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子供のとき、田舎の隣家が、きれいだと思って植えたら、あちこちに殖えて、根絶やしにできず困っているといっていたのをなぜかいまも覚えています。
いま思えば、その花はムラサキカタバミ:紫傍食(カタバミ科カタバミ属)でした。
南アメリカ原産で、世界に広く帰化し、日本へは江戸時代に渡来し、各地の畑や草地に生える多年草となって広がり、害草となっています。
地下に鱗茎があり、小球をつけて繁殖します。葉はすべて根生で、花は夏、径1.5~2cmで5弁の紅紫色です。葯は白色で花粉はできません。
別名にキキョウカタバミもあるそうですが、手元の牧野図鑑では学名がOxaris martiana Zucc.で、小種名は戦争の意味、繁殖力が強くて駆除が難しいことからきているそうです(最近の図鑑では小種名corimbosaが多い)。せっかくきれいな花を持ちながら、殖えすぎるのが仇で嫌われ者になっているのはすこし気の毒です。
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公園にチシャノキ:萵苣の木(ムサキ科チシャノキ属)の白い花が咲いています。
若葉が食用になり、その味が野菜のチシャに似ているのが名前の由来とされ、沖縄地方では各戸に植えて食用にしているといいます。
樹皮や葉が柿ノ木にているところから、カキノキダマシの別名でも知られていますが、本名の萵苣の木は、エゴノキの別名でもあり、歌舞伎の伽羅先代萩に出て来るチシャノキは、エゴノキなので、少々紛らわしくなっています。
暖地の山地に生える落葉高木で高さは10~15m、樹皮は鱗片状に剥がれます。互生する葉は長さ5~12cmの倒卵形で表面にまばらに毛があります。
6~7月、枝先に小さな白い花を密につけます。
石果は小球形で、黄橙色に熟し、これも食べられます。
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6月4日の乗鞍五色ケ原、新緑の森の所どころを彩っていたのは、すこし盛りを過ぎたムラサキヤシオ:紫八汐(ツツジ科ツツジ属)でした。
山地に生える落葉低木で、よく分枝し高さ2~3mになります。
花期は4~6月、葉の展開前に濃い紅紫色の花を開きます。花は直径4cmほどの広い漏斗状で、雄蕊は10個、下側の5個は長く花の外に突き出ます。
和名の紫八汐(八染、八塩とも)は、回数を重ねて染料に漬けて、紫色に染めあげたという意味だそうです。
愛子様のおしるしで有名なのがシロヤシオ:白八塩(別名ゴヨウツツジ)ですが、名前の由来からいうと白く染めるというのは妙なので、ムラサキヤシオが本家で、これに似ている白いツツジなのでシロヤシオいうことになったのでしょう。
(五色ケ原シリーズ終わり)
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コキンバイ:小金梅山(バラ科コキンバイ属)は、本州中部地方以北、北海道の山地の林内に生える多年草で、根茎は細く地を這います。
葉は3小葉からなり、長い柄があり、両面ともに毛、ふちには不ぞろいな鋸歯があります。
5~6月、花茎の先に直径2cmほどの黄色の5弁花を1~3箇つけます。花弁はほぼ円形、萼片は5個、同数の副萼片があります。
和名はキンバイソウに似て小型であることによります。
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葉が亀の甲羅のような形で、茎が真っ直ぐに立つのでこの名があるタチカメバソウ:立亀葉草(ムラサキ科キュウリクサまたはタビラコ属)は、山地の谷沿いなどの湿地に生える多年草です。茎はやわらかく、高さ20~40cmになり、互生する葉は長さ3~5cm、幅1.5~3cmの卵円形で先は尖ります。
5~6月、白色または淡い青紫色を帯びた花をつけます。花穂は茎の先にふつう2個つき、花の直径は7~10mm、花冠は5裂平開し、花筒上部に黄色っぽい付属体がつきます。
