新・むかごの日記

高槻市に在住の、人間と自然が大好きな昭和1桁生まれの爺さんです。
出かけるときはカメラ連れ。
目標は毎日1記事です。

ヤツデ:八つ手(冬の客にたっぷりお土産)12月31日

2012-12-31 16:02:26 | 植物観察1日1題

両性花:雄性期


雌性期の花:花盤に蜜が光る
花の少ないこの季節、ヤツデ:八つ手(ウコギ科ヤツデ属)が大きな円錐状の花序を立て、白い小花が集まったボール状の花をたくさんつけています。
本州関東以西から琉球にかけて暖温林内に生える常緑低木で、大きな手のような葉で福を招き寄せるということから縁起を担ぎ門の脇などによく植えられています。
和名は、大きい掌のような分裂葉が多数あるのを八で表現していますが、実際には切れこみは7、9、ときには11など奇数で、八つに裂けることはありません。
木の全体を上から眺めると、大きな切れ目のある葉が、下から上までほとんど重なることなく
広がっているのに気づきます。葉柄の長さが上へ行くに従い短くなって、すべての葉にまんべんなく日光を受ける仕組みです。八つ手の名は、八つに切れ込んだ葉のことというより、いろいろな手をのばしている千手観音のような手からきているのではないかと思えてきました。
雌雄同種で、枝先に球形の散形花序を円錐状に出し、上部に花序には両性花、下部の花序に雄花つきます。両性花は枝の先端につき、咲きはじめは雄性で5枚の花弁と雄蕊がありますが、やがて雌蕊が伸びてきて花弁と雄蕊が落ち、柱頭が開いて雌性となる雄性先熟という形です。雌蕊は雄蕊が落ちてから3~4日たってから出てきます。
花には香りがあり、冬にもかかわらず、晴れた日などには20種類ものハエ、アブが集まるそうです。雌性期の花よく見ると頭の先に滴るような蜜が光っています。ハチがいない冬に咲くヤツデは、蜜源を浅い位置に設けて、ハエのような短い口吻しか持たない虫たちにも来てもらうように工夫しています。
寒い冬に咲くヤツデは蜜をたっぷり用意して少ない昆虫を独り占めにしているようです。


2012年も暮れようとしています。
今年の最終日、気になっていた去年のむかごの日記記事集(第7集)の印刷を遅ればせながら終了し、何とか年を越せる気分になりました。
以前は1年の記事がA4で150ページほどだったのが、2011年は百ページを切りました。
掲載が進んで取り上げるべき新しい品種が少なくなったこともありますが、根気の衰えもあるようです。
数えでいうと来年は傘寿とか、みなさんのご支援を糧に今しばらくは頑張るつもりです。
どちら様もよいお年をお迎えになってください。



ボタンヅル:牡丹蔓(つつましい仙人の髭)

2012-12-29 14:20:17 | 植物観察1日1題
畑の金網の柵に何やら白いものがついて風に揺れていました。
近づいてみると何かの種のようです。すっかり枯れて黒く縮んでしまっている葉をひろげてみるとボタンヅル:牡丹蔓(キンポウゲ科センニンソウ属)とわかりました。
夏の終わりごろ咲く白い花はセンニンソウに似ていますが、ボタンヅルのほうが少し小ぶりなので良く見ればわかります。
花と同じくボタンヅルの果実もセンニンソウのそれとよく似て、種髪といわれる風散布に役立つ髯をもっています。
種子が褐色のセンニンソウと、(’05年11月23日記事)黒紫色のボタンヅルを比べると、どちらが仙人に似ているかはむずかしいところですが、大柄なセンニンソウの方が、仙人の名前をもらっているだけのことがありそうです。

ガマズミ:莢迷(触れれば染まる)

2012-12-27 09:31:14 | 植物観察1日1題
冬枯れの山道にガマズミ:莢迷(スイカズラ科ガマズミ属)が真っ赤な実を文字通り枝もたわわにつけているのに出会いました。
12月も末なのに、どうして小鳥たちにも食べられずに残っているのかふしぎに思いながら、実をとろうとすると、たちまちつぶれて指が真っ赤に染まりました。完熟です。
ガマズミのズミは染の転訛で、昔赤い果汁で衣類をすり染めしたからという話を思いだし、なるほどと納得しました。
折角の豊作をガマズミ酒にしようと、つぶれないように果柄のねもとの方で摘み取って帰り、ホワイトリカーに漬け込みました。
熟しているだけに、ビンの蓋をして振ってみるとたちまち液は真っ赤に染まりました。本当に果実酒として醸成するには少し時間がいるはずですが、この色をみていると、このガマズミ酒の賞味開始も少々早くなるのではと期待が高まってきました。

