新・むかごの日記

高槻市に在住の、人間と自然が大好きな昭和1桁生まれの爺さんです。
出かけるときはカメラ連れ。
目標は毎日1記事です。

クサタチバナ:草橘(髭を持つ種子)

2010-08-31 08:47:28 | 植物観察1日1題

初秋の風が渡る伊吹山頂上で、クサタチバナ:草橘(ガガイモ科カモメヅル属)の果実が熟し、綿毛をつけた種子が顔を出していました。
花がミカン科のタチバナを思わせるところからこの名があり、(08年8月24日記事)山地に生える多年草で高さ30~60cmになります。(08年8月24日記事)
種子に生える毛は種髪と呼ばれ、種子の先端で花粉管が入るところ(珠孔)の付近の種皮が変化して毛になったものとされています。
種子は軽く形が扁平で、風で遠くまで飛ばされやすいようになっています。

モミジアオイ:紅葉葵(よく見える五数性)

2010-08-28 08:13:08 | 植物観察1日1題

庭で今年もモミジアオイ:紅葉葵(アオイ科フヨウ属)が咲いています。
別名の紅蜀葵(コウショクキ)の語感からは中国産のような感じがしますが、北アメリカ南部の原産で、わが国には明治時代後半に渡来したとされます。大形の多年草で、根元から数本の太い幹を出し、高さは1.5~2m、葉は大きく掌状に5裂します。
夏に咲く花は直径15cmぐらいと大きく、紅色、花弁は重なり合うことはなく、十分展開して、花柱を突出させます。
ハイビスカスと同じで、よく目立つ花の外へ長く突き出る花柱は、雄蕊が雌蕊を取り囲んで筒状をなし、雌蕊の先の柱頭は5つに分れています。“多雄蘂単体”とか“単体雄蕊”といわれる構造です。花びら、萼、苞葉もそれぞれ5枚ずつからなっていて、五数性のはっきりした花です。

ラクウショウ:落羽松(池畔の仏像群) 

2010-08-26 08:54:11 | 植物観察1日1題

植物園の池のほとりに、木彫りの仏像群のようなものが立っていました。
ラクウショウ:落羽松(スギ科ヌマスギ属)の膝根といわれるもので、ほかの樹木ではあまり見かけない変わった性質です。
葉が水平に並んでつく枝を鳥の羽に見立て、枝ごとに葉が落ちることから落葉松の名があり、生育地からヌマスギの別名もあります。北米東南部、メキシコ原産の落葉高木で、水湿地、沼地、川辺などに生育し、公園や庭園樹として用いられます。
膝根は呼吸根ではないかと考えられており、若い固体や、乾燥地ではあまり発達しません。



カンガレイ:寒枯藺(茎に直接つく小穂) 

2010-08-25 07:25:46 | 植物観察1日1題

水辺の植物が続きます。
枯れた茎が冬でも残るのでこの名があるカンガレイ:寒枯藺(カヤツリグサ科ホタルイ属)も、池や沼、川岸などに群生する多年草で、高さは50~120cm、茎の断面が三角形。葉は退化してふつう葉鞘だけになるなど、昨日のサンカクイとほとんど同じですが、小穂には柄がなく、茎に直接つくところが両者の区別点になります。


サンカクイ:三角藺(花穂がつくのは茎の先端) 

2010-08-24 07:51:19 | 植物観察1日1題

サンカクイ:三角藺(カヤツリグサ科ホタルイ属)は茎の断面が三角形なのでこの名があります。茎の先端につく苞の先が尖っているので、サギノシリサシ(鷺の尻刺し)という面白い別名もあります。
7~10月、茎の先に長さ2~5cmの苞が1個直立し、その脇から2~3個の“枝”を出し、先端に2~3個ずつ小穂をつけます。穂の基部から長い苞がのびているので、穂は茎の途中についているように見えます。

ハス:蓮(蓮は蜂巣)  

2010-08-23 08:27:51 | 植物観察1日1題

“どぶに落ちても根のある奴は、いつかハチスの花と咲く…“男はつらいよの寅さんが歌います。
ハチスは蜂巣で蓮の古名です。ハスの名は花托の形状を蜂の巣に見立てたものとされています。
ハス:蓮(スイレン科ハス属)は、中国、インドの原産で、蓮華ともいわれ、関連づけられる仏教とともに非常に古い時代に中国より渡来、各地の池や沼に生え、また水田に栽培されます。
果実(種子)はでんぷんが豊富で、食用にされ、中国などでは餡にされて月餅などの菓子に加工されたり、薬用として用いられます。
1951年千葉県検見川の落合遺跡で、約2000年前(弥生時代)のハスの実が発掘されました。
発掘された3粒のうち1粒が発芽・成長し見事に開花しました。指導した大賀一郎博士の名を冠した大賀ハスの子孫は、古代ハスとも呼ばれてひろく世界中に栽培されています。

カミガヤツリ:紙蚊帳吊(古代の紙の原料) 

