新・むかごの日記

高槻市に在住の、人間と自然が大好きな昭和1桁生まれの爺さんです。
出かけるときはカメラ連れ。
目標は毎日1記事です。

ナツフジ:夏藤(樹陰に涼しげ)

2006-08-18 04:32:02 | 植物観察1日1題
藤棚になるフジ(ノダフジ)は、5月ごろいったん咲き終わったのち、8月ごろにまた狂い咲きの花をつけることが珍しくありません。
万葉集に“わがやどの 時じき藤のめずらしく 今も見てしか妹が咲容(えまひ)を”(大伴家持:巻8-1627)の時じき藤は季節はずれに咲く藤で、そのように珍しく愛らしいあなたの笑顔を今も見たいという意味だそうですが、狂い咲きではすこし情緒に欠けます。
この“時じき藤”は狂い咲きではなく、今の時期に咲くナツフジ:夏藤(マメ科ナツフジ属)と解釈されています。
ナツフジは、山地の樹林のなかに生えるつる性の落葉木本で、庭木として用いられることもあります。フジを小さくしたような感じで、花が夏咲くことからこの名があり、ドヨウフジ(土用藤)の名もあります。つるは左巻き、葉は長さ10~20cmの奇数羽状複葉で互生します。7~8月、葉のつけ根から長い柄を下向けにのばし、やや緑がかった白色の蝶形花を総状につけます。
樹陰に揺れるうすみどり色のナツフジは、炎天下に一陣の涼風を呼んでいるようです。

お断り:今日から3週間ばかり留守をします。勝手ですがその間“むかご”は休ませていただきます。秋風の吹く9月8日ごろに再開の予定です。ではまた。

ガガイモ:蘿摩(ふしぎな名前)

2006-08-17 08:11:13 | 植物観察1日1題
一昨日のガガブタによく似た変わった名を持つ陸の植物はガガイモ:蘿摩(ガガイモ科ガガイモ属)です。日本各地の日当たりのよい草地や川原に生えるつる性の多年草で、地下茎で繁殖し、緑色の茎をのばして他のものに絡まって長く伸び、つるを切ると白い汁がでます。
対生する葉は、長さ5~10cm、幅3~6cmで細長いハート形です。
花は夏、葉のつけ根からでた長い柄に、径1cmくらい薄紫色の花をつけ、花の内側には白い毛が密生します。中心にずい柱があり柱頭は長く花冠から突き出ます。
この変わった名は、かがむような低い位置に芋があるからの説があり、牧野図鑑では和名はカガミイモからの転訛で、別名のゴガミは方言のスッポンの意味で、葉の形が亀の甲に似ているからとあります。
根は有毒ですが若芽は灰汁抜きして食べられるそうですし、乾燥した葉、茎、根は漢方で滋養強壮薬に、また茎を切るとでる白い汁は腫れ物、虫刺されにきくといいます。

ミズヒマワリ:水向日葵(厄介者第一号指定)

2006-08-16 06:28:10 | 植物観察1日1題
高槻市の芥川緑地の一角、トンボ池に今年もミズヒマワリ:水向日葵(キク科:通称ギムノコロニス)が今年もまたはびこって、体に不似合いな小さい花を咲かせています。
図鑑にも載っていないこの草は、1996年に愛知県で初めて報告されたという新顔の外来種ですが、茎の中に気体を蓄える気室があって浮力があり、栄養繁殖が極めて旺盛で、ちぎれた茎の節からでも容易に根をだし、成長が早く短期間で大きなコロニーを形成します。
川岸など流れの弱いところや沼、水路などをたちまち覆いつくすことから、昨年秋に施行された外来生物法で、栄えある特定外来生物第一号に指定されました。
戦後熱帯魚の輸入に伴って入ってきたと見られているミズヒマワリは、抽水性の多年草で、高さ50~100cm以上、開花期は8~9月、白い頭花で、舌状花はありません。
この池でも昨年駆除が行われたのですが、根絶とまでは行かなかったのか、再び池を覆いつくすばかりの茂りようです。
涼しかるべき水辺の花も、こればかりは見ているだけで、重く、暑苦しい感じを禁じえませんでした。

ガガブタ:(ガガブタとは何の蓋?)

