シャク:杓(不揃いな花弁) 2009-04-30 06:55:34 | 植物観察1日1題 シャク:杓(セリ科シャク属)白い花をつけています。 山地の湿ったところに生える高さ80~140cmになる多年草で、茎は上部で枝分かれし、葉は2回3出複葉、小葉はさらに細かく切れ込みます。 5~6月、枝先に白い小さな花が集まった複散形花序をつけます。花弁は5個あり、花序の外側の花は大きく、またか弁5個の外側の1弁がほかより大きいのが特徴です。 コシャクとも呼ばれ、本来はサクとも呼びシシウドをさすそうです。全体にセリ科特有の強い香気があり若葉を食べ、また根はさらして粉にし食用にします。
ミヤマウグイスカグラ:深山鶯神楽(毛深いウグイス) 2009-04-29 08:17:38 | 植物観察1日1題 北信州飯綱町の桃の郷「丹霞郷」の道端で見かけたのが、ミヤマウグイスカグラ:深山鶯神楽(スイカズラ科スイカズラ属)です。 ウグイスカグラは、結構あちこちで見られ、かわいい花と、優雅な名を持つ割には、あまり人には知られていないのは不思議です。 平地に多く見られるウグイスカグラは全体的には無毛、毛が散生するのがヤマウグイスカグラ、この二つは分布域もほとんど同じで、中間型もありあえて区別する必要がないとの見方もあります。 これに対して、ミヤマウグイスカグラは、東北地方、日本海側に多く、山地に生育します。 若い枝、葉柄、葉の両面、花冠や子房、花柄、苞にも腺毛が目立つのが特徴です。 ことに花の基部の腺毛が多く、図鑑の写真と同じなので、ミヤマウグイスカグラと見立てました。
ミズバショウ:水芭蕉(やはり本場もの) 2009-04-28 06:59:38 | 植物観察1日1題 故あって北信州飯綱高原へ行ってきました。 ここには、近くの戸隠の影であまり知られていませんが、見事な水芭蕉園が2ケ所あります。 あまりにも知られすぎたミズバショウ:芭蕉(サトイモ科ミズバショウ属)、いまでは関西でもあちこちの公園や植物園でみられますが人工的な感じは否めません。 飯綱高原のミズバショウは、雨上がりの豊かな水の流れに影を映して、やはり本物のすばらしさを感じさせてくれました。 リュウキンカの黄色と、まだ少し早いニリンソウとの組み合わせもなかなかで、朝早くの園内は人影も少なく、贅沢なひと時を過ごしました。 (この旅の記録は「むかごの高槻」「むかごの高槻」で、28日より連載します)
アオキ:青木(今度は健全な実を) 2009-04-24 20:52:51 | 植物観察1日1題 日本原産のアオキ:青木(ミズキ科アオキ属)は、光沢ある常緑の葉と美しい赤い実で世界中で栽培されています。欧州へは当初、雌株だけが渡ったため結実しないので、プラントハンターのフォーチュン氏がわざわざ雄株を探してイギリス軍艦に乗って来日し、雄株を持ち帰ったのが渡欧約80年後、桜田門外の変の半年後だったという話が残っています。 雄花序は約10cmと大きく花数も多いのですが、雌花序は小さく花数も少なくなっています。雄花も雌花も密を分泌しますが、雌花には雄花のような蛋白質に富んだ花粉がありません。そこで雌花も、黄色い葯こそありませんが、花弁の色と形を雄花に似せて昆虫を呼び寄せ花粉を受けとるのだといいます。 花が咲いている雌株に、小さくて少しいびつな赤緑まだらの果実がついています。 これはアオキミフクレフシという、アオキミタマバエによる果実が変形する虫こぶで、正常果より小さく、虫こぶ化した果実のほうが枝に長く残ることが多いといいます。 (明日から3日ほど休みます)
イチョウ:銀杏(珍しい精子による受精) 2009-04-23 21:10:19 | 植物観察1日1題 イチョウ:銀杏(イチョウ科イチョウ属)の花が咲いています。 生きた化石:古生代にジュラ紀に全盛、属として1.5億年以上生き続けてきたイチョウは、中国原産で、平安末期ごろ日本に渡来し、わが国には自生林はありません。 裸子植物の中でも特異な形態で裸子植物の主流である針葉樹とは葉形や外観は大きく異なります。 種子植物で精子を形成するのは、イチョウとソテツだけで、その精虫による受精を発見したのは、イチョウが平瀬作五郎氏、ソテツが池野成一郎と、ともに日本の研究者であったことは有名な話です。 イチョウは雌雄別株で、4~5月葉の展開と同時に開花します。 雄花も雌花もともに短枝に束生し、雄花は長さ2cmほどの円筒形、雌花は長さ2~3cmで、細長い柄の先に胚珠が2個つき、ふつうは1個だけが成熟します。 風に運ばれてきた花粉が胚珠内に入り、花粉室で発芽して精子ができます。精子は8月下旬ころから放出され、液中を泳いで卵細胞を受精させます。受粉して受精に至るまで非常に長い期間が必要なのです。
