新・むかごの日記

高槻市に在住の、人間と自然が大好きな昭和1桁生まれの爺さんです。
出かけるときはカメラ連れ。
目標は毎日1記事です。

アオノリュウゼツラン:青の龍舌蘭(50年目の開花) 

2010-07-31 08:33:34 | 植物観察1日1題



友人から、いま、私市の大阪市立大学付属植物園で珍しいアオノリュウゼツラン:青の龍舌蘭(ヒガンバナ科リュウゼツラン属)の花が咲いているとの知らせを受け、行ってきました。
メキシコ原産で、黄色の斑がある龍舌蘭に対して青一色なのでアオノがついています。
テキーラの原料にもなるリュウゼツランですが、30~50年かけて1株が1度だけ花を咲かせて枯れてしまうことで知られており、マンネンランの別名があるほか、英語でもCentury plant(世紀の植物)と呼ばれています。
葉は多数集まってつき、多肉で長さ1~2m、数10年経ったものは高さ6~9mの茎を出し、多数の花をつけます。
花は花弁が閉じたままで、開花すると黄色い雄蕊の葯が目立ち、それがしぼむと垂れ下り代わりに雌蕊の花柱が目立ちます。
ちょうど園長さんがおられたので、これから種ができてそれで殖やすのかと尋ねましたら、旧株の根元にできている若い苗を分けて植えるとのことでした。この苗が花をつけるのはまた50年後だと笑っていました。

「むかごの高槻」の記事もご覧ください)




オオアワダチソウ: 大泡立草(セイタカよりも控えめ)

2010-07-28 10:05:46 | 植物観察1日1題

7月末の六甲山上でオオアワダチソウ:大泡立草(キク科アキノキリンソウ属)の花を見かけました。
北アメリカ原産の多年草で、明治時代に観賞用として渡来しました。近い仲間のセイタカアワダチソウほどには大繁殖はしませんが、各地に野生化しています。
茎や葉はほとんど無毛でざらつかず、被針形の葉の上半分に不ぞろいな鋸歯があります。
セイタカアワダチソウより花期が早く、初夏から夏にかけて、茎の上部に多数の枝を出し、直径8mmほどの黄色の頭状花を密に穂状につけます。

カワラヨモギ:河原蓬(ハマウツボが寄生する) 

2010-07-26 09:35:20 | 植物観察1日1題

成ケ島の浜辺のあちこちにカワラヨモギ:河原蓬(キク科ヨモギ属)が生えていました。
河原の名がついていますが、海岸の砂地にもよく見られる多年草で、茎の下部は木質化します。
花がつく茎と花のつかない茎とがあり、どちらも葉は糸状に細かく切れ込みますが、花がつかない茎は白い毛でおおわれていて、花のつく茎の葉とは別種のように見えます。
河原では直立しますが、海岸では倒れることが多いようです。
カワラヨモギには、1年生の寄生植物のハマウツボが寄生することで知られていますが、残念ながら成ケ島の浜では見つけることができませんでした。

ハマナタマメ:浜鉈豆(福神漬には向かない?) 

2010-07-24 17:58:28 | 植物観察1日1題

成ケ島の浜辺にクズに似た3小葉と少し大振りな紫色の蝶形弁の花をつけたつる植物が茂っていました。
福神漬に使われるなた豆に似た大きい豆果をつけるのでこの名があるハマナタマメ:浜鉈豆(マメ科ナタマメ属)は、関東以西の砂浜にはえる多年草で、茎は砂地や岩の上を横にはい、多くの葉を出して繁茂します。つるは強くて折れにくく、互生する葉は長柄をもつ3出複葉で、厚くて少し光沢があります。
6~9月、長さ2~3cmの淡紅紫色の蝶形花を咲かせますが、面白いのは、ほかのマメ科の花と逆向きで、おおくは旗弁が下向きになることです。
名の通り豆果は大きく、幅3~5cm、長さ5~10cmもあるそうですが、食べられるとは書いていません。