2006-08-15 07:12:53 | 植物観察1日1題
池の面に大きな丸い葉の脇に、小さいがよく目立つ白い花をつけているのはガガブタ(リンドウ科アサザ属)です。
本州、四国、九州および東南アジアから豪州、アフリカなど温帯から熱帯にかけて分布する池や沼に生える多年性の水草で、茎は細長く水底の泥中ひげ根を下ろします。
葉は水面に浮かび直径10~20cmのハート形で鋸歯はありません。
7~9月、葉のつけ根から伸びた花柄の先に、星形の白い花を数個ずつつけます。花は直径1.5cmほどで中心部は黄色く、花弁の内側には白く長い毛がびっしりと生えています。
この変わった名の由来が気になるところですが、漢字の和名がなく、牧野図鑑では“カガブタ”で載っている位ではっきりとは分かりません。よく似た名前に陸のガガイモがありますが、こちらはカガミイモの転訛、別名のコガミはスッポンの意で、葉の形が亀の甲形に似ることからきているそうです。このことからガガブタの葉を亀の甲と見立てて水面に蓋をするから、あるいは丸い大きい葉を青銅の鏡に見立てて鏡で蓋をするなどこじつけ説もあるようですが、変わった名だけに由来についていろいろ推測を呼んでいるということでしょう。

アサザ:(水中でも暑さに弱い?)

2006-08-14 07:01:01 | 植物観察1日1題
うだるような真夏の太陽を受けても、さすが水辺の草花は涼しげです。
アサザ:莕菜(リンドウ科アサザ属)は、今では少なくなりましたが、北海道を除く各地の平地の池や沼の浅い水中に群生する水生の多年草で浮葉をもちます。根茎は長く水底の泥上を走り節からひげ根をだします。葉は広楕円状ハート形で、直径7~14cm、葉柄の長さは8~20cmで基部は鞘状になります。
5~9月、葉腋から花柄を数本のばし、直径2~4cmの黄色い花を水面に開きます。花は集散花序で10~16個つき、5つに切れ込んで放射状に開き、花弁のふちは波打って糸状に細かく切れ込みます。
花は朝開き、昼にはもう閉じてしまうといいます。水の中でも夏の太陽の直射には降参ということでしょうか。
難しい漢名の莕菜、荇菜は浅い水中にあるの意で、別名に花蒪菜(はなじゅんさい)があります。

ヒルガオ:昼顔(昼咲く花は割を食う)

2006-08-13 07:12:16 | 植物観察1日1題
日当たりのよい野原や道端で、昼間夏の日を浴びながら漏斗状の薄紅色の花を開いているのはヒルガオ:昼顔(ヒルガオ科ヒルガオ属)です。和名は朝に咲くアサガオに似て昼に咲くところからきていますが、この仲間は日本在来のものや外国渡来のものを含めて10種ちかくあるそうで、よく見られるのはヒルガオとコヒルガオです。
北海道から九州および朝鮮、中国に分布し、野原や道端に生えるつる性の多年草で、ふつうは結実
せず、地中に白い地下茎をのばしてふえます。
互生する葉は長さ5~10cmの矢じり形で、基部は後方に張り出しますが裂けません。6~8月葉腋から長い花柄をだし、直径約5cmの淡紅色の花を一個つけます。
朝顔、夕顔が詩歌や文学によく取り上げられているのに対し、昼顔はあまり人気は無いようです。
カトリーヌ・ドリーブ主演で映画にもなったジョセフ・ケッセルの小説“昼顔”は、貞淑な若い妻が幼児期の特異な体験が原因で、昼間だけ娼婦になるというはなしですが、とうてい花の美しさを語っているものとはいえません。
古名ハヤヒトグサ、方言ではカミナリバナ、ドクアサガオ、ヒデリソウ、チョコバナなどがありますが、いずれもヒルガオにとってあまりうれしい名とはいえません。
ヒルガオに似て少し小型のコヒルガオとの区別点は
① コヒルガオは葉や花が小さく、花色は白っぽいのが多い
② コヒルガオの葉は基部が大きく横に張り出し、その部分に普通切れ込みがある
③ コヒルガオの花柄の上部に縮れた狭い翼がある
④ コヒルガオのほうが少し開花時期が早い
⑤ 花筒の下の萼にかぶさる2枚の苞の先が尖るのがコヒルガオ、丸いか先が凹むのがヒルガオ
とあります。下の写真はコヒルガオでほぼ間違いがないと思いますが、上の写真は、葉の形や、花柄の上部の翼の有無でヒルガオと見ましたが自信はありません。

ユウガオ:夕顔(かんぴょうになる儚い花)