雨もよいの五色ケ原で、タチカメバソウの小さい花はみずみずしい白色でした。
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クルマバツクバネソウ:車葉衝羽根草(似ていると片付けないで)2008.6.17
ツクバネソウが五色ケ原のあちこちに咲いていました。
その間に、ツバネソウによく似ているが、少々大振りで、葉の数もおおいクルマバツクバネソウ:車葉衝羽根草(ユリ科スズラン属)が見つかりました。
葉が6~8個輪生するのを車輪に見立てて車葉の名があります。
大きさと葉の形で容易に両者を区別できるのですが、よく見ると花の形も違っています。
緑色の花弁の内側には黄緑色の糸状の花弁があり、また雄しべの黄色い葯の先には葯隔と呼ばれる糸状のものが突き出ているのです。
ツクバネソウの花も凝ったつくりですが、クルマバツクバネソウはその上をいっています。
08年5月19日記事のツクバネソウと比較して見てください。弟分(?)のツクバネソウに差をつけようと兄貴分としてクルマバツクバネソウが頑張っているのでしょうか。
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カモメラン:鴎蘭(秘境・乗鞍五色ケ原の花々②)2008.6.15
乗鞍五色ケ原は、乗鞍岳からの雪解け水が伏流水となって、多数ある渓筋に湧出しています。カモメラン:鴎蘭(ラン科カモメラン属)も、そんな湿ったところに生えています。
葉は1個根生し,長さ4~6cm、幅2~5cmの広楕円形です。
花はまだ蕾でしたが、淡桃色で2個ずつつき、花の付け根に小型の葉に見える苞がついています。
花が開けば、直径1cmほどで、唇弁は幅の広い楕円形で、紅紫色の斑点があり、花の後ろには長さ1cmほどの細い距が突き出ます。
和名は花の姿をカモメに見立てたもので、別名にイチヨウチドリ(一葉千鳥)があり、これも水鳥にちなみます。
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6月初め、乗鞍北西山麓に広がる秘境・五色ケ原を探訪してきました。
中部山岳国立公園の南端に位置する五色ケ原は、3000haに及ぶ広大な森林地帯で、ごく最近までほとんど手付かずの希少な自然が残っていて、いまも地元のガイドの先導なくては入山できない文字通りの秘境です。
深い森林地帯が続き、お花畑的なものこそありませんが、亜高山特有の植物たちが迎えてくれました。そのいくつかをシリーズでお届けします。
ツバメオモト:燕万年青(ユリ科ツバメオモト属)は、本州奈良県以北、北海道の山地帯~亜高山帯の林内に生える多年草で、葉はすべて根生し、倒卵状長楕円形でやや厚くてやわらかく、長さ15~30cm、幅3~9cmになり、名のとおりオモトに似ています。
花茎は高さ20~30cmになり、白い小さな6弁の花を10個ほど総状につけます。
花のあと花茎は伸びて40~70cmにもなり、直径約1cmの液果は、はじめ瑠璃色、熟すと藍黒色になります。この実の形をツバメの頭に見立ててこの名がついたという説があるそうですが定かではありません。
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この草にこの名前をつけたのは、中国の歴史に詳しい人だったのでしょう。
樊膾は、漢初の武将で、高祖劉邦に仕えて戦功を立て、鴻門の会には劉邦の危機を救いました。
ハンカイソウ:樊膾草(キク科メタカラコウ属)の名は、他の草に抜きん出てすっくと伸びる堂々とした姿を、この漢の名将に見立てたものです。
山地のやや湿ったところに生える大形の多年草で、高さは70~150cm、葉は長さ幅ともに30cmほどで、掌状に深く切れ込みます。裂片はさらに羽状に中ほどまで切れ込み、ふちには粗い欠刻状の鋸歯があります。
6~8月、黄色の頭花が散房状に2~8個つき、直径10cmほどになります。
写真の花は咲き始めで、すこし小さいですが、全体としての草の姿は、樊膾草の名にそむかないものでした。