新・むかごの日記

高槻市に在住の、人間と自然が大好きな昭和1桁生まれの爺さんです。
出かけるときはカメラ連れ。
目標は毎日1記事です。

ツノハシバミ:角榛(何に似る?赤い柱頭)

2013-03-28 07:55:03 | 植物観察1日1題

垂れ下がったツノハシバミ:角榛(カバノキ科ハシバミ属)の雄花序の上のほうに、真っ赤なものが見えます。ツノハシバミの雌花序は芽鱗に包まれたまま開花するので、赤い柱頭だけが芽鱗から顔をのぞかせるのです。
各地の山内に生える落葉低木で、ふつう高さは2~4mで株立ち状になります。秋につける堅果の果苞は長さ3~7cmで先が嘴状になるのでこの名があります。
果実は堅果で炒って食用にされます。食用ナッツとして菓子などに使うヘーゼルナッツは本種とごく近縁のヨーロッパ産の種類です。
この赤い髯を出した形の雌花をみてイソギンチャクに似ているという人がいましたが、ごく小さいかがり火の炎のようにも見えてきました。

ヒサカキ:姫榊(複雑な雌雄関係)     

2013-03-25 20:55:07 | 植物観察1日1題
早春の山道を歩いていると、どこからか少し嫌な感じの強い香気が流れてきます。
ヒサカキ(ツバキ科ヒサカキ属)は、やや乾いた山地の林内に生える常緑小高木で、その匂いから都市ガスを連想させて、“大阪瓦斯の木”などという人もいます。
雌雄別株で、3~4月葉脇に鐘形~壺形の花を1~3個下向きに束生し、雌花の方が小さく、花弁は黄白色で5個、基部は僅かに合着します。雌花では雌蕊は1個です。雄株が先に咲き始め、雄花には雄蕊が12~15個ありますが、雌蕊は退化しています。
雌雄別株となっていますが、実際には少々込み入っていて、牧野博士はこう言っています。「晩春には雄株、雌株、両性株ともに咲きそろう。両性個体には一癖あり、同一個体には雄花、雌花、両性花が咲くが、両性花には雄、雌の機能を揃えた両性花と、形は両性花でも機能は雌花という花が存在する。この“偽りの両性花”は発芽力がない花粉を持つ。さらにサクラまであって雄花の一部には花粉を持たない”見かけだけの雄花“まである。」
関西ではビシャコなどといわれて仏花とされ、サカキの少ない東北、北海道などではサカキの代わりに神様に供えられるというこのヒサカキ、少々複雑な雌雄関係を持っているようです。
いくつか写真を撮ってみましたが、この関係を十分に説明するには至っていません。


雌株

両性株?

雄株

薄紫色の雄花

ツゲ:黄楊(イヌは多いが)

2013-03-23 17:08:57 | 植物観察1日1題
奈良高取城への道すがら、この季節にしては珍しく小さい花をつけた中低木がありました。
始めてお目にかかる木ではないかと、少々高い土手をよじ登って近くで見ると、小さく丸く光沢のある葉は対生です。
すぐツゲ:黄楊(ツゲ科ツゲ属)とわかりました。イヌツゲ(モチノキ科)はどこででも見られますが本ツゲともいわれるツゲを見るのは初めてです。
対生する葉は倒卵形で、先端は、基部はくさび形、ふちは全円でやや裏面にそります。
雌雄同種で、3~4月葉脇に淡黄色の小さい花を束生します。花の中央に雌花が1個あり、数個の小花が取り囲みます。雌花、雄花ともに花弁はなく萼片のみで、雄蕊は花の外に長く突き出ます。
庭木に用いられるほか、材が黄色で固く木目が細かいので精密機械の木部、櫛、印材、将棋の駒などに広く使われます。

ホトケノザ:仏の座(省資源で効率追求)

