新・むかごの日記

高槻市に在住の、人間と自然が大好きな昭和1桁生まれの爺さんです。
出かけるときはカメラ連れ。
目標は毎日1記事です。

ヌルデ:白膠木(大きい紅葉)

2006-11-30 07:12:00 | 植物観察1日1題

家の前の土手にヌルデ:白膠木(ウルシ科ウルシ属)の幼木が真っ赤に紅葉しています。
山野に生える落葉小高木で、高さ約5m、葉は奇数羽状複葉で互生し、葉軸に翼があるのが特徴です。小葉は4~6対あり、長さ5~12cmの長楕円形で、裏面には軟毛が密生します。
白粉をかぶる核果は舐めると酸塩味があります。またヌルデシロアブラムシが寄生してできる虫こぶの五倍子(フシ)はタンニンの含有率が高く薬用や染料に用いられ、かつては鉄漿にも使われました。
幹を傷つけて出る白色の樹液を器具に塗ったことからヌルデの名がついたとされ、吸水しにくい材は器具や護摩木に、樹皮は染料に、果実は蝋の原料に、昔は結構有用な木だったようですが、いまでは顧みられることもなく、真っ赤な紅葉が秋の山を彩るだけの存在となっています。


ツタウルシ:蔦漆(ウルシより強力)

2006-11-29 06:57:23 | 植物観察1日1題
芦生の森トロッコ道の岩肌にはりついたツタウルシ:蔦漆(ウルシ科ウルシ属)が紅葉していました。
各地の山林中に生える落葉小つる木本で、茎から気根を出してほかの木や岩にはい上がります。雌雄異株で初夏葉脇から総状花序をのばし、黄緑色の小花をつけます。
互生する葉はウルシ属としては珍しい3出複葉で、小葉は卵形または楕円形、幼木と成木では葉の形と大きさが異なり幼木では粗い鋸歯が出てツタに似ます。
ツタに似たウルシということでツタウルシの名があるとおり、葉にはラッコールという漆成分を含み触れるとウルシよりもひどくかぶれるといいますからご用心です。


オヤマボクチ:雄山火口(冬が来る前に)

2006-11-28 08:22:06 | 植物観察1日1題

1週間ほど前、雨の中、芦生(旧美山町)を訪れました。主たるお目当ては芦生の森というよりはむしろ手前の唐戸渓谷一帯の黄葉でしたが予想にたがわず見事なものでした。せっかくですからトロッコ道を散歩しましたが、冬も近い道端は霜枯れてみるべき花も乏しい中に、オヤマボクチ:雄山火口(キク科ヤマボクチ属)が、雨に打たれながら遅い花を咲かせています。
和名は、葉の裏面に密生している綿毛をかき集めて火口(ほくち)に利用したこと、また全体にいかつい感じがすることから雄の字をつけたものといわれます。
山地の日当たりのよい草原に生える多年草で、高さは1~1.5m、9~10月枝先に直径4~5cmの頭花を下向きにつけます。
よく見ると、ハナバチ(?)が、一心不乱に採蜜しています。写真を撮ろうと近づきましたが、これがこの秋最後の仕事と思ってか、いつまでも離れようとしませんでした。


ヤブムラサキ:藪紫(本家に負けない)

2006-11-27 07:32:33 | 植物観察1日1題

初夏、本家筋のムラサキシキブよりも鮮やかな紅赤色の花をつけていたヤブムラサキ:藪紫(クマツヅラ科ムラサキシキブ属)が(05.6.8記事)、実をつけています。
特徴であるビロードの手触りの葉が薄く黄葉して、紫色の実と似合っています。
ヤブムラサキは山地に生える落葉低木で、全体に灰白色の星状毛が多いのが特徴で、葉を触るだけでムラサキキブと区別するのは容易です。
果実の下部に宿存する萼片にも毛が密生しています。
藪に生えるムラサキシキブという意味でしょうが、藪の中よりは普通の林の中に生える落葉低木です。秋に紫色の実をつける紫式部の仲間となっていますが、花自体も秋の実に負けない綺麗な紫色です。

ホウキギ:箒木(畑のキャビア)

