新・むかごの日記

高槻市に在住の、人間と自然が大好きな昭和1桁生まれの爺さんです。
出かけるときはカメラ連れ。
目標は毎日1記事です。

カンヒザクラ:寒緋桜(寒さに生き生き)

2006-03-31 07:53:33 | 植物観察1日1題
開花宣言があった翌日から大阪では連日雹や霰が降りまた寒さがぶり返しました。ソメイヨシノは首をすくめてあたりを窺っている気配です。
その中で一足先にカンヒザクラ:寒緋桜(バラ科サクラ属)が濃い緋色の花をつけて、まだ冬の景色の公園を彩っています。時ならぬ冷たい風に、まだまだ主役は私だよと主張しているみたいです。
台湾、中国南部原産の落葉小高木で琉球列島で野生化し、今では西日本各地で庭木として栽培されています。花期は早く沖縄では1月から、関東地方でも2~3月、1芽から2~3花を出して下向きに開きます。花弁はあまり開かず鐘形になるのが特徴で、散るときは花びらと雄蕊がひっついた形のまま落ちます。花には蜜が多くメジロがよく訪れます。
花が緋紅色をしているので緋寒桜といわれていましたが、彼岸桜と紛らわしいので最近では寒緋桜呼ばれることが多くなっているようです。手元の図鑑でも古いのは緋寒桜、新しいのは寒緋桜となっていました。別名に台湾桜、緋桜があります。

オニシバリ:鬼縛(名は怖そうでも)

2006-03-30 07:01:00 | 植物観察1日1題
春先の木の下にオニシバリ:鬼縛(ジンチョウゲ科ジンチョウウゲ属)の黄緑の花が咲いています。福島県以南の本州、四国、九州の山林に生えるジンチョウゲ近縁の低木で、高さは1m前後、直立してあまり分枝しません。樹皮が強く鬼をも縛るというのでこの名があります。
また枝先に集まって互生する長さ5~10cmの倒披針形の葉は、秋に出て夏に落ちるのでナツボウズ:夏坊主の別名があります。
雌雄異株で4月ごろ枝の上部の葉脇に黄緑色の花が群がって咲きます。花弁がなく萼が筒状で大きく4裂し、雌花は雄花より小さくなっています。
写真は、比較の相手がないので不確かですが、雄蕊の大きさからみておそらく雄花と思われます。
果実は楕円形の液果で赤く熟し、辛くて有毒、夏の終わりに葉のない枝に新芽、つぼみ、赤い実が共存して独特の景色を作ります。
オニシバリといいナツボウズといい少々怖そうな名前ですが、早春のこの木は木も花も優しさにあふれています。

ジンチョウゲ:沈丁花(香りのもとを尋ねて)

2006-03-29 06:59:26 | 植物観察1日1題
春、どこからか強い花の香りが流れてくると、探しあてた香りの源が、思わぬ遠いところだったりして驚ことがよくあります。
ジンチョウゲ:沈丁花(ジンチョウゲ科ジンチョウゲ属)は、秋のモクセイと並んで花の香りが高いことでは双璧です。
中国原産、日本には室町時代には庭などに植えられていた常緑低木です。葉は互生し長さ5~10cmの倒披針形です。早春、前年の枝先に頭状に固まって開き強い香りがします。
外側が紅紫色、内側が白の筒状の花びらに見えるのは萼で、本物の花びらは退化しています。雌雄異株ですが、日本ではほとんどが雄株で結実しません。園芸化されて挿し芽で殖やされるのでこれでも不自由はなく、白花や斑入り葉の園芸種があります。
和名の沈丁花は沈香と丁子の花の香りを合せもつ、また香りは沈香で、花は丁子に似るからの2説があります。別名に瑞香、輪丁花があります。

ロウアガキ:老鴉柿(枯れ残る老爺)

2006-03-28 07:10:17 | 植物観察1日1題
春になったというのに、京都府立植物園に変わった形の柿がいまも実をつけています。
ロウアガキ:老鴉柿(カキノキ科カキノキ属)です。同園の初代園長が中国から持ち帰って植栽したのが初めといわれる、比較的新しい珍しい柿で、図鑑にもほとんど載っていませんが、小ぶりの実、衝羽根型のへた(萼)が面白くツクバネガキの名もあり、最近では盆栽や茶花などに用いられることも多くなっているようです。
この時期まで残っているのは、渋柿なので鳥も好まないからかもしれません。それでも手の届く高さにはひとつも残っていないのは人間様の仕業なのでしょう。
ロウヤガキ、ロウシガキなどとも呼ばれていますが、本家の京都植物園では確か郎爺柿(老爺柿?)の名札がついていました。このほうがなんとなく雰囲気が出ている気がします。

