新・むかごの日記

高槻市に在住の、人間と自然が大好きな昭和1桁生まれの爺さんです。
出かけるときはカメラ連れ。
目標は毎日1記事です。

イヌガシ:犬樫(樫には遠いカシ)

2006-02-28 06:50:04 | 植物観察1日1題
お水取りを間近かに控えて、奈良二月堂の石段沿いに、事故防止のためか竹矢来が組まれています。
その脇に、イヌガシ:犬樫(クスノキ科シロダモ属)が、もう蕾をつけていました。
葉がカシに似て本物ではないということからイヌガシの名があるそうですが、カシとは縁遠いクスノキ科で、はっきりした3行脈や、白っぽい葉裏などどう見てもクスノキの仲間のシロダモに近いとしか見えません。
あるいはクスにはイヌグス(タブノキ)という名が先に使われてしまっていたので苦し紛れにカシの名を使ったのかも知れません。
暖地に生える常緑の高木で、雌雄異株。3~4月ごろ、葉の付け根に鮮やかな、暗紅色の花をまとめてつけるので、遠くからでもよく目立ちます。
今にも開きそうな蕾ですが、お水取り見物の雑踏では、目に留める人もいないことでしょう

チチコグサモドキ:父子草擬(父・いつも損な役回り) 

2006-02-27 07:01:20 | 植物観察1日1題
誰が言ったか“父親は永遠に悲壮である”という言葉がありますが、一昨日のハハコグサと昨日のウラジロチチコグサを比べても、同じ仲間にしてこうも感じが違えば、損な名前をつけられても仕方がないかと諦めの気持ちになったりします。
今日のチチコグサモドキ:父子草擬(キク科ハハコグサ属)も、名前に“擬き”という字が入ったりして、いよいよ悲壮感が募ります。
20世紀のはじめに渡来したといわれる帰化植物で、最近では在来種の父子草をしのぐ繁殖振りです。いまはロゼットですが、花期には茶褐色の頭花が茎の上部の葉脇に集まってつき、総苞に毛がたくさんつきます。残念ですがお世辞にも美しい花とはいえません。やはりチチコグサモドキです。

ウラジロチチコグサ:裏白父子草(新参の父)

2006-02-26 07:23:55 | 植物観察1日1題
空き地になった屋敷跡にへばりついたような草が一面に生えています。
ウラジロチチコグサ:裏白父子草(キク科ハハコグサ属)は1970年代にはじめて気づかれたという比較的あたらしい帰化植物で、日当たりのよい道端や空き地、芝地などに急速に増えつつあります。
ロゼット状になった大きい根生葉が目立ち、葉の表面には光沢があり、すこし波打つ葉の縁から葉裏の白さを覗かせています。
5~7月に茎の上部に赤みを帯びた頭花が穂状につきますが、父子草の名前がついているくらいでとても優雅とはいえないものです。

ハハコグサ:母子草(暖かい母の肌触り)

2006-02-25 08:14:06 | 植物観察1日1題
春の七草の“ごぎょう”または“おぎょう”とは、今ではハハコグサ:母子草で知られていますが、
もともとはホウコグサが正しく(牧野図鑑)、茎や葉の白毛や花後の冠毛がほおけ立っていることにちなむとされています。
ハハコグサ(キク科ハハコグサ属)は、東アジアの温帯から熱帯に広く分布し、日本では各地の道端、畑、荒地などに普通に生える越年草です。
一般にはなじみはありませんが、春の七草に数えられているように、若苗は食用になり、昔は草餅にハハコグサを入れていたのが、母子を搗くのは縁起が悪いとしてヨモギに代わったとか。試した人によると香りならヨモギだが、色はハハコグサが勝っていたそうです。
白く柔らかそうな毛に包まれた冬のハハコグサは、見るからにやさしく暖かそうで、お母さんを連想させるいい名です。春から夏にかけて茎の上部に密生してつく黄色い花も柔らかそうです。


ジュズネノキ:数珠根の木(数珠にはならない)2006.2.24

2006-02-24 07:14:05 | 植物観察1日1題
ジュズネノキ:数珠根の木(数珠にはならない)2006.2.24
林の下に鋭い棘を持った小さい木が真っ赤な実をつけています。
ジュズネノキ:数珠根の木(アカネ科アリドオシ属)は、本州関東以西から琉球にかけての暖帯から熱帯に分布する常緑小低木です。アリドオシ (1月8日記事)の仲間で、托葉の脇から2本の鋭い棘針を出します。対生する葉は大・小が交互につくのが特徴です。
縁遠いように見えますが昨日のヤエムグラと同じアカネ科で、晩春に咲く花は白い筒状で花冠は4裂します。
和名は根が数珠状に連なるのでつけられたそうですが、これは数珠にはならないとのことです。

