新・むかごの日記

高槻市に在住の、人間と自然が大好きな昭和1桁生まれの爺さんです。
出かけるときはカメラ連れ。
目標は毎日1記事です。

メドハギ:目処萩・蓍萩(昔は筮竹の代わり)

2006-09-30 05:16:17 | 植物観察1日1題
家の前の土手の薄の中でメドハギ:目処萩(マメ科ハギ属)が近づかないとわからないほどの小さい花をつけています。
日本各地の日当たりのよい野原に生える多年草で、高さ60~100cmになる茎はやや木質化し半ば低木状になります。葉は3出複葉でびっしりつき、小葉は細くて長さは1~2.5mです。
8~10月、葉のつけ根に淡黄色の小さな蝶形花が2~4個ずつつきます。長さ7mmほどの小さい花の旗弁には紅紫色の斑点があります。
和名の目処萩は筮萩(めどぎはぎ)の略されたもので、中国の蓍になぞらえて茎を占いの筮竹の代用品として用いたことから来ているといいます。
9月も終りです。振り返ってみると今月投稿21日のうち11日が意図しないのにマメ科の記事になっていました。この時期はマメ科植物の花が多く咲き、いずれも花期が長いからでしょうか。

エビスグサ:夷草(ハブソウで通る)

2006-09-29 06:17:55 | 植物観察1日1題
畑のふちを歩いていると、昔はやった健康食品の名残と思われる草木が見捨てられたように生えているのに出くわします。クコ、コーンフリー、ツルムラサキなどです。一般にハブソウといわれているこのエビスグサ:夷草(マメ科)のもその一つです。
単体のハブ茶として、あるいは複合の健康茶などに必ず入って売られているハブソウの実は、たいていはハブソウではなく近縁のこのエビスグサですが、薬効はほとんど同じといいますからあまり目くじらを立てる必要もないでしょう。ハブ茶をネットで検索すると無数の件数が出ます。エビスグサは必ずしも忘れられたものでもなさそうです。 
種子は漢方では決明子ともいわれ、健胃、便秘に薬効があります。また虫刺されや腫れ物に葉の汁を塗りこむとよいといわれますが、ハブソウの名のもととなった、ハブ(毒蛇)にかまれたときに傷口に塗りこむと解毒になるというのはどうやらまゆつばのようです。
エビスグサは、花後すぐに細長い鞘を豆果伸ばします。花が咲き終わっていないのにもう花の中心から曲がった豆鞘が伸び出しています。

ハギ:萩(万葉時代は人気№1)

2006-09-28 06:46:46 | 植物観察1日1題
万葉集で詠われている植物で堂々たる第一位はハギの142首です。
万葉集には桜の花見は一首も出ませんがハギの花見は出てきます。万葉人にとっては、ハギは桜よりも梅よりも身近なもので、庭にも植えられていた様子がうかがえます。
ハギ:萩(マメ科ハギ属)は、ハギ属のうちヤマハギ亜属の総称で、ヤマハギ、マルバハギ、ミヤギノハギ、キハギなどを指します。
ハギは生え芽(はえぎ)で、株からすぐ芽が出るという意味です。古くは芽子、芽、波疑、波義など書かれましたが、秋に咲く草という意味の国字の“萩”という字が現れるのは比較的新しく平安時代になってからです。平安時代以降ハギは鹿と組み合わせて歌に詠まれることが多く、鹿がハギを妻として訪れるという言い伝えがあり、ハギは”鹿の妻“鹿鳴草(しかなぐさ)”などと呼ばれ、一方鹿のことを”萩の夫(つま)“ともいうそうです。
写真はミヤギノハギ:宮城野萩で、花期には枝先が地面につきそうに枝垂れて咲きます。この名は仙台の宮城野付近に産出したからとか、美しい花の様子から美称としてつけられたとかの説があります。

ススキ:薄(薄も出花?)

2006-09-27 05:09:43 | 植物観察1日1題
尾花で知られる秋の七草のススキ:薄(イネ科ススキ属)について、清少納言は、“秋の野のおしなべたるをかしさは、薄こそあれ。穂先の蘇枋にいと濃きが、朝霧に濡れてうちなびきたるは、さばかりのものやある。(枕草子)と穂に出たばかりの赤いススキの美しさを称えています。
ススキは山野にごく普通に生える多年草で高さは1~2m、茎は束生し大きい株をつくります。
変異が多く、葉の細いもの、穂が紫色を帯びるものなどがあります。園芸種には葉に淡黄色の横縞が入るタカノハススキ・ヤハズススキなどもあります。
茅葺の材料になったり、秣(まぐさ)に使われたりして有用な植物でもありました。
枕草子の続きは少々いただけません。“秋の果てぞいと見所なき。色々に乱れ咲きたりし花の、形もなく散りたるに、冬の末まで頭の白くおほどれたるも知らず、むかし思ひ出で顔に風になびきてかぎろひ立てる、人にこそいみじう似たれ。よそふる心ありて、それをしもこそ、あはれと思ふべけれ。”ススキが冬になっても白くぼさぼさになった穂をいつまでも曝しているのは、昔それなりの人が人前に老醜をさらけ出しているのにも似て見苦しいというのです。厳しい言葉です。清少納言は自らもやがて老いることに思いをいたさなかったのでしょうか。

フジバカマ:藤袴(絶滅危惧は当然?)

