新・むかごの日記

高槻市に在住の、人間と自然が大好きな昭和1桁生まれの爺さんです。
出かけるときはカメラ連れ。
目標は毎日1記事です。

アオギリ:青桐・梧桐(芽吹きの予感) 

2012-01-29 10:11:14 | 植物観察1日1題
京都御苑閑院宮邸跡の庭アオギリ:青桐・梧桐(アオギリ科アオギリ属)の緑の1年枝の頂に立派な冬芽がふくらんでいました。
太い1年枝につく半球形の頂芽は、大きくて芽鱗は10~16枚もあり、側芽は小さく半球形で、頂芽とおなじくチョコレート色でビロード状の毛が密生します。この大きい冬芽は枝先に集まってつく大きい葉を予感させます。
沖縄、中国、台湾、インドシナなど暖地に自生する高さ15mにもなる落葉高木で、大きい葉がキリ:桐に似て幹が青いのでアオギリの名がありますが、キリはゴマノハグサ科、アオギリはアオギリ科と両者は全く違う仲間です。
ところが漢字では本来アオギリは1字で「梧」、キリは「桐」ですが、梧桐と書いてもアオギリです。
「一葉落ちて天下の秋を知る」(淮南子・説山訓)は、アオギリのことですが、豊臣家の滅亡前夜を描いた坪内逍遥の戯曲「桐一葉」は、豊臣家の家紋のキリと、淮南子のアオギリを混同しているといえます。
とはいっても、キリとアオギリは姿かたちが似ているだけではなく、材が家具や楽器などに用いられることで共通しているので、同じ仲間と考えられてもおかしくはないといえます。
そういえば、子規門下の高弟であった河東秉五郎の俳号は“碧梧桐”、ここまでくればまぎれもなくアオギリです。
(アオギリの果実は2007年12月23日、花は2010年7月12日に取り上げています)



パンジー:(昔は三色すみれ) 

2012-01-25 10:19:21 | 植物観察1日1題

今の時期、どこの庭にも色とりどりのパンジー(スミレ科スミレ属)が咲いています。
ヨーロッパ原産のViola Tricolorを原種とし、これにいくつかの近縁種を交雑してできた園芸草花です。初期のころ花は小形で、Tricolorの名のとおり1個の花に紫、黄、白の3色を持っていたので三色菫と呼ばれていました。ゴッホと岡鹿之助の三色菫は有名ですが、いずれも1個で三色ではなく、いろいろな色の三色菫を扱っているようです。
今では大輪の単色が主流になり、サンシキスミレとよぶ人は少なくなり、もっぱらパンジー(ガーデンパンジー)で通っています。
そのパンジーの語源はフランス語のpenser(パンセ)=“考える”とされています。花の咲いている様子とも、蕾の時のややうつむいた形からきているともいわれています。
中央にあるブロッチといわれる黒い色模様が顔に似ていることから人面草といわれることにも通じているかもしれません。
ところで、英語の辞書でpansyを引くと、パンジーの花のほかに、にやけた男、女々しい男、ホモなど妙な意味があります。英米の園芸愛好家が、何か別の名前で呼んでいるかどうかまではわかりません。

ヤブコウジ:藪柑子(光る果実) 

2012-01-20 09:02:24 | 植物観察1日1題
寒い日が続き野に出ることも少なくなって、この日記もすっかりご無沙汰となっていました。
やっと出かけた野山も冬枯れで目立つものも少ない中で、木陰に赤い実が光って見えました。
ヤブコウジ:藪柑子(ヤブコウジ科ヤブコウジ属)の果実です。
やや乾いた林下にふつうにある常緑小低木で、冬に赤熟する石果は長く木に残ります。赤い実が美しいので、正月の鉢物として寄せ植えなどに用いられ、千両、万両などとともに十両と呼ば縁起物になっています。
ヤブコウジの呼名は山橘(やまたちばな)となっています。
大伴家持は “この雪の 消(け)残る時に いざ行かな 山橘の 実の照るも見む”(万葉集巻19-4226)と詠っています。
雪こそ積んでいませんでしたが、赤い実は確かに照り輝いていました。