ハナノキ:花の木(花も美しい楓)

2006-03-27 07:05:54 | 植物観察1日1題
公園になにやら赤っぽくなった高木があります。
早春、葉が開く前に紅色の花をつけてよく目立つところからこの名がついたハナノキ:花の木(カエデ科カエデ属)です。いわゆる隔離分布をしている木で、愛知、岐阜、長野などのごく限られた山間湿地に飛びとびに群生地がありますが、移植すればどこでも順調に成育するなど適応性もあるようで、今では各地の公園や街路樹に結構使われています。
花期は4月、前年伸びた枝に紅色の花が3~6個ずつ束になって咲きます。雌雄異株で、雄花の雄蕊は普通5個で花の外に突き出し、雌花の雄蕊はごく短く、先が2裂した花柱が目立ちます。
名前ほどの華やかさがありませんが、カエデの仲間としては花が綺麗ということでしょう。
秋に鮮やかに紅葉する葉は、先端が浅く3裂しトウカエデに似ていますが、ふちに不ぞろいな鋸歯があります。樹形もトウカエデのように立ち上がらず上部で横広がりになるので区別できます。
ハナカエデの別名もあり、愛知県の県木になっています。

スハマソウ:州浜草(二つの雪割草)

2006-03-26 07:07:46 | 植物観察1日1題
高槻市北部神峰山の森でスハマソウ:州浜草(キンポウゲ科ユキワリソウ属)が咲いています。
本州の山地の樹陰などにはえる多年草です。葉は根生し束生、冬も枯れません。
早春、古い葉の間に2~3花をはじめ点頭し、後に上向きに開きます。花の径1~1.5cmで花弁はなく、6~9個の萼片が花弁状になっていて、白色時には紅色か紫色を帯びます。
葉の形が丸みを帯びていて島台の州浜に似ているとしてスハマソウの名があります。
園芸店で様々な色合いや模様の苗が売られていて愛好者も多いこの草は、一般にユキワリソウ:雪割草の名で親しまれています。
同じようにユキワリソウと呼ばれるのに葉の先がとがっているミスミソウ:三角草があります。
本によっては、スハマソウの葉の先が尖ったものをミスミソウと呼ぶ、スハマソウはミスミソウの一変種である、この二つは同じものと考えてよいなど諸説あります。牧野図鑑では、スハマソウ、ミスミソウとあり別名をいずれもユキワリソウとしています。
この神峰山の森は、もともと自然園として人工のものですが、事情があって最近は少し荒れていて、スハマソウも所どころに消え残っているという感じです。でもそれがかえって自然の姿に近く見えて好ましい気がしました。

ラナンキュラス(親友に譲った悲恋物語)

2006-03-25 07:18:03 | 植物観察1日1題
美少年のピグマリオンと金茶色の肌をした背の低い醜男のラナンキュラスは親友でした。ある日道に迷った2人を家でもてなした親切で美しい娘コリンヌに二人とも恋をします。ピグマリオンは親友の気持ちに気づかず娘と結婚します。ラナンキュラスは傷心を秘めたまま若い命を終えます。友の安否を案じて探し回ったピグマリオンが見つけた友の墓には一本の黄色い花が咲いていました。(ギリシャ神話)
ラナンキュラス(キンポウゲ科キンポウゲ属)は、ヨーロッパ南部から西アジアを原産とする多年草で、花は黄色で光沢があり、野生種は一重です。
園芸上ではラナンキュラスの名でハナキンポウゲ(花金鳳花)が球根草花として扱われています。豪華な饅頭型の八重先咲きに改良され、色もオレンジ、赤、白など多彩になっています。この改良種では悲恋のうちに命を終えたラナンキュラスをイメージすることは困難です。
ラナンキュラスにあたる日本の花は、八重咲きがキンポウゲ、一重はウマノアシガタということになりますが、改良種を見慣れた目にはなかなか仲間とは見えません。

アオキ:青木(青い葉に紅色の実) 