2006-09-26 05:42:27 | 植物観察1日1題
秋の七草は古く万葉の時代に山上憶良が歌にしたことで始まるとされていますが、その中のフジバカマ:藤袴(キク科フジバカマ属またはヒヨドリバナ属)は、憶良自身が香草、薬草として中国から持ち帰ったのでPRのために詠いこんだという説まであるくらいで、当時から野原の何処にでも見られる草ではなかったようです。“日本のフジバカマはこの用途で意図的に輸入、栽培されたものが園外に脱出し野生化したもので、もともと原生植物ではなく野生ではまれにしか見られない。ただ日本にはごく近い野生の近縁種がたくさんあるのでそれを普通のフジバカマと誤認している“(中尾佐助、花と木の文化史)などの説があります。となるとそもそもどれがほんとのフジバカマかわからないし、ちかごろは山野で見られないというのも当たり前のことかもしれません。
フジバカマは別の名を蘭草といい、茎や葉を生乾きにするとよい香りがします。これは桜餅の葉と同じクマリンが含まれているからでフジバカマ判定点の一つです。中国では古くから乾燥した葉を湯につけて沐浴や洗髪に用いられており、馬王堆からも出土しているそうです。
写真では、深く3裂する葉や、花茎の頂部で茎が枝分かれして散房状に淡紫色をつけるというフジバカマの特徴が出ていますし、撮影場所が京都植物園で名札つきでしたので、これが憶良が詠ったものかはともかく、現代言いわれているフジバカマと思って間違いないようです。

ヤブマメ:藪豆(食べられる野の豆)

2006-09-25 06:13:56 | 植物観察1日1題
林の縁に小さい紫色の花を見つけました。ヤブマメ:藪豆(マメ科ヤブマメ属)です。
つる性の一年草で、茎には下向きの毛の筋が数列あり、3小葉からなる広卵形の葉の両面に伏毛があります。9~10月葉のつけ根に長さ約2cmの蝶形花をつけます。旗弁は紫色で翼弁と竜骨弁は白く、小さい花ですがよく目立ちます。豆果は長さ2~3cmで普通3~5個の種子が入ります。
ヤブマメで珍しいのは、秋、根元からつるをのばして花弁のない閉鎖花をつけることです。閉鎖花は土にもぐって結実しますが、豆果は小さく、種子は1個しか入っていません。ヤブマメの種子は扁平で、閉鎖花の豆は丸く膨らみ、うずら豆のような黒い斑点があり食べられます。

コウヤマキ:高野槇(新宮のお印)

2006-09-24 06:04:40 | 植物観察1日1題
先週、秋篠宮家の新宮、悠仁さまのお印に決まってからコウヤマキ:高野槇(コウヤマキ科コウヤマキ属)が一躍有名になりました。この木のように大きくまっすぐに育ってほしいとの願いがこめられていると聞きます。
現在、単にマキといえば“マキ”の中で材として優れているコウヤマキを指し、これより劣るものとしてイヌマキやラカンマキがありますが、コウヤマキはマキ科ではなく、以前はスギ科に含まれ今では独立して1科1種のコウヤマキ科であるのに対し、イヌマキなどは種の異なる“マキ科”なので話は少々ややこしくなっています。
高野山を有田川の源流に沿って西へ下る道の側に全国でも珍しいコウヤマキの植林があります。高野山に参詣する人に仏花として売る若枝を採るために栽培しているのです。そしてもう少し下ると紀子様の曽祖父のご出身地である和歌山県の有田川町です。そこはまた“むかご”の田舎でもあります。先日彼岸でお墓まいりの帰りに高野山へ回り、あらためてコウヤマキの栽培林を見てきました。折からの斜陽に葉末がきらきらと照り輝いていました。 
マスコミには出ませんが、お印にコウヤマキが選ばれたのは、紀子さまのご先祖が高野山のすぐふもとで、コウヤマキの林に近い町のご出身であることに大いに関係があると、このむかごめは信じています。
万葉集に20首ほど出るマキは、木のうちでも建築材として優れているスギ、ヒノキ、コウヤマキなどを総称して真木と呼んでいたとされています。寂連法師の有名な「さびしさは この色としもなかりけり 真木立つ山の 秋の夕暮れ」「村雨の 露もまだ干ぬ 真木の葉に 霧立ち上る 秋の夕暮れ」の真木も、杉、檜などの総称と解されていますが、写真の光る葉末を見ていると歌の真木はコウヤマキでなければならないと思えてきました。

