新・むかごの日記

高槻市に在住の、人間と自然が大好きな昭和1桁生まれの爺さんです。
出かけるときはカメラ連れ。
目標は毎日1記事です。

岩湧山で出会った草木たち(4) 花も紅い ナワシロイチゴ:苗代苺

2005-06-30 06:20:26 | 植物観察1日1題
山頂付近に紅い花をつけたナワシロイチゴ(バラ科)が数多く見られました。
茎は横にはい、それから直立した高さ30cmほどの枝を出します。枝には鋭いとげがたくさんあり、葉は、複葉で裏は毛がおおく白色です。
枝の先に紅い花をたくさんつけ、花のがくにも毛があります。一般に草苺にしても木苺にしても白または黄色の花が多く、この花のように紅いのは珍しいと思います。
ナワシロイチゴの名は、果実が苗代のころ熟すことからきていますが、熟すと赤い実は食べてもあまり美味しくないそうです。

岩湧山で出会った草木ち(3)赤い実もなかなか、ザイフリボク:采振木

2005-06-29 06:57:08 | 植物観察1日1題
ザイフリボク(バラ科)は、采振木、四手桜、といわれ、春に咲く、白い房状の花が采配や、神事に使う白紙の四手(幣)に見たてられる美しい木ですが、初夏に紅くなる果実もなかなかのものです。
この季節、山で赤い実をつけるのは、この木のほか、ウグイスカグラ、ニワトコ、スノキなど限られたものしかありません。ほかの木より早く熟して小鳥に食べてもらおうとの戦略なのでしょうか。
直径6mmくらいの赤紫に熟れた果実は、小さい林檎に似て、いいかにも美味しそうですが、味のほうはまあ食べられるといった程度のものでした。

岩湧山で出会った草木たち(2) 湿地に鮮やかな、ミゾホウズキ:溝酸漿

2005-06-28 06:42:36 | 植物観察1日1題
水がが滴っているような湿地に咲いていたのは、黄色い花のミゾホウズキ(ゴマノハグサ科)です。ラッパ状の花を茎上部の葉脇につけます。
果実がホオズキに似るところからこの名がついたそうです。
昨年夏八方尾根で見かけたことがあるので高山系の花に違いないはずですが、何種類かの図鑑を調べましたが、出ていたのは一冊だけでした。ということは、この花はめったに見られないのか、あるいは逆に、あまりにもありふれているのか、どちらなのか考えてしまいました。

岩湧山で出会った草木たち(1) 低い姿勢で可憐に咲くイナモリソウ:稲盛草

2005-06-27 06:10:58 | 植物観察1日1題
6月中旬泉州の岩湧山へ花を訪ねました。
山頂への木陰の道では、いろいろな花が私たちを迎えてくれました。
中でも珍しい可憐な花はイナモリソウ:稲盛草(アカネ科)です。江戸時代に名古屋の花屋の久兵衛さんが伊勢の稲盛山でこの花を見つけ名づけたといいます。
関東南部より南の山地でやや湿った木陰に生える、小型の多年草で、茎は短く5~10cm、4~6枚の葉が茎の上部につき、茎、葉ともに毛が多くついています。6月頃茎上部の葉の間に淡紅色の長筒状の可愛い花をつけます。花冠は漏斗状で先が5裂し、各裂片は卵型で、雄蕊が5個あります。
地面にはいつくばったように咲き、うっかりすると見落としそうな小さな花ですが、しっかりと胸を張って咲いていました。

滋賀県浅井町にて(終)収穫多かった近江路の蛍狩り

2005-06-26 09:35:26 | 植物観察1日1題
滋賀県浅井町野瀬での一泊2日の蛍狩りの旅は、豊かな自然、暖かい人情、古い歴史に包まれた静かな農村を体験する旅でもありました。
早朝の大吉寺での法話と座禅もすがすがしい経験でした。
宿主の友人から頂いた鮒寿司やマタタビ酒などの珍品もうれしく賞味させていただきました。
肝心の蛍はちらほらという感じでしたが、それでも十分に楽しめました。
手持ちのカメラでは、飛び交う蛍の写真をうまく撮ることは出来なかったのは残念でした。
たまたま捕らえた蛍は交尾したままの形でじっとしています。聞けば蛍の交尾は15時間も続くそうで、身を焦がす蛍の恋路をじゃまするとは無粋なことをしたものです。
思い出に残る一夜の宿をご提供いただいたN様ご夫妻や地元の方々に心より感謝し、最後にN夫人の俳句を拝借してこのシリーズを終わります。
    
    しばらくは蛍の恋を掌に這はす
    またたび酒 口にころがし蛍の夜  (マタタビ:6月11日の記事参照)  
    麦秋や村に余熱のあるごとし    (麦秋:6月20・21日の記事参照)

