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伊吹山山頂付近の岩の間にミツバベンケイソウ:三葉弁慶草(ベンケイソウ科ベンケイソウ属)が蕾をつけています。
この仲間は、切り取っておいて何日経ってもしおれず、再び土に挿すと容易に活着するので、力持ちの弁慶にたとえて名がついています。
このミツバベンケイソウは葉のつき方の三輪生が目立つことによります。
秋、球形で上部が平らな集散花序をつけ、淡黄緑色の花をつけます。
ベンケイソウ、マンネングサ、サボテン、スベリヒユなど多肉植物の生命力の強さの秘密が最近明らかになりました。いわゆるCAMといわれる植物群で、通常光合成は昼間植物が気孔を開き、そこから二酸化炭素を取り入れ、日光と吸い上げた水で葉緑素がデンプンを作るといわれてきました。このいわば常識が最初にうち破られたのがこのベンケイソウで、日中は気孔が閉じられたままで、夜間に開かれます。
その光合成システムは従来考えられていた方法とは異なり、気体のままの形ではとどめにくい二酸化炭素をリンゴ酸のような成分にして貯え、昼間は気孔を閉じて水分の蒸散を防ぎつつ、葉の内部でリンゴ酸から炭素を得て光合成するのです。
この光合成を最初に研究したベンケイソウ科の学名Crassulaceaeにちなんで、Crassulacean Acid Metabolismを略してCAM、それを行うのがCAM植物となりました。
強い弁慶にはこんな秘密があったのです。
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男女の契りの深いことをたとえて比翼連理(在天願作比翼鳥、在地願為連理枝:白居易、長恨歌)といいます。伊吹山上に咲くキバナノレンリソウ:黄花の連理草(マメ科レンリソウ属)の名はこれからとられましたが、花のことではなくて、小葉が対生して連なる状態に由来します。
古風な名に似合わずヨーロッパ原産で、日本では伊吹山の草原に帰化しています。
花は夏から初秋、濃い黄色蝶形花を総状につけます。
学名のLathyrus pratensisは、非常に刺激するとのギリシャ名で、この草に催淫性があると信じられていたからだそうですが、それが比翼連理につながったかどうかは定かではありません
ちなみに、一方のヒヨクソウ:比翼草も伊吹山で見かけましたが残念ながらこちらは花の後でした。
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9月22日、初秋の伊吹山を訪れました。何回となく行った山ですが、植物に詳しい仲間のおかげで新しい花たちに出会うことができて、楽しい山行きとなりました。
クサタチバナ:草橘(ガガイモ科イケマ属またはカモメヅル属)は、山地の木陰に生える多年草で、高さ30~60cm、茎は分枝せず直立します。5弁の白い花の形が、ミカン科のタチバナに似ていることからこの名があります。
6-7月に咲くという花には時期が遅く、ガガイモのような細長い袋果ができていて、中を割るともう種髪といわれる白い髭が見えていました。
遊歩道も終わりというところで、一輪だけ花が咲いているのに出会いました。純白の花冠は径2cmくらい、副花冠は雄蕊、雄蕊の集まったずい柱よりも少し短くなっています。
私たちのために咲いていてくれたようなたった一つの花を、大事に大事にカメラに収めました。
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和歌山生石高原(870m)のススキ原のあちこちにコオニユリ:小鬼百合(ユリ科ユリ属)が咲いていました。
日当たりのよい適湿な山地に生える多年草で、高さ1~1.5m、オニユリに似ていますが、花はやや小形で、全体にほっそりしており、葉の付け根にむかごができません。
またオニユリはふつう結実しませが、コオニユリはよく結実します。
大きくて白色の鱗茎は苦味が少なく食用として栽培されることもあります。
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暗くなり始めると、家の外回りに植えたヨルガオ:夜顔(ヒルガオ科ヨルガオ属)の白い花が開きます。
熱帯アメリカとアメリカフロリダ地方に原生するつる性の多年草で、茎は5~6mほどになり、節から長い葉柄の円状ハート形の葉を互生します。
花径は10~15cm、純白で緑色のひだがあり、筒状部は10~15cmで夜咲く花の常として芳香があります。
夕方から開花し翌朝にはしぼみます。
ユウガオとも呼ばれますが、ウリ科のユウガオと誤りやすいので、ヨルガオの名のほうがよいという人もいます。
ウリ科のユウガオは古くから日本人に親しまれて源氏物語など文学作品にも登場しておなじみですが(06年8月12日記事)、ヨルガオの人気はいまひとつのようです。それかあらぬか、苗についてきた園芸店の標識には、「夕顔」として“ヨルガオ”と振り仮名をしていました。
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和歌山生石高原(870m)の遊歩道沿いに、クルマバナ:車花(シソ科トウバナ属)咲いていました。
山地の草原に生える多年草で、花が輪生するのでこの名があります。
葉は対生し、卵形または長卵形で、長さ2~4cm、基部は丸く、ふちには鋸歯があります。
8~9、枝先の花穂に淡紅色の唇形花を数段車状に輪生します。上唇は小さく下唇は大型で3裂します。
派手な花ではありませんが、かたまって咲いている姿は結構きれいに見えました。
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紀伊平野を見下ろす生石高原(870m)の広いススキ原のところどころに倒卵形の果実が見えます。
何かと思って近づいてみると、赤い花も見えます。ヒオウギ(アヤメ科ヒオウギ属)でした。
別名、烏扇、射干ともいわれ、前回((05年8月5日)取り上げたときには、“本州以南、中国、インド北部の山地にも自生する多年草ですが、観賞用として庭でも栽培されています。”
と書いたものの、庭などでは見ても、自生のものは初めてです。
高原を渡る初秋の風に揺れるオミナエシの足元に咲き残った一輪のヒオウギにしばし見とれていました。
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真夏で水の減った沼の縁にアリノトウグサ:蟻の塔草(アリノトウグサ科アリノトウグサ属)が赤く色づいています。
山野の日当たりのよいやや湿ったところに生える多年草で、茎は4稜形で細長くしばしば赤褐色を帯び、基部は地面をはい、上部は直立し高さ12~25cmになります。
花は夏から秋、茎の上部に点々とつき下向きに咲きます。風媒花にしては珍しく雄性先熟で、雄性期花弁は反り返り、葯は細い花糸の先にぶら下がり、雌性期に移ると柱頭は紅色で羽毛状になります。
あまりにも小さい草で、写真を撮るのに難儀をし、この珍しい花のディテイルを観察できなかったのは残念でした。
ツバメなどの鳥によって南方から運ばれたという話が伝わっています。
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庭のルリマツリ:瑠璃茉莉(イソマツ科ルリマツリ属)が水色の花をつけています。
南アフリカ原産の常緑の小低木で、高さ1mくらいになります。葉は長楕円形または多少へら形で、
長さ5cmくらい、互生します。
花は穂状花序で花筒部は長く、5片に分かれて開き美しい青空色です。開花期は夏から秋と長く、どうかすると冬にも咲いています。
性質は強く、暖地では戸外でも越冬し、枯れたかと思っても春になると芽生えたりします。
花期が長く、手入れも楽で、不精なガーデナーにうってつけです。白色花の品種もあります。
ルリマツリのマツリは祭のことかと思っていましたが、どうやらジャスミンの1種で、モクセイ科常緑小低木の茉莉花(マツリカ)のことのようです。どこが似ているのかは分かりません。