新・むかごの日記

高槻市に在住の、人間と自然が大好きな昭和1桁生まれの爺さんです。
出かけるときはカメラ連れ。
目標は毎日1記事です。

花には芳香クサギ:臭木

2005-07-31 05:48:04 | 植物観察1日1題
葉を触って匂いを嗅げば誰でもこの木の名前を納得し、しかめ面をするクサギ:臭木(クマツズラ科、クサギ属)ですが、8月~9月に咲く花は、名前に似ず品があります。
枝先に長柄の集散花序を腋生し、一見頂生のように見えます。
花冠は白色、細い筒部の先は5裂して半開し、2~2.5cm、4個の雄蕊が長く出ているのが特徴です。花芯部や蕾は薄紅色を呈しています。
写真下部の花は咲き初めで、4本の雄蕊が前方に突き出て花粉を昆虫つける態勢でですが、このときは雌蕊は未熟で花粉を受けません。翌日になると雄蕊と雌蕊の位置が入れ替わり、雌蕊が伸びて態勢が整う一方雄蕊はくるくるっと巻いて昆虫に花粉がつかなくなっています。同花受粉を避ける雄性先熟のシステムです。
近づいて匂いを嗅いでみると、案に相違してとてもよい香りでした。
若葉は食用になり、果実は染料に用いられたりします。戦時中、タバコ不足の田舎でクサギの葉を干してタバコ代わりにしていたのをみましたが、その煙はどんな香りがしていたのでしょうか。

真夏の夜の幻想、ゲッカビジン:月下美人

2005-07-30 06:15:55 | 植物観察1日1題
近所の奥さんが今晩咲きそうですと知らせに来ました。10日ほど前に庭先の月下美人の小さい蕾を見かけたので頼んでおいたのです。
7時半ころから始め10時、3回目の訪問でやっと満開の花に会うことが適いました。多数の花がいっせいに花を開き夜気の中馥郁たる香りを放っています。
ゲッカビジン(サボテン科クジャクサボテン属)は、メキシコ原産のサボテンの1種で、夏の夜、葉(実際には茎が葉状に変化した茎節)の先端からS字状に曲がった花筒部を含めて20cmにもなる大きく白い芳香ある花を咲かせます。
大正12年、台湾を訪問された当時皇太子であった昭和天皇をもてなそうと、時の台湾総督 田健次郎がこの花(中国名で“曇葉“)をご覧にいれます。この花の名は何かとのご下問に、田はとっさに“月下の美人”と答えます。後にこの花がこの話とともに本土に移入され月下美人という名が定着したといいます。挿芽で殖え、耐寒性もまずまずのため、今では結構広く栽培されていますが、この苗を持ち帰ったのが某華族で、今日本で栽培されている月下美人はみなその子孫のクローンだという説さえあります。
花の形、色、香り、真夜中近く多数の花が一斉に咲き数時間で凋むことなど、何れをとっても真夏の夜の夢幻花としてふさわしい話題性があり高い人気があります。
翌朝、くだんの奥さんが、咲き終わった花を持ってきてくれました。さっと茹でて酢の物にしていただきました。夜の精気をもらった気分です。

お徳用ハーブ:レモンバウム

2005-07-29 06:21:27 | 植物観察1日1題
園芸店でハーブ苗を見つけると料理や何かに使えそうに思い買っては来ても、結局あまり使わずじまいで、いつのまにか枯らしてしまうことが多いものです。
しかしこのレモンバウム(シソ科、メリッサ属)は、放っておいてもこぼれ種が毎年あちこちで芽生えし、そばを通るだけで強いレモンの香りがします。葉をハーブティーにするなどして楽しむなど、年中使えて、結構お徳用なハーブのひとつです。レモンバウムは、気分を高め、頭をすっきりさせ、健胃、強壮などの薬効があるそうです。
今の時期、少々延びすぎた枝にごく小さな花をつけています。開く前の小さい蕾はわずかに黄色味を帯びていますが、開くと白色です。
試みに花を摘んで匂ってみましたが、こちらはほとんど香りがしませんでした。