ウスタビガ(薄手火蛾)の繭(繭はきれいだが) 1月10日

2012-01-10 17:00:37 | 植物観察1日1題

生駒山系高安山を歩いていて、きれいな緑色の繭が枯れ枝についているのに出会いました。
昆虫綱鱗翅目ヤママユガ科に属するガの繭とのことで、いわくありげな名前ですので調べてみると、ウスタビの手火とは提灯のことで、この木にぶら下がる薄緑色の繭の姿からきたとありました。別に足袋からとったという説もあるそうです。
あまりきれいな繭なので成虫の姿を期待して図鑑をあたりましたが、ユニークではあっても茶色の毛むくじゃらで、少しがっかりでした。

コオニタビラコ:小鬼田平子(混乱する名前)

2012-01-07 10:15:06 | 植物観察1日1題

日は七草粥の日です。
秋の七草は、秋の野に咲く七種の花と山上憶良が詠ったそのままの名で現代も通っていますが、春の七草の方は、その起源も諸説があり、また一般にいわれている、せり、なずな、ごぎょう、はこべら、ほとけのざ、すずな、すずしろの中で、現代でもそのままの名で呼ばれるのはセリ、ナズナだけとなります。
なかでも混乱しているのが“ほとけのざ”です。古い文献では七草の中にホトケノザとタビラコが両名並ぶのもあるそうで両者は別種とされることもあったようですが、七草のホトケノザを牧野富太郎がコオニタビラコと同定してからは、いまではこれが広く受け入れられています。
コオニタビラコ:小鬼田平子(キク科ヤブタビラコ属)となった旧ホトケノザは、水田に多い2年草で、田起し前の水田に放射状に平たく葉を広げる様子から田平子と名がつきましたが、ムラサキ科のキュウリグサも別名タビラコと呼ばれることからこれと区別するため、よく似たオニタビラコの小形ということでコオニタビラコが正式の名になったといわれています。くわえて、昔はサンガイクサ(三階草)といわれたシソ科の植物がホトケノザという名を得て、道端に多量に繁殖するようになってからは、七草のホトケノザは名前としては全く忘れられることになりました。
せっかく立派な名を持ちながら、他人に名を盗られただけではなく、オニの名までつくという悲しい運命をたどることになった仏の座は、いまではその数も少なくなって何やら寂しげです。

シロヤマブキ:白山吹(バラ科で4数性) 

2012-01-05 10:08:53 | 植物観察1日1題

なかなか適当なブログ材も見つからない冬枯れの戸外で見つかったのがシロヤマブキ:白山吹(バラ科シロヤマブキ属)の黒い実でした。
白い花が咲く山吹という意味ですが、ヤマブキとは同じバラ科でも属が異なります。花や葉の感じは似てなくはありませんが、葉が対生、花弁や萼片が4個で、ヤマブキの互生、各5個とは容易に区別できます。バラ科の基本数は5なので、バラ科の中では少し異端です。秋に熟す果実(そう果)も一つの花に4個ずつ集まってつきます。
この黒く光る果実はいつまでも枝に残るので、初夏白い花と黒い実が同時見られて、よく生け花の花材になります。(05年4月25日記事)石灰岩地に限定されるので自生のシロヤマブキを目にすることは珍しいようですが、庭ではこぼれ種で自然に増えることがあります。

スイタクワイ:吹田慈姑(禁裏献上の味) 

2012-01-03 14:57:44 | 植物観察1日1題

いつもお米を届けてくれる摂津の農家の方から正月用にとスイタクワイ:吹田慈姑(オモダカ科オモダカ属)をいただきました。
塊茎に角のような芽が出るので“お芽出たい”とおせち料理に欠かせない野菜ですが、なかでも吹田クワイは一般のものに比べると味がほっくりとして濃く、独特のほろ苦さの中にうまみがあり珍重され、
貝原益軒の「大和本草」にも取り上げられ、食通としても知られる大田蜀山人も美味なるものとして狂歌で歌っています。
江戸時代には、吹田が仙洞御所の御料地であったこともあり、菊の御紋のついた竹製の大名駕籠を模した献上駕籠に吹田クワイを乗せて本御所・仙洞御所、女御御所、大宮御所の四つの禁裏に献上したといわれます。
この貴重な野菜も、昭和30年代、吹田市内の水田の急速な宅地開発化と除草剤の多用化に伴い次第に姿を消してゆきます。
そこで昭和60年頃から「吹田くわい保存会」などの努力によって「なにわの伝統野菜」として保存・育成がはかられています。
頂いた吹田クワイ、普通のクワイに比べて姿は小ぶりですが、栗のような食感で結構なお味でした。