新・むかごの日記

高槻市に在住の、人間と自然が大好きな昭和1桁生まれの爺さんです。
出かけるときはカメラ連れ。
目標は毎日1記事です。

オカトラノオ:岡虎の尾(花のティアラ)

2006-06-30 06:25:18 | 植物観察1日1題
この時期ホタルブクロとともに山道でよく見かけるのがオカトラノオ:岡虎の尾(サクラソウ科オカトラノオ属)です。先っぽが垂れ下がる太く長い花穂を虎の尻尾に見立ててこの名があります。山野の日当たりのよい場所に生える多年草で高さ60~100cmで分岐せず、茎にはまばらに短毛、基部は赤みを帯びます。
花は夏に咲き、茎の上部に一方に傾いた総状花序をつくり多数の小さい白花を密につけ、下の方から順に咲き上がります。萼は5片に深裂し、狭長楕円形、花冠は5片に裂け5個の雄蕊と1個の雌蕊を持ちます。
蕾のときは白色ですが、花が開くと薄紫色の雄蕊で、写真のように全体が色づいているように見えることがあります。雄蕊と花冠が対生するのはサクラソウ科の特徴のひとつです。
方言でイヌノシッポバナ、ネコノシッポと呼ぶところもあるそうです。
アジサイで有名な生駒山のぬかた園地への道で見かけた写真のオカトラノオは、花穂の根元から先端まで咲き加減がちょうどよく、見事な円弧を描いていて、さながら花のティアラのようでした。


ホタルブクロ:蛍袋(巧妙な仕掛けで虫を呼ぶ)

2006-06-29 06:24:30 | 植物観察1日1題
子供たちがホタルを捕らえて花筒に入れて遊んだところからホタルブクロ:蛍袋と書くというのですが、それよりも提灯を意味する古語の“火垂る”を語源とするほうがより近いとの有力な説もあります。
ホタルブクロ(キキョウ科ホタルブクロ属)は、山野に生える高さ40~80cmの多年草で、茎や葉、萼に粗い毛があり、互生する葉は長さ5~8cmで、根生葉は花時には枯れてしまいます。
6~7月、白または淡紅色の釣鐘形の花を下向けにつけます。このように特殊な形をした花をつけるのは進化的に進んだ植物とされ、特定の送粉者との結びつきが強くなります。
雄性先熟で、蕾の段階で雄蕊は成熟して花粉を吐き出し、未成熟の雌蕊の花柱にべったりつきます。
やがて花が開き、訪れた蜂など昆虫たちはうつむいた花柱にしがみついて奥の蜜を吸うときに体いっぱいに花粉をつけます。この段階ではまだそこの雌蕊は未成熟で先端が閉じられたままなので受粉されません。花粉をつけた昆虫は花から花へと移るうちに、成熟して花柱の先端が3つに割れた雌蕊に行きあたると、そこで目出度く受精となります。自家受粉を避ける雌雄異熟というシステムです。
写真は少し失礼して下方からの盗撮です。内部にはすでに成熟し先端が3つに割れた花柱が覗いています。筒の内面には昆虫の足がかりになるまばらな毛が生えており、蜜源に到る蜜標が点々と描かれています。
学名のCampanyula 小さい鐘という意味のラテン語です。この仲間を英語ではベルフラワー、ドイツ語ではグロッケン・ブルーメ、いずれも鈴形の花の意味です。
ホタルブクロは萼片の間に3角形の付属体があり、上にめくれていますが、少し標高の高いところに生えるよく似たヤマホタルブクロは、付属体がなく、その部分がぷっくりと膨れているので区別できます。色の変化も多く、筒の先が開かないもの、筒が八重になったものなど多くの改良種があります。写真は庭で撮りましたが、区別点から見るとヤマホタルブクロの系統に属することになります。


アマリリス(赤い恋の花も今はいろいろ)

2006-06-28 06:17:13 | 植物観察1日1題
“赤い花びらアマリリス・・・”で始まる歌謡曲を知っている人は、このむかごと同年輩では多いはずです。西条八十詩、服部良一曲の“恋のアマリリス”は、一世を風靡したあの“青い山脈”のB面で、双葉あき子が歌っているのです。
今園芸店では、様々な形と色模様のアマリリスの改良種が花盛りですが、元来はメキシコから南アメリカ原産のいくつかの野生種を交雑させて作り出された球根草花です。
アマリリスはヒガンバナ科ヒペアストルム属(Hipeastrum hybridum)に属し、本来のアマリリスはAmaryllis belladonna といわれる1種1属の植物ですが、園芸界ではこれらを総称して以前からアマリリスと呼び慣らしています。
葉の幅は広くて光沢があり、花茎は中空で、初夏、花茎の頂きにユリに似た大形の花を開きます。
花は漏斗状で、6片からなり、水平または下向きにつきます。もともと中輪、剣弁ですが今は様々に改良されています。
写真は20年以上も我が家に咲く花で、真っ赤な色といい、尖った花弁といい、かなり原種に近いものではないかと思っています。