群舞する白い蝶、ハクチョウソウ:白蝶草

2005-07-28 05:36:19 | 植物観察1日1題
庭の片隅に、葉がほとんど目立たないのに、1mくらいの高さの茎の上部に白い花が沢山ついて風に揺れています。ハクチョウソウ:白蝶草(アカバナ科)です。
字を見るまでは、白鳥草とばかり思っていましたが、鳥ではなく白い蝶でした。でも白鳥でも通りそうな清楚な花です。別名はヤマモモソウで、モモの花に見立てた言われます。
北アメリカからメキシコ原産の多年草ですが、一般には一年草として育てられているようです。基部の葉は、葉柄の短いへら形で先端が尖り互生します。
夏、茎頭に径3cmくらいの4弁花が横向きに咲き、8本の長い雄蕊を突き出します。
茎の上部、花柄、花弁の一部に少し赤みをさすことがあり、また花が凋んだ後は薄紅色になります。

夏の河口を彩るハマボウの花:浜朴

2005-07-27 06:05:04 | 植物観察1日1題
庭でハマボウ(アオイ科、フヨウ属)が黄色い花を開きました。
日本西南部、伊豆半島から沖縄本島の河口の沿岸に自生する落葉低木で、7月中旬から8月にかけて開花します。南国系の花らしく、学名もHibiscus hamabo となっています。
花の直径は8~10cm、花弁は黄色で幅広く、中心部が暗紅色、雌蕊に雄蕊が合着しているのが特徴です。花は一日で終わります。
ハマボウは、いまではかなり珍しくなっている様子で、一部の県では絶滅危惧品種に指定されています。
私の知っているのでは、紀州日高川河口の王子川河口一帯に群落があり、大阪近辺では、万博公園日本庭園の州浜に沢山植えられています。
写真は、茶花用として買ったもので、正しくはヒメハマボウかもしれません。

紅一点とは私のことです。ザクロ:石榴 

2005-07-26 05:55:36 | 植物観察1日1題
真夏、一面緑の中にここだけ真っ赤な花が咲いています。ザクロ(ザクロ科)の花です。
昔中国の学者、王安石が、“石榴詩で”ザクロの花を「万緑叢中紅一点」と表現しました。これより、紅一点は、唯ひとつ異彩を放つ、転じて多くの男性の中に唯1人女性がいることを指す言葉になりました。名前は、その漢名の石榴からジャクロ→ザクロとなったものです。
花木であり果樹でもあるザクロは、地中海沿岸、インド、南西アジア原産の落葉低木で、夏期、花弁・萼が6枚、多数の雄蕊を持つ、濃い赤橙色の花をつけます。花期は2~3ケ月と長く、大きい実がついているのにまだ花が咲いていることがあります。
古代エジプトの時代より多目的の有用植物として重用されてきました。ザクロの実にまつわる面白い話も沢山あります。秋、ザクロの実がはじけるころ、もう一度取り上げることにしましょう。

白い化粧で梅雨明ける:ハンゲショウ 

2005-07-25 06:17:44 | 植物観察1日1題
水辺に涼しげだったハンゲショウ(半夏生、半化粧)も、梅雨明けの強い太陽を浴びていささかげんなりとしている様子です。片白草、三白草とも呼ばれるハンゲショウ(ドクダミ科)は、日当たりのよい水辺に生える多年草で、高さ60~90cmになります。基部が心臓形で先のやや尖った長卵型の葉を互生し、表面に5本の葉脈が見え、淡緑色ですが、夏期になると先端のほうの葉の基部から白くなります。花は穂状の総状花で多くの小さい花をつけます。
葉が3枚白くなれば梅雨が明けるとも言われるこのハンゲショウの名は、暦の半夏生のころ葉が白くなるからとか、葉の半分が化粧されるからなどといわれています。
マタタビ(6月11日の記事参照)と同じように、地味な花をカバーする為、葉の色を目立たせて虫を誘う戦略をとっているのでしょう。

(7月23日の記事中、夏の茶席を風呂としたのは、風炉の誤りでした。お詫びして訂正します)

蟻が火を吐くキキョウ:桔梗(1)