ハマサジ:浜匙(葉より目立つ花茎) 

2010-07-23 19:40:50 | 植物観察1日1題

南北に細長い成ケ島の浜の植生は、外海側(由良瀬戸側)と、内海側(由良湾側)で微妙に違うようです。ハマボウ、ハマゴウ、オカヒジキなど砂丘植生は外海側に、ハママツナ、ツルナ、カワラヨモギ、ハマサジなど塩沼湿地植生は、内海側に多く見られます。
ハマサジ:浜匙(イソマツ科イソマツ属)は、海岸の砂地や礫地にはえる2年草で、満潮になると海水をかぶるようなところに多く生えます。
厚くて滑らかな葉は根元に集まってつき、形がさじのような形なのでこの名があります。
8~9月、葉の間から花茎が伸び、ほうき状によく枝分かれして小さい黄色の花を多数つけます。
花茎は高さ30~50cm、花の長さ約7mm、白い膜質の萼も花のように見えます。
よく分枝した花茎は、枝が茂っているようにも見えて、根元に固まってつく葉と2種類の葉があるような気がします。
ドライフラワーでおなじみのスターチスと同じ仲間です。

オカヒジキ:陸鹿尾菜(一面野菜畑?) 

2010-07-22 17:04:40 | 植物観察1日1題

淡路、成ケ島の由良瀬戸側(紀淡海峡側)の砂浜をうずめるように生えていたのがオカヒジキ:陸鹿尾菜(アカザ科オカヒジキ属)でした。全体の姿が浜に打ち上げられたヒジキそっくりなのでこの名があります。
野菜として店でも売られていて、名前はよく聞くこの草ですが、生えているのを見るのは初めてでした。
海岸の砂地にはえる1年草で、茎はよく分枝して広がり、高さ10~40cm、葉は肉質で細い円柱状、先端は針状になります。若い茎や葉は食用になり、栽培もされています。
砂浜にひろがるオカヒジキは、食べられるとすれば一面野菜畑といった風ですが、残念ながら少しばかり長けていて、採集する人もいないようでした。

ハママツナ:浜松菜(紅葉が美しい) 

2010-07-21 06:23:00 | 植物観察1日1題

ハマボウとともに淡路、成ケ島を代表する希少植物がハママツナ:浜松菜(アカザ科オカヒジキ属)です。
アカザ科の一年草で、本州、四国、九州の砂浜など塩性湿地に群生します。成ケ島では20年以上前から自生し、兵庫県内ではほかに赤穂で自生が確認されているそうです。
茎はよく分枝して高さ20~60cmになり、互生する葉は長さ2~4cmの線形で先はやや尖ります。
秋には全体が北海道のアツケシソウ(08年10月8日記事)のように赤く色づいて浜を染めます。
ハマボウと同じく絶滅危惧種として兵庫県のレッドデーターブックに登録されています。

ハマボウ:浜朴(絶滅危惧種の)

2010-07-20 13:58:44 | 植物観察1日1題




淡路島、洲本市由良の無人島、成ケ島へハマボウ:浜朴(アオイ科フヨウ属)の花を見に行ってきました。
房総半島以西の主に河口や海岸の湿地に生える落葉低木で、よく枝分かれし、高さは1~3mになります。
7~8月、葉の付け根に直径約5cmの黄色の花を1個ずつつけます。花は朝開いて夕方にはしむ一日花です。5個の花弁はらせん状に並び、基部は暗紅色を呈します。
ハイビスカスに似た黄色い花は夏の青空と青い海によく似合います。兵庫県のレッドデーターブックで絶滅危惧Aにランクされているというハマボウですが、ここ成ケ島では力強く咲き誇っていました。

イヌエンジュ:犬イヌエンジュ:犬槐(毛深いイヌ)

