新・むかごの日記

高槻市に在住の、人間と自然が大好きな昭和1桁生まれの爺さんです。
出かけるときはカメラ連れ。
目標は毎日1記事です。

トチバニンジン:栃葉ニンジン(戸隠高原の植物 8)7月31日

2012-07-31 20:54:47 | 植物観察1日1題

戸隠森林植物園の木道から見下ろす位置にトチバニンジン:栃葉ニンジン(ウコギ科トチバニンジン属)が花をつけているのが見えました。
名のとおり葉の形がトチノキの葉に似ているので、地味な花の割にはよく目立っていました。
日本と特産で各地の樹陰地に生える多年草で、高さは60㎝内外、根茎は長く地中に這い節があるので竹の地下茎に似ているというので竹節人参の別名があります。
花は初夏から、球状の散形花序に淡黄緑色の多数の小花を開きます。
トチバニンジンが人参の代用として医薬に用いられたのは、江戸初期に帰化中国人が鹿児島でこの草を発見し利用法を教えたのが始まりと伝わります。
根茎を掘り取り天日乾燥するか湯通しして乾燥したものが生薬の竹節人参で健胃、解熱、去痰などの薬効があります。

コバノフユイチゴ:小葉の冬苺(戸隠高原の植物 7)

2012-07-30 17:15:55 | 植物観察1日1題

戸隠森林植物園の遊歩道沿いのいたるところに花を咲かせていたのがコバノフユイチゴ:小葉の冬苺(バラ科キイチゴ属)でした。
山地の林内などに生えるつる性の常緑小低木で沿海地では見かけず、観察ポイントとして芦ノ湖、白馬猿倉、四国では石鎚山や横倉山周辺並んで中部地方では戸隠山山麓と出ていて、戸隠でやたらと目についたことに納得しました。
茎や枝に白色の毛と上向きの刺があり、互生する円形の葉の縁には鈍鋸歯があります。
花は5~7月、枝先に直径2cmほどの白色の花を1個つけます。萼片は狭卵形で、外面に棘状の毛がありふちは櫛状に浅く切れ込みます。
果実は集合果で、8~9月に赤く熟し食べられます。
花も実も冬に関係ないのにフユイチゴの名がついているのは不思議です。別名のマルバフユイチゴの方がすんなりと入ってきます。

ショウキラン:鍾馗蘭(戸隠高原の植物 6)

2012-07-29 20:35:41 | 植物観察1日1題

戸隠神社奥社への参道にショウキラン:鍾馗蘭(ラン科シュキラン属)が咲いていました。
深山の林内などに生える葉緑素を持たない腐生植物で、茎は直立し高さ10~30cm、乳白色でやや淡紅色を帯びます。葉は退化して鱗片状になり、茎頂に数個の直径約3cmの淡紅色の花をつけます。
和名は上と左右に開いた花弁が魔よけの神様、鍾馗さんの帽子にしているところからきています。
その鍾馗さんとは、唐の玄宗の夢に出て、魔を祓い病を治したという故事から、疫気を退け魔を除くという神様となっています。巨眼、多髯、里冠をつけ、長靴を履き、右手に剣を執り、小鬼をつかむその姿は、5月人形にも取り入れられ、京町家の屋根に飾られたりしておなじみです。
ところも戸隠奥社への参道わきで出会ったこの珍しいショウキランは、鍾馗さんの魔よけ伝説もあって、今回の旅の中でも強い印象を残して忘れられない花となりました。

ヒロハツリバナ:広葉吊花(戸隠高原の植物 5)