2005-07-24 06:05:37 | 植物観察1日1題
秋の七草の中でも最も身近に見られるキキョウ:桔梗(キキョウ科)は、庭にもよく植えられます。日本原産ですが、名前は漢名に由来し、現在の中国でも同じ“桔梗”です。
山上憶良の秋の七草の歌には、“桔梗”がなく“あさがおのはな”となっていますが、アサガオが後世中国からの渡来植物のため、今でいう桔梗を指すという説が有力です。
平安時代の本草書で、桔梗のことをアリノヒクイ(蟻の火喰い)と呼んでいるそうです。
青紫の花は、アントシアン系色素で、蟻の蟻酸に触れると紅く変色するので、蟻が何かの動きで花を噛むとき、口から火が出ているように見えることからつけられた名です。
昔の人の観察眼の鋭さに驚きます。ためしに花を取って酢に漬けたら確かに赤く変色しました。桔梗根として薬用にされる多肉白色の肥大根がある多年草ですが、栽培容易で、春先に種を蒔くと秋にはもう花をつけます。
桔梗の花は咲き始めから終わりまでの間、雄蕊、雌蕊の形が変わります。自家受粉を避けるための雌雄異熟といわれる巧妙な仕掛けです。下の写真、右から咲き始め→雄蕊の展開→雌蕊の展開です。

ムクゲに託す一期一会の心:木槿、槿 

2005-07-23 05:37:24 | 植物観察1日1題
夏の朝、茶席の床柱に一輪のむくげが飾られて、あたかもそこが茶室の中心をなすかのように爽やかな冷気を運んできます。
手元の原色茶花大辞典(淡交社)を開くと、槿だけで50種近くも載っています。
明け方に咲き、夕べにしぼむことから「槿花一朝の夢」といわれるムクゲ:木槿、槿 (アオイ科)の、今日一日だけを精一杯咲く姿が、その日だけの最良のもので客をもてなす茶道の心にかなうものとして、風炉(夏)の席に欠かせない花になっているのです。
ムクゲは、漢名木槿の音読みで、一名モクゲとも呼ばれ、ムクゲに転訛したといわれます。
古い言葉には、ユウカゲグサ、シノノメグサなどもあります。
一日だけの花をいつくしむ日本人に対し、お隣の韓国では、同じ槿を、次々に咲くことから「無窮花」といって、国花になっているそうです。こんなところにも国民性の違いが出るのでしょうか。
写真は、龍潭寺白といわれる品種で、10年ほど前に、彦根市龍潭寺の庭で、挿し芽をいただいて帰ったものです。一重咲きの大輪品種で、少し巴形によじれて咲きます。気品ある純白色で私の好きなむくげです。

道端で馬を繋ぐかコマツナギ:駒繋

2005-07-22 06:16:19 | 植物観察1日1題
道端の低いところに小さな紅紫の藤のような花が咲いています。
コマツナギ:駒繋(マメ科)です。北海道を除く日本に分布し、日当たりのよい草地に生える草本状の小低木です。根は木質で硬く、よく分枝して高さ50~90cmになり、葉は奇数羽状複葉、7~9月に、葉腋から長さ10cmほどの総状花序を出し、紅紫色の小さい蝶形の花を密につけます。秋に円柱形の豆果をつけ、数個の緑黄色の種が入ります。
茎が細く、一見草に見えますが強いので馬でも繋げるから、あるいは、馬が好み、その場をなかなか離れないから、この名がついたという説があります。
よくみないと見過ごしそうな小さな花ですが、なかなかのものです。

いやがられの植物、ヤブガラシ:藪枯 

2005-07-21 06:06:47 | 植物観察1日1題
春になるとあちこちから赤色がかった芽を出し、5枚の子葉を持つ掌状の葉(鳥足状複葉)を広げ始めると、留まることなく伸びて、木にかぶさるように覆い尽くすので、時として日光をさえぎられた木を枯らしてしまう、ヤブガラシ:藪枯(ブドウ科)は、名前通りいやがられる植物の代表です。別名もビンボウヅル、ビンボウカズラなど、どれも喜ばれていないことは明らかです。
ところが、6~7月ごろ咲く花は、集散状の花序をつけ、米粒の様な蕾を沢山つけます。4枚の花弁を持つ小さな花は一度には咲かず、ボツボツ咲きます。咲いた花は萼が退化、緑色の花弁、雄蕊4、雌蕊1で、開花するとまもなく花弁と雄蕊は散り落ち、あとに雌蕊と子房を取りまく花盤が残ります。花後の花盤は赤黄色から淡紅色に変わります。全体で見ると、薄緑、黄色、淡紅色の三色がほどよく混ざり合って、名前に似ず案外可愛いいものです。
この嫌がられの蔓、中国では漢方薬になり、また柔らかい新芽は和え物や、てんぷらにすれば結構いけるといいますから、あながち迷惑ばかりとはいえません。

