことで、いわゆる「雇われ社長」
をやったことがある。社長というのは、みんなわがままなもので、たった1年で
ケンカして池袋にもどった経験がある。馬喰町から徒歩5分くらいのところに、
その会社があったので、久しぶりに大江戸通りを昭和通りに向けて、てくてく
歩いた。その会社も、ビルの名前も変わっていて、一階が関西系の大手チェーン店
が入っていた。20年前というのは、今は昔、というより前世くらい遠い。
そこから神田駅まで向かう途中に「大江戸」という、昔よくいったうなぎやがあった。
急にうなぎが食べたくなったけど、おなかは満腹。

神田から銀座線で表参道までいく。なんか、先天的な方向音痴な自分としては、
スムーズに散歩しているようだが、東日本橋から馬喰町に行くには、二回も
交番のおまわりさんにお世話になった。

表参道ヒルズの端に、昔の同潤会アパートのまんまにしてあるビルがある。
表参道ヒルズ同潤館。そこの302で、おもしろい個展をやっているので
のぞいてみた。ソニーを退職した森宮祐次社長が、株式会社アカリネをつくって、
「ひとり家電メーカー」をやり始め、その第一号の製品が、展示されていた。
和紙でできた灯篭みたいに、やわらかい色彩の明かりがたちこめた傘の中
に、yoshii9みたいに、小さなウーハーがちょこんとのったスピーカ。
これだと、和室において、静かな琴の音なんかを聴きながら、お茶会なんて
素敵だと思う。5日(日)まで1:00から7:00。「これから」の
ヒントがいっぱい詰まった夢のような展覧会。

お茶は、「煎り番茶」をやった。朝は珈琲を煎り、夕方は番茶をほうろくで
煎った。この煎り番茶は、血糖値を下げたい人にはおすすめ。
少し手間がかかるけど、そのひとがやるひと手間が、健康だったり、
おいしかったり、持続性があったりする。

昼のうなぎが、こころ残りで、お茶の後は、人形町にもどって、
「梅田」で、うな玉や、50年ものの糠のおしんこを酒肴にして、
熱燗をぐびぐび飲んできた。話題のカフェもいいけど、やっぱり
老舗の料理屋で飲む酒は美味い。最後にこの店の名物、「塩梅田丼」
を食べる。昔から、梅とうなぎは、「たべあわせが悪い」というのが
定説だが、ここは「それは、うますぎて食べ過ぎる」という逆もまた真なり、
よろしく、練り梅をうな丼にまぶす。いい酒もいい酒肴も、翌朝になると、
「なるほど」とわかる。歳を重ねてくると、そのあたりがよくわかるように
なり、酒もますますうまくなる。

春慶寺

2010-12-02 08:51:45 | Weblog
押上にそんな古刹がある。池波正太郎の小説にもでてくる。
歌舞伎役者や、四谷怪談を書いた鶴屋南北もここに眠っている。
王選手のお父様がやっていた中華屋「50番」も、もともと、その敷地内だったらしい。ときどき、ここの老師さんが珈琲を飲みにこられる。言葉好くなめだが、
ひとことひとことが、重みがあって、いろいろ教わること多し。

天真庵の前に、町内会のお知らせの看板がたっている。お店を改装するときに
勝手にはずした(景観があわないと思って)のに、強引にまた建てられた。
しかも、勝手に抜けないようにコンクリートで頑丈に固められた。
そこには、お祭りとか、ゴミの日の変更とか日常のお知らせなんかが、
貼られたりする。五月の「墨田ぶらり下町音楽祭」なんかも貼られた。
時々、訃報と葬儀の案内なんかが貼られる。先日は十間橋通りの床屋の
オーナーの訃報があった。53歳で旅だたれ、葬儀は春慶寺ということだった。
今朝ジョッギングしていて、その店の前で立ち止まり、うなぼうを脱いで
合掌。

今年もこの季節になると、「年賀状は遠慮します」みたいなハガキがくる。
年々ますます多くなる。その中に「ワカ」の細君と熊本の実家から
もきた。食道ガンになった後も、ひんぱんに足を運び、コンサートは
ぜんぶきた。2月3日に、55歳で昇華した。
「人生2度なし」という絶対的な哲を、徹頭徹尾貫いて生きた55年の太く短い人生。