2006-11-26 07:23:35 | 植物観察1日1題

まだピーピーの独身時代のことです。飲み屋でキャビアはいかがですかいうので頼んで出てきたのが黒い小さな粒々でプチプチした歯ざわりの得体の知れないものでした。本物のキャビアを食べたことがなかった私の怪訝な顔をみて、亭主はいたずらっぽく種明かしをしてくれました。それが“畑のキャビア”といわれるホウキギ:箒木(アカザ科ホウキギ属)の種子だったのです。
そのホウキギが家の前の花壇で美しく紅葉しています。
ユーラシア大陸原産の一年草で、日本には古い時代に中国から入ってきたもので、茎を乾燥させて箒を作るのでこの名があるとされ、ホウキグサとも呼ばれています。
なるほど根元から多数枝分かれし、斜め上に伸びて楕円形の株を作るので、そのまま箒の形になりますが、実際に箒に作って見ますと、使うほどに葉や、種や、小枝が落ちて掃除をしているか散らかしているかわからないほどです。この名はこれで箒を作るというよりも、単に箒の形をしているところから来ているのではというのが実感です。
箒つくりは諦めましたが、毎年こぼれ種から発芽し、世話要らずで緑の新芽から紅葉まで長い期間花壇を彩るお徳用な草です。
畑のキャビアこと“とんぶり”は、秋田県特産のホウキギの実です。調理法がネットで見つかりました。収穫後乾燥した実をいったん煮て、一日ぐらい水に浸して手で揉み、これを2~3回繰り返して外皮を取り除きます。納豆やおろしたヤマノイモに混ぜるとプチプチした食感が楽しめるとあります。我が家のホウキギは今年も大きく育ちました。種も沢山ついているはずです。今度は“とんぶり”つくりに挑戦してみましょう。

カエデ:楓(幼木も紅葉)

2006-11-25 07:20:34 | 植物観察1日1題

湖北小谷城址を訪れました。愛妻お市の方を城から退かせ、敗将浅井長政が自刃した城址は、430年前の昔そのままに肥沃な湖北の平野を見下ろして、いま見事な紅葉に彩られています。
本丸跡まで昇る道端でちょっと変わったカエデの紅葉を見ました。この写真、よく見れば地面に散り敷いた落ち葉でもなく、さりとて紅葉を沢山つけた梢でもありません。そうです、これは地面にびっしりはえたカエデの幼木、多分1年生が紅葉しているのです。幼木ですからどの葉も小さくて縦長で、ちゃんとしたモミジの形になっていません。
これほどでびっしりではなくても、たいていの木は大量の芽生えを生じますが、成木に育つのはごく少数です。
懸命に芽を出し、幼いながらも紅葉している彼らに声援を送りたい気持ちですが、この幼木たち、来年にはどれくらい生き延びているのでしょうか、現実はかなり厳しいはずです。

ゲンノショウコ:現の証拠(後光射す神輿草)

2006-11-24 07:09:58 | 植物観察1日1題

ゲンノショウコ:現の証拠(後光射す神輿草)2006.11.24
煎じて飲めばたちどころに腹痛が治る民間薬として知られているその名もゲンノショウコ:現の証拠(フウロソウ科フウロソウ属)は山野普通に生える多年草です。初秋の頃まで白や赤の五弁の小さい花をつけていたのが、(5.10.18記事)いま黒い果実(さく果)になっています。
果実は直立し、熟すと壁が縦に5裂して、裂片は種子を巻き上げてこれを飛ばします。そのときの花柱の形がお神輿の屋根に似ているというので、ミコシグサ(神輿草)の別名があります。
滋賀県旧浅井町(現長浜市)野瀬地区で見たミコシグサの果実、裂開前と裂開後の果実が並んでいました。いまどき珍しい麦畑を背景に、後光のような夕日を受けて浮かび上がった姿は、これぞ神輿草といった風情でした。

ハゼノキ:黄櫨(今は蝋より紅葉)

2006-11-23 07:12:40 | 植物観察1日1題

11月18日は万博公園の無料開放日で賑わっていました。自然学習の森の一角でもなにやらざわめいています。21日夕のNHKかんさいニュースでも取り上げられましたが、公園内の間伐材や倒木などを利用して湯を沸かしたり発電をするいわゆるバイオマス事業の実験として無料の足湯場を作ったのです。
通りかかった私ですが、例によって足湯場よりもその周囲に見事に色づいているハゼノキ:黄櫨(ウルシ科ウルシ属)のほうが気になりました。
山野に生える落葉高木で高さは約10m奇数羽状複葉の葉は互生します。果実から木蝋をとるために古くから栽培されてきましたが、今では、紅葉が美しいので庭や公園などにもよく植栽されます。
雌雄別株で、5~6月黄緑色の小さな花を円錐状に多数つけ、扁球形で少し扁平の核果は直径9~13mmで9~10月に淡黄色に熟します。表面には光沢があり、のちに外果皮が剥がれて白い蝋質の中果皮が露出します。
ハゼノキは、別名でリュウキュウハゼまたはたんにハゼと呼ばれますが、本来栽培されていたのが野生化したものともいわれ、近縁種のヤマハゼのほうが元祖で昔からのハゼだといいます。ヤマハゼの葉には毛があり、ハゼノキは無毛というのが最もわかりやすい両者の区別点です。