2013-03-15 18:31:35 | 植物観察1日1題

道端のあちこちにホトケノザ:仏の座(シソ科オドリコソウ属)が咲いています。
対生する葉を蓮座に見立ててこの名があり、葉が段々につくので三階草という別名があります。
どこにでも見られる高さ10~30㎝の2年草で、葉は対生し長さ1~2cmの扇状円形で鈍い鋸歯があります。上部の葉脇に長さ約2cmの紅紫色の唇形花をつけます。
面白いのは、蕾のまま結実する閉鎖花をたくさんつけることです。
閉鎖花は胚珠の数のわりに花粉の数が少ないのは、外に花粉を出さないので無駄になる花粉の数が少なくなっていると考えられています。*
花弁、蜜、花粉の数などすべてにわたって省資源設計となっているうえ、送粉者が来なければ結実しない開放花にくらべて確実性も高くなっています。ホトケノザは開放花で遺伝的な問題に対応するとともに、閉鎖花でともかくも効率的に子孫を増やす戦術をとっているようです。
閉鎖花を併用して効率的に繁殖を行っている植物には他にスミレや地中に閉鎖花をつくるミゾソバなどがあります。
(*注.POratio:pollen ovule ratio=花粉数を胚珠数で割った値で、受粉における資源と効率性を示す。裸子植物で風媒花のマツのPO比は約1/100,000 であるのに対して、閉鎖花のそれは1/10位といわれている。)

ゴマギ:胡麻木(香る冬芽) 

2013-03-05 19:00:01 | 植物観察1日1題

なぜか冬期の通りかかることがおおい山道で、対生で立派な冬芽をもつ木が気になっていました。
偶々最近同じ道を夏通ることがあり、その木はゴマギ:胡麻木(ガマズミ科スイカズラ属)であることがわかりました。
その木がいま冬芽をつけています。頂芽も側芽も大きくて1~2cmほどもあり、図鑑では2対ある芽鱗は外側の1対は早期に脱落し軟毛のある内側の芽鱗だけが残るとありますが、写真ではそのような状態であるかどうかは不明です。下方に少し見えているのは、少し細くて小さい短枝の冬芽と思われます。
念のため、裾の方の小さい芽を少し傷つけてみたら、まぎれもなく
強いゴマの香りが漂いました。

ヤマコウバシ:山香ばし(霊験あらたか新手の合格祈願)

2013-03-02 15:25:43 | 植物観察1日1題
先月26日の夕刻、「おじいちゃんからもらった“葉っぱ”の効き目があったらしい」と孫娘からの電話。
高校入試で第一志望の難関校に合格したとの嬉しい報せでした。
その葉っぱとは、山で採ってきたヤマコウバシ:山香ばし(クスノキ科クロモジ属)の枯れ葉を合格祈願のお守りとして二人の孫娘に渡しておいたものでした。
葉は枯れても枝に残り翌年の春まで落ちないところから、”落ちない“で、最近合格祈願のお守りとして人気が出ているという話からのことでした。3日後東京の孫娘からも同じ電話。ヤマコウバシの落ちない祈願は霊験あらたかでした。
確かに今の時季山を歩くと、落葉した雑木の中で、枯れ葉が枝に残っているヤマコウバシの姿がよく目立っています。
通常落葉樹では秋になると葉柄基部にできた離層で、細胞壁の成分を溶かすセルラーゼ、ペクチナーゼなどと呼ぶ酵素が作られ、そのはたらきで細胞壁が溶けて弱くなると、維管束の木部も切れてしまい、根からの水分補給もなくなって落葉に至ります。
ところが、ヤマコウバシなど一部の木は離層が完全には作られないため、長く枯れ葉が残ると考えられています。
これらの植物は本来常緑性だったもので、その性質をこのような形で保ち続けたまま温帯域まで分布を広げたと説明されたりします。
ちなみに、枯れ葉を枝から離して、基部の断面をみると、ふつう離層ができた葉の基部は緑色を失いますが、3月というのにヤマコウバシのそれは、緑を保ったままでした。