滋賀県浅井町にて(6)名はおどろおどろしくても食すれば美味、ウワバミソウ:蟒蛇草

2005-06-25 05:58:37 | 植物観察1日1題
大吉寺横の谷道を滝に向かってなおさかのぼってゆくと、湿っぽい日陰に、その名も気味悪げなウワバミソウ(イラクサ科ウワバミソウ属)群生していました。
蟒蛇(うわばみ)の住みそうな場所に生えるというのでこの名があり“くちなわじょうご”ともいわれます。
葉は無柄、左右不同の長楕円形で、鋭い鋸歯があり、雌雄異株です。夏、緑白色の地味で小さな花をつけます。晩秋に茎の節が肉芽状に膨らみ、落ちて発芽し新苗になります。
この怖そうな名の草、実は、ミズもしくはミズナと呼ばれて、若芽がいろんな料理に使われ人気のある重宝な山菜です。おそらく東北地方を旅行された方は、旅館で必ずといってもよいほど何らかのミズ料理を召し上がったはずです。私も各地で形を変えて出てくる見慣れない料理の素材を尋ねるといつもミズだと教えてくれました。ミズがウワバミソウだとはこの記事を書くときまで知りませんでしたが、なるほどウワバミソウと答えたのでは食欲が減退しかねませんね。

滋賀県浅井町にて(5)林間を淡紫に染めるコアジサイ:小紫陽花

2005-06-24 06:05:19 | 植物観察1日1題
大吉寺横の谷道をさらにさかのぼると、あたり一面にコアジサイ(ユキノシタ科)が淡い紫色の花をつけていました。
関東以西の山地の木陰に生える高さ1~2m、6月新梢に径5cmほどの半球状の複数房花序を頂生します。装飾花は無くすべて両性花です。アジア産のアジサイで装飾花がないのは本種だけです。小花は多数で径約5mmです。
全体に紫と見えるこの花、近づいてよくよく見ると、実は花糸(オシベの軸)だけが紫だということがわかります。
各地で和洋様々な改良種の紫陽花が咲き誇るいま、林間に自生する、いかにも控えめで優美なこの花を私は好きです。

滋賀県浅井町にて(4)歴史ある古刹に咲く“都忘れ”:ミヤマヨメナ

2005-06-23 06:23:44 | 植物観察1日1題
野瀬の在所から谷沿いに小一時間登ると大吉寺という古刹があります。平治の乱に敗れた源義朝一族からはぐれた頼朝をかくまったというこの寺は、後信長の焼き討ちにあいます。当時の広大な伽藍、寺領は大部分消滅したものの、残された遺構や、老杉等往時の盛大さを偲ばせます。 檀家を持たない大吉寺では、9月15日、380有余年にわたり引き継がれてきた虫供養法要と放生会が行われます。おみくじにより、頭人(供養人)に選ばれた土地の人が、多大な費用を負担してこの行事を執り行う特異な伝統が今も続いています。
この境内近くにミヤマヨメナ(キク科)がひっそりと薄紫の花を咲かせていました。承久の乱で佐渡に配流された順徳上皇は、林に咲く白菊を仮御所に植え都を忘れようとしました。それでこの白菊は“都忘れ”といわれました。この花は今ではミヤマヨメナのこととされていますが、今園芸店で売られている濃紫や桃色の“都忘れ”の原種でもあります。
いまでは林下に密かに咲くミヤマヨメナに目をとめる人も少ないようですが、この場所でこの花を見て、“都忘れ”の故事と寺の歴史を思うとき又別なる感慨が湧いてくるのではないでしょうか。

滋賀県浅井町にて(3)ブームは遠くコンフリーの花:ヒレハリソウ

2005-06-22 06:19:58 | 植物観察1日1題
今は寒天とか、健康食ブームは次々と現れては忘れられ、止まることを知らない様相ですが、コンフリーも昭和40年ごろ大ブームとなり、再生力の強いコンフリーの葉を毎日捥いで生ジュースにして飲む事が流行しました。そのコンフリーも今はあまり顧みられることもなく畑の片隅でひっそり育っています。
コンフリーは、正式にはヒレハリソウ(ムラサキ科ヒレハリソウ属)といわれ、明治初年日本食用、薬用に導入されました。花茎に翼があるのところがヒレハリソウの名の由来となっています。薄紫の花の先端が内側にすぼみムラサキ科の特徴を現しています。
ブームの座から去って誰も関心を持たなくなった今、密かにその可憐な花を咲かせているヒレハリソウがいじらしく思えてきました。