マタタビ:木天蓼(見せかけだけではない看板)

2006-06-27 06:04:27 | 植物観察1日1題
谷筋の斜面にマタタビ:木天蓼(マタタビ科マタタビ属)の葉先が白くなって、遠くからでも一目でそれとわかるほどよく目立つています。
やはり同じ時期に茎の先の葉が白くなるドクダミ科のハンゲショウ:半夏至(17年7月25日記事)(17年7月25日記事)と同じように、遠くからでも目立つようにして虫たちを誘っていると思われますが、(17年6月11日記事)ハンゲショウの花は地味なのに対して、マタタビの花は、それ自体、形も大きく美しくて芳香もあり、客寄せの看板などが要らないのではと思わせるくらいです。
雌雄異株で、雄花だけをつける株と両性花をつける株があります。6~7月に開く花は、直径2~2.5cmくらいの白い5弁で、多数ある雄蕊の葯は黄色でなかなかきれいです。(写真は雄花)
果実は塩漬けや果実酒に、木天蓼(もくてんりょう)と呼ばれる虫こぶは鎮痛や強壮の薬に用いられるなどマタタビは猫だけではなく人間にも重宝される木です。

シナノキ:科の木(信濃はシナノキの国)

2006-06-26 05:37:16 | 植物観察1日1題
信濃(古名しなぬ)の国に更科、立科、埴科などの地名が多いは、古くからシナノキ(科の木)の原生林が多かったからだといいます。榀とも書くシナノキ:科の木(シナノキ科シナノキ属)は、日本特産の落葉高木です。
香りのよい花からは良質の蜜がとれ、材はベニヤ、建築材に、また若木の樹皮は強くて榀布に織られたりします。シナはしなやかではなくアイヌ語のくくる、結ぶから出たという牧野説が有力です。
この木は誤って菩提樹の別名とされることがあり、それがまた同属の日本の菩提樹とも、本物のインドのそれとも違うということで混乱しています。
互生する葉はゆがんだハート型で鋸歯が目立ち5cmほどの長い葉柄があります。特徴は、花序の柄につくプロペラのような形の淡緑色の総苞葉です。この総苞葉は果実のころまでついています

ササユリ:笹百合(神に奉る淨らかな花)2006.6.25

2006-06-25 05:27:31 | 植物観察1日1題
普段あまり目立たない草花を間近に見たときの驚きはすぐ何とか記事にしようと思うのですが、
一目見てあまりにも整った美しい花になると、下手な写真や記事では失礼に当たるのではと躊躇します。
ササユリ:笹百合(ユリ科ユリ属)もそのひとつで、去年から今年にかけて何箇所かで出会いましたがつい後回しになっていました。
日本特産種で、本州中部地方以西から九州にかけて分布する山地の草原に自生するユリで、細い披針形の葉がササの葉に似ているのでこの名があります。早く咲く、あるいは5月に咲くからという別名のサユリ(小百合)もまた聞くからに美しい清純さを感じさせる語感です。
6~7月淡紅色~白色で漏斗状鐘形の花を1~7花横向きにつけます。色が美しく、芳香があり、気品があるユリですが普通では栽培が難しく、自生の数も年々減っているのは寂しいことです。
古事記にも登場する古くから親しまれた花で、6月17日に奈良市の率川神社で行われる三枝(さいぐさ)祭りは、本社である三輪山から摘み取られてきたササユリが主役の美しい伝統行事です。
(三枝とは佐葦(さい)でササユリの古語。神武天皇が三輪山の麓、ササユリの乱れ咲く狭井川のほとりで五十鈴姫命と結ばれ妻とする。のちこの五十鈴姫命は推古天皇が建てた率川神社に祀られた)
昔は2千本ものササユリが疫病除けとして参拝者に頒けられそうですが、自生が少なくなった今では、祭事に使われるササユリすらが、大神神社でバイオの力で栽培されたものが届くと聞きます。
写真のササユリは、花株が多からず少なからず、咲きごろも、咲いている周囲の様子も気に入って
やっと採用する気になりました。関東以北にはないというササユリ、これを見ることができるだけでも当地に住む値打ちがあるというものです。