カンレンボク:旱蓮木(がんに効く果実)

2006-11-22 07:03:37 | 植物観察1日1題

カンレンボク:旱蓮木(がんに効く果実)2006.11.22
朽木の森で有名なのがハンカチノキで、私はまだですが、花時には大阪からも見に行く人が多いと聞きます。
その木の近くに、ハンカチノキと同科同属の、これも珍しいカンレンボク:旱蓮木(オオギリ科ニッサ属(ヌマミズキ属とも))が変わった形の実をつけています。別名にキジュ(喜樹)があります。
中国雲南省原産の落葉高木で、高さ20~25mになります。互生する葉は長さ12~28cm、幅6~12cm楕円状卵形で、縁は全縁でやや波打ちます。
面白いのは10~11月に淡黄褐色に熟す実で、長さ2~2.5cmのバナナ型の果実が球状に集まります。
果実や根にカンプトテシンというアルカロイドを含み、制がん効果があり、イリノテカンという抗がん剤は、このカンプトテシンの誘導体です。ただし、素人がこの実や根を直接食べたりすると危険だそうですのでご用心です。

ナツハゼ:夏櫨(和製ブラックベリー)

2006-11-21 07:20:15 | 植物観察1日1題

ナツハゼ:夏櫨(和製ブラックベリー)2006.11.21
山道で黒褐色の丸い小粒の実を目ざとく見つけた人が、日本のブラックベリーなどと言いながら口にしています。
初夏の頃、枝先に約5mmの鐘型の花を総状につけていたナツハゼ:夏櫨(ツツジ科スノキ属)(05.6.2記事)の実が熟しているのです。
新芽が秋の櫨の紅葉に似ているとてナツハゼの名がついていますが、秋も真っ赤に紅葉してきれいです。
果実は球形で直径5~8mmほど、黒く熟して食べられます。少しざらつく舌ざわりでますが甘酸っぱく、ブラックベリーかどうかは別にして、この種の木の実としてはまずまずのほうです。


キミズミ:黄実酢実(小さいリンゴ)

2006-11-20 07:07:32 | 植物観察1日1題

キミズミ:黄実酢実(小さいリンゴ)2006.11.20
朽木の森で見つけた黄色い光る実、同定の鍵にもなる葉があらかた散ってしまっていたので不確かですが、実の様子からズミ:酢実(バラ科リンゴ属)のうち、実が黄色く熟すキミズミ:黄実酢実と見立てました。
ズミは桷とも書き、樹皮から黄色の染料をとったため「染み」が語源になったとか、果実が酸っぱいからともいわれ、またコリンゴ、ミツバカイドウ、コナシ、などの別名もあります。
高さ5mほどの落葉低木で高原や湿原などに多くしばしば群生し、上高地の小梨平のは有名です
枝は時に棘状になり、葉は枝先では全縁、幹では切れ込みが出るなど変化があります。
リンゴの台木として利用されるほか庭木や生垣にも使われます。
秋に赤くあるいは黄色く熟す果実は葉が落ちたあとも木に残りよく目立ちます。わずかに残っているこの小さな実をじっと見ているとなにやらユーモラスな顔に見えてきました。

ガマズミ:莢迷(赤色が美しい実)

2006-11-19 07:36:37 | 植物観察1日1題

すべての木が豊作だった去年に比べ、今年はどの木も実が少なく、熊が人里近くに出没するのもわかる気がします。
野山に普通に見られるガマズミ:莢迷(スイカズラ科ガマズミ属)もご多分にもれず不作のようで、去年ガマズミ酒用にと採集した同じ場所に行ってもぱらぱらという感じでがっかりでした。
そのガマズミが滋賀県朽木の森では、枝もたわわにといった感じで真っ赤な実を見事につけています。(実に気をとられて葉の形や照りぐあいなどの確認がおろそかになりましたが、少し高いところに見られるミヤマガマズミかもしれません)
高さ2~4mになる落葉低木で、5~6月白い小さな花が多数集まって咲きます。果実は長さ6mmほどの卵形で、9~10月に赤くなり、はじめは酸っぱいですがやがて完熟すると甘味が加わり野鳥も好んで食べます。子供のときおやつ代わりにこの実を食べた記憶のある人も多いと思います。
ガマズミのズミは染の転訛で、昔赤い果汁で衣類をすり染めしたからといいますし、なじみの多い木だけにヨツズミ、ヨソゾメなど地方名も多いようです。
去年漬け込んだガマズミ酒のことを思い出して床下から取り出し味わってみました。実にきれいな紅色で、ほとんど酸味も失せ、なかなかのものとなっていました。