2010-08-22 14:33:03 | 植物観察1日1題

植物園の水生植物コーナーでパピルスを見かけました。
和名でカミガヤツリとかカミイとよばれるカヤツリグサ科カヤツリグサ属の植物で、古代エジプトでこの茎から文字の筆記媒体がつくられ、紙を意味する英語のpaperなどの語の由来となったとされます。
もともとはアフリカ奥地の湖や河畔の浅い流れの中に繁茂し、4~5mほどの高さになります。
茎の断面は3角形で、最大6cmほどの太さになります。
昔は記録のための媒体のほか、儀式祭礼用品や履き物のような生活雑貨、綱、舟の帆や舟そのものの材料として使われましたが、いまでは栽培はもっぱら観賞用となっているようです。

ヒメミクリ:姫実栗(いががあっても姫) 

2010-08-21 16:31:47 | 植物観察1日1題

うんざりするほどの猛暑が続き、草木たちもばて気味です。その中で水辺の植物たちだけは暑さを知らぬげに涼しそうです。
ヒメミクリ:姫実栗(ミクリ科ミクリ属)が、花をつけています。
ミクリに比べて、全体に小形で、高さは30~60cm、葉の幅は3~5cmと細く、茎よりも高くのびます。
花期は6~9月、花をつける枝は1~3個でて、下部に1~3個の雌頭花、上部に2~6個の雄頭花をそれぞれ間隔をあけてつけます。
写真では、白い雌蕊が目立つ雌頭花と開花前の雄頭花、その上奥に名前の由来になっている、栗のいが状の若い果実が見えています。

イシクラゲ:石水母(菌の塊) 

2010-08-19 09:01:51 | 植物観察1日1題

植物が乾燥に対応するやり方は2つに大別されるといいます。ひとつは積極的な「適応」で、高等植物に見る、蒸散を防ぐ、葉の表面の厚いクチクラ層や、葉をトゲに変形したサボテンなどさまざまの形があります。
一方コケ植物のような単純なつくりの下等植物では、そういう対応をとれず、乾燥すると植物体全体が積極的に乾いてしまい、すべての生命活動を一時的に休止、水分を得ると、急いで水を吸収して光合成を再開する「受容」で対応します。
コケや地衣類ではありませんが、雨が降ったあと地面や芝生などに突然現れて気味悪がられるイシクラゲ:石水母(ネンジュモ属)は、典型的な後者の例です。
乾くと固いかさぶた状になり、手でもめば粉末状に壊れるくらいでありながら、水を含むとたちまち柔らかい寒天状の塊になります。
よく似た性質を持つ膠着状地衣類と非常にまぎらわしいのでよく混同されますが、イシクラゲは地衣類ではなく、単独で生活するシアノバクテリア(藍藻:現在では藻類ではなく藍色細菌とされている)です。
得体の知れないようなイシクラゲですが、食用になり、販売もされているそうですから、“なんでも食ってやろう”の人間の食欲に感心させられます。

アカミゴケ:赤実苔(赤い子器が目立つ)

2010-08-18 06:52:28 | 植物観察1日1題

八ヶ岳麦草峠で見たアカミゴケ:赤実苔です。苔の名がついていますが地衣類のハナゴケ類に属します。
ハナゴケ類は腐植土を好む樹枝状地衣類で、市街地から高山までいろいろな種類が広く分布します。
ハナゴケ類の特徴は、地衣体が形態の異なる二つの部分から構成されることで、成長の初期にはまず基本葉体と呼ばれる鱗片状の地衣体が生じ、次にその表面から子柄(生殖器官である子器をつけるための柄)がつくられます。
アカミゴケの仲間は、子器に赤い色素(ロドクラドン酸)を含み、鮮やかな紅紫色となります。
地衣類の和名の約70%に○○ゴケとついているそうで、コケ類と混同されることが多いのですが、
地衣類は藻類と共生生活をする菌類であり、コケ類は緑色植物に属するので、両者の生物学的な差は相当に大きいといえます。名前だけで判断すると間違いのもとというわけです。

ヤマヒコノリ(樹枝状に分岐する) 

2010-08-17 05:45:30 | 植物観察1日1題

昨日取り上げたサルオガセの下に落ちていた地衣類です。
一瞬サルオガセかと思いましたが、よく見ると様子が違います。どうやらサルオガセの仲間ですが、ヤマヒコノリ属のひとつと思われます。
柔らかい付属体を持ち針葉樹の幹に着生し、樹枝状に分岐する美しい地衣で、北海道と本州で知られています。
身近でよく知られているウメノキゴケや昨日のサルオガセなどの地衣類は、菌類の仲間で、緑藻やシアノバクテリア(藍藻)と永続的な共生関係を持ち、安定した植物体をつくって生きています。菌類は地衣体の中で安定した生活の場と水や無機物を藻類に与え、代わりに藻類が光合成でつくる栄養(炭水化物)を得ています。日本で約2000種、世界中で約20,000種が報告されているといいますが、情報と知識がいかにも不足で、残念ですがなかなか同定までには到りません。

サルオガセ:猿尾枷(サルオガセは木を枯らさない) 

