新・むかごの日記

高槻市に在住の、人間と自然が大好きな昭和1桁生まれの爺さんです。
出かけるときはカメラ連れ。
目標は毎日1記事です。

メタセコイア:(アケボノスギ)

2009-08-31 10:56:39 | 植物観察1日1題

一枚の葉身からなる葉を単葉といい、葉身が二つ以上の小葉に分かれた葉を複葉といいます。
葉柄基部で膨らんで茎を抱くところから先が一枚の葉となるのですが、単葉と複葉の区別はときとして紛らわしいことがあります。
1945年に揚子江お奥地で発見されて、生きた化石として知られるメタセコイア(スギ科メタセコイア属)の葉もそのひとつです。
メタセコイアは、秋、細い軸に小さな葉が羽状に並んだ1組がセットで落ちます。いかにも1枚の複葉が落葉するように見えますが、実は最小単位の小さい葉がどれも独立した葉で、中央の軸は茎ということになります。
その証拠に、よく見ると写真のように、小さな葉のつけ根から別の小枝が出ていることがわかります。植物では葉や枝や花は茎頭を除けばすべて葉のつけ根から出るので葉の上にはつきませんから、枝別れした部分は葉の腋であり、そこの小さい葉は独立した1枚の葉ということになります。
落葉に見えるのは、葉をつけたままの茎が落ちるのであって、落葉ではなく落枝というべきでしょう。
同じ科のスギもおなじで、鎌形をした針状の一つ一つがスギの1枚の葉で、これがらせん状に連なり小さい枝を作っています。そしてスギの落葉も枝ごとです。

ムクロジ:無患子・木欒子(話題が多い木)

2009-08-29 08:10:05 | 植物観察1日1題


伊丹市の猪名野神社の境内に伊丹市の天然記念物というムクロジ:無患子・木欒子(ムクロジ科ムクロジ属)の古木があります。
高さ15mにもなる落葉低木で、自生もありますが、昔から神社に植えられてよく古木になっています。
果皮にサポニンを含み昔から石鹸がわりに利用されたり、硬くて黒い核は羽根突きの玉や数珠に使われたりして人々になじみの深い木でした。
太い枝をのばし全体に勇壮な樹形を形作りますが、その大きな羽状複葉にも特徴があります。偶数の羽状複葉というのも比較的珍しいのですが*、普通対生につく小葉が本種では左右不ぞろいで、ややずれてつきます。古木では樹皮が大きく剥がれ落ちます。
和名のムクロジは、モクゲンジの漢名、無患子・木欒子を誤用したものとされています。
(*偶数羽状複葉の例:シナサワグルミ、サイカチ)

タムシバ:同居する秋と春 

2009-08-27 09:33:02 | 植物観察1日1題


早春芽吹き前の山に白い花をつけて目立っていた(08年4月24日記事)タムシバ(モクレン科モクレン属)の実が赤く色づいていました。
よく見ると、となりに早くも白っぽい長い毛に包まれた花芽が膨らんでいます。
果実と花芽、連続する生の営みを感じさせます。
袋果が集まったこぶし状の果実は、10月ころに熟すと、背面が割れ、糸状の珠柄の先に赤い趣旨がぶら下がります。種子の赤い肉質部は非常に辛いということです。
別名のカムシバ、ニオイコブシのとおり、葉をちぎって噛むと香ばしい香りがしました。


カジノキ:梶の木(大きく赤い実)

