新・むかごの日記

高槻市に在住の、人間と自然が大好きな昭和1桁生まれの爺さんです。
出かけるときはカメラ連れ。
目標は毎日1記事です。

<オオヒキヨモギ:大蟇蓬(間に合った最後の花)

2011-09-29 18:49:19 | お知らせ」

高槻市北東部の山間に大阪府のRDBで準絶滅危惧種、環境省カテゴリーで絶滅危惧種Ⅱ類に指定されているというオオヒキヨモギ:大蟇蓬(ゴマノハグサ科ヒキヨモギ属)が見つかったという話を聞き行ってきました。
日当たりのよい草地などに生え、高さは30~70㎝の1年草の半寄生植物で、蟇蓬という和名は、下部の葉が蓬に似ているが別物であるという意味だそうです。
話を聞いたのが遅く心配したのですが、花後の特徴ある萼筒ばかり目立つ中に、よく探すと幸いにも茎先にいくつかの花が残っていました。
花の形は何やらつかみどころのなく、どういう風に写真を撮ったらよいかわからないまま写したのがこの写真です。
淡黄色の花冠は長さ3㎝足らずで、上唇の先端部分にだけ茶色っぽい紅色が入っています。上唇は内側に巻き込むようになり、その中に雄しべが隠れています。右側の下唇が持ち上がり、花の内部は隠れて見えません。どうやら花弁が左右非対称というこの花の構造がよくわからないまま、右向きの花を撮ったのは正解だったようですが、ぼけ写真が残念です。
ちなみに仲間のヒキヨモギハは、花弁が左右対称だそうです。


ハイイヌガヤ:這犬榧(匍匐して雪に耐える) 

2011-09-28 18:01:44 | お知らせ」

三瓶山北の原の遊歩道を歩いていると、ひざ丈ほどの低い木が実をつけていました。
ガイドさんによると多雪地帯に特有のハイイヌガヤ:這犬榧(イヌガヤ科イヌガヤ属)とのことでした。
北海道、本州の日本海側の多雪地帯に適応したイヌガヤの変種で、環境に適応して匍匐形の樹形になっています。幹の下部は地面を這い先端は斜上します。
種子は開花した翌年の秋に熟し、外種皮は柔らかくて甘みがあり食べられるそうです。
ユキツバキ、ヒメアオキ、エゾユズリハなどの日本海要素の常緑匍匐性植物の仲間で、その樹高は、写真の葉の間から見える地面の近さからでも見て取れます。

ネバリタデ:粘り蓼(五感を駆使して?)

2011-09-27 17:33:45 | お知らせ」

植物観察には五感を駆使してと、よくいわれます。その言葉を地で行って思いがけず成果?があったのが三瓶山北の原の草原でのことでした。
何の変哲もないようなタデ花が咲いていて、ぴったり思い出せる品種が思い浮かばす、何気なく花穂をつまんでみると粘り気があります。口から出まかせに「粘り蓼と違うか?」といいますと、誰かが図鑑を開いて「ネバリタデというのがある」いうではありませんか。
図鑑には、ネバリタデ:粘り蓼(タデ科タデ属)は、茎の上部と花柄の一部から粘膜をだし、触ると粘るのでこの名がある。山野の日当たりのよいところに生える高さ40~80㎝の1年草で、葉は長さ3~5㎝の披針形~広披針形。花序は長さ3~5㎝で、淡紅色または白緑色の花をまばらにつける。とありました。
ガイドの先生も苦笑いの一幕でした。

イワギリソウ:岩桐草(岩場に生える希少種)

2011-09-25 10:01:42 | お知らせ」

立久恵峡(出雲市乙立町)の温泉宿御所覧場の朝、出発するバスを見送りに出てきた宿の主人が教えてくれたのが、水しぶきのかかる高い岩場に生えているイワギリソウ:岩桐草(ゴマノハグサ科イワギリソウ属)でした。
近畿地方以西の深山の渓谷の岸壁に生えるというこの草は、自生のものが少なく今では珍しい草になっているそうです。
毛の多い葉や花の形がキリに似ていて、岩上に生えるのでこの名がある多年草で、葉は根元に群がってつき、広卵形で先はやや尖ります。5~6月、長さ10~20㎝の花茎の先に、紅紫色の長さ2㎝ほどの漏斗型の花をつけます。
帰って図鑑を見ると、撮影場所はずばり出雲市立久恵峡とありました。今後自生のこの草を見る機会もないと思い、望遠でぼけた最低の写真ですが備忘的に取り上げました


