新・むかごの日記

高槻市に在住の、人間と自然が大好きな昭和1桁生まれの爺さんです。
出かけるときはカメラ連れ。
目標は毎日1記事です。

コムラサキ:小紫(有名人の名で売られる)

2009-12-30 09:11:12 | 植物観察1日1題

我が家ではとっくに消えてしまったコムラサキ:小紫(クマツヅラ科ムラサキシキブ属)の実がが、12月末というのに、道端に近い農家の庭で枝いっぱいに残っていました。
ふつうムラサキシキブとして園芸店で売られているのは多くは本種で、ムラサキシキブは似ていますが、各部が小型で、葉の鋸歯が上半分にあり、花序が葉腋から少し離れて出ることで区別されます。
実付きの良さ、小型な樹形などが庭木や公園樹に好まれますが、コムラサキをムラサキシキブとして売るのは、アマドコロをナルコユリとするのとおなじ伝で、なじみの深い名前で少しでも多く売りたい業者の商魂の現れでしょう。
別名に小紫式部、小式部があります。どちらも小型の紫式部ということでしょうが、小式部は、“大江山 いくのの道の遠ければ…”と歌い、昔の小学唱歌で、紀内侍、伊勢大輔とともに“三才女”に数えられた女性で、紫式部とは関係がありません。いずれの名前も商品名としては力不足のようです。

ホトケノザ:仏の座(奪った“仏の座”)

2009-12-28 10:32:51 | 植物観察1日1題

今の時期は、道端に咲く花がほとんどなく、散歩するにも一年中で一番さみしい季節です。
その中で、どうしても目につくのがホトケノザ:仏の座(シソ科オドリコソウ属)です。
世界各地の温帯地方に広く分布する小形の越年草で、本来花期は春からの3~6月とされているのですが、最近は温暖化のせいか秋口から花が見られ、ほとんど年中開花の感じがあります。
筒状の紅紫色の唇形花を仏様に見立て、葉柄のない半円形の対生葉を蓮の台に見立てこの名があり、段々につく葉の形から三蓋草、三階草、宝蓋草や仏のつづれなどの別名があります。
ありふれた花ですが、近づいて見ると下唇には紅紫色のきれいな模様、さらに奥に向かっていくつもの線があり、このガイドラインに沿ってハチを蜜と花粉のある場所へ導く仕掛けになっています。それだけではなく、葉のつけ根には赤いつぼみのような閉鎖花をつけていて、コストをかけずに確実に種子を作る保険もかけるというしたたかさです。
春の七草に数えられるホトケノザは、本種ではなく、キク科のコオニタビラコだというのはよく知られていますが、“ほとけのざ”の座を奪い取ったうえ、相手を“子鬼”にしてしまったとは、これまた、ホトケノノザのしたたかなところでしょうか。


サザンカ:山茶花(「たき火」の思い出)

2009-12-24 11:29:35 | 植物観察1日1題
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山茶花で思い出す歌といえば、中年なら大川栄策の「山茶花の宿」でしょうが、老年ならばやはり童謡の「たきび」(巽 聖歌作詞、渡辺 茂作曲)です。
その2節に出てくるのがサザンカ:山茶花(ツバキ科ツバキ属)です。
“さざんか、さざんか さいたみち たきびだ、 たきびだ、 おちばたき。
「あたろうか。」「あたろうよ。」しもやけ、おててが もう、かゆい“
日本人がはじめてこのメロディに接したのが、昭和16年12月9日のNHKラジオの幼児向け歌番組でした。くしくもその日は日米開戦の翌日、3日連続で放送の予定が2日で打ち切られました。今から思えば信じられない話ですが、「たき火は敵機の攻撃目標になる」「落ち葉も貴重な燃料のうちだ。風呂ぐらいは焚ける」と軍部からクレームがついたからだといいます。
戦後NHKの「歌のおばさん」で復活した「たきび」は音楽教科書にも採用されて、一躍みんなの愛唱歌になりましたが、ここでも消防庁から「街角でのたき火は防火上困る」と文句がつき、以、教科書の挿絵には必ず、水の入ったバケツと付き添いの大人が書き添えられたといいます。
いまでは街角で山茶花の垣根を見ることは少なくなり、ましてや街角で大人と子供がたき火を囲む光景はほとんど見られません。
写真家の浅井愼平、作家の椎名誠、コピーライターの糸井重里ら焚き火を愛する同好の士が集って1994年に創立した。「国際焚火学会」という団体があるそうです。
幼い日の焚火の思い出は、山茶花の垣根ととともに、人々の郷愁を呼び起こすものがあるようです。
(童謡「たきび」の話は読売新聞文化部編「唱歌・童謡ものがたり」岩波書店刊を参考にしました。
サザンカについては05年12月28日の"むかご”でもとりあげています)

ベビーサンローズ(冬でも咲く夏感覚の花)

