羽を休める鳥のように

きっとまた訪れる薄紫の夕暮れを待ちながら

平静を装う

2009年04月21日 | Weblog
翌日はさいわいなことに休みでしかも雨だった。
なんとやさしい雨だろう。
静かにしていればいいよと、ささやきながら降り続く。
もっと幸いなことに、家族はみな外出していた。
昨夜も誰もいなかったから、ほんとうに助かった。
ひとりで、呆然としていることができた。

朝、目が覚めて、昨日のことが事実なのだと確かめずにはいられない。
くずかごが涙をふいたり鼻をかんだりしたテイッシュの山だ。

ふと思い出す。
着替えようと服を脱ぐたびに涙があふれた。
仕事から帰ってきたとき。
もう寝ようとパジャマに着替えようとしたとき。
よろいを脱ぐように何かから解放されて気がゆるみ、
涙があふれる。

わたしはベッドの端に座って、キャミソールのまま泣いていた。

薬をのむために、食事をとらなければならない。
昨夜はカボチャのポタージュを温めた。
今日は昼ちかくなってから卵を割って、
フレンチトーストを作った。

いつまでも泣いているわけにもいかない。

これからどうすればいいのか考えた。
考えて、考えにとりあえずたどりついて一時しのぎの安堵を得た。

小雨のなか、自転車を走らせた。
「平静を装う」ってどういうことだろう。
すごくやっかいなことなんだろうか。
これから立ち向かわなければいけないことは、際限なくあるのだろうか。

朝、鏡を見たら泣きはらしたひどい顔をしていた。
でも夕方にはいつものように夕食をつくり、
「お帰り」と家族に言っている。
誰にも何も気づかれない。
一緒に食卓を囲み、娘がつけたテレビをみる。
笑っているじぶんを「笑ってる」ともうひとりの自分が見ていた。