新・むかごの日記

高槻市に在住の、人間と自然が大好きな昭和1桁生まれの爺さんです。
出かけるときはカメラ連れ。
目標は毎日1記事です。

ヒルムシロ:蛭蓆(敦賀池河内湿原の花々⑤)

2009-05-31 06:54:16 | 植物観察1日1題

池河内湿原を流れる小川にヒルムシロ:蛭蓆(ヒルムシロ科ヒルムシロ属)が花穂を立てています。
池や沼に生えるこの草の葉を蛭が居所にするというところからこの名前があり、ヒルナ、サジナなどの別名があります。
日本各地の池や溝、水田などに浮かぶ多年草で、根茎は泥中をはい、盛んに繁殖して大群になります。水中茎は水の浅いところでは10~20cmで沈水葉は少なく、深いところでは60cmくらい,沈水葉は多くなります。
花は初夏から秋、葉腋からやや長い柄が出て、先端に棒状の花穂がつきます。開花時には穂は水面から出て直立しますが、花が終わると横向きになって水中に入ります。
かつては水田で繁茂し害草として嫌われものでしたが、最近ではめっきり見ることもすくなくなりました。

ドクゼリ:毒芹(敦賀池河内湿原の花々④)

2009-05-30 06:47:25 | 植物観察1日1題

池河内湿原を白く彩る白いレース状の花が穏やかな風景に溶け合っています。でもドクゼリ:毒芹(セリ科ドクゼリ属)の名は、花にも景色にもそぐわない恐ろしげなものです。
湿地や沼、川のほとりなどに生える多年草で、高さは90cmくらいになり、葉や花はセリに似ていますが、全体に大ぶりでオオゼリの別名もあります。
全草、特に筍状の節がある塊茎にシクトキンという猛毒を含んでいるのでこの名があります。
昨年でしたか、セリと間違って食べた人が死亡したとの報道がありました。トリカブト、ドクウツギと並んで3大猛毒といわれるドクゼリですが、トリカブトほど知られてないうえ、セリに似ているところからきた悲劇でしょうが、用心したいものです。

サワオグルマ:沢小車(敦賀池河内湿原の花々③)

2009-05-29 06:21:29 | 植物観察1日1題

池河内湿原を取り巻くように、これも湿地を好むハンノキの林が広がっています。これが周囲の陸とつながって、湿地全体の陸化を進めているので、湿地生態系の保全の面で懸念されていますが、それはそれとして、矮性化した中央部分をふくめて新緑のハンノキ林は実に美しい景観を形づくっています。
そのハンノキ林の樹下をサワオグルマ:沢小車(キク科キオン属)が明るく彩っています。
本州中部以南の山間の湿地や水中に生える多年草で、高さ50~90cmになり、5~6月、茎の頂部散房状に直径3.5~5cmの黄色の頭花をつけます。
和名はオグルマに似て、水辺に生えるからとしごくまっとうです。

カキツバタ:杜若(敦賀池河内湿原の花々②)

2009-05-28 06:16:56 | 植物観察1日1題

面積約110haの池河内湿原の初夏を彩る主役は、自生のカキツバタ:杜若・燕子花(アヤメ科アヤメ属)です。ここのように広範な土地に多数のカキツバタが自生する例は少ないといいます。
密生というほどでもないほどのよさが、かえって趣があって新緑の湿地によく溶け込んでいます。
湿原に自生する多年草で、高さ60~70cm、剣状広線形の葉は、幅約3cm、先端は尖り中央の盛り上がり(中肋)はほとんど目立ちません。
5月、茎の頭に直径10cmくらいの紫青色の花をつけます。ほぼ同時期に咲くアヤメ(花菖蒲)やノハナショウブを原種とするハナショウブとの区別点はいくつかありますが、カキツバタの葉の幅がいちばん広く、花が葉より低い位置にあり、外花被片基部の斑紋が白色、葉の中肋が隆起しない、などで他と区別できます。
この花の紫汁で衣を染めたことからカキツケバナが転じてカキツバタになったといわれ、貌佳花、
貌好花などの優雅な別名があり、古くから詩歌にも詠まれ、能の杜若の原典になった伊勢物語九段の話も有名です。
(05年5月27日記事)

ヤナギトラノオ:柳虎の尾(敦賀池河内湿原の花々①)

2009-05-27 09:47:58 | 植物観察1日1題

敦賀市東部の標高300mの山間にある池河内(いけのこうち)湿原は、北方系、南方系の植物が見られ、県の自然環境保全地域にも指定されている貴重な湿原です。
なかでも珍しいヤナギトラノオ:柳虎の尾(サクラソウ科オカトラノオ属)で、わが国では北海道や本州北部の山地湿原にまれに見るサクラソウ科の多年草、池河内湿原は、わが国の自生地としては南限になっています。
地下茎は地中を長くはい、5月下旬に多数の小さい黄金色の花を密につけます。花冠は深く5裂して、裂片は広線形、花冠から長く突き出したブラシ状の雄蕊が目立ちます。
名前の由来は、葉を柳に、花序の形を虎の尾に見立てたものです。