2010-07-18 15:28:35 | 植物観察1日1題



6月初め霧が峰の八島湿原で、白い軟毛に覆われたイヌエンジュ:犬槐(マメ科イヌエンジュ属)の芽生えを見かけました。
本州関東、中部地方以北、北海道の山地の林縁や湿地の周辺などに生える、日本固有種の落葉高木です。
そのイヌエンジュが、神戸森林植物園で花をつけていました。
和名はエンジュ:槐に似ていることによりますが、葉柄や葉裏に細毛を密生し、花軸、花柄、萼にも黄褐色の毛を密生します。
材は有用で床柱などに使われるほか、樹皮は染料や薬用に使われます。
果実は豆果ですが、エンジュのようなくびれ方はしません。

カワラナデシコ:河原撫子(ナデシコはpink)

2010-07-17 07:22:53 | 植物観察1日1題

カワラナデシコ:河原撫子(ナデシコ科)は、秋の七草のひとつとしておなじみの花ですが、実際にはもっと早く6月ごろから咲き始め、そのことからトコナツ:常夏という古名があります。
茎は細く草丈が60~100cmで自力では直立できず、先で分枝します。扇形の花弁の先が深く裂け、淡紅色の糸のようになり優美な姿です。撫でたいくらい可愛い花というのが名前の由来で、万葉の昔から愛情、母性愛のシンボルとして詩歌にも歌われてきました(万葉集に26首)。

名前に河原とついていますが、必ずしも河原に限らず山や野に普通に生えます。単にナデシコともいわれ、またヤマトナデシコの別名もあります。
ところで、ナデシコは英語でpinkといいます。ナデシコは桃色だから当たり前といえそうですが、
実はpinkは、もともとは突き刺す、ジグザグに切るといった意味で、ナデシコの花弁がジグザグ形をしているのでpinkがナデシコになり、その色からpinkが桃色をあらわすようになったと考えられます。ちなみにピンク色(桃色)は、英語では日本のように扇情的という意味はないそうです。いずれにせよ、この花にはpinkより撫子のほうが断然似合います。

エビヅル:海老蔓(雌株なら秋が楽しみ) 

2010-07-15 21:59:24 | 植物観察1日1題

エビヅル:海老蔓(ブドウ科ブドウ属)の花が咲きかけています。
若い葉の裏面に白色~淡紅褐色の毛が密生したところをエビに見立ててこの名があり、別名もエビカズラです。
山野にふつうに見られる落葉性のつる植物で、巻きひげは葉と対生し、2節続いて1節休みます。
葉は長さ5~15cmで、変化が多く3~5裂します。
雌雄別株で、花序の枝にはよく巻きひげがつきます。果実は直径約6mmの球形で、黒く熟し食べられます。

アオツヅラフジ:青葛藤(花は目立たない) 

2010-07-14 09:14:36 | 植物観察1日1題

いわゆる“かづら”と呼ばれるつる性の植物には、秋実る果実は目立っても、花はそれほどでもないのが多いようです。アオツヅラフジ:青葛藤(ツヅラフジ科アオツヅラフジ属)もそのひとつで、藍黒色の果実はクリスマスリースの飾り付けになったり(05年10月13日記事)、核がアンモナイトの形をしているなどで話題が多いですが、今頃咲いている花は地味で目立ちません。
山野の林縁などに生える落葉つる性木本で、互生する葉は変化が多く、卵形や3つに切れ込むものがあります。雌雄異株で、7~8月黄色の小さな花が咲きます。(写真は雄花)
和名のツヅラはつるの意味でカヅラとおなじ、つるが緑色なのでアオがついています。

アオギリ:梧桐・青桐(梧と桐) 