先月のある日の昼さがり、やさしい陽だまりが、窓からさしこむような
日に、ひとりの女性がカウンターに座った。
神楽坂から、末期ガンの父親を近くの病院に救急車で運んだ、ということだった。
どこの病院も末期がんの患者のベッドが足りないらしく、治療のかいもない
末期の患者は、自宅にもどるか、高いお金を出してホスピスにいくか、緩和治療
をしてくれる町医者のところへいくか、という選択肢にせまられる。彼女は
押上のT病院を選んだ。それから、毎日病院に父親をお見舞いにいった帰りに
立ち寄ってくれて、珈琲を飲まれた。10日くらいたったある日、「しばらく
これなくなるので、最後に珈琲をください。」といった。あちらの世界に
いかれたのがわかった。ていねいに「ほぼぶらじる」を入れ、それを飲みほすと、
一礼してお店を後にした。その父親は、全盛のころには、よく向島「なみむら」で遊んだということだ。そして、彼女は三味線と琴の奏者。父親の誕生日の来年3月の初め
に、天真庵でライブをやることを約束した。「父が天真庵との縁をつけてくれた」という言葉が染みた。こころから、ご冥福をお祈りしたい。

そして、そのお父様と同じような状態にある義理の父を見舞いにいった。
できたら、3月4日のライブに招待したいけど、微妙な状態だ。
みんな生きている間は必死に毎日毎日を懸命に息しながら生きていく。
そして、みんな100%あちらの世界にもどっていく。息をしている
つかの間の時間の中で、生・滅・生・滅をくりかえしながら、生きている。
それだけのことだけど、そこが素晴らしい。天恩感謝。




休み

2010-12-01 08:59:22 | Weblog
今日から師走。しゃれではないけど、朝起きて走った。
冬は、「うなぼう」をかぶり、「まほまふ」を首にまいて
走る。天真庵を改装したときの中心になった三人衆の一人が
「みかんくん」(くすのきみかん)で、彼が作るテキスタイルの
ブランドを「UNA」という。そのUNAのつくった帽子の
ことを「うなぼう」といい、マフラーは、魔法みたいにあったかく
かっこいいので、「魔法のようなマフラー」が、「まほまふ」
になった。池袋時代の天真庵では、毎年この季節になると
「まほまふ展覧会」をやった。本日から5日まで、表参道ヒルズのgalerie412で
「音と灯り、影の幻想」という不思議な催しがあるらしい。
みかんくんから、そんなハガキが届いた。

昨日のコンサートは、不思議なコンサートだった。
いろいろな作曲家の曲が、次々に川がさらさらと流れるように
演奏される。普通は、一曲がおわると、演奏者が終わりを告げる
合図をしたり、立ち上がったり、礼をしたりするのだが、
すべてが一曲のように、演奏した。そして、その川の流れを
優美に導いてくれたのが、松岡さんが奏でるエリック・サティー
のジムペディーのシリーズたち。
茶室で炭のにおいを感じながら、人肌の玉露をいただくような
気持ちになって、まどろみの世界へ誘われていく感じがした。
やまね、という音楽家が主催する茶会が、広大無辺な宇宙みたいに
静かに優美に広がっていく。次は来年正月の4日。残念ながら、すでに
満席ではあるが・・

昨日はかよちゃんが、ひとつオーボエを演奏してくれた。
風邪ぎみで、かなり体調が悪そうだったけど、いつものように
人を元気にするパワーにあふれた演奏やった。
13日に、かよちゃんと、石岡のまんまやの嫡男・岡田渉くんのクラリネット、
榎戸絢子さんのファゴットで、コンサートを開催する。
19時開場19時半開演 4000円(蕎麦会含む) 残りわずか。

21日は、天真庵クラシックライブ クリスマスコンサート (つけめん3人衆
のメリークリスマス)

平山慎一郎 ヴァイオリン + 江田雅人 チェロ + 赤松林太郎 ピアノ

もうクリスマスや。今年は「つけめん」を堪能したいと思う。さきごろ
静岡のお寺で、原田先生が生けるお花の横で、林太郎くんが演奏した。
またひとつ脱糞したような悟りの境地?に達したようだ。
若いけど、無限の可能性をもった若きピアニストと、ナイスガイな
若人の演奏で、楽しい会にしたいと思う。
19時開場 19時半開演 4000円(蕎麦会含む) 残りわずか。

大きな時代の変革期にあって、政治も経済もひとびとも、混沌と
してきているけど、新しい光を感じるには、五感を自分で磨かんと
あかんみたい。その鏡が曇っていたり、行動することに躊躇していると、
ただ座して死を待つ状態になりそうだ。