2006-08-12 06:25:01 | 植物観察1日1題
“ここに刈り取る真柴垣 夕顔棚のこなたより 現れ出たる 武智光秀・・・”子供のときに見た村芝居の定番はいつも絵本太閤記十段目尼崎の段(略して太十)でした。
いまでこそあまり見ませんが、昔は夏の風物詩として夕顔棚はあちこちで見られたらしく、絵画、文学、芸能などによく取り上げられています。中でも源氏物語の夕顔は有名で、五条辺りのしもた屋に咲く花の名を尋ねる源氏に、女から返ったのは、香を焚きこめた白扇にのった夕顔と和歌で“こころあてにそれかとぞ見る白露のひかりそへたる夕顔の花”とあります。源氏と夕顔との出会いです。たそがれにほの白く浮かぶ儚げな夕顔の名を持つ女は、ほどなく六条御息所とおぼしき怨霊にとりつかれ、夕顔の花のように短い命を終えます。やがてこの話は、能に取り入れられ「夕顔」「半蔀」となります。
ユウガオ:夕顔(ウリ科ユウガオ属)はアフリカまたは熱帯アジア原産の、畑や人家で栽培される一年生のつる植物です。茎は5~10mにもなり、柔らかで粘質の短毛があり2分岐して他物に絡みつきます。雌雄同株で、花は夏、葉腋に単生し、ウリ類の花は黄色が多いのに対し白色です。花冠は5裂し、夕方咲いて翌朝しぼみます。
大形の果実は長円筒形と短洋梨形があり、最大の利用はかんぴょうで、ほかに炭取り、花入れ、置物などにもなり、人間にとっては花より実が大事なのですが、清少納言は“いとおかしかりぬべき花の姿に、実のありさまこそ、いとくちおしけれ…”夕顔の名前も花もよいのに何でこんなに不恰好な実をつけるのかと嘆いています。庶民との感覚の違いでしょうか。

ヤブカンゾウ:藪萱草(忘れ草兄弟)

2006-08-11 05:17:55 | 植物観察1日1題
昨日のノカンゾウと同じ仲間で、手元の牧野図鑑では、これをワスレグサとし括弧書きでヤブカンゾウとしています。万葉集に出る忘れ草も、解説ではノカンゾウであったりヤブカンゾウであったりします。
有史以前に中国から渡来したものといわれオニカンゾウの別名もあります。
ヤブカンゾウ:藪萱草(ユリ科ワスレグサ属)は、道端や土手などに普通に生える多年草で、ノカンゾウより全体に大きく、高さは80~100cm、
葉幅は2~3cmでノカンゾウより広くなっています。7~8月、直径10cmほどの橙赤色の花が咲きます。雄蕊と雌蕊が花弁状になった八重咲きですが完全に花弁状になっていない雄蕊も混ざります。花筒は約2cmでノカンゾウより短くなっています。
この時期野辺の道を歩いているとあちこちに萱草の赤黄色の花を見かけますが、見た感じではヤブカンゾウのほうが多く目につくようです。

ノカンゾウ:野萱草(需要は無限?)

2006-08-10 05:06:01 | 植物観察1日1題
“忘れ草 わが紐に着く時と無く 思い渡れば生けりとも無し”(万葉集巻12-3060)(忘れ草を着物の下紐につけてあなたのことをいっときでも忘れましょう。そうでもしないと恋に疲れて生きた心地がしませんもの)いまあちこちに咲いているノカンゾウ:野萱草(ユリ科ワスレグサ属)の別名は、属名にもなっているワスレグサ(忘れ草)です。
古く中国から渡来したもので、カンゾウは中国名の萱草から来ており、これを昔中国では忘憂草といい、この花を見ると世の中の憂き事を忘れるとして大切にされたといいます。
小川のほとりや野原などに普通に生える多年草で、高さは70~90cm、葉の長さ50~70cm、幅1~1.5cm、基部は互いに抱き合って2列に互生します。
花期は7~9月、花序は2つに枝分かれしてそれぞれに10個ほどのつぼみがつき、直径7cmほどの赤橙色~橙黄色の花を次々につけます。花の下部の筒状部分は長さ2~4あり仲間のヤブカンゾウより長くなっています。花は朝開いて夕方にはしぼみます。
万葉集に4首ある思い草の歌はいずれも恋の悩みを忘れたいと詠んでいるのですが、悩み事が複雑多岐になった現代人にこそワスレグサが必要かもしれません。

ランタナ:七変化(終わった花も一役)

2006-08-09 05:12:32 | 植物観察1日1題
庭や鉢植で良く見られるランタナ:(クマツヅラ科ランタナ属)は、熱帯アメリカ原産、広く熱帯各地に分布する落葉低木で、高さ30~90cm、葉は卵形で対生し、鋸歯があって表面がざらつき強い匂いがあります。葉脇から花茎を出し、多数の花を散形につけ、花は、はじめ淡黄色で次第にオレンジ色、紅色へ変化するので、シチヘンゲ(七変化)とも呼ばれます。
この花色の変化は虫にたいする合図で、もう虫に来てもらう必要のない終わった花も看板として周囲に残しておき、実際訪れた虫には受粉に適した時期の花を色ではっきり区別して知らせているのだといいます。こうすることによって蜜や花粉資源の節約を図っていると考えられています。
庭で、この花を訪れたガの行動をじっくり見ていましたら、外側の赤い花には目もくれず、確実に中央部の淡黄色の花だけに口吻を差込み吸蜜していました。
最近わが国でもいろいろな花色の園芸種が出て愛好家も多いようですが、こぼれた種から容易に発芽するので、原産地付近では、畑などの雑草としてはびこっており、害草として忌避されているそうです。
(後日、文中の”ガ”とあるのは、「セセリチョウ」ではないかとのご指摘を頂きました)

