麒麟琳記〜敏腕Pの日々のつぶやき改題

還暦手前の身の回りのこまごま。
スポーツや映画演劇など。

年輪と絵姿の便り(五)

2014年10月06日 | 制作公演関連


若い緑の、水を吸い上げる力の強さ。
目には見えないが光の吸収力も
さぞかし旺盛なのだろう……
すくすく伸びる様は見ているだけでも
愉しくなるから不思議だ。

      

J-Theater『江戸おんな絵姿十二景』
『暗殺の年輪』の朗読劇の話だ。

とくに前者は、オーディションで選ばれた
まだ経験の浅い役者たちが多く、
高田馬場のスタジオで稽古を見た時は
正直、クラッとめまいがするほど
他人様に見せてはまずいという形だった。


この洋室の写真が、その頃のもので
冒頭、和室の絵が昨日の稽古の様子。

もちろん、この二葉に差異はないのだが
実際の芝居は驚くほど良くなっていた。
若者たちの吸収力・成長力に、
今度は良い意味でクラッと来た。

下の写真の左手寄りの後姿。
演出・小林拓生の粘り強い仕事の賜物。


また、内田里美と松永ひろむの
中堅二人の陰でのアドバイスも奏効。
ご覧のように、日々浴衣での稽古。
男女所を同じゅうせずに着替える折、
僕は当然男側にいるのだが、
元前進座の松永が世間話でもするように
何気ない助言をする場面を見ている。

女性陣での内田の有効なフォローを
残念ながら目にはしていないけれど、
松永よりやや厳しめに諭すさまを
陽が東から昇るのと同様に確信している。

『江戸~』の話に終始したが、
『暗殺』にも選抜された若手はいる。
中でも主人公の友・金吾をダブルで演じる
二人が、黒川道場で徹底的に叩かれて
悪戦苦闘の末、良くなっている。

さあ、明日は劇場入り、
そして三時には幕があがる・・・。

J-Theater日本人作家シリーズ
朗読劇『暗殺の年輪』
『江戸おんな絵姿十二景』
作/藤沢周平、音楽/やすだまこと、
演出/黒川逸朗(暗殺)、小林拓生(江戸)

『暗殺』7日15時、8日19時、9日15時
『江戸』7日19時、8日15時、9日19時
小劇場B1(下北沢)
一般前売3300円、一般当日3500円
学生および和装の方3000円


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痕ディショニング

2014年10月05日 | 制作公演関連
プロ野球の先発投手は次の当番に向け、
それぞれの調整法でマウンドに臨む。

投げた翌日は軽いメニューをこなし、
次の日、ようやく完全休養を入れ、
当番日に向けてコンディションを上げていく。
あくまで一例であるが。

さて。
ピタパタvol.4『痕』の稽古は佳境。
本番まで一週間を切ってしまった。

昨日は長丁場の昼夜稽古。
勿論、通しが中心だ。

で。今井流の独特の調整法は、
本番間近の読み合わせへの回帰。
今日がちょうどその日に当たる。
積み上げた動きを、一度テーブル稽古で
頭の中で再確認するとともに、
新たな発見をも勝ち得ようという狙い。
そして明日稽古を休み、リラックス。
火曜水曜日と下北沢亭を借りて
ラスト二日間みっちり稽古し劇場入り、
という寸法だ。

戯曲自体、針の穴を通すコントロールで
書かれているのだが、演出においても同様。

昨日の稽古も一回目の通しのあと
微調整が施され、濃密な劇空間の
精度をさらに増してみせた。

派手なダンスや爆音などは勿論ない。
豪速球は確かにスタンドを沸かせるけれど、
ストライクゾーンをいっぱいに使った、
いや、あえて半個外したボールも混ぜ、
ゾーンを広く使って勝負する
玄人を唸らせる投球術も善いものだ。
静かさの中に張りつめた緊張と、
絡まるような高揚感が体内に湧く。

いよいよ10日開幕。
祝日の月曜日まで要町の小空間
「アトリエ第七秘密基地」にて。

10(金)19時
11(土)14時と19時
12(日)14時と19時
13(祝)14時

お陰さまで初日は残席僅かとなりました。
小さな会場です。
ご予約はお早めにm(__)m
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青い髪、青い翼