ヤエムグラ:八重葎(秋とは限らない)

2006-02-23 07:04:31 | 植物観察1日1題
“八重むぐら しげれる宿のさみしきに 人こそ見えね 秋は来にけり” ヤエムグラを知らない人はいても、この百人一首の恵慶法師の歌をを知らないという人は少ないと思います。
この歌のおかげでヤエムグラと聞くと、まず秋、それも雑草の生い茂ったあれはてた館の寂しい景色を連想させます。(状況からして、この歌のはヤエムグラではなく、カナムグラだという説があるそうですが)ヤエムグラ:八重葎(アカネ科ヤエムグラ属)は、アジア、ヨーロッパ、アフリカの温・暖帯に広く分布し、日本各地の畑地や家の近くに生える1~2年草です。
何日か前の冷え込んだ朝、遅霜が道端のヤエムグラを白く縁取ってきれいな模様をつくっていました。

イヌビワ:犬枇杷(愛憎ドラマの序章)2006.2.22

2006-02-22 07:03:44 | 植物観察1日1題
道端に葉をすっかり落としているのに、枝先になにやら緑色の小さいイチジクのような実をつけている木があります。イヌビワ:犬枇杷(クワ科イチジク属)です。このイチジク様のものはイヌビワの雄株の花嚢(イチジク類の花)といわれるもので、内部に、のちにイヌビワの受粉の手伝いをさせられるイヌビワコバチの卵が入っているはずです。イヌビワの受粉とイヌビワコバチの生殖成育をめぐる両者の相互依存関係はとても複雑でひとことではいいつくせませんが、要約すれば、イヌビワの雄株の花嚢は自己の生殖の役割を放棄してイヌビワコバチに生殖成長の場としてそれを提供し、引き換えに雌株の花嚢に入り込んだイヌビワコバチを閉じ込めて受粉の手伝いだけをさせるのです。イヌビワの雌木の花嚢に入ったイヌビワコバチは自分の生命を犠牲にしてイヌビワの受粉に協力することになります。
地球上に存在する約700種にのぼるイチジク属の植物のすべてが、それぞれ専属のコバチと1対1の関係を結んでいるとは驚きのほかありません。
枝の先端では、新芽が膨らみかけて、イヌビワとイヌビワコバチの宿命的な愛憎のドラマが今年も始まろうとしています。

ヤマナラシ:山鳴らし(葉摺れさわやか)   

2006-02-21 06:58:24 | 植物観察1日1題
植物観察に関心を持つ前にはまったく気づかなかった木が家のすぐ近くの土手にありました。
ポプラの仲間のヤマナラシ:山鳴らし(ヤナギ科ハコヤナギ属)がそれです。
日本各地の日当たりのよい山地に生える落葉高木で、雌雄異株。早春、葉の出る前に長い紐状の花穂を垂れ下げます。早春の雨に打たれて白い綿状のこの花芽がもうずいぶん膨らんでいます。
ポプラ仲間の常として、葉柄が平たいので風にゆれやすく、葉がぶっつかりあって葉摺れの音がするというのでヤマナラシの名があり、また別名のハコヤナギは材で箱を作るのに用いたところからきたといいます。白っぽい樹幹に黒い算盤珠のような菱形の皮目があるのもよくわかる区別点になります。
こんな特徴のある木なのに、つい最近まで気がつかなかったなんて、無関心とは恐ろしいものです。

クマノミズキ:熊野水木(花は遅いが芽出しは?)

2006-02-20 06:55:15 | 植物観察1日1題
冬芽が続きます。
クマノミズキ:熊野水木(ミズキ科ミズキ属)は、熊野に産する水木ということでしょうが、生育地は熊野に限定されるものではなくどこにでも見られます。よく似たミズキと違って、葉や枝が対生し、花期も1ケ月ほど遅いなどよくわかる区別点があります。
一年枝は帯赤色で平たく、明らかな陵があり下の節に達します。細長く先が尖る冬芽は長さ3~6mmの裸芽で、2枚の葉が向き合います。
見るからに硬そうな冬芽は、1ケ月もミズキに遅れて咲くクマノミズキの花の晩生さを表しているようですが、芽出しの時期はいかがでしょう。

センダン:栴檀(栴檀は冬芽より目を惹く)