2012-07-28 13:41:23 | 植物観察1日1題

日本海要素といわれる矮性化した常緑樹の例として昨日ヒメアオキをとり上げましたが、逆に落葉植物の葉の大型化・広葉化も日本海要素とされています。戸隠森林植物園で見たヒロハツリバナ:広葉吊花(ニシキギ科ニシキギ属)もそのひとつです。
日本海側気候では、雪解け水で土壌水分が多く光合成に必要な水分が豊富なため葉が大型化したものとされています。
ヒロハツリバナは、やや標高の高い山地の樹林内に生える高さが3~6mになる小高木で、対生する葉は長さ3~12cm、幅2~7cmの倒卵状楕円形ふちに細かくて鈍い鋸歯があります。
6~7月、葉脇から集散花序を下垂、黄緑色の小花を3~20個つけます。果実は果で、9~10月に紅色に熟し橙赤色の仮種皮に包まれた種子を出します。
同じ例として見られるものに、オオバクロモジ(10年11月27日記事)、スミレサイシン(08年4月15日記事)、マルバマンサク、などがあります。


ヒメアオキ:姫青木(戸隠高原の植物 4)

2012-07-27 07:05:21 | 植物観察1日1題

戸隠森林植物園のところどころで、ひざ丈に満たない低いアオキが立派に赤い実をつけているのを見かけました。
ヒメアオキ:姫青木(ミズキ科アオキ属)です。アオキの日本海側多雪地帯型の変種で、北海道、本州の日本海側の多雪地帯に分布し、山地の林内、林縁のやや日陰になる場所に自生します。
多雪に耐えるように、茎や枝がしなやかで、ほふく型化し、雪の圧力に適応した常緑樹の一つで、日本海要素といわれる日本海側に特有な植物群のなかの一つです。
この仲間ではユキツバキが知られていますが“むかご”でも同様のエゾユズリハハイイヌガヤなどをとり上げています。
ヒメアオキは、アオキよりひとまわり小さく、高さは1mほど、幹は直立せず積雪にまかせるように横這いし、葉がつく部分で斜めに立ち上がります。
葉の形は長楕円形で葉の縁には粗い鋸歯があります。花期は3~5月で、小さい褐色の花をつけ、果実は卵形の液果で種子を1個含み、秋頃から赤く熟し、翌年の開花の頃までついています。

カンボク:肝木(戸隠高原の植物 3)

2012-07-25 06:02:06 | 植物観察1日1題

戸隠森林植物園の遊歩道で、上向きに白い花をつけた木を見かけました。
この辺に多いオオカメノキか何かと思いましたが少し様子が違います。何よりも三つに切れ込んでいる葉が気になります。
どうやら北海道、本州では中部地方以北の内陸部や日本海側の湿潤なところに多く、関東地方以西には分布しないというカンボク:肝木(スイカズラ科ガマズミ属)のようです。
高さは2~7mの落葉低木~小高木で、葉は対生し、長さ5~12㎝で、中ほどまで3つに切れ込み、中央の裂片が長く、ふちには粗い鋸歯があります。
5~7月、直径10㎝ほどの花穂の中心部に小さな両性花が多数集まり、そのまわりを白い装飾花が取り巻きます。装飾花は直径2㎝ほど、果実は9~10月に赤く熟します。
和名は肝木と慣用されていますが、意味は不明だそうです。

ハクサンタイゲキ:白山大戟(戸隠高原の花 2)

2012-07-24 06:56:14 | 植物観察1日1題



戸隠高原のあちこちに見られたのがハクサンタイゲキ:白山大戟(トウダイグサ科トウダイグサ属)です。白山・戸隠山など本州の山地に生える多年草で、茎は直立し、高さ40~80cmなります。
薄質の葉は互生し、茎の先端で輪生します。総苞は側枝の先に輪生し花序を包みます。花は総苞が合着して杯状になり、その中に多数の雄花と1個の雌花があります。
和名の白山大戟は産地を表しているそうですが、戸隠高原でもたくさん見られました。学名はEuphorbia togakusencis Hayataで、小種名に産地として戸隠山が入っているのも肯けます。学名と和名で産地を示す言葉が違うのも面白いところです。

クリンユキフデ:九輪雪筆(戸隠高原の植物 1)