2010-08-16 14:53:06 | 植物観察1日1題

八ヶ岳連峰最北端に位置する蓼科山の山ろくで見かけたサルオガセ:猿尾枷です。地衣類のサルオガセ属は、日本に約30種あまり記録されており、多くは写真のように基部の1点で木の枝に付着し、髭のように長く垂れ下りますが、外形がよく似た種が多く、分類は難しいといいます。
よくバスガイドなどが、サルオガセを指して、これがつくと木が枯れるといった風な説明をすることがあります。確かに針葉樹の枯れ枝を覆いつくすように付着しているのを見ると、至極もっともなような気がするものの、多くの場合真実ではないそうです。木が枯れると細枝や葉が落ちて地衣類の生活環境がよくなり、生育がさらに旺盛になるのでこのように見えるのであって、菌糸は樹皮の表面近くにとどまっていて内部に進入することはなく、ヤドリギのように樹皮から栄養を吸収することもしません。地衣の豊かな森林は、土壌が栄養に富むとされており、地衣類は逆に森林土壌の栄養価を高めるのに一翼を担っているともいえるそうです。

ウラハグサ:裏葉草(裏が表で、表が裏) 

2010-08-15 15:40:06 | 植物観察1日1題

ウラハグサ:裏葉草(イネ科ウラハグサ属)は、渓流沿いの岩場や崖などに生える多年草で、風知草という名で観賞用に植えられています。
もともと、葉の表・裏は茎に対している面が表、その反対が裏と人間が勝手に決めており、たとえばネギの筒状の葉は、緑色の筒の表面が葉の裏で、内側の白っぽい面が葉の表という約束になっています。
ウラハグサは、自生地の環境から見て当然といえますが、ふつう茎が垂れ下る形になっており、いうところの裏面が表側になっていて緑色を呈し、本来の表は裏側になって表面が白っぽくなっています。葉の基部が180度ねじれている、とする図鑑もありますが、葉自体がねじれているわけではありません。

終戦直後宮本百合子は「風知草」を書いて、毎日新聞文化賞を受けています。
思想犯として終戦まで長年獄中にいた年下の夫宮本顕治と同じく、一時未決囚として獄中にいた百合子が、差し入れを受けた鉢植えの名札で風知草の名を知ります。「かぜしりぐさ」とも呼ばれることを知らなかったという百合子ですが、作品の中では「風知草」そのものは出てきません。
風がそよとも動かない狭い女囚房にあって、百合子は「風知草」にどんな思いを託そうとしたのでしょうか。

コバノカモメヅル:小葉の鴎蔓  

2010-08-14 08:28:02 | 植物観察1日1題

8月6日にコカモメヅル:小鴎蔓を取り上げましたばかりですが、有馬逢山渓の道端で、コバノカモメヅル:小葉の鴎蔓(ガガイモ科カモメヅル属)らしきつる植物を見かけました。
山野の草地に生えるつる性の多年草で、茎は長くのびてほかの木や草に巻きつきます。葉は対生し、長さ3~11cmでの長楕円披針形で先は尖ります。
7~9月、葉の付け根からのびた花柄の先に数個の暗紫色の花をつけます。花冠は放射状に深く5裂し、花の中心に副花冠と雌蕊、雄蕊が集まった蕊柱があります。
近い仲間に、名前に反して花がごく小さく花序も短いオオカモメヅルや、低地に生えて、花粉の付き方の違いでカモメヅル属になるコバノカモメヅルなどがあって、少々まぎらわしくなっています。
残念ながら花が虫に食われていて、はっきりしないのですが、想像で補って見てください。

キササゲ:木大角豆・木豇豆・楸(椿・榎・楸・柊) 

2010-08-12 08:42:47 | 植物観察1日1題

小さい谷あいに何本かのキササゲ:木大角豆(ノウゼンカズラ科キササゲ属)が、名前の由来であるササゲに似た長さ30cmほどもある果実を垂れ下げていました。
中国原産の落葉高木で、古くから薬用や観賞用に植えられ、今では野生化もしています。
6~7月枝先に淡黄色で、漏斗型の花を円錐状につけます。
長いさく果は生薬で梓実といわれ利尿、解毒などの薬になります。梓は日本ではカバノキ科のアズサ〈ヨグソミネバリ〉を指しますが、本来はキササゲのことです。
キササゲは漢名では木扁に秋で楸〈シュウ〉です。面白いことには木扁に冬の柊〈ヒイラギ〉もおなじくシュウと読みます。
俳人の加藤楸邨は、はじめ柊村(しゅうそん)と名乗っていましたが“とうそん”と読むひとが多いので、楸村、木がごたつくので楸邨になったといいます。一方、昭和の歌人宮 柊二はそのまま“しゅうじ”です。
ついでに木扁に春の椿は中国ではチンで、センダン科のチャンチンを指し、椿は山茶と書きます。ツバキを指す椿は日本の国字です。
木扁に夏の榎は中国ではカで、檟とも書き、“ひさぎ”すなわちキササゲを指します。中国では
楸も榎も同じキササゲとなります。ニレ科のエノキを意味する榎も国字です。