新・むかごの日記

高槻市に在住の、人間と自然が大好きな昭和1桁生まれの爺さんです。
出かけるときはカメラ連れ。
目標は毎日1記事です。

名工の手になったか:ウリノキの花

2005-05-31 06:31:03 | 植物観察1日1題
京都植物園で、面白い形の花を見かけました。ウリノキの花です、
ウリノキ(ウリノキ科)は、日本の山地に普通にみられる木で、長さ7~20cmの単葉の形が浅く4~5裂し、瓜の葉に似ていることからこの名があります。
6月ごろ、葉腋に集散花序を出し、数個の花をつけます。蕾は円柱形で、開くと細長く白い花弁が外側にめくりあがり、黄色い雄蘂が長く花弁の外に突き出て、雌蘂はさらにこれより長く出て、独特の形になります。
よく見るとなにやら人間の手になる工芸品のようにも見えます。何かに似ていないかと長いこと考えて、無理やり、江戸火消しの纏ではないかと思いつきました。
この花、あなたには何に見えるでしょうか。

深山に紅紫の花園:クリンソウ

2005-05-30 06:29:08 | 植物観察1日1題
京都北山、愛宕山の頂上近くの谷沿いにクリンソウの大群落があり、いま見ごろです。
クリンソウ(サクラソウ科)は、30~60cmの長い花茎に、数段から8・9段と直径2cmほどの花を輪生して、下から順々に咲きます。寺の塔の上につく九輪に似ていることからこの名があり、九段草、七階草などの名もあります。
ここのクリンソウは少し手が入っているという話もありますが、新緑の下、谷を挟んで一面赤紫の花が群れ咲いている様は文句なしに圧巻で、清滝から2時間半ほど急坂を登ってきた疲れも吹っ飛んでいました。
実は大阪府の府の花がサクラソウ(もうひとつウメもある)と聞いて何のことかと思っていましたが、実は金剛山に生えるクリンソウをさしているそうです。殆どの府民が見たことも無い花を府の花に定めるとはよほど自慢なのかもしれませんね。

消えないで!小さい妖精、キンラン:金蘭

2005-05-29 07:03:17 | 植物観察1日1題
近所の林にキンランが咲いていると知人が知らせてくれました。
急いで見に行くと道端の林陰に本当に1本だけひっそり咲いていました。ラン科のこの花は名の通り黄色い花弁で、全開することがありませんが、よく見ると中に赤い模様があり、林の中では、はっとするような美しさです。
普通1本に5~10個くらいの花をつけるとありますが、ここで見たのは僅かに1個しか花をつけていません。他にもないかと付近をくまなく捜しましたが、見かけたのはこの一本だけでした。
個体数といい、花付きといい、今にも絶えて無くなりそうな頼りなさです。良くぞ頑張って咲いてくれたと褒めてやりたくなりました。
散歩する人に見つかって引き抜かれたりすることのないように頑張れよと祈る気持ちでした。

木に咲くチューリップ:ユリノキ(百合の木・百合樹)

2005-05-28 06:22:40 | 植物観察1日1題
神戸市が造った「しあわせの村」に立派なユリノキ(モクレン科)の並木道があり、ちょうど今花をつけています。明治初期に渡来した、北米東部原産の落葉高木で、雄大な広円錐形の樹形をもち、よく街路樹などに用いられています。tulip treeという英名のように5~6月にチュウリップに似た緑黄色の花をつけます。高い枝に上向きに葉の色に似た花をつけるので、よく見ないと見落とす人も多いようです。
接写で撮りたいと何百米と歩いてやっと手の届くところに垂れ下がった枝を見つけました。
先日、TVで国会議事堂の近くのビルに養蜂業者がユリノキの蜜を求めて移動してきていることが報じられていました。れんげやハリエンジュなどのように沢山の花をつけるわけでもないので、ひとつひとつの花に沢山の蜜が詰まっているのだろうと思いました。
葉の形も独特で、さかさまに見るとTシャツ型に見えるところから、半纏木という面白い別名があります。


何れ菖蒲か杜若:カキツバタ

2005-05-27 06:01:32 | 植物観察1日1題
水辺にカキツバタ(アヤメ科)が咲いています。
直立した茎の頂に直径10cmくらいの紫青の花をつけます。
昔この花の紫汁で衣を染めたところから、カキツケバナの名で呼ばれ、これが転訛したものとされています。貌佳花・貌好花(かおよばな)、貌佳草、燕子花、杜若などの別名もこの花にふさわしい綺麗なものです。
花菖蒲に比べて、比較的葉が長いので一面花ばかりという風にならず、豪華さで劣りますが、かえってそこが上品な感じをかもし出しています。
能の“杜若”の原典となった伊勢物語第九段東下りで、三河の八橋で“かきつばた”という五文字を句の上において歌を詠めといわれた昔男(業平)が
からころも  きつつなれにし  つましあれば
はるばるきぬる  たびをしぞおもふ
と折句を詠います。 美しい杜若の花に、都に残してきた妻の姿を重ねて恋い慕う男の気持ちが出ていて、大好きな場面です。能でも、“色は何れ、似たりや似たり、杜若花菖蒲・・・”とあります。“何れ菖蒲か杜若”は古くから言われてきたようです。