2009-08-25 07:24:13 | 植物観察1日1題

カジノキ:梶の木(クワ科コウゾ属)の実が生っているという話を聞き、京都城南宮へ見に行ってきました。
その木は本殿の真裏にありました。古代から神に捧げる神木として尊ばれ、葉が主として神事に用いる供え物の敷物に使われたそうですから、この扱いもうなずけます。
葉は大きく、毛深が一面に生え、深く3~5裂するものから、切れ込みのないものまで変化にとみます。
雌雄別株で、花期5~6月、果実は集合果で直径2~3cmの球形、7~8月に赤橙色に熟します。
集合果は雌花の花被と子房の柄が肥大し、液質になってそう果を包んだもので、これが多数集まったものです。食べると甘く、カラスが沢山やってきてついばんでいました。となりにある青い実は未熟かと思いましたが、図鑑には正常な雌花と不稔の雌花が混ざるとあったので不稔のものかもしれません。
カジノキの葉を七夕の願掛けに使う話は08年7月9日の記事で取り上げましたが、この木の樹皮を白く晒して麻のように割いたものを、古代から“ゆふ”(木綿)といい、和紙や衣服に用いました。漢名は楮、穀、栲で、梶の字は俗用だそうです。

カンレンボク:旱蓮木(花も面白い)

2009-08-23 11:32:32 | 植物観察1日1題

公園にカンレンボク:旱蓮木(オオギリ科カンレンボク属)の花が咲きかけています。
中国雲南省原産の落葉高木で、高さ20~25mになります。互生する葉は長さ12~28cm、幅6~12cm楕円状卵形で光沢があり、縁は全縁でやや波打ちます。
雌雄同株で、7~8月枝先に小さな花が集まった球形の花序を3~5個つけます。頂生の花序には雌花、側生の花序に雄花がつきます。雄花が先に咲き、雌花が後に咲きます。
面白いのは10~11月に淡黄褐色に熟す実で、長さ2~2.5cmのバナナ型の果実が球状に集まります。(06年11月22日記事)
果実や根にカンプトテシンというアルカロイドを含み、制がん効果があり、イリノテカンという抗がん剤は、このカンプトテシンの誘導体です。ただし、素人がこの実や根を直接食べたりすると危険だそうですのでご用心です。
ミズキ科またはヌマミズキ科に分類されることもあり、別名に喜樹があります。

ミツバフウロ:三つ葉風露(ゲンノショウコに似た)

2009-08-22 08:50:54 | 植物観察1日1題

伊吹山で見かけた小さい花、一見ゲンノショウコかと思いましたが、葉の形が少し違います。
伊吹山自然観察ガイド(山と渓谷社)に全山分布するとあるミツバフウロ:三つ葉風露(フウロソウ科フウロソウ属)と見立てました。
葉は対生し3裂し、下部の方では5裂するのもあります。
花はやや小さく径1=1.5cmで、色や形に変化が多く、花弁は円形に近いものから長楕円のものまでいろいろです。
節がふくれるのでフシダカフウロの別名があるそうですが、写真では少し発育が悪いのかよくは見えません。
(これで今年の伊吹山シリーズを終わります。伊吹の花約100種を大まかに色わけしてyahooフォトに載せています。間違いなどをご指摘賜れば幸甚です)

バライチゴ:薔薇苺(バラのような苺)

2009-08-21 06:19:15 | 植物観察1日1題

伊吹山北尾根へのとっかかりに生えていたバライチゴ:薔薇苺(バラ科キイチゴ属)です。
本州中部地方以西、四国、九州の日当たりのよい山地に生える落葉低木で高さ20~30cmになり、草のように見えます。
互生する葉は長さ15~25cmの奇数羽状複葉で側脈が目立ち、縁には鋭い重鋸歯があります。
小型のキイチゴですが、その割には花は大きめで、果実も長さ1.5cmと大き目です。
和名は、茎葉に鋭い棘があること、またはバラ属のような花のような苺ということで、ミヤマイチゴの別名があります。
花のそばに赤い実が見えましたが、数は少なく、さすがのむかごも味わうのは遠慮しました。


キリンソウ:黄輪草(黄輪か麒麟か)