ミヤコジマソウ:宮古島草(島が北限)12月18日

2012-12-18 13:28:17 | 植物観察1日1題

植物園の温室の床の下草に、誰も気づかないような小さく白い花が咲いていました。
案内の人にたずねるとミヤコジマソウとのこと。ミヤコジマとはあの宮古島ですかさらに聞くとそうだとの返事でした。
ミヤコジマソウ:宮古島草(キツネノマゴ科)は、台湾、インドネシア、ニューギニア、ポリネシアなどに分布し、海岸の崖下の砂地や石灰岩上に生育する多年草で、高さは20~30cm 、茎は地を這って広がり、節から根を出します。宮古島の東平安名岬のみに生育するといい、ここが分布の北限であることから、植物地理学上貴重な存在として、環境省のRDBで絶滅危惧ⅠA類となっています。
茎先や葉の脇に穂状花序を出し、淡い紫色を帯びた白い小さな花を2~5輪つけます。花の長さは15ミリくらいで、花冠は筒状で先が漏斗状に広がり唇形に裂けます。
別名はヒロハサギゴケ(広葉鷺苔)です。
記事を書いていると、丁度テレビでは宮古島を舞台にした連ドラ「純と愛」が流れていす。
騒々しくてあまり熱心には見ていないドラマですが、南方系には似合わないこの小さい花が咲く宮古島とはどんなところか興味が湧いてきました。

フェイジョア(見た目に似合わぬ意外な美味しさ)

2012-12-16 16:29:46 | 植物観察1日1題
知り合いの奥さんから、「一度食べてみて」とフェイジョア(フトモモ科フェイジョア属)の小さく青い実をいただきました。
花の記事を出したときはと書いています(’11年6月18日)
そんなことからあまり期待せずに食べたのですが、見るからに青臭そうな実を、教えられたとおりに縦に二つ割してスプ-ンですくって食べたところ、パイナップルとバナナの中間のような芳香があるというとおり、見た目に似合わずとても美味しいものでした。
これは面白いと、くだんの奥さんにお願いして、お庭になっている実の写真を撮らせていただきました。
少しユーモラスなフェイジョアの実は、木の上でもやはりおいしそうには見えませんでした。

ジャカランタ:桐擬き(楽器と縁がある?)

2012-12-15 10:13:25 | 植物観察1日1題
カエンボク(火焔木)、ホウオウボク(鳳凰木)とともに、世界の三大花木に数えられるジャカランタ(ノウゼンカズラ科)ですが、日本では珍しいので、アフリカなど海外へこの花を見に行くツアーもあるといわれています。
そのジャカランタ、日本の気候風土にあったのか、栽培容易なようで最近では日本でも珍しくなくなっています。
先日、まだ青々とした葉を保っているジャカランタの枝に、扁平な果実がなっているのに出会いました。
友人がそれを見て、カスタネットの形だといいました。
それを聞いて思い出したのが、いつぞやジャカランタの花をとり上げた時、(’10年7月6日記事
 見知らぬ方から「ブラジリアン・ローズウッドのハカランダ(ポルトガル語読み)は、最高級のギター材で、ワシントン条約で保護されていますので、楽器に加工されたモノでも輸入は困難です、ギター好きとしては木目を観るだけでも癒されるので、古いハカランダを使ったギターをよく探しています、こんな花が咲くとはまったく知りませんでした。」こんなコメントをいただいたことです。
ジャカランタは、花の形と色が桐の花に似ているところから桐擬きの別名があります。桐はまた琴の材料としても有名です。ギター、カスタネット、琴とくると、なにやら三題話めいて私にとってのジャカランタは楽器に縁がある木となりました。

アマモ:甘藻(別名は植物で最も長い名前)

2012-12-11 17:12:03 | 植物観察1日1題

先日NHKの自然番組で野付半島の湾内のアマモ:甘藻(ヒルムシロ科アマモ属)が紹介されていました。
平均水深1~2mという遠浅の野付湾の約70%がアマモの森で占められていて、名物のホッカイシマエビのゆりかごとして、またゴマフアザラシの夏の休息地として、あるいはオオハクチョウやコクガンなどの秋の渡りの中継地点として、さまざまな生物が野付湾やそこに生えるアマモを利用しているといいます
アマモは、日本各地に分布し、海中の1~6mの深さに沈んで泥土の中に生える多年草で、根茎は横にはい、葉は緑色、線状で先端は海面に達します。冬に枝をだし、花は初夏、雌雄が交互に2列に並び、花被はなく裸出します。
和名は根茎に甘みがあり食べられるところからきていますが、別名の一つリュウグウノオトヒメノモトユイノキリハズシ(竜宮の乙姫の元結の切り外し)は最も長い植物名として知られています。
もう一つの別名はモシオグサ(藻塩草)で、古くはこれを海辺に積み海水を注いでから乾燥して焼き
その灰から塩を製したところからきています。
 来ぬ人を まつほの浦の 夕なぎに
    焼くや 藻塩(もしほ)の 身もこがれつつ  藤原定家
の藻塩もアマモだったかもしれません。
ウミヤナギ、アジモ、オオバモなどの別名もあります。
(寫眞は須磨海浜水族園でのものです)。



