羽を休める鳥のように

きっとまた訪れる薄紫の夕暮れを待ちながら

風の通り道

2013年08月04日 | Weblog
台所の入り口のところでふと立ち止まる。
風が通り抜ける。
リビングのベランダから階段踊り場の窓へ。
とても気持ちの良い風が過ぎていった。
そうだ、駿はこの場所が好きだった。
階段をあがってすぐの台所の戸のレールの上。
いつもここにいた。
ここにいるとほぼ家の真ん中なので家人の動向がわかる。
そして風にふかれていたんだね。
せかせかとリビングにクーラーを入れたいわたしは
この戸を閉めたいからいつもしゃがんで猫と話していた。
「ねえ、駿、出入り口に陣取ってると戸が閉められない、どいて?」
駿はいくぶん目を細めてわたしを見、尻尾をゆらして返事のかわりにした。
きっと「しょうがないなー、マッタク」と思っていたんだろう。

そしてクーラーをかけた部屋の内側にいれてもあっと言う間に退散した。
冷房がキライだったのだ。
それでもわたしたちは隙を見てはクーラーをいれ、
気がつくと駿は玄関のたたきで寝ていたりした。
冷房をいれても暖房をいれても、台所とリビングの出入り口の戸を
ピッタリ閉めることはなかった。
駿が入ってこられるように、いつも「猫の手が入るくらい」隙間を残していた。
部屋で見ていると隙間に猫の手が入り戸が開いて駿が餌を食べにくる。
「開けたら閉めなさい」といってももちろんムダだった。
この隙間の習慣はずいぶん長いこと残っていた。

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