2009-08-20 06:48:21 | 植物観察1日1題


伊吹山頂で見たキリンソウ:麒麟草(ベンケイソウ科キリンソウ属)です。
日本各地の山地の草原や海岸の岩上にはえる多年草で、高さ30~50cm、葉は互生し肉質、長さ2~7cmの倒卵形~広倒被針形で、上半分鈍鋸歯があります。
5月~8月、茎頭に3出の集散花序をつけ、5弁の黄色い花を多数つけます。
和名は黄色い花が輪状に咲くからといいますが、むしろ麒麟草と書くことが多いようです。

キンバイカ:金梅花(金色に咲く梅の花)

2009-08-19 06:47:01 | 植物観察1日1題

キンバイカ:金梅花(キンポウゲ科キンバイカ属)は、本州中部地方から伊吹山の山地に生える多年草で高さ40~70cm、葉は2~5深裂し、幅5~15cm、滑らかで光沢があり無毛、不ぞろいな鋸歯があります。
花は夏、3~4本の枝を出し、径3cmほどの濃黄色の花を開きます。
キンポウゲの仲間の常として、花弁に見えるのは萼片で普通5個あり、花弁は中央部に見える橙色の線形部分で雄蕊より長くなります。雌蕊は複数で、果実はこれもキンポウゲ科の常であるいぼいぼの集合果となっています。
和名は梅のように咲く黄色い花という意味です。

キオン:黄苑(黄色いシオン)

2009-08-18 06:48:55 | 植物観察1日1題

伊吹山のお花畑で、少し背の高いキオン:黄苑(キク科キオン属またはサワギク属)も目立つ存在です。東アジアからシベリアを経てヨーロッパまで分布し、日本各地の山地の日当たりのよいところに生える多年草で、高さは50~100cm、葉は互生し長さ5~15cmの長被針形で分裂しません。
花は夏、茎の上部で分枝し、直径2cmほどの頭花を多数散房状につけます。頭花は10個内外の筒状花と周囲に5個内外の舌状からなります。
和名の黄苑は黄色い花が咲くシオン(紫苑)という意味です。広い分布の割にはヒゴオミナエシというローカルな別名もあります

マルバダケブキ:丸葉岳蕗(大きな丸葉が目立つ)

2009-08-17 07:32:42 | 植物観察1日1題

南アルプス仙丈岳の頂上付近で、シカの食害で在来の高山植物が少なくなり代わってマルバダケブキ:丸葉岳蕗(キク科メタカラコウ属)が優占するようになっていると報じられています。
そのマルバダケブキが、伊吹山では以前から東遊歩道のとっかかりの一角に増えもせず減りも
せずといった感じで群生しています。こちらは食害などの関係ではなく、やや湿った土地が合っているからと思われます。
本州の低山帯から亜高山帯の草原に生える多年草で、高さ1m内外、根生葉は腎円形で長さ30~40cm、長い柄があります。花は夏、茎頭に密に毛のある枝を分け、大きな黄色の頭花を散房状
につけます。
舌状花は10個ほど、総苞は球形で大きく、密にちじれた毛が生えています。
和名はフキに似て葉が丸いことによります。
また別名にマルバノチョウリョウソウがあります。こちらは、本種とハンカイソウ(樊膾草08年6月13日記事)との交雑種を、樊膾と同じく中国の武将長良の名を冠してチョウリョウソウ(長良草)といい、丸い葉のチョウリョウソウだからマルバノチョウリョウソウというというのですが、そうなら交雑種の名前が先にあって母種の別名が生まれたという回りまわった話になります。

シシウド:猪独活(ウドに似るのは形だけ)

