新・むかごの日記

高槻市に在住の、人間と自然が大好きな昭和1桁生まれの爺さんです。
出かけるときはカメラ連れ。
目標は毎日1記事です。

初秋の八方尾根 (4)ミヤマママコナ:深山飯子菜 

2005-08-31 06:54:01 | 植物観察1日1題
前日、親海湿原でママコノシリヌグイ(タデ科)の群落を見た後だったので、ミヤマママコナの名を聞いたときは、また継子苛めの話かと一瞬思いましたが違いました。
ミヤマママコナ:深山飯子菜(ゴマノハグサ科)北海道西南部と本州の山地帯~高山帯に生える1年生の半寄生植物で、上部の葉腋に紅紫色の花が一個ずつつきます。
花の基部の苞は葉状で、花冠は長さ1.5cmの筒型で唇状に2裂します。この下唇の喉の部分に黄色の斑点が2個あります。
この斑点を米粒に見立てたのが名前の由来です。由来を聞けばママコはママコでも継子とは大違いのやさしい感じですね。

初秋の八方尾根 (3)コウメバチソウ:小梅鉢草 

2005-08-30 06:53:21 | 植物観察1日1題
八方尾根のリフトで上る時、地上に、真上を向いて咲く純白の小さい花が私たちを迎えてくれます。コウメバチソウ:小梅鉢草(ユキノシタ科)です。
日本全土の山間の日当たりのよい湿地に生える多年草で、低地にもありますが高山に多く生えます。茎高7~30cm、根出葉はハート形で直径1~3cm長い葉柄があります。
8~10月に、花径2~2.5cm、白色で梅の花に似た5弁の花をつけます。雄蕊は5個で、中に仮雄蕊があり多数に分裂し、先端に黄色い腺体を持ちます。
仮雄蕊が7~9裂するものをコウメバチソウ、15~22裂するものをウメバチソウといいますが、その区別は必ずしも簡単ではないようです。
和名は梅鉢の紋に似ているところから出ています。

初秋の八方尾根(2)ミヤマダイモンジソウ:深山大文字草

2005-08-29 06:55:27 | 植物観察1日1題
降り続く八方尾根の岩陰にミヤマダイモンジソウ:深山大文字草(ユキノシタ科)が雨に濡れて咲いています。
高山帯の岩隙や斜面に草地に生える多年草で、花は左右対称ですが、花弁の形は不ぞろいで、上の3個は長さ2~5mmの披針形、下の2個は線形で0.3~1.2cmと長く、全体が“大”の字に見えます。雄蕊は10個で、暗赤紫色の葯を持ちます。
花の形に特徴があるので、名前を忘れていても花の形を見れば思い出せる便利な花です。
園芸種として改良された品種も多く、この時期、園芸の店頭を賑わせています。

初秋の八方尾根(1)タカネマツムシソウ:高嶺松虫草

2005-08-28 06:51:18 | 植物観察1日1題
8月下旬の八方尾根は早くも秋の気配です。1月前にあれほど咲き乱れていた高山植物もぐっと種類が減り、早いものはもう実をつけていました。
その高原の秋の代表的な花はマツムシソウ:松虫草(マツムシソウ科)です。此処に咲くタカネマツムシソウは開花時期が遅く短いため、母種のマツムシソウより丈が低く、大きめの花が咲きます。茎はいくつにも分枝し、葉は羽のように細く切れ込んでいます。直径5cmほどの紫色の花は、キクと同じように小さな花の集合で、外まわりの花弁は特に大きくなっています。キク科ではありませんが、キク科に進化する前の形だと見る説もあるようです。
和名は、本によっては、松虫が鳴くころに咲くからとするのもありますが、別に、巡礼などが使う仏具の“松虫鉦”に花の形が似ているからとの有力な説もあります。