2006-02-19 06:41:26 | 植物観察1日1題
昨日のクサギに続いて、今日のセンダン:栴檀(センダン科センダン属)も3回目の登場(12月21日記事) となりました。必ずしも一般によく知られていない木ですが、結構よく見かけるし、話題性もあるということでしょうか。
センダンの枝は太く小さい皮目があり枝先には微細な星状毛があります。
大きい複葉を持つ木の例で大きい葉痕を持ち、形はT字型で、維管束痕は3個です。冬芽はほぼ球形で褐色、灰色~淡褐色の星状毛が密生します。
T字形の葉痕とうまく配置された3個の維管束痕をじっと見ていると何かの動物の顔に見えてきます。観察する人は、羊だ、いや猿だとにぎやかなことですがあなたには何に見えますか。

クサギ:臭木(冬芽も忘れずに)  

2006-02-18 07:28:13 | 植物観察1日1題
どういうわけか半年間で3回もこのブログに登場することになったクサギ:臭木(クマツヅラ科クサギ属) 嫌われそうな名前の割には花も実もきれいですし、(12月4日記事)冬芽もしっかりしていてそれなりの存在感があります。
“樹皮は灰褐色で割れ目形の皮目がある。冬芽は裸芽で紫褐色、葉痕は大きく長円形で突き出し、葉痕の上部は少し切れ込み、小さい側芽を囲む。維管束痕はU字型に並ぶ。”当然ですが現物はあまりに図鑑の説明どおりですので、そのまま引用しました。

ハゼ(ヤマハゼ・ハゼノキ):黄櫨 

2006-02-17 07:05:47 | 植物観察1日1題
秋の山を真っ赤に色づけていたハゼ(ヤマハゼ・ハゼノキ):黄櫨(ウルシ科ウルシ属)も、わずかに黄白色の少し扁平な果実を残こしてすっかり葉を落としています。
ハゼには、古くから実の皮の部分に含まれる木蝋をとるために栽培されてきたハゼノキと、少し小型で山野に生えるヤマハゼがありますが、ヤマハゼの冬芽は裸芽で毛があり先は乱れることが多いのに対して、ハゼノキの頂芽は無毛で鱗芽に覆われているとあるので、写真はハゼノキということになります。写真では少しボケていますが、葉痕は大きく3角~ハート形で、維管束痕は多く葉痕の周りに沿って並びます。

アカメガシワ:赤芽槲(春を指さす)

2006-02-16 07:09:07 | 植物観察1日1題
アカメガシワ:赤芽槲(春を指さす)
暖かそうなフリ-スの手袋をしてどこかを指さしているのはアカメガシワ:赤芽槲(トウダイグサ科アカメガシワ属)の冬芽です。
名のとおりアカメガシワの若葉は真っ赤な色をしています。表層細胞にアントシアンという赤い色素を含むためで、有害な紫外線を吸収して未発達な葉の細胞を守り、また光の吸収が高まるので葉温が上がり成長が促進されるという効果があるといわれています。その冬芽(裸芽)もいまは褐色の星状毛に包まれて寒さをしのいでいます。葉痕は大きくて丸くて維管束痕は多く見えています。
荒地や工場痕地などに真っ先に生えるのでパイオニアツリーといわれており、短期間にすばやく成長するためにか、枝の付き方も斜めに広がって、日光をフルに受けられるような樹形になっています。

チャンチン:香椿(ツバキに似ぬ椿)

2006-02-15 07:07:15 | 植物観察1日1題
家からさほど遠くないところに以前から何の木かなと気になっていた高木があります。
先日詳しい方に見てもらうとチャンチン:香椿(センダン科チャンチン属)とのことでした。
チャンチンは中国名の香椿の音読みで、椿の字は日本ではヤブツバキなどツバキに当てられていますが日本で作られた国字で、中国では“椿”はこのセンダン科の木を指すということです。
チャンチンは中国原産で室町時代に渡来したとされる高さ20mほどの落葉高木です。
葉も花も木肌も日本の椿とはまるで異なります。高木でしたが幸いに根元にひこばえのような若枝が出ていたので撮った冬芽の写真です。

ゴンズイ:権萃(赤の予感)

2006-02-14 07:02:19 | 植物観察1日1題
秋、樹上に真っ赤な果実をびっしりつけていたゴンズイ:権萃(ミツバウツギ科ゴンズイ属)もいまはすっかり葉を落として、わずかに梢の先に冬芽を蓄えています。
11月18日記事(11月18日記事)枝を引き寄せて見ると、枝先に丸く膨れた冬芽が両側に2個並んでいます。冬芽は普通このように2個付きますが1個のこともあるそうです。写真ではよくわかりませんが維管束痕は9個で輪状に並んでいます。冬芽はこの時期からすでに鮮やかな赤みを帯びていて、秋に実る真っ赤な果実を予感させてくれているようです。