コブナグサ:小鮒草(黄八丈の染料に)

2006-11-18 07:13:45 | 植物観察1日1題

葉に形を小鮒に見立ててこの名があるというコブナグサ:小鮒草(イネ科コブナグサ属)は、班別が難しいイネ科の中でも葉を1枚見るだけでわかるといわれています。
湿った草地、田の畦、道端などに生える1年草で、高さは20~50cmで、葉の長さ2~6cm、幅1~2.5cmの狭い卵形です。花期は9~11月、茎の先に長さ3~5cmの細い穂を放射状に3~10個つけます。
この目立たない草が八丈島ではカリヤス(刈安または八丈刈安)といわれて、特産の黄八丈の染料に使われるといいますから意外です。黄八丈は室町時代から続く八丈島の伝統的な絹織物で、国の伝統工芸品に指定されています。この織物の主体をなす黄色の織糸はこのコブナグサの草木染めにより作られています。黄色以外の樺色、黒色もそれぞれタブノキ、スダジイの木皮が使われています。
コブナグサは葉の形と黄八丈の話で覚えやすい草と思ったのですが、イネ科ススキ属で本名?がカリヤスというのもあり、これも昔から有名な黄色の染料といますから結構混乱します。

ユルギカブ:万木蕪(カバタに並ぶ特産の赤蕪)

2006-11-14 21:48:16 | 植物観察1日1題
少し前にNHKの衛星放送やハイビジョンで放送され大きな反響を呼んだ番組、ネイチャー映像で有名なサー・ディビッド・アッテンボローのSatoyamaⅡ「命めぐる水辺」をご覧になった方も多いと思います。
これが放映されて一躍有名になったのが舞台となった滋賀県高島市の針江生水(しょうず)地区で、豊かで清らかな湧き水を家の中に取り込んだ「カバタ」と呼ばれる独特の仕組みが今も残り、人々は湧き水を日々の生活に利用しています。

13日、地元のボランチアーの方の案内でこの地区を見学してきました。人々が、実生活の中で自然の湧き水と緻密な関係を保ち、その中で巧まずして自然の生態系を乱さないように「循環と共生」を実践してきている姿を見て深い感銘を受けました。
植物観察の対象としては、水路に今なお花をつけているバイカモくらいしかありませんでしたが,せっかく興味深かった「カバタ」をぜひご紹介したいと思い、そこで洗って並べられていた当地名産のユルギカブ:万木蕪(アブラナ科アブラナ属)を取り上げました。

高島地区は距離が近いところから昔から京都への供給地として野菜の生産が盛んですが、なかでもこの“ゆるぎかぶ”は万木蕪と書き 、外が鮮やかな赤色で中身は白く、煮物や漬物などに人気の野菜になっています。珍しい読みの“万木”は近くの地名から来ているとのことです。
伝統が実生活の中に生き続けている生水地区のカバタ見学、対象のほとんどすべてが生身の人々が実際に生活に利用しているというユニークなツアーです。
TV番組で大事な役割を務めた漁師の田中三五郎爺さん、放送でも名演技?だったのですが本物も実にいい顔をしていました。

(留守をしますので16、17日は休載します)

ヒキオコシ:引き起こし(起死回生の妙薬)

2006-11-14 07:05:10 | 植物観察1日1題

ヒキオコシ:引起こし(起死回生の妙薬)2006.11.13
山道に円錐状に伸びた枝先や葉の付け根に淡い青紫色の唇形花を沢山つけているのはヒキオコシ:引起こし(シソ科ヤマハッカ属)です。
葉や茎に非常に強い苦味成分を含み、古くから苦味健胃剤として知られています。
日当たりのよい山地に生える多年草で、茎は四角、高さ50~100cm、下婿の短毛が密生します。
ヒキオコシの名は、弘法大師が倒れている修験者にこの草の搾り汁を飲ませたところ忽ち元気になり立ち上げらせることができたという伝説からきているといいます。別名もエンメイソウ(延命草)で、薬効のほども知れるというものです。
仲間に、花が黒色のクロバナヒキオコシ(05.10.27記事)もあります。