2009-12-22 13:10:06 | 植物観察1日1題

本格的な寒さになっても、夏から咲き続けているのがベビーサンローズ(ツルナ科アプテニア属)です。別名にハナツルクサ ハナヅルソウがあります。
南アフリカ原産で、多肉質の茎を分枝しながら這うように広がるので、グランドカバーや吊り鉢に適します。
花は径約2cmと小型ですが、鮮緑色の葉に囲まれて鮮紅色がよく目立ちます。
暖地では露地で越冬でき、開花期は7~9月となっていますが結構遅くまで咲いています。
地味な花なのに、あちこちの庭で見られるのは、炎暑にも寒さにも強く、挿し芽で簡単に増やすことができるなど手間要らずのところが好まれているのでしょう。

アリッサム(花期が長い徳用種)

2009-12-20 13:29:52 | 植物観察1日1題

摘心していた花壇の縁取りのアリッサム(アブラナ科)が厳しい寒さの中で新しい花をつけています。
地中海沿岸の原産で、和名をニワナズナといわれます。写真のスィート・アリッサムは宿根草ですが、通常1年草で取り扱われます。草丈は25cmくらいでよく分枝し、株もよくはります。
花の色は白、紫、ふじ色などがあります。
秋蒔きで4~5月から、春蒔きで初夏から咲きはじめ、うまく手入れすれば年中開花が見られることもできます。
こぼれ種で思いがけないところに芽生えたりするので、結構お徳用な園芸種といえます。

スミレモ:菫藻(陸に生える藻)

2009-12-18 12:59:53 | 植物観察1日1題

石垣の表面に赤錆色のコケのようなものが付着しています。
スミレモ:菫藻といわれる微小藻で緑藻の1種です。水中で生活するアオノリと同じ仲間で、陸上で生活するので気生藻ともいわれます。
生育場所にはたいていいくつかの菌類が生きており、何らかの共生関係があるのではないかといわれています。われわれの身近で生活する気生藻類は、生物が水中から陸上に進出した歴史の鍵を握っているのではないかと興味深い研究対象になっていると聞きます。
およそ姿に似つかわしくないような名前ですが、これはスミレの匂いがすることからきているといいます。実際にそうなのかはまだ確かめていません。

タカノツメ:鷹の爪(冬芽が名前の由来)2009.12.16

2009-12-16 07:30:54 | 植物観察1日1題

初冬の山道に遅くまで黄色の葉をつけていたタカノツメ:鷹の爪(ウコギ科タカノツメ属)もすっかり葉を落としてしまいました。
各地の日当たりのよい山地に生える落葉小高木で、互生する葉は、葉柄が長くて枝先に集まり、3小葉の複葉ですが、よく発達する短枝の基部では単葉になります。
枝先に名前の由来になった冬芽が膨らんできています。鷹の爪の名は、先端がとがる冬芽の形からきていますが、特に曲がった短枝では鷹の足とその先端の爪によく似ていて、名付けの妙を感じさせます。その割には、材が柔らかいことから来ている別名のイモノキはすこしいただけません。
諺でも知られる鷹の爪は、植物では本種以外に、ネデシコ科のツメクサやベンケイソウ科のオノマンネングサの別名もおなじタカノツメとなっています。

シクラメン:(似合わぬ別名:豚の饅頭)

2009-12-14 06:53:51 | 植物観察1日1題

万博公園にシクラメンの原種というのが咲いています。
冬から春にかけての代表的な鉢物の一つのシクラメン(サクラソウ科シクラメン属)は、地中海東部に自生する原種がヨーロッパに渡り、19世紀に栽培と改良が盛んに行われ、今日の多彩なシクラメンに繋がりました。
ふつうは球根植物ですが、本来は秋蒔きで種子から2年かけて作ります。
地下部に扁平で丸い塊茎があり、ふつうハート型の葉が多数生じ、直立する花柄の先に白、桃、鮭肉、紫赤、絞りなどの美しい花をつけます。
一昔前に小椋 佳は「シクラメンのかほり」を歌いヒットしましたが、ふつうシクラメンには香りはありません。
開花の様子から和名をカガリビバナ:篝火花といい、別の名のブタノマンジュウ:豚の饅頭は、英名のSow Bread(雌豚のパン)からきており、丸い塊茎からの連想です。

ウドカズラ:独活葛(直角にでる枝)

2009-12-12 07:48:35 | 植物観察1日1題

晩秋の奈良春日山原始林を歩いていると、巨木、古木に這い登る葛の類が目につきます。直径が10cmを超えるような蔓をみるとこれがテイカカズラやノダフジなどといわれても実感出来ないような大きさです。
葉が羽状複葉でウコギ科のウドに似ているからこの名があるウドカズラ:独活葛(ブドウ科ノブドウ属)も、すっかり葉を落としていましたが、幹から直角に出る特徴ある枝の形からそれとわかりました。
本州紀伊半島以西、四国、九州に分布する落葉性のつる性植物で他物からみついてよじ登ります。
花は夏、大形の集散花序をだし、小さな両性花が集まってつきます。果実は液果で赤色~黒色に熟します。

テンダイウヤク:天台烏薬(野生化する不老不死の霊木)