滋賀県浅井町にて(2):日本の原風景に咲く舶来の花、ビロードモウズイカ

2005-06-21 05:32:51 | 植物観察1日1題
浅井町野瀬での朝、一面に広がる麦畑を背景にいかにも場違いな感じの大きい花が咲いていました。ビロードモウズイカ(ゴマノハグサ科)です。
ヨーロッパ原産のこの花は観賞用として輸入されたものが野生化し今では主として比較的寒冷の環境で広く自生しているようです。
茎の高さ1~2mとかなり背高で、茎や葉全体に白い毛を持ち、手で触れると名前の由来となったやわらかいビロードの感じです。
茎の先に50cmくらいの花穂がつき黄色の花が下から順に咲いてゆきます。
地上葉から花の先端まで左右対称の二等辺三角形をつくります。
漢字で書くと“天鵞絨毛蕊花”だそうですが、ビロードモウズイカの名自体がバタ臭いもので、形も名前も帰化植物であることを感じさせる花です。別にマレイン、ニワタバコなどいくつかの別名があるそうで、関西人にはあまりなじみのないこの花も結構人々になじんでいるみたいです。

滋賀県浅井町にて(1):幻に再会、郷愁の麦畑と桑の実

2005-06-20 06:12:52 | 植物観察1日1題
6月の初め、蛍狩りに、滋賀県浅井町の友人の実家に仲間とともに一泊し、蛍狩りを楽しんだ翌朝、近くを散歩したとき、眼前の景色に、思いもかけず60何年かぶりに子供の時の情景が蘇ってきた気がしました。
今では珍しくなった一面の麦畑の傍らに、これも懐かしい桑の実が枝一杯になっていたのです。
早速黒く熟した桑の実を摘んで頬張りました。子供の時ほどはおいしく感じず、さすがに唇が真っ青になるまで食べることはしませんでしたが、それでも懐かしい郷愁の味でした。
桑の実の季節は、ちょうど麦秋の季節に重なります。子供たちは、桑の実やユスラウメを入れるために、麦わらで、めいめいに小さい籠を編みました。幼かったのか不器用だったのか、出来上がった籠は決まって螺旋状に曲がっていました。
桑の実、麦畑、そして麦わらの小籠。“山の畑の 桑の実を 小籠に摘んだは まぼろしか ”赤とんぼ(三木露風作詞)の歌詞そのままの懐かしい思い出にしばし浸っていました。

ヒルがヒル寝する?ヒルムシロ

2005-06-19 06:06:33 | 植物観察1日1題
丹後半島波見地区の廃田跡の水面にヒルムシロ(ヒルムシロ科)が水面を覆うように葉を広げています。葉の長さは10cm。名前の由来は“蛭の蓆”ということでしょうが、繁殖力が強く、水田の害草としてあまり歓迎されなかったことが、この名からもくみとれます。
ヒルムシロの間にサンショウモ(サンショウモ科)が浮いています。山椒の小葉に似ているところからこの名があります。かつて夏から秋にかけて全国の水田にはびこっていたこの藻も農薬の使用で激減し、いまは環境省のレッドデーターブックの絶滅危惧種Ⅱ類(VU)に指定されています。害草変じて希少保護種に昇格した例です。
葉の裏側に浮根がびっしりついており、その重さでひっくり返してもすぐに表向きに戻る面白い藻です。

ヤナギ箸はミズキでつくる:水木

2005-06-18 06:26:42 | 植物観察1日1題

6月上旬、標高500mほどの丹後半島木子地区では、大阪よりかなり遅れてミズキ:水木(ミズキ科ミズキ属)の白い花が咲いていました。
早春に枝を切ると樹液が滴り落ちるのでこの名があり、高さが10m以上になる落葉高木です。幹が直立し、枝がみな車状につく独特の樹形をつくります。5~6月ごろ枝先にごく小さい白い4弁の小花を固まって咲かせるので遠くからでもよくわかります。
人家や里山近くに多いなじみのある木で、今でも正月にミズキの枝に米粉で作った団子や繭玉を挿して神棚に飾り五穀豊穣を祈る風習が残る地方があるそうです。
材が白くて美しいところからこけしの材料に使われます。また正月の雑煮などに使われるヤナギ箸(祝箸)のおおくはミズキの枝を削ってつくられているそうです。

天橋立に咲く(6)ハマボウフウ

2005-06-17 06:22:52 | 植物観察1日1題
海辺の砂浜にべったり付くようなかたちで葉を広げ、頂に密集した白い花をつけているのはハマボウフウ:浜防風(セリ科)です。日本各地の海岸の砂浜に生える大形の多年草で地下に太く大きな根を伸ばします。1~2回3出羽状複葉の葉は光沢があり鋸歯があります。
低い姿勢、厚い葉これも潮風から身を守る海辺の植物の知恵でしょう。
海辺に生えるので風除けの意味での防風ではなく、中国産の薬用植物の防風に似ていて浜に生えることからハマボウフウの名があります。この方は薬にはならないけれども、根、葉、茎を乾かして浴用にするそうです。
八百屋防風、伊勢防風などの別名があります。
(天橋立花シリーズ終)