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奈良県桜井市嵩方地区に自生するスズラン:鈴蘭(ユリ科スズラン属)を見てきました。
高原の草地などに多い多年草で、毒草なので牛馬が食べず、牧草地などに群生して、本場ではあまり見向きもされない厄介者となっているスズランですが、自生が珍しい関西では、キミカゲソウ(君影草)の別名とともに、可憐純情な花として見る人の思いもまた格別です。
葉は普通根元に2個つき、花は長さ6~8mmで、よい香りがします。庭によくあるドイツスズランと違い、花茎は葉より低くなります。ちょっと失礼して、ローアングルで花を撮らしてもらいました。
ここのスズランは、地元のNPO「山野草の里作りの会」により保全されています。すぐ隣の奈良市都祁吐山町と宇陀市室生区向淵のスズランは南限自生地として国指定の天然記念物となっていますが、熊本県阿蘇市や岡山県などにも南限を自称するところがあり、必ずしも奈良県が南限とは限らないようです。
EICの環境用語の“自生地”に「生育が特殊な環境に限定された種の場合、自生地の縮小、分断、孤立、消滅と進行し、地域個体群さらには種の存続自体が危険となる」とありました。当地では絶滅寸前と危惧されるここのスズランを守る方々のご努力に感謝です。
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5月の伊吹山のいたるところに咲く白い花は、イブキハタザオ:伊吹旗竿(アブラナ科ヤマハタザオ属)です。
母種のハクサンハタザオは、白山だけではなく、いたるところに生えていておなじみですが、変種のイブキハタザオは草丈10~30cmの多年草で、茎や葉に白い星状毛を密につけるのが特徴です。
伊吹山で最初に発見されたのでこの名があり、山頂付近の日当たりのよい岩場などを彩っています。
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伊吹山ドライブウエイ沿いに、一面の黄色い花をつけていたイブキガラシ:伊吹芥子(アブラナ科ヤマガラシ属)ですが、頂上付近になるとまだほとんど蕾でした。
山地の礫地や、湿った草原に生える多年草で、高さ20~30cm、根生葉は羽状に中~全裂し、頂小葉は丸くて大きく、茎葉の基部は茎を抱きます。花序は多数つき、花後に伸びます。
イブキガラシは、ヤマガラシの変種と考えられていますが、見分けは困難とされます。ここは素直に、伊吹山に生えているからイブキガラシとしましょう。
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伊吹北尾根の登山道の岩の間にひっそりとヒメレンゲ:姫蓮華(ベンケイソウ科キリンソウ属)が黄色い星形の花をつけていました。コマンネンソウともいい、山地谷沿いの湿った岩の上などに生える多年草です。
花期は5~6月、茎の先に直径1cmほどの黄色の花を多数つけます。花弁は5個、雄しべは花弁より短く、花粉を出す前の葯の色は赤色です。花後送出枝をだし、先端にロゼットをつけて越冬します。和名の姫蓮華は、葉の群がりを蓮の花に見立てたものとされていますが、この形を指しているのではないかと思います。
図鑑では」雄しべ10個は2列に並ぶとありますが、写真ではうまく写せていません。しかしある図鑑に載ったヒメレンゲの写真の撮影場所は伊吹山となっていましたので、変な自信を持って取り上げました。
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すこし高い山に咲く花は、うまく花期に合わないとなかなか見る機会がありません。サンカヨウ:山荷葉(メギ科サンカヨウ属)も、夏山では何回かきれいな藍色の果実を見ておなじみなのに、花を見たのは今回の北尾根が初めてでした。
本州鳥取大山以北、北海道の深山の木陰に生える多年草で、高さ30~50cmとなり、葉は茎の中部くらいから上に楯状に2個つき、幅20~35cmの広腎臓形で2深裂し、不ぞろいな鋸歯があります。
花は6~8月、散房花序に3~10個つき、萼片6個、雄しべ6個、白い花弁も6個です。伊吹北尾根では花はあらかた終わっていて未熟な果実となっていましたが、ひとつだけ発育不良のような小さい草に、花が残っていました。
和名の山荷葉は、漢名から来たといわれますが、その漢名は本種ではないといいます。
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5月15日、仲間と伊吹北尾根に花々を訪ねた日は、素晴らしい五月晴れで、山頂付近から滅多に見られない白山、御岳、さらには乗鞍など北アルプスの山々まで遠望されました。何回となく登った伊吹でも初めての経験でした。(この景色は「むかごの高槻」でご覧下さい)
その伊吹北尾根で見かけた花々のいくつかをシリーズで取り上げます。
草の間に、見過ごしそうになるのが、ヤマトグサ:大和草(ヤマトグサ科ヤマトグサ属)の花です。
名前からしてそれと分かるように、日本特産種で、日本人によって初めて学名をつけられた植物ということで、大和草(日本草の意)の名があります。命名者は牧野富太郎と大久保三郎です。
林の下などに生える多年草で、高さは15~30cm。長さ1~3cmの卵形の葉を対生します。
花期は4~5月、雌雄同株で、花には花弁がなく、雄花はくるりと巻いた3個の萼片があり、多数の雄しべが垂れ下がります。雌花も花弁はなく2mmほどのU字形の花柱があるだけで、小さくて肉眼では目立ちません。
垂れ下がった雄しべが風に揺れます。それもそのはず、ヤマトグサは風媒花なのです。