新・むかごの日記

高槻市に在住の、人間と自然が大好きな昭和1桁生まれの爺さんです。
出かけるときはカメラ連れ。
目標は毎日1記事です。

ハガクレツリフネ:葉隠釣舟(剣山の花⑥) 

2012-08-17 13:40:19 | 植物観察1日1題

剣山のリフト乗り場の付近にハガクレツリフネ:葉隠釣舟(ツリフンソウ科ツリフネソウ属)が咲いていました。
“武士道とは死ぬことと見つけたり”で知られる「葉隠」は、江戸時代中期肥前国佐賀鍋島藩藩士・山本常朝が武士としての心得について述べたことを記録した書物ですが、植物のハガクレは単に花が葉の陰に隠れるように咲くという意味です。
山地の水辺や林内に生える高さ30~80cmの一年草で、葉は互生し、長さ4~15cmの菱状楕円形で鋸歯がありツリフネソウに似ていますが、両面脈上に白色の縮れ毛が多いことが異なります。
花序は葉脇から垂れ下がり、花は淡い紅紫色で濃い斑点があります。距は内側に曲がりますがツリフネソウのように巻き込みません。

ミヤマアキノキリンソウ:深山秋の麒麟草(剣山の花⑤) 

2012-08-16 12:43:12 | 植物観察1日1題

剣山の頂上付近、笹原の中の遊歩道脇にミヤマアキノキリンソウ:深山秋の麒麟草(キク科アキノキリンソウ属)が咲いていました。
亜高山帯~高山帯の草地や礫地に生える多年草で、高さは15~30㎝、根生葉はロゼット状で、翼のある長い葉柄があります。
頭花は散房状多数集まってつき、黄色で直径1.2~1.5cm、舌状花は雌花で、筒状花は両性花、そう果は無毛またはわずかに短毛があります。
平地でよく見かけるアキノキリンソウとは別亜種とされており、コガネギクの別名があります。

タカネオトギリ:高嶺弟切(剣山の花④)

2012-08-15 12:45:01 | 植物観察1日1題

剣山の登山道沿いのあちこちに咲いていたのがタカネオトギリ:高嶺弟切(オトギリソウ科オトギリソウ属)です。
山地の草原に生える多年草で、茎は叢生し高さ10~30cm、葉は狭長楕円形で長さ1~2.5cm。おおくは腺点がなく、まれに明点や黒点があります。
花期は7~8月、花弁はゆがんだ長楕円形で長さ約1cm、明線が入り縁には黒点が少しあります。花弁の先には微細な鋸歯があります。
葉が細長く、その割に花が大きいのがタカネオトギリの特徴です。

コモノギク:菰野菊(剣山の花③)

2012-08-14 07:48:10 | 植物観察1日1題

剣山山頂近くに咲いていたのがコモノギク:菰野菊(キク科シオン属)です。
本州近畿地方および四国の山地の日当たりのよい露出地に生える多年草で、根茎は短く、根生葉は束生しその先端は高さ10~20cmの花茎として伸びて、頂きに少数の青紫色の頭花が散房状に集まります。
花は盛夏から秋、径3cm内外の頭花を開きます。
三重県菰野町で1887年に発見されたのでこの名前があり、菰野町のシンボルの花となっています。

シコクフウロ:四国風露(剣山の花②) 

2012-08-13 09:06:27 | 植物観察1日1題

剣山のいたるところに咲いていたのがシコクフウロ:四国風露(フウロソウ科フウロソウ属)です。
別名イヨフウロ:伊予風露で四国特産のように思えますが、本州中部地方以西、四国、九州の深山に生える多年草で、和名は初め四国産の標本に基づいたものとされます。
花は夏、2花からなり径3cmくらい、花弁は濃紅紫色の脈が目立ち、花弁の先が3裂するものと、しないものがあります。

キレンゲショウマ:黄蓮華升麻(剣山の花①"天涯の花"を剣山に見る) 

2012-08-12 09:06:06 | 植物観察1日1題




昨日、宮尾登美子の小説”天涯の花“で一躍知られるようになったキレンゲショウマ:黄蓮華升麻(ユキノシタ科キレンゲショウマ属)を見に行ってきました。
15年ほど前、5月の連休に剣山に登った時はこの小説はまだ世に出ていなく、植物に関心もない時だったので、この花の名前を知る由もありませんでした。
植物に関心を持ち始めて以来一度は見ておかねばとの思いが募り、今では日帰りが可能になったバスツアーに参加しました。
剣山(1955m)の頂上へ登ったあと、下山途中から登山道を離れて、昔からの行場となっている岩場に下ります。自生地のキレンゲショウマの花は、少し前の小雨に濡れて鮮やかな黄色に光っていました。
キレンゲショウマは、奥多摩御嶽神社付近に生えるキンポウゲ科のレンゲショウマ(08年9月6日記事)に似て花が黄色なのでこの名があるユキノシタ科の大形多年草で、西日本の石灰岩帯の特産で、やや湿った林下や傾斜地に生え、高さは60~120cm、茎は分岐せず、葉は対生し、掌状で径12~15cm、長い柄があります。
夏、茎の頂部から花柄をだし5弁の鐘形の美しい黄色花を下向きにつけます。雄蕊15本、雌蕊の花柱は3~4本あります。
この群生地は平成12年世界的な希産植物として天然記念物に指定されました。
学名もKirengesyomaと独立の属として扱われるキレンゲショウマは、決して華やかな花とはいえませんが、厳しい岩場に咲くその姿は、捨て子という幸薄く生まれた“天涯の花”の主人公珠子が、自らの手で幸せをつかんでゆく姿に重なって見えてきました。