シオン:紫苑(秋彼岸に手向ける思い草)

2006-09-23 06:14:23 | 植物観察1日1題
シオン:紫苑(キク科シオン属)は、本州中国地方や九州にまれに野生があるそうですが、庭に植えられることが多い高さ2mにもなる大型の多年草です。平安時代から観賞用に、また薬用植物として栽培されてきたといわれます。
茎、葉ともにざらつきまばらに粗毛があります。花は8~9、頭花は直径3~3.5cmで舌状花は一列で淡青紫色です。
紫苑は中国名の音読みからきており、学名はAster tataricus で“韃靼の星”という意味です。日本では“思い草”のほか、鬼の醜草(しこぐさ)、醜鬼(しおに)という少し怖い異名があるそうです。今昔物語集に“兄弟2人、萱草、紫苑を植うる語”という話があり、昔父親を亡くした兄弟がいて、兄は父親を忘れようとして萱草(忘れ草)(8月11日記事)を植え、弟はそれを見た人の心にあるものを決して忘れないという紫苑(思い草)を植えました。父の墓を守る鬼は弟の孝心に感じ入り、明日起こることを前日に夢で知らせたといいます。(読売新聞「言の花」より)
紫苑の花言葉は「追想」、今日は彼岸の中日です。お墓に“思い草”の紫苑を供え亡き人を偲びましょう。

ヤブツルアズキ:藪蔓小豆(原種か変種か)

2006-09-22 06:06:02 | 植物観察1日1題
ヤブツルアズキ:藪蔓小豆(マメ科ササゲ属)は、草地に生えるつる性の一年草、全体に粗毛がまばらに生え茎は他物にからんでのびます。
互生する葉は3出複葉で、小葉の長さは3~10cmの狭卵形~卵形で、多くは浅く3裂します。
秋、淡黄色の花をつけますが、この花はノアズキ(9月7日記事) に似たつくりで、2個が合着して筒状になった竜骨弁がくるりとねじれ、左側の翼弁がかぶさり、右側の竜骨弁を抱くように突き出ます。
豆果は垂れ下がり長さ4~5cm、種子はアズキより小粒です。
学名上はアズキ(Vigna)で、アズキの変種となっていますが、アズキが野生化したという説とアズキの原種がこのヤブツルアズキだという2つの考えがあるそうです。

タヌキマメ:狸豆(狸は花か毛か)

2006-09-21 06:11:40 | 植物観察1日1題
豆シリーズ、キツネ、イタチとくれば次は決まり。今日はタヌキです。
タヌキマメ:狸豆(マメ科タヌキマメ科)は、正面から見た花の形をタヌキに見立てたとか、毛の多い多い萼や、その萼に包まれた豆果の形を狸に見立てたとか諸説がありますが、どれも納得できるくらい変わったかたちをしています。
日当たりがよく少し湿ったところに生える一年草で、高さ20~60cm、茎や葉などに褐色の毛が多数つきます。花は枝先に総状につき、青紫色で長さ約1cm、褐色の毛が密生しよく目立ちます。
花のあと萼は大きくなり、豆果をすっぽり包みます。
花が綺麗なだけに、このひげもじゃの様子はいかにも不似合いで、タヌキの名前とともに可哀想だと思ったのですが、漢名が野百合とありました。これはまた少々甘すぎる感じです。
9月6日ネコハギ、9月19日キツネササゲ、9月20日イタチササゲ、そして今日のタヌキマメと動物の名のついたマメ科の植物が続きました。野に咲くマメ科の花を見ながら名前の面白さを楽しむのも一興でしょう。

イタチササゲ:鼬豇豆(衣変えする鼬)

2006-09-20 06:25:38 | 植物観察1日1題
昨日のキツネササゲ(ノササゲ)の次はイタチササゲ:鼬豇豆(マメ科レンリソウ属)です。
長い豆果をササゲに、はじめクリームいろからやがて黄褐色に変わる花をイタチの毛の色にたとえてつけられた名です。
山野の日当たりのよいところに生える多年草で、小葉は長さ4~8cm、幅1.5~4.5cmの楕円形~卵形で、裏面は粉白色、巻きひげは分枝します。
花は総状に多数つき、長さ約1.5cmで、色が変化してゆくのが特徴です。
豆果は長さ8~10cmの線形で、約10個の種子が入っています。
ササゲの名があっても食べられません。もっともキツネとかイタチの名がついていては、いわれなくても食べる気がしないはずですが。