ヤドリギ:寄生木(東西でめでたい)

2012-12-09 13:48:50 | 植物観察1日1題

12月3日、5日とヤドリギの仲間を取り上げましたが、普通の寄生木は高い木に多くて遠くからの写真しかありませんでした(08年3月2日記事)。そのヤドリギ:寄生木(ヤドリギ科ヤドリギ属)が、あるところにクリスマスの縁起物として飾られていました。
古代イギリスの伝説風習にKissing Under The Mistletoeというのがあって、Xmasの寄生木の飾りの下では、女性は誰にでも遠慮なしにキスすることが許されるというのです。ルーツは北欧神話にあって、古代ヨーロッパでは、落葉した木に青々と茂り寄生木を春の精と考え、木の精が宿るとし、太陽復活の儀式植物になっていたそうです。そんなことから寄生木とその宿主を聖なるものと崇めていて、これがキリスト教に融合したものとされています。
寄生木を目出度いものとみるのは西洋でだけではなく、万葉集でもこのように歌われています。

天平勝宝二年正月二日に、国庁にして饗を諸の郡司等に給ふ宴の歌一首
“あしひきの 山の木末(こぬれ)の 寄生(ほよ)取りて 
挿頭(かざし)つらくは 千年(ちとせ)寿(ほ)くとそ“ 大伴家持 巻8-4136

オリーブ(超ラッキー! ではなかった)

2012-12-08 09:16:31 | 植物観察1日1題
小豆島寒霞渓へ紅葉を見に行った際、これも定番オリーブ園へ回りました。途中バスガイドが、先端がハート形のオリーブの葉を見つけたら、四葉のクローバーより珍しいので超ラッキーだというので、探したらすぐに見つかりました。あれっと、思ってほかの枝もあたると結構見つけることができました。
どうやら、もともとそれほど珍しいものでもなさそうです。
オリーブ(モクセイ科オリーブ属)は、地中海沿岸で古くから栽培され、江戸時代末日本に渡来し、今では小豆島が国内最大の産地になっています。
図鑑では、葉は対生、葉身は長さ2.5~6cm、幅7~15mmの披針形、厚い皮質でかたいとあり、先端のハート形については記述がありません。
ところで、競技などの勝者に与えられる冠が、オリーブなのか月桂樹(ローレル)なのか、しばしば混同されているようです。
本来、古代ギリシャでは、月桂冠は芸術の神であるアポロンを讃えるために詩人・文学者などに授与され、一方オリーブ冠はスポ-ツの神ゼウスを讃えて、マラソンなど陸上競技の勝者の与えられるものだったとされています。
混同される二つの葉冠、区別は容易です。オリーブはモクセイ科で葉が対生、ゲッケイジュはクスノキ科で葉が互生です。

(参考)
  オリーブの花 10年5月31日記事 
  オリーブの実 9年10月27日記事

オオバヤドリギ:大葉寄生木(なんにでも寄生する)

2012-12-05 10:55:45 | 植物観察1日1題
奈良公園の一角にあるイヌガシの木にオオバヤドリギ:大葉寄生木(ヤドリギ科オオバヤドリギ属)が寄生していました。
本州関東から琉球の暖地で、ツバキ、モチノキ、マサキ、ヤブニッケイ、ハイノキ、ネズミモチ、ウバメガシ、イヌビワ、スギなどいろいろな常緑樹に半寄生する常緑低木で、若枝、葉裏、萼に赤褐色の星状毛があり、一見グミに似ています。
葉は皮質で長さは3~6cmの卵形~広楕円形でふつう対生します。
花は晩秋、集散花序を腋生し、果実は液果で長さ7~8mmの広楕円形で赤褐色の星状毛が密生します(下図)。和名は葉が大きいヤドリギの意味で、別名のコガノヤドリギは、コガすなわちヤブニッケイによく寄生することからきています。

ヒノキバヤドリギ:檜葉寄生木(檜葉に似るのは枝)

2012-12-03 16:05:21 | 植物観察1日1題
奈良公園のツバキにヒノキバヤドリギ:檜葉寄生木(ヤドリギ科ヒノキバヤドリギ属)が寄生していました。細かく分枝した緑色の枝を檜の葉にたとえてこの名があります。
ツバキ科、モクセイ科、モチノキ科などの常緑樹に半寄生する常緑小低木で、高さ20cmほどになり、枝は2叉または3叉状に分岐します。枝は緑色で扁平、古くなると翼状に広がります。節が多くてそこからたやすく折れます。
葉は鱗片状に退化し、小さな突起状の鱗片になって節に輪生しますので目立ちません。
雌雄同種で、果実は液果で直径約2mm、節に輪生し、橙黄色に熟し、種子のまわりに粘液質があり他物に付着します。
下の写真で、緑の丸い粒が果実、茶色のものが鱗片状の葉にあたるのではないかと思われますが、写真を見ただけの判断なので不確かです。