名に似ず美味しい野草、ベニバナボロギク 

2005-08-27 07:10:58 | 植物観察1日1題
少し日陰の道端に、レンガ色がかった紅色の筒状花がうなだれたようについています。
ベニバナボロギク:紅花襤褸菊(キク科)です。ノボロギクやダンドボロギクなど、“襤褸菊”は沢菊の異名で、集まって咲いている花の姿が襤褸布を連想させるからとありますが、キク科には、花後白い綿毛におおわれるものが多いので、これを幌に見立てたという説もあります。
茎は高さ30~70センチで、水気が多く、花序は全体にうなだれ、総苞は円筒形、基部の幅の広いところに短い総苞外片があり、総苞内片は等長で正しく1列に並び、細い管状の筒状花のみよりなります。
下を向いて半開きのような花は、これ以上開くことはありません。
太平洋戦争中、日本の兵士が、これを、南洋春菊、昭和草と呼んで食用にしたそうです。
花が開く前の、ぽきんと折れるような葉茎を採ってお浸しにすると、別名のとおりわずかに春菊の香りがして歯ざわりもよく、なかなかいけます。
よく群生し、茎も葉も大ぶりなので採集も容易です。ぜひ一度お試しください。


別名多い“無名”の花、ハゼラン:爆蘭 

2005-08-26 06:57:25 | 植物観察1日1題
午後3時、家の前の歩道と縁石の間のわずかな隙間から生えたハゼラン:爆蘭(スベリヒユ科)が、ごく小さな桃色の花を開きます。
いつのころから我が家に住み着いたのか、毎年、こぼれ種で、はびこるでもなく、絶えるでもなく、家の周囲や庭のどこかに必ず生えてきます。
熱帯アメリカ原産のこの草は、多肉質で、茎は円柱形、無毛で60cmくらい、倒卵形の葉は互生し、茎の頂に大きな円錐花序をつくり、ごく小さい5弁の淡紅色の花をつけます。
午後3時ごろ気温が下がってくると花を開き、暗くなるとしぼんで直径2~3mmの球形になります。花後は沢山のルビー色の実をつけ、中にごく微細な黒い種を多数含みます。
花が沢山短時間ではじけるように咲くのでハゼラン〈爆蘭〉の名がありますが、午後3時ごろに咲く面白い習性から、三時草、三時花のほか、三時の乙女、三時の貴公子、三時のあなた、午後三時の天使、江戸の花火、花のしずく、コーラルフラワー(珊瑚花)、夜々の星、米花蘭、爆米蘭等々、あまり知られない“無名”の花にしては実に沢山の別名を持つ不思議な草です。

名前で嫌わないで、この美しい花ヘクソカズラ:屁糞葛 

2005-08-25 07:17:55 | 植物観察1日1題
ヘクソカズラ:屁糞葛(アカネ科)は、全草に悪臭があることで、この名とともに、たいていの人が知っている、嫌われ者のつる性の多年草です。
8~9月葉腋から集散花序を出し、まばらに多くの花をつけます。萼は鐘形で小さく5裂、花冠は灰白色の漏斗形で、長さ約1cm、先端は5浅裂し、外面は白色、内面は暗紅色で、腺毛が密生します。
古く万葉集にも“糞葛”のなで詠まれるなど、昔から人々に良く知られた草のようですが、名前だけで敬遠して、この美しい花に目を向けようとする人が少ないのは少し可愛そうです。
でもこの写真で、花の美しさを知った後は、ぜひ別名のサオトメバナ(早乙女花)で呼んでほしいものです。この花の形を5月の風を受けて田んぼに早苗を植える若い乙女にみたてたこの名は、すこしほめすぎの感もありますが、気の毒な本名がついていることへのせめてもの償いなのでしょう。ほかに花の口の赤さから、お灸の火を連想しヤイトバナの名もあります。
(4泊5日で、八方尾根、栂池などを回ってきました。整理が済み次第ご報告いたします)