2012-07-23 06:04:56 | 植物観察1日1題


7月5日戸隠高原を歩きました。前日の栂池自然園が2000m近いであったのに対して、戸隠は1000m程度と低く、一日でずいぶん季節が進んだような感じになりました。
道端にクリンユキフデ:九輪雪筆(タデ科タデ属)が咲いています。
本州、四国などの深山の下に生える多年草で、高さ20~35cmで、分枝せず、茎葉は互生し短柄、上部で無柄となり茎を抱きます。
花は初夏、花穂は葉脇につき、花弁はなく花冠状の白い萼で、萼は深く5裂し長さは2~3㎜です。
葉が層をなすので九輪、白い花穂を雪筆とみてこの和名があるとされています。地味な花のこの草は少々名前負けの感があります。

ヤマガラシ:山辛子(栂池自然園の植物 終)

2012-07-22 11:40:09 | 植物観察1日1題

栂池自然園の雪解け水の流れるあたりヤマガラシ:山辛子(アブラナ科ヤマガラシ属)が黄色い十字花をつけていました。
本州伊吹山以北、北海道の温帯から寒帯に分布し、深山の渓流沿いや湿った礫地にはえる高さ20~60cmの多年草です。葉は羽状に切れ込み、頂裂片は円形~楕円形、茎葉の基部は翼状に広がって茎を抱きます。
花は初夏、茎の先に黄色い花が10~20個固まってつき、花弁の長さは5~7mm、長角果は長さ2.5~4cmで、やや平たい4稜形となります。
ミヤマガラシの別名のほか、採集地より、伊吹辛、中禅寺菜などの名もあります。
近年、特に本州中部地方以北で黄色い花の群落をよく見かけるのが、ずいぶん奥地まで広がっている外来のハルザキヤマガラシです。さすがに栂池自然園まではまだ広がっていないようです。


7月4日の栂池自然園は雪解けを待ちかねた高山植物たちが私たちを迎えてくれました。
まだまだたくさんの出会いがありましたが、すでに“むかご”で取り上げている植物(下記)などは割愛しました。今回の栂池シリーズはひとまずこれで終わります。

カラマツソウ
ゴゼンタチバナ
コヨウラクツツジ 
シナノキンバイ  
ヅダヤクシュ 
チングルマ  
タケシマラン
オオバタケシマラン 
ツマトリソウ 
テングクワガタ 
ノウゴウイチゴ 
ノビネチドリ 
ハクサンチドリ
ミズバショウ 
ミヤマキンポウゲ 
ムラサキヤシオ 
ヒロハユキザサ 

ミツバオウレン:三葉黄蓮(栂池自然園の植物 14)

2012-07-21 11:38:04 | 植物観察1日1題

ミツバオウレン:三葉黄連(キンポウゲ科オウレン属)は、本州中部地方以北、北海道など温帯から寒帯に分布、亜高山帯の樹林内や高山帯の半日陰に生える多年草で、3個の小葉をもつことからこの名があります。
葉は根生で、厚くて光沢があります。
6~8月、緑色の花茎の先に1花をつけます。5~6枚ある花弁状のものは萼片、黄緑色のスプーン状に見えるのが退化した花弁で、蜜槽になります。
オウレンは黄連で、薬用にされる根茎の漢方名からきています。

ミネカエデ:嶺楓(栂池自然園の植物13)

2012-07-20 06:02:13 | 植物観察1日1題

オガラバナ(昨日記事)の近くに、こちらは花をつけていたのがミネカエデ:嶺楓(カエデ科カエデ属)でした。
本州中部地方以北、北海道の亜高山帯から高山帯下部にはえる落葉低木ないし小高木で高さ10mになります。
葉は長さ幅とも3.5~7cmで、掌状に5~9裂し、裂片の先は尖り、ふちに欠刻と鋸歯があります。
花は夏、1対の葉のある若い枝先に、長さ2~5cmの総状花序にまばらにつきます。
翼果は長さ2.5~3㎝で、ほぼ直角に開きます。
よく似たものにコミネカエデ(別名コバナカエデ)があります。名前はミネカエデより花も実も小さいところからきていますが、中央の3個の裂片が尾状に長く延びることでも区別できます。コミネカエデの翼果は鈍角からほぼ水平に開くのもミネカエデとの区別点です。