イチヤクソウ:一薬草(街中にひそやか)

2006-06-24 06:26:08 | 植物観察1日1題

観察の先輩がイチヤクソウ:一薬草(イチヤクソウ科イチヤクソウ属)が咲いていると教えてくれました。それは高槻市内の住宅街に囲まれた僅かな緑地の木陰にひそやかに咲いていました。
一薬草の名は、茎を揉んで傷に塗ったり、全草を干したのを鹿蹄草といって、漢方の脚気の薬になるところからきています。
林内に生える多年草で、葉は根際に集まってつき、長い柄があり、広楕円形で長さ3~6cm、細かい鋸歯があります。
初夏、葉の間から20cmほどの花茎を立て、上部に2~10個の下向きの白い花をつけます。花冠は直径1.3cmくらいで、深く5裂し、雄蕊は10個、長い雌蕊は下に突き出て湾曲します。(下図)
漢名の鹿蹄草は菌金根植物で根毛が発達しないことからきています。
日本では、本州中部以北の山岳地帯に生えるベニバナイチヤクソウなど数種類が野生します。
菌類と共生の根菌植物で、栽培はきわめて困難と聞きます。注意すれば遊歩道からも見えるこの花が心配になって、そっと枯れ枝で覆って帰りましたが、よいことをしたのか、いけないことをしたのか少し気にしています。

ツタバウンラン:蔦葉海欄(捨て去りがたい雑草)

2006-06-23 05:34:55 | 植物観察1日1題
何気なく雑草図鑑をめくっていると‘あれっこれか’と気になっていた草に行き当たりました。
ツタバウンラン:蔦葉海欄(ゴマノハグサ科キンバラリア属)です。
妻がハンギングの鉢の寄植えに使っていたのを知っていたのですが、いつの間にか庭のあちこちにはびこっているのです。改めて妻に尋ねると、買ったものではなく、もともと庭に自生していたのを使ったのだといいます。
図鑑によると、ヨーロッパ原産で、大正初期に日本に入り、ロックガーデン用に植えられたのが野生化した帰化植物で、いまや、いたるところの道端や石垣の間、ブロック塀の隙間などに生育しているとしています。
つる状になって地上をはい、長さ10~40cm。名前の由来であるツタに似た葉は、掌状に5~7に浅く裂けます。春から初夏にかけて葉脇から花柄を伸ばし、白色~淡青色の花をつけます。
ムラサキサギゴケやトキワハゼによく似た花をつけるこの雑草、抜いてしまうのは少し惜しい気がしています。 

ウツボグサ:靭草(荒野に立ち尽くす落武者)

2006-06-22 06:14:46 | 植物観察1日1題
家の前の道路を隔てた土手に、一面ウツボグサ:靭草(シソ科ウツボグサ属)の蕾が立ち上がって楽しみにしていたのに、ある日、市の草刈業者が来て、機械で一斉になぎ倒してしまいました。
それでも、立ち木の根元に1本だけ僅かに刈り残されていたのがまもなく花を咲かせました。
ウツボグサは山野の草地や道端に生える多年草で、葉は対生し、長さ10~30cmの長楕円形。6~8月、茎の先に花穂を作り、紫色の2唇形の花を密につけます。苞片の間から出る花は長さ2cmくらい、上唇は前に曲がり、下唇は開出して反曲します。
靭草とは、花穂を武士が矢を入れるうつぼ(靭)に見立てたものです。夏、花が枯れ黒っぽくなってもそのまま立っていることから、カコウソウ(夏枯草)の別名があり、利尿剤としても用いられます。花が終わるとまもなく茎の基部から匍匐枝を出します。
刈りつくされた土手に一本だけ咲くウツボグサは、さながらたった一人生き残った落ち武者が、激しかった戦の場に、矢も尽きた靭を背にして立っている風情です。
乱れ咲く群生もいいのですが、昨日のオカタツナミソウと同様、独りだけ咲く姿も捨てがたいものがあります。


オカタツナミソウ:丘立波草(流れを背に丘の花)

2006-06-21 06:18:26 | 植物観察1日1題
高槻の北東部川久保渓谷の道端に咲いていた草花です。
タツナミソウ:立浪草(17年5月3日記事)の仲間のオカタツナミソウ:丘立浪草(シソ科タツナミソウ属)と見立てました。ホナガタツナミソウ:穂長立浪草ではないかという人もいましたが、こちらは絶滅危惧種とかで、そんじょそこらにないはずと勝手に判断しました。図鑑では日本には種類が多くまぎらわしいとあります。
あやふやなまま記事にしたのは、渓谷を背に1本だけ涼しげに立っている姿が気に入って、没にするには忍びなかったのです。
オカタツナミソウは、丘陵の縁などに生える多年草で、高さ10~50cm、葉は長さ1.5~5cmの広卵形、縁に粗い鋸歯があります。花は5~6月、淡紫色で長さ2cmほどの筒状の唇形花を基部で曲がって上に立ち上げて咲かせます。