2006-03-24 06:57:31 | 植物観察1日1題
日本原産のアオキ:青木(ミズキ科アオキ属)は、光沢ある常緑の葉と美しい赤い実で世界中で栽培されています。欧州へは当初、雌株だけが渡ったため結実しないので、プラントハンターのフォーチュン氏がわざわざ雄株を探してイギリス軍艦に乗って来日し、雄株を持ち帰ったのが渡欧約80年後、桜田門外の変の半年後だったという話が残っています。
以前、パリの吉兆とかいわれるレストランへ行ったとき、店先の植え込みが青木だったのが印象に残っています。海外では、本家の日本より大事にされているようです。
山地の樹林下に生える常緑低木で、雌雄異株、高さ3mほどになる代表的な陰樹です。花は三~5月に咲き、秋長さ2cmほどの楕円形の真っ赤な実をつけます
大きい実は大柄なヒヨドリがよく食べるそうですが、大きな種にはたっぷりの栄養が入っていて、落ち葉の層をつきぬけて育つのに役立っているといいます。

シダレヤナギ:枝垂柳(結べばめでたい)

2006-03-23 06:26:28 | 植物観察1日1題
春雨にシダレヤナギ:枝垂柳(ヤナギ科ヤナギ属)の新芽が膨らんでいます。単にヤナギともまたイトヤナギともいわれ、中国原産で、奈良時代にすでに日本に渡来しました。今では、公園の水辺や街路樹に多用されているおなじみの木です。
高さ5~10mの落葉高木で、長く柔らかい枝は下垂し風によくなびく姿は風情があります。
早春、葉が伸びきらない前に花をつけますが、わが国ではほとんど雄株ばかりで、中国の春の風物詩となっている 熟した実から白い綿毛をつけた種子(柳絮)が舞い散るという光景は見られません。
昔から人々とのかかわりあいも深く、柳腰、柳眉など体の部分に関するもの、柳樽、柳包丁などの名称、柳に風、柳の下の泥鰌、柳に雪折れなしなどのたとえ等柳は様々な表現に使われています。
新春、茶道の家元の初釜席では“結び柳”といって丸く結んだ長いシダレヤナギの束が必ず飾られます。春いち早く芽を出すヤナギを一陽来復のめでたいしるしとしているのです。中国でもヤナギの枝を環に結び、還るに通じるとして旅立つ人の無事を祈る風習があるそうです。
ヤナギはめでたい木なのです。

アセビ:馬酔木(守るも攻めるも)

2006-03-22 07:10:26 | 植物観察1日1題
アセビの白い壷型の花が咲き始めました。アセビ:馬酔木(ツツジ科アセビ属)は、この葉を馬が食べると酔ったようになるというのでこの字が充てられた有毒植物です。
山地に生える常緑の低木で庭木としても用いられます。大きなもので5mくらい、普通は2mくらいの高さになります。
毒の正体は、アセボトキシンという神経毒で、この木が食害昆虫や草食動物から身を守る防衛手段です。
これが見事に成功しているのが奈良公園のアセビで、鹿に食べられないので大いに生え茂っています。人間もこれを利用して殺虫薬として用いていますが、この毒を処理する能力を備えた虫もいるそうで驚きです。
ブランデーグラスを吊り下げたような花は普通白ですが桃色などもあり、蕚の色も緑や赤など変化があります。花は下向きに咲きますが、果実は上向きになって熟します。

フクジュソウ:福寿草(花も出ばな)

2006-03-21 06:50:54 | 植物観察1日1題
フクジュソウ:福寿草(花も出ばな)
3月14日今年も、高槻の裏山ポンポン山西山稜に咲く福寿草を訪ねました。
家の庭にも鉢植えがありますが、やはり自生の美しさには太刀打ちできません。
日本各地に咲くフクジュソウ:福寿草(キンポウゲ科フクジュソウ属)は、旧暦の元日ころに咲くのでガンジツソウ(元日草)の別名もあり、名のとおり春を呼ぶ目出度い花として広く愛好されてきました。
落葉樹の林下、花は陽光を浴びて温度が上がると開きます。光沢のある花びらはパラポラアンテナのように太陽光を集めて、花の中は外気より10度ほども暖かくなります。花には蜜がありませんがハナアブの仲間が黄色を目印に訪れ、日光浴をしながら花粉をなめていくという仕掛けです。
自生地にはつぼみから咲き終わった花まで入り混じっています。花の写真をたくさん撮りましたが、本当に綺麗だと思ったのは、蘂の形が整然とした若い花だけでした。フクジュソウもまた番茶も出ばなという時期があるようです。

バイカオウレン:梅花黄連(白梅の清らかさ)