(剣山の山行き記は”むかごの高槻”でも取り上げています)

ヘビウリ:蛇瓜(ヘビはカラスの仲間でした)

2012-08-10 05:45:52 | 植物観察1日1題

友人からヘビウリだともらった3粒の種を、日覆いにでもとプランターに蒔き、西側においたままあまり気にもしていませんでしたが、ある朝花弁の先がレース状になった白い花を見つけてあわてて調べました。
ヘビウリ:蛇瓜はウリ科カラスウリ属で、やはりカラスウリの仲間でした。
インド原産で明治時代に渡来し、葉に毛が密生するのでケカラスウリ:毛烏瓜の別名があるそうです。
名のとおり細長くくねった形の果実が面白く多くは観賞用として利用されていますが、ヘチマなどと同様に、若い果実は浅漬けや炒めものにして食べることもできるとあります。
カラスウリは雌雄異株なので、この3株だけのヘビウリで結実するのかどうか気になりましたが、こちらは雌雄同株だそうで安心しました。
何気なく蒔いたヘビウリですが、がぜん関心が高まっています。

トリアシショウマ:鳥足升麻(いろいろあるショウマ)

2012-08-09 08:58:03 | 植物観察1日1題

8月上旬、湖北山門水源の森の探索路沿いに生えているトリアシショウマ:鳥足升麻(ユキノシタ科チダケサシ属)の多くは花が終わっている中で、少し貧弱ですが一本だけ残り花が見つかりました。
芽生えすぐの姿が鳥の足に似ているところからこの名があるトリアシショウマは、山地~亜高山の林の下や草地などに生える多年草で、高さは40~100cm、葉は3回3出複葉で長い柄があります。
少葉は長さ5~12cmの卵形で、先端は尾状に鋭くとがり、基部はふつうハート形になり先端の小葉が最も大きくなります。
7~8月茎の先に白い小さな花が円錐形にびっしりとつきます。花序はよく枝分かれします。
ところでショウマの名は、サラシナショウマの根茎が基本になる漢方薬の升麻からきていますが、ショウマの名がつく植物には、このトリアシショウマやアカショウマなどのユキノシタ科チダケサシ属、サラシナショウマ、イヌショウマ、オオバショウマなどのキンポウゲ科サラシナショウマ属、ヤマブキショウマなどのバラ科とわかれており、同じショウマの名がついていても異なるグループがある例です。
園芸店でおなじみのアスチルベはユキノシタ科の日本原産のアワモリショウマとチダケサシの一種である中国原産のオオチダケサシを交配させてヨーロッパで園芸用に創作された花が里帰りしたものとされています。ちなみに学名でAstilbeはユキノシタ科チダケサシ属のことです。

オオハナウド:大花独活(外側の花弁が大きい)

2012-08-08 08:08:25 | 植物観察1日1題

伊吹山山頂付近に咲いているオオハナウド:大花独活(セリ科ハナウド属)です。
よく似たハナウド:花独活(07年5月12日記事)が川岸など平地の湿ったところに咲き花期も5~6月と早いのに対し、オオハナウドは山地~亜高山や寒地に生え花期も6~8月となります。
茎は中空で太く高さは1.5~2m、葉は大きくふつう3出複葉で、小葉は欠刻状に切れ込みます。
枝先に大形の複散形花序をつけ、周辺花では外側の1花弁が大きいのが特徴です。
ハナウドと同じように周辺の花弁が大きいのは、花序全体を一つの花として機能させているのではないかといわれています。
シシウドとおなじくウドの名がついていますが、ウコギ科のウドとは全く異なるセリ科です。

ウバユリ:姥百合(名前で損している)

2012-08-07 06:04:57 | 植物観察1日1題

伊吹山に咲いていたウバユリ:姥百合(ユリ科ウバユリ属)です。花の咲くころには根元に葉(歯)がないにかけて姥という名がついてい
ますが、草原にすっくと立つ姿はユリほどの派手さはないにしても結構落ち着きのある美しさです。
山野の湿った草地や林の中に生える多年草で、地下に白い鱗茎があり、これが成熟して大きくなると太い茎がのびて花を咲かせます。そのころにはその鱗茎は消滅しそばに新しい鱗茎が生まれます。
茎は中空で、高さは60~100cm、葉は茎の下部に数個固まってつきます。単子葉植物としては珍しく脈は網状で、長い葉柄があります。
7~8月、茎の上部に長さ10cmほどの緑白色の花が数個横向きにつき、先はあまり開きません。花には芳香があり、鱗茎からは上質のでんぷんがとれるなど、ああウバユリかと片づけられるわりにはいいところも多く、名前で損をしているのがウバユリです。

イブキトウキ:伊吹当帰(不妊の特効薬?)