ギンリョウソウ:銀竜草(どう見ても白い人形)

2009-05-26 05:55:56 | 植物観察1日1題

落ち葉が積んだ木陰に面白い形のものを見つけました。
白く丸い顔にはとんがらした黒い口、耳、それに小さい帽子を被り、両手を広げてまるで白い人形です。
いったいなんだろうと写真を撮って帰り、調べますと何のことはない、顔と見えたのはギンリョウソウ:銀竜草(イチヤクソウ科ギンリョウソウ属)の果実でした。
ギンリョウソウについては06年5月24日に取り上げています。花後果実は液果となり、熟すとつぶれて種子を撒き散らします。
それにしても、このユーモラスな人形の顔を見ていると、偶然とはいえ自然の造形の巧みさに驚くばかりでした。

ヤマイバラ:山薔薇(イバラよりバラ)

2009-05-25 06:55:46 | 植物観察1日1題

高槻北部へ向かう市バスで市街地を通り抜けてしばらくすると、山のあちこちに高木を覆う白い花が見えてきます。ヤマイバラ:山薔薇(バラ科バラ属)です。
本州、四国、九州に生えるつる性の落葉低木となっており、鉤がたの強い棘でよじ登ります。結ここでは結構多く見えていますが、図鑑では“まれ”に生えるとなっています。まれとははえる場所が限定しているということでしょうか。
長さ11~15cmとノイバラの仲間では最大の葉をつけ、5~6月枝先に直径3~5cmの大きい白い花を10~20個集まってつけます。
山薔薇と書いてヤマイバラと読みますが、昨日のナニハイバラと逆に、ノイバラの野趣と薔薇の美しさを併せ持つ野生種です。

ナニワイバラ:難波薔薇・難波茨(素朴な美しさ)

2009-05-24 07:52:00 | 植物観察1日1題

つる性の枝の先に白く大きい一重の花を沢山つけているのはナニワイバラ:難波薔薇・難波茨(バラ科バラ属)です。
中国中南部など亜熱帯原産のバラで、日本には江戸時代に入り、大阪の植木職人がひろめたので難波の名がついたといいます。四国、九州、紀伊半島などでは野生化もしています。
常緑のつる性で、茎は7~8mにもなり細い棘を散生します。
5月、短枝の先に直径5~9cmの大形で一重の白花を1個つけ、芳香を放ちます。
病虫害に強く、挿し木でできるので接木の台木にも使われます。
栽培種でありながら、イバラの読みのように野生味を残しているような美しさがあります。

ナラメリンゴフクレフシ:楢芽林檎膨れ五倍子(よく真似できました)

2009-05-23 07:13:28 | 植物観察1日1題

アレッ、見られない枝にリンゴがなっています。葉をよく見るとどうやら枝はコナラ(ブナ科コナラ属)のようです。
赤いリンゴと見えたのはナラメリンゴフクレフシでした。ナラメリンゴタマバチがコナラの芽に形成する球形の虫こぶ(虫えい)で、表面は平滑、淡緑~黄緑色、赤褐色になる場合もあります。
内壁はスポンジ状で柔らかく、内部には虫室が多数あります。
形といい色といい写真の虫こぶは小さいリンゴそっくりで、ナラメリンゴタマバチとしては相当の自信作とおもいます。

ハイノキ:灰の木(ハイノキの本家)

2009-05-21 19:56:08 | 植物観察1日1題

ハイノキ:灰の木(ハイノキ科ハイノキ属)が白い花をつけています。
この木の灰を染色の媒染剤に用いたのでこの名があり、柔軟で折れにくい枝でイノシシを縛ったとかでイノコシバの別名もあります。
暖地の常緑樹林などに生える常緑小高木~高木で、高さ5~12mになり、先がとがり表面に光沢のある葉を互生します。
花は4~5月、前年枝の葉腋に散房花序をだし、直径約1.2cmほどの白い小花を数個つけ、長い雄蕊がよく目立ちます。
日本では常緑性のハイノキ属は屋久島以北では8種分布するそうです。“むかご”ではそのうちクロバイとクロキを取り上げています。
クロバイ
クロキ

レンゲツツジとジャコウアゲハ(赤と黒の色模様)