エンジュ:槐(話題の多い地味な木)

2006-08-08 05:34:13 | 植物観察1日1題
高槻市の氷室から上氷室にかけて、当地としては珍しいエンジュ:槐(マメ科クララ属)の並木があり、つい少し前、淡黄白色の花を一面につけていました。
中国原産の落葉高木で、古くから街路樹や庭木として植えられてきましたが、おとなしい花のせいか、それほど人々には知られていないようです。
そんな木ですが、話題も多く、有用な木でもあります。列挙しますと
1) 縁起のよい木
・ 木扁に鬼で鬼退治→魔よけの木
・ エンジュは延壽に通じ目出度い木
・ 中国では三公の位を槐位といい、尊貴の木とされる
2)薬用植物として有名
・蕾は漢方で槐花とよばれ、ルチンを含有し、止血、高血圧薬などの原料になる
・蕾のほか豆果も同様に薬用にされたり、黄色染料にもなる
互生する葉は奇数羽状複葉、小葉は4~7対あり長さ3~5cmの卵形、7~8月、枝先に淡黄白色、長さ1~2cmの蝶形花を多数つけます。
豆果は長さ4~7cm、種子の間でくびれて数珠状になり、肉厚で内部は粘ります。


ホドイモ:塊芋(芋の名ががつく豆)

2006-08-07 06:53:40 | 植物観察1日1題
日当たりのよい林縁で、何種類かのつる性の植物が絡まっている中に、花びらに小さな紅色が目立つ黄緑色の房状の花が見えました。
ホドイモ:塊芋(マメ科ホドイモ属)は、北海道から九州にかけての山野に生えるつる性の多年草で、茎は細長く伸びて他物に絡みつきます。
地下に紡錘状または球形の内部が白い塊根ができ、これは焼くなどして食用になります。このことからホドイモの名がありますが、れっきとしたマメ科の仲間で秋には長さ6~8cmの豆果をつけます。
夏、葉のつけ根から長い花柄をのばし、長さ約1cmの蝶形花を多数つけます。花は淡黄緑色で、曲がりくねっているのは竜骨弁、中に雄蕊と雌蕊が入り、ピンク色の小型の弁が翼弁で、旗弁には緑色の筋が入ります。
単にホド(塊)とも呼ばれ、漢名に休子洋、山紅豆花などがあります。

マタタビ:木天蓼(主役は虫こぶ)

2006-08-06 07:34:06 | 植物観察1日1題
つい一月ほど前に白い花を咲かせていたマタタビ:木天蓼(マタタビ科マタタビ属)(6月27日記事)が、もう緑色の実を膨らませています。
猫が好むので知られる果実は長さ2~3cmで、先端が尖り、熟せば黄緑色になり、辛味があり食用や果実酒に用いられます。
マタタビで面白いのはマタタビハエが果実に寄生産卵して作る虫こぶです。マタタビの名は、疲れた人でもこれを食べれば“また””旅“を続けられることから来ているとの俗説もありますが、本来は古いアイヌ語のマタタムブに由来し、マタは冬、タムブは亀の甲の意味で、果実の虫こぶをさすといいます。和名の木天蓼(もくてんりょう)もまたこの虫こぶを乾燥した漢方薬の名で鎮痛や強壮に薬効があります。
写真の右が虫こぶ、左が通常の果実ですが、多くのばあい虫こぶが目立ち、正常な実のほうが少ないことが多いようです。
マタタビは実よりも虫こぶが主役のようです。

ノブキ:野蕗(果実の形をにらんだ花の形)

2006-08-05 06:23:46 | 植物観察1日1題
ノブキ:野蕗(キク科ノブキ属)は、山地の木陰や谷間の山道などに普通に生える多年草です。
高さは60~100cm、葉は幅10~20cmでフキを一回り小さくしたような三角状腎形ですが、葉の先が少し尖り、裏面には白い毛が密生し、柄に狭い翼があることで区別されます。
夏から秋にかけて茎の上部に白い小さな頭花を多数つけます。
この頭花は筒状花だけでできていて、周囲に雌花、中心部に両性花があり、両性花は結実せず、周囲の雌花だけが結実します。
果実はそう果で放射状に並んで冠毛がなく、先端の腺体が粘って衣服などにつき遠くへ運ばれます。
写真では、天辺の頭花の外周にある雌花のいくつかが咲き終わって、よく見ると緑色の小さな実ができかけているのが見えます。