キツネササゲ:狐豇豆(筒状花が特徴)

2006-09-19 06:42:25 | 植物観察1日1題
キツネササゲ:狐豇豆(マメ科ノササゲ属)は、別名ノササゲ:野豇豆ともいわれるつる性の一年草で、本州、四国、九州の山野に普通に生えます。牧野図鑑ではキツネササゲですが、最近の図鑑ではノササゲで出ていることが多いようです。(明日からの記事に関係しますので敢えてキツネをとりました)
茎は針金状にのび紫黒色になります。葉は互生し、小葉の長さは5~10cm、裏面は白色を帯び伏毛があります。
夏から秋に長さ5cmくらいの花序をつくり、1.cm~1.5mほどの筒型の萼の先に長さの淡黄色の蝶形花を数個ずつ下向けにつけます。
豆果は長さ2.5cm~5cmで、数珠上にくびれ、熟すと紫色になり、種子は黒紫で白い粉をかぶっています。
ササゲは普通隠元豆といわれ継体記にも見える古い野菜ですが、このノササゲは食用にはなりません。

ヤブラン:藪蘭(丸い実のなるユリ科)

2006-09-18 07:16:06 | 植物観察1日1題
ヤブラン:藪蘭(丸い実のなるユリ科)2006.9.18
木の下にヤブラン:藪蘭(ユリ科ヤブラン属)が淡紫色の穂状の花をつけています。
いつのときのものか、花についた蝉の抜け殻が暑かった夏を思い出させます。
ヤブランは山野の木陰に生える多年草で、丈夫でよく茂るので庭や公園のガウランドカバーによく植えられています。葉は根生し、長さ30~50cm、幅約1cmの線形で表面に光沢があります。
8~10月高さ30~50cmの花茎がのび、上半部に小さな花が総状につきます。花は淡紫色で3~5個まとまってつきます。
種子は直径6~7cmの球形で黒くて光沢があり、まるで果実のように見えますが、本来は果で、果皮が薄くて脱落しやすく、種子がむき出しになって成長します。これはユリ科のなかでヤブラン属とジャノヒゲ属(1月31日記事)にだけみられる特徴です。

オモダカ:面高・沢潟(傲慢な面構え)

2006-09-17 06:24:38 | 植物観察1日1題
水面から高く伸びた葉柄についている葉の基部がやじり形に長く尖っているのを人の顔にも見えることからこの名があるというオモダカ:面高:沢潟(オモダカ科オモダカ属)は、水田や浅い沼、湿地などにはえる多年草です。葉の長さは30~60cm、基部の2個の裂片のほうが頂裂片より長く、先端は鋭くとがります
夏から秋にかけて、高さ40~70cmの花茎に、白い3弁の花を節毎に通常3個輪生してつけます。花序に上部に雄花、下部に雌花がつきます。
正月料理につかうクワイ(慈姑)はオモダカの変種で、オモダカの珠茎はちいさすぎて役にたちません。またオモダカの改良種で吹田市名産のスイタグワイはでクワイよりやや小さいそうですが宮内庁御用達になっていることで有名です。
9月13日の記事にも書きましたが清少納言は枕草子で、“沢潟は名のをかしきなり、心あがりしたらむと思ふに。”(名前が面高だから傲慢に構えているなどと思って見ると面白いものだ)といっています。この特徴ある葉の形は古くから紋所に用いられ沢潟紋といわれ、歌舞伎の市川猿之助の屋号沢潟屋は市川家の家紋から来ています。

ミズアオイ:水葵(ホテイとは違います)

2006-09-16 06:16:36 | 植物観察1日1題
水田の一角にミズアオイ:水葵(ミズアオイ科ミズアオイ属)が、ブル-の花をつけていました。
前3日間記事に出た害草ではなく、こちらは観賞用として植えられているのです。
水湿地に生え、葉の形がカンアオイの仲間に似ているところからこの名があり、古名はナギ(菜葱)で、昔は食用にされました。長い葉柄があり、葉の長さは5~15cmのハート形で光沢ある濃緑色です。花は9~10月、葉より高くのびた花柄に直径2~3cmの青紫色の花を沢山つけます。
同じ花穂の花は同時に開き一日で凋みます。6個の雄蕊のうち長くて葯が青い1個はつぼみのときに花粉を出し自家受粉します。短くて葯の黄色い5個は開花してから花粉を出します。
属は違いますが、よく似た熱帯アメリカ産のホテイアオイは、その猛烈な繁殖力で各地で厄介な害草になっていますが、ミズアオイのほうはそんなことはなくむしろ珍しいくらいの存在です。ちょっと目にはよく似た花ですが、ホテイアオイの印象が悪いだけに、こちらの花のほうがすがすがしく見える気がします。