2009-12-10 06:50:36 | 植物観察1日1題

昨日、一昨日の記事の薬科大学付属薬用植物園にテンダイウヤク:天台烏薬(クスノキ科クロモジ属)が実をつけていました。
不老不死の妙薬として秦の徐福が日本にもたらしたという伝説があるテンダイウヤク(09年4月18日記事参照)ですが、単に烏薬ともいわれ薬用にされるテンダイウヤクは、古く小野蘭山(1729-1810)の「本草綱目啓蒙」に「烏薬は城州(山城国)八幡で多く栽培されている」とあり、この園内のあちこちに自生している実生苗は、いつのまにかこれらが野生化しているものと考えられています。
薬にされるのは根で、健胃、腹痛、頭痛薬に用いられます。

レモン:檸檬(どこか豊かさを感じさせる)

2009-12-09 06:50:38 | 植物観察1日1題

レモングラスのティーを頂いた薬科大学(昨日記事)の薬用植物園に、本当のレモン:檸檬(ミカン科ミカン属)も生っていました。
甘味より酸味と香りを利用する柑橘類の代表で、インド原産、主産地は米国のカルフォルニア
や地中海地方となっています。
果実はふつう長さ8~9cmの楕円形で、果皮は黄色です。
日本で売られているのはほとんどが輸入品ですが、農薬の心配もあり、高価な国産品にも根強い需要があるほか、庭に植えられているのもよく見かけます。
梶井基次郎は短編「檸檬」で、憂鬱に捉えられていたある日、京都の果物屋で1個の檸檬を手に入れ、その色、形、重さ、手触りを確かめることで幸福感を覚えます。
檸檬が高価で珍しいものであった時代の話ですが、安い輸入品が町にあふれている現代人にも、その気持ちが分かるような気がする檸檬です。

レモングラス(レモンの香りのススキ?)

2009-12-08 07:08:05 | 植物観察1日1題

ある薬科大学の薬用植物園を見学したとき、園内のユズを使ったジャムをのせたクラッカーとレモングラス(イネ科オガルガヤ属)のハーブティーをご馳走になりました。
レモングラスは、レモンの香味成分であるシトラールを含み、生のまま、あるいは乾燥させたものを、飲み物や、料理、さらには薬用や香料にも使われ、アロマテラピーの材料にもなります。
肉料理や魚料理にもよく合い、世界三大海鮮スープのひとつといわれるタイ料理のトムヤムクンには欠かせな材料になっています。
あのススキのような葉から、レモンの香りのレモングラスティーが出来ているのが不思議な感じでした。

ナチシダ:那智羊歯(5枚に見える羽片)

2009-12-07 08:31:38 | 植物観察1日1題

箕面の山で何十年かの間姿を消していたナチシダ:那智羊歯(ウラボシ科イノモトソウ属)、最近ふたたび発見されたというニュースを聞いたことがあります。
そのナチシダが奈良春日山原始林の遊歩道沿いにたくさん見られました。
本州房総半島から九州、アジアの熱帯に分布し、暖地の山中林下に生える常緑の多年草で、八丈島以北では冬には葉が枯れます。
葉は高さ1~2m、葉柄の上部に3羽片を分枝し、左右の羽片は更に2羽片に分枝するので、上から見ると5枚の羽片があるようにも見えます。
このシダもシカは食べないようです。

イワヒメワラビ:岩姫蕨(シカは敬遠)

2009-12-06 06:41:25 | 植物観察1日1題

奈良公園一帯は、鹿が食べるか食べないかで独特の植生となっています。
イラクサ、ナンキンハゼ、アセビ、ナギなどは鹿が嫌って食べないため、鹿が伸び上がって食べることの出来るいわゆるディアーラインの範囲内でもよく茂っています。
その一つのイワヒメワラビ:岩姫蕨(ウラボシ科イワヒメワラビ属)は本州関東から琉球などの温帯から熱帯に分布し、まれに東北地方にも見られが、暖地の低山や平地のやや明るいところに生える多年草です。
根茎は横にはい、葉は軟毛をもった草質で、先端は初冬まで成長を続けるので、全長2mにもなりますが、冬は枯れます。

テンダイウヤク:天台烏薬(野生化する不老不死の霊木)

2009-12-05 08:32:48 | 植物観察1日1題

昨日、一昨日の記事の薬科大学付属薬用植物園にテンダイウヤク:天台烏薬(クスノキ科クロモジ属)が実をつけていました。
不老不死の妙薬として秦の徐福が日本にもたらしたという伝説があるテンダイウヤク(09年4月18日記事)ですが、単に烏薬ともいわれ薬用にされるテンダイウヤクは、古く小野蘭山(1729-1810)の「本草綱目啓蒙」に「烏薬は城州(山城国)八幡で多く栽培されている」とあり、この園内のあちこちに自生している実生苗は、いつのまにかこれらが野生化しているものと考えられています。
薬にされるのは根で、健胃、腹痛、頭痛薬に用いられます。