オッタチカンギク:乙立寒菊(この町だけの固有種)

2011-09-24 16:31:06 | お知らせ」

立久恵峡(出雲市乙立町)を巡る遊歩道の岸壁に何かの菊が生えていました。まだ蕾も見えていないので、カンギクの仲間か何かとあまり気にも留めずに通り過ぎましたが、あとから宿の御所覧場の主人の話で、オッタチカンギク(キク科キク属)といって、ここにしかない希少種だということを知り、急いで写真を撮りにゆきました。
オッタチと聞いて、草が直立するところからきているのかと思いましたが、そうではなくオッタチは“乙立”で、立久恵峡があるこの町の名前でした。
帰って図鑑を引くと、“島根県出雲市乙立町で見つかった。葉が小さく3中裂する。総苞外片は線形”と、確かに載っていました。
花や果実がないとあまり見向くことがないむかごですが、知らずに行ったところでこんな珍しい植物に会ったことがうれしく、葉だけのこの草をとり上げました。

オオメノマンネングサ:大雌の万年草(立久恵峡の固有種)

2011-09-23 06:53:33 | お知らせ」

三瓶山方面への自然観察の宿は山陰の層雲峡といわれる立久恵峡(出雲市乙立町)の温泉宿「御所覧場」でした。(“むかごの高槻”参照)
川に面した宿からは、眼前に奇岩、柱石群がそそり立つています。この岩場に群生していたのが、オオメノマンネングサ:大雌の万年草(ベンケイソウ科キリンソウ属)でした
宿の主人の話によると、このあたりにだけ分布する地域の固有種で、環境省の準絶滅危惧種(NT)に指定されているといいます。
多肉質の葉は互生し、茎は赤色を呈します。6月ごろ咲くという花の殻がまだ残っています。
よく似た名前の仲間で、長さ5~15㎜の円柱形の葉を互生するメノマンネングサ(雌の万年草)と、長さ2~3㎝の線形の葉をする4輪生オノマンネングサ(雄の万年草)がありますが、葉の形などがメノマンエングサに近くて、大形ということでしょうか。

ヒロハゴマギ:広葉胡麻木(2種類の2色効果) 

2011-09-22 06:46:47 | お知らせ」

三瓶山麓北の原遊歩道沿いになぜか多いヒロハゴマギ:広葉胡麻木(スイカズラ科ガマズミ属)に赤と黒の果実が実っていました。
主として防衛物質として匂いを持つ植物の多い中で、名の通り食品の香りを持つのがこのゴマギで、枝や葉を傷つけると誰でもわかるゴマの香りがします。
各地の山野で湿潤地に好んで生える落葉低木で、高さは2~5m、対生する葉は長さ5~13cmで、表面にはしわが多いが光沢があり、ごわごわした感じがあります。
ここのゴマギは、葉の形から別名オオバゴマギまたはマルバゴマギとも呼ばれるヒロハゴマギとしましたが、図鑑では“ゴマギの分布域に接する福島、岐阜、京都、兵庫、鳥取などではしばしばゴマギとの交雑によって生じたと考えられる中間型が観察される”とありますので、こちらに該当する可能性も考えられます。
晩春、若い短枝に散房花序に小さい白い花を多数つけ、果実は8月ごろから赤くなり、完全に熟すと黒くなります。
果実食鳥に種子散布を依存している植物がつける果実は、ほとんどが匂いを持ちませんが、赤・黒・青・橙・紫・白・緑など実に多様な色を持ち、中でも赤と黒の占める比率が高く、この色が特に果実食鳥に好まれていると思われています。
写真の果実は赤と黒が混在しています。これは赤から黒へと変化することで、“時間的”な2色表示効果を狙い、加えて熟したあとは黒い果実と赤い果序で“形態的” 2色表示効果をと、両方をねらう巧妙な戦略をとっているとする説があります。
この時間的と形態的の2種類の2色表示を併せ持つ例には、ヤブデマリ、ミズキ、ウワミズザクラなどがあります。

シャクチリソバ:赤地利蕎麦(そば通の舌に合わない?)