今はいずこに大和撫子:カワラナデシコ

2005-07-20 06:19:27 | 植物観察1日1題
カワラナデシコ:河原撫子(ナデシコ科)は、単にナデシコともいわれ秋の七草の中でもおなじみの花ですが、実際にはもっと早く6月ごろから咲き始めます。
名前に河原とついていますが、必ずしも河原に限らず山や野に普通に生えます。
茎は細く草丈が60~100cmで自力では直立できず、先で分枝します。扇形の花弁の先が深く裂け、淡紅色の糸のようになり優美な姿です。撫でたいくらい可愛い花というのが名前の由来で、万葉の昔から愛情、母性愛のシンボルとして詩歌にも歌われてきました(万葉集に26首)。
別名の“大和撫子”は、やさしくて従順で献身的な日本の女性を形容する言葉でもありましたが、戦時中銃後(古い!)を守る健気な女性としてこの言葉が多用されたり、なによりも大和撫子的女性が少なくなったためか、最近ではほとんど死語になったようです。
セキチクとの交雑で改良種の伊勢撫子は、花弁の切れがさらに細く長く伸びるのが特徴で愛好されています。差し芽でも種蒔きでも簡単に殖やせるので栽培が容易な山野草といえます。

南の海辺に百重なすハマユウ:浜木綿 

2005-07-19 06:22:47 | 植物観察1日1題
“み熊野の浦の浜木綿百重(ももへ)なす心は思(も)へど直(ただ)に逢わぬかも”ハマユウの白い花を見ればまず人麻呂のこの和歌が浮かびます。
ハマユウ(ヒガンバナ科)は、関東以西の海岸に生える常緑大形の多年草です。7~9月に咲く花は、70cmくらいの花茎の先端に10数個の白色花を散形につけ、花の間に線状の苞があります。花柄は長さ2.5cmくらい、花披片は細長く長さ7~8cm、幅1cmくらいで、雄蕊は6個あり、芳香があります。
この花が白くて木綿〈古語では、ゆう〉のように垂れることからこの名があります。また浜万年青、文殊蘭などの別名もあります。
和歌のとおり南紀海岸のハマユウは有名ですが、南国の海辺を象徴する花として各地の海辺で栽培されて本家争いの様相です。
紀州の山奥生まれの私ですが、小6〈当時国民学校〉のときだったか、習字の手本の“浜木綿香る南の国”を、女学校上がりの代用教員が”ハマモメン香る“と読むので訂正してやりました。いやみな生徒です。
写真は隣家の庭先のものですが、園芸種かもしれません。

その名もずばりトケイソウ 

2005-07-18 06:57:42 | 植物観察1日1題
家の石垣に下がった蔓にトケイソウ:時計草(トケイソウ科)が、一日だけの花をいくつも開いています。
ブラジル原産で、古い本には、享保8年に長崎に入ってきたとあるそうです。
長く延びる蔓性の植物で、花に特徴があり、名前を聞けば誰でも納得顔をするほど時計に似ています。
花被片は10枚で白く、5個の萼片と5個の花弁が交互につきます。3つに分かれるこげ茶色のめしべが時計の針のように見え、黄色く大きい5個の雄蕊の葯が花枝の先でひらひら動きます。花被の上にたくさんの糸副伏冠が二重の円を作って並び、その色は基部が暗紅色、中間は白、先は薄紫色ときれいで、時計の目盛りにも見えます。
時計草がどんな風に開花するか観察してみました。花は午前10時ごろいっせいに開きはじめます。蕾が開き始めて、花弁が全開するまで僅か5分位、ついで蕾の中で雌蕊を抱くように直立していた5個の雄蕊が、急にぴょこんと花粉のある面を外側に反らし、水平になります。まるで駅の電気時計が分針を動かすような感じです。この雄蕊の展開を含めて開花の時間は約10分、動きが早やくて面白いので見ていても飽きません。
見れば見るほど変わった形の時計草ですが、形だけではなく咲き方も時を刻んでいるようです。(琉球地方でトケイソウの実としてパッションフルーツの名で売られているそうですが、正しくはよく似た花を持つ同じトケイソウ科のフルーツトケイソウの実です。)