2012-08-06 07:06:17 | 植物観察1日1題

セリ科は見分けの難しい植物ですが、伊吹山頂に見られるイブキトウキ:伊吹当帰、またはミヤマトウキ(セリ科シシウド属は、)は、全草にセロリかセリのような強い香りがあることでセリ科の中でも見分けやすいもののひとつといえます。
北海道南西部、本州中部地方以北に分布し、亜高山帯から高山帯の岩礫地や渓流沿いの岩上などに生育する多年草で、根はゴボウ状で太く、茎は高さ20~50㎝になります。
茎は多く枝を分け、互生する葉は2~3回3出羽状複葉で縁には尖った鋸歯があり、葉柄の基部は膨らんで茎を抱きます。
花期は6-8月、枝先に複散形花序をつけ、白い5弁小花を多数つけます。
根は血液循環を高める作用があり、不妊症、生理不順、冷え症など婦人科系疾患の治療薬として知られており、薬用植物として栽培もされます。
その「当帰」の名前の由来はいくつか説がありますが、不妊で一時は実家に帰されお嫁さんが、この根を煎じて飲んだところ子宝に恵まれ、婚家に当(まさ)に帰るべくして帰ったことからきているという話がしられています。
生みたくても産めない女性が増えて、少子化の傾向に拍車がかかっている当今、もっと役立ててほしいのがこのトウキです。

シュロソウ:棕櫚草(色黒でもしっかりおめかし) 

2012-08-05 08:18:37 | 植物観察1日1題



雄花

両性花

色とりどりの伊吹山山頂のお花畑にさえない黒紫の花でかえって目立っているのがシュロソウ:棕櫚草(ラン科シュロソウ属)です。
この変わった名前は、茎の基部の枯れ葉の繊維が残っている姿がシュロの毛にそっくりなところからきていますが、ほとんど誰も根元を見たことがないのにシュロソウの名のほうはよく知られています。
山地から亜高山にかけての草地や林の中に生える多年草で、高さは50~100cm、葉は茎の下部に固まってつき、長さ20~30cmの細長い楕円形で、基部は鞘状になって茎を包みます。
7~9月、直径約1cmの暗紫褐色の花を円錐状につけます。
同じ株に両性花と雄花が混じってつき、花序の主軸に両性花、横にのびた枝には雄花がつきます。
ルーペで見るとなかなか美人です。色は黒くてもお化粧はしっかりしているシュロソウです。


コバノミミナグサ:小葉の耳無草(伊吹山固有の)8月4日

2012-08-04 06:09:35 | 植物観察1日1題


伊吹山の遊歩道わきにコバノミミナグサ:小葉の耳無草(ナデシコ科ミミナグサ属)が咲いていました。
コバノミミナグサは伊吹山山頂付近の石灰岩地帯にのみ分布するといわれ、仲間のミミナグサが(08年5月9日記事),花弁と萼片の長さが同じぐらいなのに対して、本種は花弁の方が長く、花弁の先が二つに裂けます。花弁もミミナグサより長いようです。
いつぞや八方尾根でクモマミミナグサというのを見ました。(05年9月3日記事)大昔、気候変動によって山岳地帯に取り残された同じ仲間の植物が、隔離されたままその地で別の品種に進化していった例かもしれません。
個体数も少なく大変貴重だという道端のコバノミミナグサにそっとがんばれと声援を送りました。

ヒロハシモツケ:広葉下野(木のシモツケもある伊吹山) 

2012-08-03 08:47:17 | 植物観察1日1題

世界中でも有数の多雪地帯といわれる伊吹山、今年は特に積雪が多かったためか7月末の伊吹では例年なら散ってしまっているような花がまだ咲いていました。
そのひとつがヒロハシモツケ:広葉下野(バラ科シモツケ属)です。
山地に生える落葉低木で、高さ1m位になります。伊吹山では山頂のお花畑 に点在する本種は、母種のシモツケに比べて葉が大きく、幅広の卵形で8cm 位になります。
花は初夏、紅色~濃紅色で今年枝の先端に密に咲きます。
夏の伊吹山といえば山頂一帯を紅赤色に染めるシモツケソウが有名ですが、その名のもとになっている(ヒロハ)シモツケを見るのは初めてです。
季節の遅れで図らずも出会えた“木”のシモツケは、シモツケソウほどの派手やかさはなくとも、自分が本家だと胸を張っているようでした。