2011-09-20 06:41:11 | お知らせ」

道端にシャクチリソバ:赤地利蕎麦(タデ科ソバ属)の花が咲いています。
インド、中国の高地原産の多年草で、1年草のソバと違って宿根ソバとも呼ばれます。
原産地ではそば粉を利用するほか葉も野菜として食べるそうですが、日本では今はほとんど栽培されず、各地で野生化しています。
高さは70㎝以上にもなり、互生する葉は基部が横に張り出した三角形です。
秋に上部の葉脇から長い花茎を出し、2~3分岐して密に白い花をつけます。花被片は6個、雄蕊8個の葯は紅色で目立ちます。
果実は長さ7~9㎜で、5~6mmのソバより大きく、栗褐色に熟します。
日本で栽培されなくなったのは、味にうるさいそば通の舌に合わなかったのでしょうか。

フウセンカズラ:風船葛(風船で種子散布) 

2011-09-18 09:30:30 | お知らせ」



何年も前に家の周りの花壇に蒔いたフウセンカズラ:風船葛(ムクロジ科フウセンカズラ属)が、毎年こぼれ種で芽生えて石壁を這いあがり、風船形の果実をたくさんつけます。
今年も、自然工作好きの二人の人から種子の予約が入りました。
北アメリカ原産で、本来はつる性の多年草ですが、わが国では多年草として栽培されています。
花は小さくて目立ちませんが、風船形の果実が面白く、白いハートのマークがつく種子とともに人気がある栽培種です。
7~8月、各葉脇から長い花柄をのばし、先端に直径4㎜ほどの白くて小さい4弁花を総状につけ、花柄には細い巻きひげを伸ばし他物にからめつかせます。よく見ると大2個小2個の花弁状の萼片があり、この萼片が果実の付け根に宿存することから、フウセンカズラの風船は、ホウズキのように萼が大きくなったものでなく、子房がふくらんだものだと分かります。
3稜の果実を切断すると、3室に分かれ(3心皮)、部屋ごとに1個の種子があり、ハート形の紋は心皮についている部分であることが分かります。
英名でもBalloon vineいわれるフウセンカズラの果実は、風船のように風に乗って転がり種子散布を行います。

フサフジウツギ:房藤空木(野生化が進む)

2011-09-15 05:56:22 | お知らせ」

池のほとりにフサフジウツギ:房藤空木(フジウツギ科フジウツギ属)が咲いています。
中国原産の落葉低木で、明治時代に渡来し、属名のブッドレア((Buddleja)の名で広く栽培されているほか、各地で野生化したものも見られます。
高さは1~2m、葉は長さ10~20㎝の披針形で、裏面には灰白色の毛が密生します。
花期は7~10月、長さ20㎝ほどの穂をつくって香りのよい花が多数つきます。花は約1㎝ほどの筒状で、紅、紫、紅紫、白、などの多数の変化があります。
日本在来のフジウツギは05年7月16日に取り上げていますが、茎が丸いフジフサウツギと異なり、四角形で翼があるほか、花が穂の一方に偏ってつくなど、いくつかの相違点があります。

ニッポンイヌノヒゲ:日本犬の髭("日本"の名はなぜ)

2011-09-13 09:07:53 | お知らせ」

宝塚市北部大原野にある市立宝塚自然の家に松尾湿原と呼ばれる湿原があります。
宝塚市の指定文化財というのですが、それにしてはあまりにもミニ湿原で、少し期待はずれでした。
たくさん生えていたのが、尖った苞が目立つ植物でした。一見して花が終わって苞だけが残った花殻かと思いましたが、よく見ると苞の中に花が見えます。
帰って調べてみるとニッポンイヌノヒゲ:日本犬の髭(ホシクサ科ホシクサ属)というのがありました。
湿地に生える1年草で、頭花は5稜がある高さ15~22㎝の花茎の先に1個つきます。花は直径6~8㎜の半球形で、総苞片は披針形で先がとがり、頭花よりはるかに長くなります。花の中心部に雄花があり、その周りに雌花がつき、雄花の雄蕊は6個で葯は黒色です。
それにしても、この草(だけ)にわざわざニッポンという名がついているのはなぜか、どこにも書いていませんでした。

シシラン:獅子蘭(ランの名がつくシダ類)

