今年の正月、つまらない番組が多いなか、数少ない上質な番組が放映されました。
それは、『京の"いろ"ごよみ 染織家志村ふくみの日々』です。
染織は門外漢の私ですが、66歳で人間国宝となった、志村さんの染織の芸術性に感銘し、私のブログでも番組内容を紹介しました。
志村さんが織りなした染織は、一幅の絵画を見ているようです。
その続編が、今回日曜美術館の特別編として放送されました。
私は、今回もすばらしい染織の作品に感銘しました。
紹介します。
初夏から晩秋までを追った前作に続き、今回 は冬から春の志村さんの染織の日々と作品を紹介しています。
京都・嵯峨野で半世紀、植物からとれる染料で糸を染め、鮮やかな着物に織り上げてきた人間 国宝の染織家・志村ふくみさん。
冬の京都・嵯峨野
広沢の池でしょうね。
その着物は色が奏でる叙情詩と評され、素朴な織物だった紬織を芸術の域にまで高めたという評価があります。
作品を見ていると、私のような素人でも、すんなり頷けます。
一見、色が失われる冬、しかし、そこに芽吹きを待つ植物の命の色が 宿っています。
春にむけて花を咲かせようと、桜や梅が体中にた くわえている色を、花の咲く前に炊き出します。
桜の木を炊き出し、色を抽出しています。
しかし同じ植物でも採れた年や場所、自分の心の状態で一度として同じ色は出ないそうです。だからこそ懸命に、植物の声に耳をすませます。
90歳を目前にしてなお、みずみずしい 感性で自由にイメージを膨らませます。
作品「雪の湖」
雪におおわれた湖は、心に深く刻まれている情景だと。
作品「雪の戸」
しんとした雪の世界に人間が暮らしている。
静かに流れる冬の時間。
梅のの樹液から染まるもも色
作品「豊後梅染無地」
梅で染めた色のみで織り上げたものです。
3月15日、嵯峨釈迦堂(清涼寺)の御松明
毎年、松の枝と藤のツルで作った松明を3本燃やし、農作物の豊凶を占った行事です。
これが終わると、京都も春が来ると実感できます。
4月、嵯峨野も桜で満たされます。
作品「初音」
初めてうぐいすが鳴くころの情景をイメージしたものだそうです。
満開の桜模様も想像します。
作品「若柳」
若々しい柳の姿が斬新なデザインに生まれ変わっています。
作品「紅襲」(桜かさね)
平安貴族の装束「襲の色目」を現代風にアレンジ。
紅で桜のほのかな色を表現したそうです。
5月新緑の嵯峨野、新しく入った弟子と草を取りにでかけました。
採取したカラスノエンドウという植物から色を抽出します。
作品「柳の國」
カラスノエンドウで染めたうすみどりが、青紅葉に映えています。
志村さんは、自然とともに歩みたどりつい た境地から、 「植物の色を復活させたい」と語ります。