コゲラ:小啄木鳥 2009-04-22 20:27:42 | 植物観察1日1題 数日前の京都植物園に、小さい人だかりができていました。 近づいてみると、朽ちた木に穿った穴から、コゲラ:小啄木鳥が顔を出しています。 何人かの目で見つめられて、飛び立つでも、引き込むでもなく、不安そうな顔であたりをうかがっています。 野鳥に詳しい方がいて、こんなに大勢で見つめると、ここが危険な場所と判断して、巣を放棄する可能性があるといいます。 子育てを前にして、心無い人間のせいで、せっかくの巣を捨てさすのは可哀相です。 安らかに子育てに入れることを願って、みんな静かにその場を離れたことでした。 むかごとしては珍しく野鳥の便りとなりました。
ニリンソウ:二輪草(7弁もある) 2009-04-21 17:33:12 | 植物観察1日1題 高槻北部の谷沿いに、ニリンソウ(キンポウゲ科ニリンソウ属)が咲いています。 林縁や林内の湿ったところに群生する高さ15~25cm多年草で、茎葉は3個輪生し、無柄、茎頂に花茎を2~3個立て、先端に直径約2cmの白色花を開きます。 花弁に見えるのは萼片で、図鑑では、ふつう5個、まれには7個とあります。別の図鑑に萼片は5~7個としているのもあり、7弁は必ずしもまれでもないようです。 それでも、5弁の花の中に咲く、一輪だけの7弁のニリンソウは、一目でそれとわかるほど際立っていました。
フデリンドウ:筆竜胆(筆の穂先の) 2009-04-20 18:59:51 | 植物観察1日1題 山道を歩いていて、思いがけない場所に、予期していなかった花を見かけるのは楽しいことです。 高槻北部の山道を歩いていて、落ち葉の間に、そこだけ明るくなっているようにフデリンドウ:筆竜胆(リンドウ科リンドウ属)が咲いているのに出会ったときもそんな気持ちでした。 茎の先につく蕾の形が筆の穂先に似ているのでこの名があるフデリンドウは、山野の日当たりのよいところに生える高さ6~9cmの2年草で、根生葉は短くロゼット状にはなりません。 茎の先に数個集まってつく花は、青紫で、花冠は長さ2~2.5cmの鐘形で、先は5裂し、裂片の間には副片があります。 よく似たのにハルリンドウがありますが、フデリンドウにない大きい根生葉を持つこと、フデリンドウのほうが花冠が少し小さく、とくに副片が小さいことで区別されます。
ランシンボク:爛心木(学問の聖樹) 2009-04-19 19:45:40 | 植物観察1日1題 昨日のテンダイウヤクと同じく、木の姿より名前のほうが知られている木にランシンボク:爛心木(ウルシ科ランシンボク属)があります。中国の孔子廟に植えられたことから学問の聖樹とされています。日本では岡山県の閑谷学校や東京の湯島聖堂に植えられているのが有名で、阪大石橋キャンパスにも、美智子皇后の叔父さんの故正田健次郎元阪大総長が植えられてものがあります。別名のカイノキ(楷樹)は、直角に枝分かれすることや、小葉がきれいにそろっていることから、楷書にちなんでつけられたといい、孔子の木からクシノキ、ほかにトネリバハゼ、ナンバンハゼなどの別名もあるそうです。 中国・台湾・フィリッピン原産の落葉高木で高さ15~25mになり、偶数羽状複葉(まれには奇数羽状複葉)を互生し、枝や葉に独特の香気があります。 雌雄別株で4月ころ葉の展開と同時に小さな花を円錐形につけます。写真は京都植物園での雄木の蕾です。 閑谷学校のカイノキは、秋の紅葉が見事と聞きます。一度は訪れたいと思いつつ、まだ行けていない場所のひとつです。
テンダイウヤク:天台烏薬(誤れる伝説の木) 2009-04-18 20:11:37 | 植物観察1日1題 木そのものより、それにまつわる話のほうがよく知られているのがテンダイウヤク:天台烏薬(クスノキ科クロモジ属)です。 秦の始皇帝が不老不死の薬をもとめ、徐福を東の海に派遣したところ台風に遭遇し、紀洲新宮に流れ着きました。徐福はその後中国に帰ることなく新宮で一生を終わりましたが、彼が不老不死の妙薬テンダイウヤクを日本に伝えたという伝説があります しかし秦の時代は日本では文字も記録もない弥生時代にあたり、徐福が日本に来た確かな証拠はありません。まつわる話だけが一人歩きしている例です。 中国原産で、享保年間(1716~1735)に日本へ伝来し、本州近畿以南九州などに野生化した常緑低木。根が長い塊状をした木質で、これを烏薬といって薬用にします。和名は中国天台山に産する烏薬の意です。単にウヤクとも呼ばれます。 葉はほぼ円形~広い楔形で、革質で光沢があり、3脈が目立ちます。雌雄異株で、早春葉脇に黄色の小さい花が集まってつきます。