2011-09-12 06:06:32 | お知らせ」

植物学的な分類が未発達な時代に名前がついた植物は、多くは形態的な面から名前がついて、科名とは異なる名前になっている例は数多くあります。
中でも、スズラン、ノシラン、ノギラン、ノシランなどユリ科に属しながら、ランと呼ばれるものが多く見られます。
清滝川の沿いの岩場に生えていたのがシシラン;獅子蘭で、(シシラン科シシラン属)で、こちらはランの名がつくシダ類でした。ほかにシダではマツバランなど科として立てられたものがあります。
シシランは、陰湿な岩や木の上に生えるシダで、葉は細長くて紐状、厚くて長さは50㎝ほどにもなり、一見ランの葉のようにみえます。
中肋の裏面は明瞭に隆起し、胞子嚢群は葉の裏のふちの溝の中にあります。

オヒガンギボウシ:お彼岸擬宝珠(清滝川に咲く) 9月10日

2011-09-10 13:48:08 | お知らせ」

お彼岸ごろに咲くというのでこの名があるオヒガンギボウシ:お彼岸擬宝珠(ユリ科ギボウシ属)を見に、洛北清滝川へ行ってきました。
山地の湿った岩場や渓谷沿いの岸壁、ときに樹木の幹や枝に着生して育つ多年草で、イワギボウシの変種とされ、西日本に分布しています。
ギボウシの名は、つぼみを橋の欄干の擬宝珠に見立てたもので、地域や生育環境によって高さや、花の形や色、葉の形など非常に変化が多く、多数の園芸種が生まれています。
清滝川沿いの岩場に咲く小形のオヒガンギボウシは、ようやく秋めいた風に、繊細な紫色の一日花を震わせていました。

アスパラガス(栄養ドリンクの素)

2011-09-09 06:11:09 | お知らせ」

畑の片隅に忘れられたように残っているアスパラガス(ユリ科クサスギカズラ属)の果実が色づき始めていました。
食用に栽培されているアスパラガスはヨーロッパ原産で、和名はオランダキジカクシ、日本産の野生種にはキジカクシ、クサスギカズラ(11年7月19日記事)などがあります。
茎から出ている細い葉のように見えるのは、茎が細く枝分かれしたもので、葉の役割を代行する「葉状茎」「仮葉」葉性茎」などと呼ばれます。
葉は退化し、わずかに鱗片状となって茎に並んでつきます。
新芽に土をかぶせて黄白化させたホワイトアスパラガスは主として缶詰に、光に当てて緑化した新芽はグリーンアスパラガスで、新鮮野菜として流通します。
栄養ドリンクなどに使われているアミノ酸のひとつのアスパラギンが豊富に含まれていますが、その名はもちろんアスパラガスに由来します。

ナツメ:棗(茶道具の名前に)

2011-09-07 09:39:08 | お知らせ」

家の前の堤防に誰が植えたのか1本のナツメ:棗(クロウメモドキ科ナツメ属)の木があり、果実が暗赤色に色づきはじめました。
中国では重要な果樹のひとつですが、実際は西ヨーロッパ、西アジア原産といわれる高さ10mくらいの落葉小高木で、人家で栽培されます。ナツメの名は夏に芽を出すから来ているといいます。
葉は長さ2~4cmで小枝に互生し、羽状複葉に見えます。6月ごろその葉のつけ根に黄緑色の目立たない小花を数個ずつつけます。
果実は長さ2~3cmの楕円形で、秋に暗赤色に熟します。この実は生で食べても美味しく、乾燥して菓子などに用いるほか薬用にもされます。
茶に湯で使われる薄茶入れの棗の名は、この果実の形からきていますが、茶道具としては平棗、長棗、瓢棗など変形の棗もあります。(06年7月5日記事)
ところでいかにも古い話ですが、老人には懐かしい“旅順開城約なりて…”で始まる文部省唱歌「水師営の会見」(佐々木信綱作詞、岡野貞一作曲)の2節で“庭に一本(ひともと)棗の木”とナツメが歌われています。しかし日露戦争の最激戦地だった旅順合戦で勝利した乃木大将が露軍のステッセル将軍と会見したのは明治38年1月5日といいますから、葉も実もない裸木のはずで、たぶん乃木大将は気づかなかったでしょう。
昨年水師営の会見所跡を見学したとき、庭の片隅に何代目かというナツメの木が本当に植わっていました。