2009-05-20 20:51:25 | 植物観察1日1題
(07年6月19日記事

神戸市立森林植物園のレンゲツツジ(ツツジ科ツツジ属)の赤い花の中で、いくつものジャコウアゲハが優雅に舞いながら採蜜していました。透かしの入ったビロード状の光沢の黒い前羽に、後ろ羽の赤黄色の弦月紋が目立ちます。
ジャコウアゲハはツツジに限らずどんな花でも蜜を吸いますが、どうやらここに集まったジャコウアゲハたちのお目当ては、食草とする六甲地域特産のアリマウマノスズクサ(07年6月19日記事)のようです。
探してみると、植物園の一角で、そのアリマウマノスズクサが蔓を伸ばし、すでに小さい蕾をつけていました。ツツジの蜜をたっぷり吸った蝶は、アリマウマノスズクサに飛んでいって卵を産み付ける算段です。

タガネソウ:鏨草(軟らかそうでも鏨)

2009-05-19 20:28:28 | 植物観察1日1題

昨日のナベワリもそうでしたが、この幅広の葉を持つタガネソウ:鏨草を見たときも、一見ユリ科かなと思いましたが、カヤツリグサ科スゲ属でした。葉の形を鍛冶屋などが金属を切断したり削ったりするのに使うたがね(鏨)に見立ててこの名があるそうですが、たがねのような硬い感じはありません。
山地に生える多年草で、長い地下茎を出して繁殖し、茎の高さ20~30cm、葉は5~6枚束生半開し、長さ12~30cm、幅1.5cm~3cmとなります。
花は初夏、花穂の長さ1~2.5cm、柄があり直立する花茎は根生葉と離れてつきます。

ナベワリ(猛毒注意・舐めたら舌が割れる)

2009-05-18 21:00:46 | 植物観察1日1題

聞いただけではわからないこの変な名前の由来が、葉が有毒で舐めたら舌が破裂するという“舐め割れ”からの転訛と聞いて納得のナベワリ(ビャクブ科ナベワリ属)は、一見ユリ科に見えますが、ビャクブ科というめずらしいに属します。
林内の暗く湿ったところに生える多年草で、高さ30~50cm、頂き近くに5~9個の縦脈のある3~4枚の葉を互生します。春、葉腋から細い花茎を垂らし、黄緑色の小さい花を下向きにつけます。花被片は4個で2列に並び、1片だけが特に大形で、赤黄色の葯をもつ雄蕊4個が見えています。
一度聞いたら忘れられない草になりそうです。

ヤマブキソウ:山吹草(色も形も似る)

2009-05-17 21:47:28 | 植物観察1日1題

今の時期、山を歩いていて木陰で黄色い花をつけているのがヤマブキソウ:山吹草(ケシ科クサノオウ属)です。
今、金剛山の頂上近くで咲いている山吹草の見事な群落は、そこだけ明るくなったような感じがします。
山地の樹下に生える多年草で、高さは30~40cmになります。ヤマブキに似た草花ということでこの名がついていますが、クサノオウと同属で、この属は日本特産で、学名もHylomecon japonica
PRANTLの名があります。
柔らかな茎葉をもち、茎葉には黄色の液を含んでいます。4~5月、頂部葉腋の各節に4cmくらいの花柄を持った黄色花が1~2個つきます。花は4個の花弁からなり、花径は3~4cm、雌しべ1個、雄しべは多数です。
本物のヤマブキ(木本)は花は5弁、こちらは草本で花は4弁、基本的な要素が違うことを感じさせないほど、よく似たものどうしです。

クリンソウ:九輪草(危機に立つ大阪府民の花)

2009-05-16 21:38:16 | 植物観察1日1題

金剛山の山あいにクリンソウ:九輪草(サクラソウ科サクラソウ属)が咲いています。
山地の湿り気の多いところに生える多年草で、葉は大形で根際に固まってつき、花は5~6月高さ40~80cmの花茎に直径2cmほどの紅紫色の花を2~7段ほども輪状につけ、下から順々に咲きあがります。この様子が寺の塔の上につく九輪に似ていることからこの名があり、九段草、七階草などの名もあります。
ところで、この花が昭和36年に大阪府の草花に指定されていることは、ほとんどの府民に知られていません。
府花に選ばれたのは、金剛山麓にサクラソウの原生種「クリンソウ」が自生していることが理由になっています。その金剛山のクリンソウは、かつては群落をなし一面に咲いていたそうでが、今ではオタカラコウなどほかの植物にかこまれて、写真のようにひっそりと咲いています。
おりしも新聞で篠山市で4千平方米に約17万株の大規模な自生地が見つかったと報じられました。
これに引き換え、大阪府民の花クリンソウは放置すれば絶滅の惧れもなくはありません。
なんとかして環境保全にも熱心な橋下知事に府民の花クリンソウの保護を訴えたいのですが。
(先年訪れた洛北愛宕山の見事なクリンソウをご覧ください。