長屋茶房・天真庵

「押上」にある築60年の長屋を改装して
「長屋茶房・天真庵」を建築。
一階がカフェ、2階がギャラリー。

一人十色

2010-12-05 08:20:46 | Weblog
昨日の朝、仕込みが一段落したので、「帝国ホテル」(村松 友視著)
の本を読んでいたら、時間を忘れて、開店の時に、だいこんおろしも、チーズケーキもできてない、という状況だった。きまって、そんな半端な時は、お店は開店と同時に
千客万来状態になる。不思議なものだ。

帝国ホテルといえば、NHKの「今日の料理」を長いことやっていた
村上信夫さん。十間橋通のうちから徒歩1分のところに、甲州屋さん
という肉屋さんがある。コロッケやメンチかつが美味く、時々
勉強会のおかずになったりする。天真庵の「ほっととり蕎麦」の
鶏も、甲州屋さんからいただいている。元気のいいおじいちゃんと
おばあちゃんが、やっている気持ちのいいお店。

その甲州屋さんのお店の入り口に、額縁に入った色紙がある。
村上料理長が、為・甲州屋さんと揮毫したものだ。
「いい料理とは、いい材料と工夫と真心でつくるものだ」
と書いてある。後輩の料理人に「いい料理とは?」と
質問し、答えに戸惑っていると、「いい料理とは、(愛情
がたっぷり入った)お母さんの料理だ」といったというエピソード
を彷彿させるようなシンプルな内容だけど、やはり、
「ほんものはみな簡素」だとつくづく思う。

昨日読んだ中で、「十人十色といわれているけど、帝国ホテルでは
「一人十色」の気持ちで接客している、というフレーズが印象的だった。
「お客さまは神さま」、という言葉は、逆手に使われるとたちが悪く、
あまり好きな言葉ではないし、そうは思わないけど、
「一人十色」というのは、いろいろな意味で、奥深い言葉であるし、
言い得て妙だ。いろいろな人が、いろいろな色をもって生きている。
豪華絢爛で彩りあざやかな曼荼羅だ。