2009-08-16 07:01:22 | 植物観察1日1題

この観察日記は、自分でだけちょっぴりこだわってなるべく同じ時期の同じ品種を重ねて掲載しないように努めていますが、今回伊吹山の花を取り上げるのに過去の記事を検索してみると、意外にも伊吹を代表する花のいくつかが未掲載なのに気づきました。前3日間のルリトラノオ、クガイソウ、ヨツバヒヨドリもそうでしたが、伊吹では誰でも知っているシシウド:猪独活(セリ科シシウド属)がまだだったのには驚きました。たぶんデジカメ・パソコンがない前から撮りつくしていて珍しさがなかったからでしょう。
ウド(ヤマウド)に似て、茎葉ともに毛があるのでこの名がありますが、ウドはウコギ科ですから植物として両者はまったく別個のものになります。
シシウド属は世界には50種以上もあって、日本のシシウドは主に本州の山野に多く生えます。
茎の高さは2mくらいにもなり、頂に大形の複数散形花序をなし、白い小さな花を多数つけて、夏の伊吹山では群草の中で際立って目立つ存在です。
個々の花は5弁花で、花が終わると暗紫色に熟します。

ヨツバヒヨドリ:四葉鵯(吸うのは蜜だけではない)

2009-08-15 09:02:06 | 植物観察1日1題


伊吹山頂は早くも秋の気配です。
ヨツバヒヨドリ:四葉鵯(キク科フジバカマ属)の花にアサギマダラが吸密に来ています。
四国、本州中部以北、北海道などの山地~亜高山の日当たりのよい草地に生える多年草で高さは1mくらいになります。
葉が4枚輪生するということでこの名がありますが、実際には3枚や5~7枚のもあります。
よく似たフジバカマの葉は深く3裂しますが、本種は裂けません。
花期は8~9月、頭花は淡紅色の筒状で密な散房状につき、花冠の先は浅く5裂し、花柱は花冠より長く飛び出ます。
この花の蜜を好むのが、1年のうちに日本全土と西南諸島、台湾の間を往復することで知られるアサギマダラです。
ヒヨドリバナや仲間のフジバカマの蜜には毒になるアルカロイドが含まれており、アサギマダラはこの毒を体内に取り込むことで、敵から身を守るといいます。送粉の代わりに蜜だけではなく毒も頂くのですから、この取引はアサギマダラのほうが得をしているようです。

クガイソウ:九蓋草(葉のつき方に特徴)

2009-08-14 07:22:35 | 植物観察1日1題

伊吹山で撮った花の写真を大まかに色別に分類してみて赤、白、黄に比べて、青系統が断然少ないことに気づきました。
その割りに伊吹山で目立っている感じがするのは、昨日のルリトラノオや去年取り上げたイブキトリカブトなど澄んだ青色が目を引くからなのでしょう。
クガイソウ:九蓋草(ゴマノハグサ科クガイソウ属)は、一見ルリトラノオと似ていますが、葉のつき方に特徴があり、4~8枚ずつ、何段も層になってつくので区別が容易です。
和名の九蓋草もこの葉のつき方から来ていて、九階草という別名もあります。
本州の山地から亜高山に見られる多年草で、四国、九州などには別種もあります。
花は夏、茎の上部に長さ20~30cmの総状花序につき、淡紫色の花をびっしりとつけ、下から順次上へと咲きあがります。花ごとに1本の苞葉と短い花柄があります。

ルリトラノオ:瑠璃虎の尾(伊吹山を彩る)

2009-08-13 09:00:40 | 植物観察1日1題

夏になると伊吹山のお花畑を訪れるのが慣わしになっていますが、何日か時節を変えるだけで微妙に主役・脇役の花々に変化があって楽しいものです。
ことしも今までに取り上げていない花を中心にいくつかを紹介します。
イブキの名がつく植物が多い中で、ルリトラノオ:瑠璃虎の尾(ゴンマノハグサ科クワガタソウ属)は、伊吹山頂限定なのに伊吹の名がついていません。たぶんイブキより語感の綺麗な瑠璃を選んだのでしょう。
伊吹山に自生しますが、花が美しいので切花用としてよく栽培もされる多年草で、茎は分枝せず、90cm以上になり細毛が生えます。伊吹山のは栽培種より全体に小形で白い毛におおわれています。
花は夏、青紫色で、長さ10~20cmの総状花序につき、下から上へ咲きあがります。数は少ないが伊吹山頂ではよく目立っています。