古本屋があった。
しかも店先に100円の棚があるスタイル。
さっと上段から中段まで目を配って、
西加奈子『しずく』を手にした。
気になりながらまだ読めていない作家。
恥ずかしながら……。
恥ずかしついでにいえば、足腰が弱って、
下段を見るのにしゃがむのが辛いため
中程までで選択したのだった。
閑話休題。
それは芝居を見に行く道すがら。
観たのは、アングラの雄とも評されつつ、
最近は著名な俳優を客演に招き、
新たな地平に踏み出している「桟敷童子」。
演劇界の金字塔『どん底』の翻案。
『老いた蛙は海を目指す』
(作/サジキドウジ、演出/東憲司
時/2022年12月15日~27日
於/すみだパークシアター倉)
さすがの筆力で、かのゴーリキーの『どん底』を
ただの焼き直しではなく、見事に
「桟敷版・どん底」に創りあげていました。
帰路。芝居の余韻に浸りながら
黄色い電車内で買ったばかりの文庫本を開いた。
短編集。
二本目『灰皿』にうんこが登場したのだが、
錦糸町の倉庫を改造した小屋の芝居にも、
コネタとしてうんこが出てきたので驚く。
大人の読む小説、大人のみる芝居に
なかなかその三文字は出てこないと思うので。
加えて。小説の主人公の女性の姓が蓮田で、
『老いた蛙~』に出演していた川原洋子と筆者が
遠い昔に所属していた僅か四人の劇団
「観音芝居」の主宰が住んでいたのが蓮田だった。
蛇足ながら、埼玉県にある市である。
まぁこれはやや無理のある偶然かしら……
では、これはどうかしら?
『どん底』でいえば、木賃宿の大家の女房
ワシリーサにあたる役を藤吉久美子が熱演。
観劇前の朝、たまさかつけたテレビの、
レポーターが太川陽介だった奇遇。
【文中敬称略】
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