2010-07-12 17:37:54 | 植物観察1日1題

アオギリ:梧桐・青桐(アオギリ科アオギリ属)が、黄色い花をつけています。
沖縄、台湾、中国、インドネシアなどに分布する落葉高木で、古くからわが国に渡来し、広く各地に植えられてきました。アオギリ・青桐とはキリ・桐を白桐と呼ぶにのに対して、樹皮が緑色であることから名づけられたもので、大きい葉がつくことでは両者は似ていますが、キリはゴマノハグサ科であり、アオギリはアオギリ科と分類上はまったく異なる木で、葉も花の形も異なります。
日本では、昔から権力者の紋に使われたり、材がいろいろな用途に使われるなどなど、白桐のほうがおなじみですが、中国由来の桐にまつわる話の多くはアオギリだそうです。たとえば「桐一葉落ちて天下の秋を知る」は、梧桐一葉落、天下尽知秋 (群芳譜)でアオギリだし、未覚池塘春草夢 階前梧桐已秋声(朱憙 偶成詩)もアオギリです。「桐の木に鳳凰が止まるは聖王が出現する瑞兆」という伝説の桐も正しくはアオギリだといわれています。
アオギリは雌雄異花で、雄花と雌花がひとつの花序に混生します。雌花(写真の中央)は、子房に柄があり、その先に柱頭、雄花(左側)は花糸が合着して筒状になり、葯は先端にかたまってつきます。
雌雄異花の雌花の子房は5枚の心皮(花葉)からなり、この子房が大きくなった果実は、熟すと心皮が1枚ずつ縫合線に沿ってばらばらに分かれて、おわん形になり、これが1枚ずつ離れて、種子はこの心皮についたまま風に飛ばされ散布されます。

ボダイジュ:菩提樹(本当のまがいの木) 

2010-07-11 13:19:04 | 植物観察1日1題

釈迦が樹下で悟りを開いたという“菩提樹”が、各地の寺院によく植えられていますが、その多くは中国原産の落葉高木で、ボダイジュ(シナノキ科シナノキ属)という名があるものの、釈迦の菩提樹は、正しくはインドボダイジュといわれるクワ科の常緑高木ですから、まったく違う種になります。
気温の低い中国では、本当の菩提樹が育たないため、シナノキ科のボダイジュをお寺に植えたのが日本にも伝わったといいます。ところが、日本のお寺に植えられているのはこの日本種のボダイジュですらなく、ほとんどが仲間のシナノキや西洋シナノキのナツボダイジュやフユボダイジュなどだといいますから混乱します。
京都植物園でシナノキと並んで本当の?日本産ボダイジュが咲いていました。
シナノキ属の植物はほかに類例のない「葉状苞」という変わった苞葉に集散花序をつけます。葉はゆがんだ3角状卵形で、長い柄を持ち、その葉脇に長さ5~10cm、幅約2cmのへら形の葉状苞をだします。花序の柄と苞葉の主脈とは中央部までくっつき、そこから柄が下垂し、先に淡黄色の小花を多数つけます。
秋、実はプロペラ代わりをする葉状苞とともに、舞い落ちて飛んでゆきます。
直径7~8mmの実は数珠を作るのに使われるそうですから、まがい物の菩提樹も仏様にちゃんと関係があるといえます。

トケイソウ:時計草(擬態する植物)

2010-07-10 05:46:41 | 植物観察1日1題

トケイソウ:時計草(トケイソウ科トケイソウ属)が、名のとおり時計に似た花をつけています。
ブラジル原産で、享保8年に長崎に入ってきたそうです。
花被片は10枚で白く、5個の萼片と5個の花弁が交互につきます。3つに分かれるこげ茶色のめしべが時計の針のように見え、黄色く大きい5個の雄蕊の葯が花糸の先でひらひら動きます。花被の上にたくさんの副花冠が二重の円を作って並び、その色は基部が暗紅色、中間は白、先は薄紫色ときれいで、時計の目盛りにも見えます。
形だけではなく、害虫のドクチョウに対して面白い対抗手段を用意しています。
ドクチョウは、トケイソウの持つ虫の忌避物質に対して抵抗力を持っているだけではなく、その毒を選択蓄積し、自分の防衛に利用します。そこでトケイソウは新たな防衛機能として、ドクチョウの卵にそっくりの突起を葉柄につけて、すでに先客がいるとの擬態をとっているのです。物と害虫の虚虚実実の駆け引きには驚くべきものがあります。