Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

ミリオンダラー・ベイビー

2013-01-23 | 映画(ま行)

■「ミリオンダラー・ベイビー/Million Dollar Baby」(2004年・アメリカ)

●2004年アカデミー賞 作品賞・監督賞・主演女優賞・助演男優賞
●2004年全米批評家協会賞 作品賞・主演女優賞
●2004年ゴールデングローブ賞 主演女優賞(ドラマ部門)・監督賞
●2006年セザール賞 外国語映画賞

監督=クリント・イーストウッド
主演=クリント・イーストウッド ヒラリー・スワンク モーガン・フリーマン

 クリント・イーストウッド監督の人間ドラマには、本当に泣かされるし、考えさせられる。「パーフェクト・ワールド」、「マディソン郡の橋」、「ミスティック・リバー」・・・題材の選び方が巧いんだろうな。今回も社会保障の短所や尊厳死の問題をも含む社会性を織り込みながら、メインであるフランキーとマギーの人間関係をゆっくり丁寧に描いていく。この映画のようにじっくりと人間を見つめる視点は現代ハリウッドでは実に貴重だ。それを考えるとやはりオスカーは渡されるべくして渡されたのだろうな、と思えてくる。

 ボクシングに喜びを見いだしたマギーのひたむきな姿には心打たれる。それ故に彼女が快進撃を続ける試合の場面は観ていてとても爽快だ。だが、その後に彼女を待つ悲劇・・・。まさかここまで落差があるとは・・・と正直観ていて切なくなってきた。でも僕らは誰を責めることもできない。他人同士なのに親子以上の絆で結ばれた二人。ベッドに横たわるマギーの頬にフランキーがキスするところでもう泣きそうになったよ。モーガン・フリーマン扮するスクラップが、フランキーを見守る視線がまた温かいのね。頑固一徹な男とのバランスが実に見事。弱い者いじめする若いボクサーを叩きのめすところ、わずかなつぶやきまでもが素晴らしかった。

 いい映画ってのは言葉がいらないんだよね。それは絵で語っているということ。確かにスクラップのナレーションが流れるが、それをバックに物語は映像で丁寧に語られていく。ガウンにつづられた言葉の本当の意味を知る場面、マギーの無言の笑顔と涙。リング上での悲劇から後、一見ナレーションが物語を語っているようにも見えるが、実はそのナレーションはスクラップがフランキーの娘に宛てた手紙の文面だったことを我々はラストで知ることになる。二人でレモンパイを食べたダイナーの汚れたガラス越しにフランキーの後ろ姿が見えるラストシーン。その物言わぬラストが静かな余韻を残してくれる。ただ結末を考えると賛否あるだろうね。「ミスティック・リバー」のときも書いたけど、ハッピーエンドでないことだけを理由にこの映画を”外れ”と言うのは失礼極まりない。そういう輩、恥を知れ。

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