コミネカエデの写真は6月中旬滋賀県箱館山山麓でのものです


オガラバナ:麻幹花(栂池自然園の植物12)

2012-07-19 10:03:30 | 植物観察1日1題

一年ほど前、蓼科山の中腹をドライブしているとき、この時季にしては珍しく花をつけた木があるのに気がつきバックしてよく見ると花と思ったのはとオガラバナ:麻幹花(カエデ科カエデ属)の果実でした。(11年8月31日記事)
そのオガラバナが、栂池自然園へのロープウエイの乗継点近くに、まだ蕾でしたが黄緑色の花穂を立てていました。
別名ホザキカエデのこの木は、本州奈良県以北、北海道の亜高山帯に生える落葉低木で、高さは1~3、m、長さ6~13cmの葉は掌状に5~7裂し、裂片に欠刻状の鋸歯があります。
花は夏、若枝の先に総状花序を斜上につけます。
カエデにしては変わった名前のもとになったオガラは麻幹で、アサ(麻)の皮を剥いだ茎で盂蘭盆の飾りや迎え火などに焚くもので、材が柔らかいところが共通しているところからきています。麻が栽培禁止となった今は、オガラも一般的ではなくなりましたが、その特異な花穂、果穂とともに、変わった名前で、覚えやすいカエデの一つといえます。

ミネザクラ:嶺桜(栂池自然園の植物11) 

2012-07-18 07:01:55 | 植物観察1日1題



雪の残る栂池自然園を彩っていたのがミネザクラ:嶺桜(バラ科サクラ属)でした。
本州中部地方以北、北海道の亜高山から高山帯に生える落葉高木で、しばしば低木状となり、高さは1.5m~7mになります。葉柄はなく、無毛、上部に2個の小さい蜜腺があります。
初夏、新葉とともに直径2~3cmの小さな淡紅白色の花をつけます。萼筒や花柄は無毛ですが、変種に葉柄、萼筒、花柄に直立した毛のあるチシマザクラがあります。こちらは根室地方の桜の開花標準木になっていることで知られています。

シラネアオイ:白根葵(栂池自然園の植物 10)

2012-07-17 07:16:45 | 植物観察1日1題

日光白根山に多く産して花がタチアオイに似ているところからこの名があるシラネアオイ:白根葵(キンポウゲ科シラネアオイ属)は、本州中部地方以北、北海道の低山帯から亜高山帯に林内の肥沃な木陰に生える多年草で、地下に横たわる根茎から茎をたて、モミジ葉のような2枚の葉を互生し、高さは約20cm、花後は40cmほどになります。
6月~7月ごろ、通常1個まれに2個、淡菫色の美しい花をつけます。花弁と見えるのは4枚の萼片です。
このシラネアオイ属は全世界に日本のシラネアオイがただ1種あるのみで、このことは全世界に誇るべき高山植物として諸外国にもよく知られています。
この名花も年々数が減っているといわれるのは淋しい限りです。

リュウキンカ:立金花(栂池自然園の植物 9)

2012-07-16 08:41:13 | 植物観察1日1題

栂池のミズバショウ湿原で、一面の白いミズバショウにまじってリュウキンカ:立金花(キンポウゲ科リュウキンカ属)の黄色い花がきれいなコントラストを作っています。
和名は、花茎が立ち金色の花をつけることから来ています。
湿地や水辺などに生える多年草で高さは30~60cm、葉はフキの葉のように丸くて長さ5~10cmで浅い鋸歯があります。
5~7月、茎頂や葉脇に直径約2~2.5cm鮮黄色の花を開きます。花弁に見えるのは萼片で5~6個つきます。
北海道と東北地方北部には生える母種のリュウキンカより姿全体が大きく、花の径と花茎につく花数もリュウキンカの2.5cm、1個に対し、3.5cm、4~8個になります。
エゾノリュウキンカは07年6月1日に取り上げています。