ショウジョウバカマ:猩々袴(髪色さまざま) 2009-04-17 20:07:44 | 植物観察1日1題 高槻北部の神社の参道にショウジョウバカマ:猩々袴(ユリ科ショウジョウバカマ属)が咲いています。 茎頂に、短縮した総状に数個の花を横向きにつけます。花色に変化が多いといわれるショウジョウバカマですが、ここでは一ケ所で赤、紫、茶褐色から白っぽいのまでさまざまな色の花が見られます。 開きはじめは雌蕊の柱頭が突き出た雌性期、開花後は雄性期で、雄蕊は6個、花糸は花被片と同長かやや長く、葯の色も花弁と同じように変化があるようです。 猩々は中国の想像上の怪獣で、面貌人に類し、体は犬のごとく、毛は長く朱紅色で、酒を好むとされています。ショウジョウバカマの名の由来は諸説ありますが、牧野のいう、花を猩々の赤い顔、葉の重なりをその袴に見立てたというのが妥当なところでしょう。
カタクリ:片栗(カタクリ今昔) 2009-04-16 06:06:29 | 植物観察1日1題 「もののふの 八十乙女らが 汲みまがふ 寺井の上の 堅香子の花」大伴家持 巻19-4143 天平勝宝2年3月2日、越中守として今の富山県高岡市に赴任した青年家持がこのカタクを詠ったのは、桃の花を歌った(4月9日記事) 日のまさに翌日でした。 この歌には「堅香子の花を攀じ折る歌一首」の左註があります。1300年前は、無頓着によじ折るくらい咲き乱れていたということでしょうが、変わって平成の御世、12日に訪れた洛西小塩山のカタクリは、ネットとパトロールでかろうじて保護されている状態でした。 カタクリのオシベは6本で長短3本ずつ(内側が短い)雌しべに平行についています。 蕾の間はオシベがメシべを囲んでいて、開花と共にメシベが伸び出して柱頭が3裂し、オシベより長くなります。(はめ込み写真は開花直後のもの) 小塩山のボランティアグループは、保護・育成だけではなく、カタクリの受粉や生活史についての調査研究も行っていると聞きました。がんばってほしいものです。
ケヘチマゴケ:毛糸瓜苔?(のっぽの兵隊の行進) 2009-04-15 06:48:03 | 植物観察1日1題 道端の擁壁の上部に赤く長い柄を持つ美しい苔が生えていました。 写真に撮って帰って図鑑であたると、どうやらケヘチマゴケ(カサゴケ科)ではないかと見当をつけました。 ケヘチマゴケは暖地に普通の種で、春に沢山の茎よりずっと長い赤色の柄をつけます。 姿を見ていると、青帽をかぶったのっぽの兵隊の分列行進に見えてきました。
シャクナゲ:石楠花(山であでやか) 2009-04-14 09:24:00 | 植物観察1日1題 春、山に咲く花で、遠くから見ても、そのあでやかさで目立つのはなんといってもシャクナゲ:石楠花(ツツジ科ツツジ属)でしょう。 昨日洛北大原の焼杉山(717m)に自生するシャクナゲにであいました。 本州中部以西、特に関西に広く野生するのが、またの名がホンシャクナゲといわれる種類で、分類上はツクシシャクナゲの近縁の変種とされています。 本州中部以北に多いアズマシャクナゲ:東石楠花は、花冠が5裂するのに対し、ツクシシャクナゲ、ホンシャクナゲは7裂します。 漢名の石楠花は、バラ科のオオカナメモチのなで、誤用とされ、シャウナゲの語源は尺無し木、シャク治る、避難(さけなん)、などの説があるそうですが、いずれもよく分からない説明です。 焼杉山の石楠花は崖の上にあり近づけませんでしたので、植物園の花をはめ込みました。
ヤマモモ:山桃・楊梅(目立たない雌株) 2009-04-13 06:22:03 | 植物観察1日1題 公園にヤマモモ:山桃(ヤマモモ科ヤマモモ属)の花が咲いています。 暖地の常緑樹林内に生える常緑高木ですが、庭木や公園にもよく植えられます。 雌雄別株で、今の時期花をつけますが、最近は実が落ちるのが敬遠されるのか、雌株は少ないようです。その上雌花は小さく目立たないので、花時は花穂が大きくて葯の色が赤い雄株ばかりが目立つ感じになります。 雄花の葯は2室で縦に裂け、雌花の花柱は赤色で深く2裂します。 この雌株の場所を覚えておいて、実が熟したら、果実酒用に採りに行くつもりです。