2014年10月03日 | 鑑賞
薙刀の格好ながら、青い髪の女子大生を見た。

青といっても、ナチュラルなそれではなく
綾波レイのよーな……あ、え~と、
綾波レイというのは世界的な人気アニメ
『新世紀エヴァンゲリオン』の登場人物で、
見事なサックスブルーの髪なのだ。
その作品は知らずとも、街を闊歩する
コスプレする若者を見て、
「なんじゃあの青い短髪は?!」と
驚愕した人は少なくないだろう。

で、薙刀娘もまさしくショートヘア。
エヴァンゲリオン零号機パイロットを
意識しているのは明白だった。
話が前後するが、そんな彼女は西洋人。

ここで胸を撫で下ろした読者も多いはず。
外見で判断してはいけないけれど、
茶髪のロン毛や多色のソバージュの
武道家がいたら、心中穏やかではない。

その論でいえば、国籍がどこだろうと、
黒髪であってほしいって流れにもなる。
いや生来の金髪とかなら話は別だが。

ただきっと、彼女にとっては武道もアニメも
「同等の日本文化」なのだろうと察せられ、
「この留学体験をきっかけに
母国との架け橋のひとつになってよね」
てな気持ちに個人的に、僕は、なった。

※※※

昨夜観たのは俳優座劇場プロデュース
『インポッシブル・マリッジ』
(作/ベス・ヘンリー、翻訳/常田景子、
演出/西川信廣。於/俳優座劇場、
2014年9月25日~10月5日)
こちらは逆に、キリスト教文化圏の話で。

年の離れた作家との結婚を明日に控えた
次女と、それを歓迎していない母と長女。
長女の夫、作家の息子と牧師が登場し、
それぞれの「ありえない」秘密が交錯する
宣伝の言葉をまんま借りれば
《ちょっとビターな大人の喜劇》でした。

本国では爆笑また爆笑の舞台だったと
確信できた。けれど日本では「それ」の
半分も理解できない。

観劇後に「人間とは?」という
本質的な問題を考えたりもできる芝居。
宗教や生活習慣が理解できずとも、
本当は良いのである。あるのだけれど
解った方がもっと楽しめたのは事実。

嗚呼、翻訳ものをやる難しさ。

ただ素敵な俳優さんばかりで
かなり満足した鑑賞でした。

喜劇だから、ハッピーエンド。
次女のウエディングドレスが
彼女の望みを叶える青い羽根のドレス。
年の離れた新郎と手に手をとって去ります。

二つの「青」から、文化の相互理解について
少し考えたりしたりした2014年10月。


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年輪と絵姿の便り(四)

2014年10月01日 | 制作公演関連
今日はまずちょいと芝居の話を離れて。

J-Theater日本人作家シリーズの、
特に『暗殺の年輪』組は
稽古を「勝どき」で行うことが多い。
都営大江戸線勝どき駅からすぐの。

隣町はもんじゃ焼きで名高い「月島」。
大江戸線と営団有楽町線も通っている。
徒歩で十分かからないから
営団ユーザーはわざわざ一駅乗り換えず
歩いて稽古場入りする役者も多い。

都営バスも走っている。
鉄路が繋がない街を結んでいて
知っていれば便利な交通手段だ。

勝どきから月島、そこから遠回りをして
豊洲に折れて、木場を周り、
本所、駒形と下町を抜けてスカイツリー。
ちなみに勝どきに至るまでは、
新橋発で銀座、築地と辿るから、
はとバスのコースにあってもよさそうだ。

で、上記の「町」は藤沢周平の世界に
欠かせない地名なのである。

醸成月(かみなんづき)になり
『江戸おんな絵姿十二景』組も
勝どきに腰を据えることになった。

どちらも通しと抜きをあしらう
稽古になっている。
一週間後には初日である。


字数がまだ600弱なので
直木賞受賞作『暗殺~』の粗筋を少々。

海坂藩の葛西馨之介は、同門の貝沼金吾と
竜虎に例えられる剣の名手ながら、
周囲からの冷たい視線に気をかけていた。
もしや父の横死と関係があるのか?
暗殺事件に巻き込まれ、父が絶命したのは
馨之介がまだ幼い頃の話だ・・・。
ある日、金吾に誘われ貝沼の家に行くと
そこには藩の上役の顔がずらり並んでいた。

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