ニワゼキショウ:庭石菖(名前は大きいが)

2006-06-20 05:59:03 | 植物観察1日1題
日当たりのよい芝生や草地に生えて、あちこちで短い茎の先に小さい花をつけているのが、ニワゼキショウ:庭石菖(アヤメ科ニワゼキショウ属)です。
北アメリカ原産で、明治中期ごろ、始めは植物園にあったのが野生化して各地にひろがった多年草です。
葉がサトイモ科のセキショウに似ているというのでこの名がありますが、全体の様子からいうとあまりしっくり来ない名です。ナンキンアヤメの別名もあるそうです。
花期は5~6月、花は直径1~1.5cmと小さく、淡紫色、紅紫色、白地に紅紫色のすじが入るものなどがあり中心部は黄色です。
花は1日でしぼみますが、茎の先に細い花柄を出し次々と花を咲かせるのでずっと咲きっぱなしのように見えます。

ネジキ:捻木(花は下に実は上に)

2006-06-19 06:21:50 | 植物観察1日1題
この時期山道を歩いていると白いご飯粒のような花があちこちに散っているのに出会います。
普段あまり目立たないのに、花が散る頃になると、こんなにも多かったのかと思わず上を向いたりします。事実この花の形からこの木を飯粒の木と呼ぶ地方もあるそうです。
幹が捩れているのでこの名がついたネジキ:捩木(ツツジ科ネジキ属)で、山地の林縁など日当たりのよい場所に生える落葉低木です。5~6月、葉のつけ根に長さ4~10cmの花穂を横向きに出し、白い壷型の花が多数下向きにつきます。花は長さ8mmほど、雄蕊は10個、軟毛が密生し、先端部分がわずかに開き、芳香があります。
花が散ると花柄が上向きになり、果実は上を向いて成熟するのは、同じツツジ科のドウダンツツジと同じです。

キンシバイ:金糸梅(短い糸の・・・)

2006-06-18 06:02:29 | 植物観察1日1題
キンシバイ:金糸梅(オトギリソウ科オトギリソウ属)は、中国南部原産で、昨日の記事のビヨウヤナギに遅れて江戸時代中期に渡来し、庭や公園に栽培され、野性化しているのも見られる常緑低木です。近縁種のビヨウヤナギとよく似ていますが、葉は小型で3~4cmの卵状長楕円形で裏面に油点があります。
花弁が隙間なく重なり、雄蕊の花糸は短く、雌蕊の花柱は基部近くから離生しているなどがビヨウヤナギと違う点です。
オトギリソウの仲間は昨日のビヨウヤナギほどではないとしても雄蕊が長いものが多いのですが、キンシバイの雄蕊は短く、多数あるおしべは、ビヨウヤナギと同じように基部で約60本ずつ5個の束に分かれています。
花の形がウメの花に似て、花糸が黄色なので金糸梅といわれるのですが、昨日書いたように美容柳とよく取り違えられます。名前が入れ替わっていたほうが分かりやすいみたいです。
黄色い花でよく目立つのですが、近づいて見ると赤茶けた花殻が花後も枝に残るのが少し目障りです。

ビヨウヤナギ:美容柳(取り違えられの花)

2006-06-17 06:27:52 | 植物観察1日1題
いまごろあちこちの庭や公園で、枝先に多数の雄蕊がめだつ黄色い花がビヨウヤナギ:美容柳・未央柳(オトギリソウ科オトギリソウ属)です。
中国中南部原産で日本には江戸時代以前に渡来、古くから庭に植えられてきた、半常緑低木で、葉は十字対生形につきます。6~7月径4~6cmの黄色い花をつけますが、何といっても目立つのは花弁上に群立する多数の長い雄蕊です。この雄蕊は基部では5個の束になっています。雄蕊より長い中央の花柱(雌しべ)の先も5裂しています。
花が美しく、葉が柳に似ていることから美容柳の名があるのですが、柳のようには枝が枝垂れません。
同時期に咲くよく似たキンシバイ:金糸梅は、(明日の記事)ビヨウヤナギのように金色の長い蘂がないのに、“金糸”の名がついていて、枝が柳状にしだれるので、この両者はよく取り違えられることが多いみたいです。