2006-03-20 06:59:18 | 植物観察1日1題
高槻、神峰山の森でバイカオウレン:梅花黄連(キンポウゲ科オウレン属)が白く可憐な5弁の花をつけています。
梅花型のこの花はオウレンの仲間で最も美しいといわれています。本州福島以南、四国の山地に生える多年草、高さ8cm内外で葉は束生します。花は春、根生葉の中心から花茎を1本出します。中ほどに鱗片状の小苞が一個あり頂に両性花をつけます。
5枚の白い花弁と見えるのは萼片で、長さは5~9mm、花弁は退化し蜜槽になっています。
別名のゴカヨウオウレン:五加葉黄連は、葉が五加(ウコギ)似ることにちなみます。
朝の光を浴びて真っ白い花が微妙な陰影をつけています。小さいのでかわいい花ですが、今日はアップにして花の構造をとくと見てみました。

セリバオウレン:芹葉黄連(黄色い根は薬) 

2006-03-19 07:28:29 | 植物観察1日1題
セツブンソウやアズマイチゲに囲まれてセリバオウレン:芹葉黄連(キンポウゲ科オウレン属)も咲いています。
山の樹下に生える常緑の多年草で、葉はすべて根生、なかほどに多裂した3出羽状複葉で多数の小葉があります。春高さ7cmくらいの花茎を出し、茎上に柄のある径1cmほどの白い小花2-3個を開きます。白い花弁に見えるのは萼片で、花弁はへら形で小さく、雄花には雄蘂が多数、雌花には数個の心皮があります。
名前のもととなった中国の黄連とは別物だそうですが、同じように多肉の根茎は黄色く肥厚しており、やはり重要な薬用植物として、古くから胃腸薬などに用いられています。
この5日間篠山の早春の花をご紹介してきました。みんな春の雪の中で一段と輝いて見えました。
幹線道路にごく近い民家の裏に、珍しい植物が競うように咲くこの一帯は、いまどき貴重な存在です。これも地元住民による地道な保全努力あってこそと感謝しつつ別れを告げました。
(後日、この写真は2回3出複葉のセリバオウレンではなく3出複葉に見えるからオウレン(キクバオウレン)ではないかとのご指摘をいただきました。セリバはキクバの変種で両者は葉で区別しますが、写真では明確には出ていませんでした)

キクザキイチゲ:菊咲一華(篠山に咲くイチゲ三兄弟)

2006-03-18 07:04:43 | 植物観察1日1題
茎の先に菊に似た花が1個つくことから名があるキクザキイチゲ:菊咲一華(キンポウゲ科アネモネ属)は、いまシリーズで紹介している何種類かのスプリングエフェメラルと同じ生育環境に育つ多年草で、高さ10~30cm、茎には3出複葉が3個輪生し、小葉は羽状に深く切れ込みます。早春茎の先に直径3cmほどの淡紫色ときに白い花を1個上向きにつけます。この花も花弁と見えるのは8~13個の萼片で、花弁はありません。
ある本に、キクザキイチゲは近畿以北のもので、一昨日のユキワリイチゲは近畿以西とありましたが、ここ篠山では両者を同じ場所で見ることができます。
これらのイチゲは、牧野図鑑ではアネモネ属となっていますが、別の本ではイチイリンソウ属としているのもあります。
このアネモネの仲間は日が当たると花を開きます。雪空のこの日はこのキクザキイチゲも花びらを閉じてうつむいたままでした。

アズマイチゲ:東一華(西でも東でも)

2006-03-17 07:06:04 | 植物観察1日1題
昨日の記事の社のすぐ近く、農家の裏手の斜面に見事なアズマイチゲ:東一華(キンポウゲ科アネモ属)
の群落があります。
落葉樹林の林縁や林床の石灰質土壌に好んで生えます。早春に地上に現れ初夏には消えるスプリンエフェメラルで有毒物です。
関東地方に多くあるのでアズマ、イチゲはほかのイチゲと同じで花茎の頂に花を一つつけることからきています。
葉は3裂して長い柄を持ち、小葉は卵型で浅く裂けます。早春、葉より高く出した茎頂に苞葉をつけ、中心から花茎を1本立てます。花は3~4cmで裏は少し紫色を帯びます。花びらと見えるのは10片内外の萼が変化したもので、花弁は退化して見えなくなっています。この花も日が当たると開きますが、雪空のその日は花びらを閉じたままでした。