花には甘い香あれど:センダン(栴檀)

2005-05-26 06:58:16 | 植物観察1日1題
山のあちこちに、薄紫色の花をつけたセンダン(センダンカ科センダン属)が見られます。
あまりにも有名な西行法師の「撰集抄」による“せんだんは双葉より芳し”から、誰でも知っている栴檀という名ですが、殆どの人はどの木が栴檀かは知らないようです。
このセンダンの木には格別の香は無く、“双葉より芳しのセンダン”は香木であるビャクダンの誤用または異称とされています。このセンダン論議なかなかややこしく、①中国でビャクダンと誤用したのか、②西行?が誤用したのか、③和名、種名がつく過程で混乱したのか、よくわかりません。深津正氏は、“問題はセンダン科のセンダンになぜ栴檀なる漢名が当てられるようになったかだ。三井寺に千個の団子を供える千団子祭り、別名栴檀講というのがあり、秋にセンダンが黄色い実を枝一面につけている様をこれに関連づけられたのではないか”との説を唱えています。
栴檀論議はさておいて、楝(おうち)という和名を持つこの栴檀は淡紫色の複集散花序をつけ、遠くから見ても近くで見ても品がよく、花には甘い香もあります。唱歌「夏は来ぬ」でも“楝ちる川辺の宿の門遠く・・・”と、歌われ、季節を代表する花のひとつです。
昔、この木が獄門のさらし首の木に使われたというのはちょっと意外な感じです。

川中美幸さん、イチリンソウはお忘れですか:イチリンソウとニリンソウ

2005-05-25 06:53:55 | 植物観察1日1題
川中美幸さんのヒット曲は、イチリンソウを無視してニリンソウからウスユキソウへ飛びました。イチリンソウでは男女の哀歓を歌う演歌にはそぐわないのでしょうか。
キンポウゲ科多年草のイチリンソウは、ニリンソウ、サンリンソウ(もある)と近縁の姉妹です。名の通りイチリンソウは1本の茎にひとつ花をつけますが、ニリンソウはふたつだけとは限らず、サンリンソウにいたっては3輪は少なく1輪か2輪が多いそうです。区別はもっぱら総包葉の長さで、イチリンソウがもっとも長く約3cm、ニリンソウは無柄、サンリンソウ約1cmだそうです。
美幸さんのおかげで、ニリンソウに比べすっかり陰が薄くなってしまったようなイチリンソウですが、実際は他の2種に比べて花も大きく、スタイルもスマートな感じです。一華草(イチゲソウ)といういい別名もついています。独り優雅に咲くイチリンソウ、いつかは歌にも取り上げてもらいたい花です。

卯の花に先駆けて:タニウツギ(谷空木)

2005-05-24 06:16:53 | 植物観察1日1題
近くの森にタニウツギ(谷空木)が咲いています。紅色の美しい花です。
北海道・東北から本州の日本海側に分布するといわれていますが、ここ高槻の山手でも自生しています。一山超えれば京都北山につながり日本海側に似た気候があるためかもしれません。京都付近の山地では殆ど本種ですが、神戸以西では多くはヤブウツギに置き換えられるとあります。
スイカズラ科タニウツギ属で合弁花類に属し、卯の花に代表される離弁花類のウツギ属とは、和名は同じウツギでも系統上はまったく縁が遠い関係です。
ハコネウツギ(箱根空木)も咲いています。(写真下)おなじタニウツギ属で、はじめ白色のち紅色に変わるので紅白を交えた満開時は壮観です。時には白または紅で最初から通す花もあります。箱根に自生することからきたという和名ですが、実は誤認で箱根では自生しないでそうです。

花が散ってもなお:ツクバネウツギ(衝羽根空木)

2005-05-23 06:42:10 | 植物観察1日1題
植物分類学上の学名は、花器官を中心に構成され、属名と種小名の2命名法によっていますが、和名は、昔からの日本人の感覚や見方によるものが多く、自然分類と一致しない群が多くあります。中でもこのウツギはそのもっとも著しいものです。ウツギは空木で、見掛け上は、木が中空になる、低木である、枝がしだれる、小さい花が初夏に咲くなどの共通点がありますが、分類的には6科9属、細分すれば11属にも分かれるそうです。
写真は、近所で見かけたツクバネウツギとコツクバネコウツギですが、スイカズラ科ツクバネウツギ属で、ユキノシタ科のウツギ(卯の花)とは分類的に異なるものです。
ツクバネは衝羽根・突羽根で、花も可愛いですが、名前の由来になった、花後にも残る5枚(コツクバネは2-3個)のガク片が羽子板の羽根を連想させて愛嬌があります。