擽れば身をよじり笑う?サルスベリ:猿滑

2005-08-19 06:42:34 | 植物観察1日1題
擽れば身をよじり笑う?サルスベリ:猿滑
夏の花は、花木でも草花でもなぜか花期が長いものが多いですが、中でも百日紅(サルスベリ)は名のごとく花期の長さでは抜群です。
サルスベリ:猿滑・百日紅(ミソハギ科)は中国原産の落葉高木で、高さ3~7m、猿滑の名の通り幹は平滑で美しく花同様鑑賞の対象になります。
花は枝の先端に大形の円錐花序をつくって咲き、花弁は6枚、ふちが繊細な縮緬上にちじれ、基部は細い柄のような花爪(かそう)となっています。
雄蕊は2形あり、周囲の6本は太く長く突き出て先が捩れ、本来の雄蕊の役割を果たします。内側に2~30ほどもある短く黄色い方は虫を誘引する役割です。
夏を代表する花木としておなじみですが、個々の花をじっくり見ることは少なく、複雑な花の形は、なかなか絵にはしにくいようですが、そこはカメラの有難さで微細な構成を容易に写し撮ってくれます。
別名として、百日紅のほか、猿滑(さるなめり)、猿日紅、千日花、盆花、無皮樹、満堂紅、佛相花などがあります。
また、古い本に、樹幹を撫でさすると、くすぐったげに身震いして、梢の葉や花が笑うかのように動くとあることから、怕痒樹、笑木(わらいのき)、擽木(くすぐりのき)ともいわれます。
(お断り:明日からしばらく留守をしますので、8月26日ごろまで休載します)

天然殺虫剤、ハエドクソウ:蠅毒草

2005-08-18 06:54:42 | 植物観察1日1題
ハエドクソウ:蠅毒草(ハエドクソウ科)は、丘や平地の木陰に生え、すこし短毛のある多年草で、50cmくらいの茎を直立します。
日本中どこにでも見られ、東アジアと北アアメリカ東部にも分布し、珍しいものではありませんが、ただ1種1属であるという点が大いに変わっています。
この変わった名前は、根からとった汁で蠅を殺したことから来ているそうです。
長さ10~20cmの花穂に下から順にまばらに小さい花をつけます。目立たない花ですがよく見ると白地にわずかに紅色を帯びていて、名前に似ずなかなか愛嬌があります。

鷹の名匠弟を切る、オトギリソウ:弟切草 

2005-08-17 06:54:07 | 植物観察1日1題
“花山院の御世、鷹飼いの名人晴頼は、傷ついた鷹を直す薬草を知り、これを秘していた。彼の弟がこのような名薬を独り占めにすべきでないと他に洩らした。晴頼大いに憤りその弟を殺す。それよりこの草を弟切草と呼ぶ。”寺島良安の「和漢三歳図絵」に出る話で、事実かどうかは別にして、古い書物に詳しく名前の由来が出ている珍しい例です。
オトギリソウ:弟切草(オトギリソウ科)は、日本全国の日当たりの良い山野や道端に自生する多年草で、茎高30~60cm、2枚の葉を対生します。夏やや巴形にゆがんだ5弁の黄色い花をつけます。葉の縁、葉面、萼、花弁に黒点が点在し、これが弟を切ったときの血の痕だとされるものです。
茶花としても珍重され、また茎葉は実際に切り傷や腫れ物に薬効があるので、薬師草、青薬、などの別名もあります。

美しい野菜の花、オクラ 

2005-08-16 06:27:50 | 植物観察1日1題
紅蜀葵に対する、黄蜀葵はあまり街では目にしないというのが昨日の記事でした。
しかしいまの時期、畑では黄蜀葵(トロロアオイ)とそっくりの黄色い花をよく見かけます。おなじみの夏野菜、オクラ(アオイ科)の花です。
黄蜀葵に比べ、やや小さい花は、中心部が濃い紫で、花弁は上品な黄色です。花だけでも十分観賞に耐えうる珍しい野菜といえます。
葉の形が、黄蜀葵の5~9裂に対してオクラは3~5裂と異なり、花の大きさの違いと併せて、両者を見分けるのはさほど難しくありません。
オクラは、幕末ごろ日本に入ってきたといわれますが、野菜として人気が出だしたのは比較的最近で1965年ごろです。野菜のオクラは、先の尖った5稜形の果実を青いうちに摘み取ったものです。特有の粘り気は植物繊維のペクチンを含むためで、また各種ビタミン、ミネラル、カルシュウム、カリウム等を豊富に含むので、夏ばてに効く食材として当今人気の野菜です。
特に、ゆでて輪切りにし、カツオ節と醤油、マヨネーズであえたものなどは、簡単に作れてビールのあてにぴったりですね。

真夏の太陽を浴びて緋色の大花、モミジアオイ:紅葉葵 

2005-08-15 07:00:37 | 植物観察1日1題
夏の昼下がり、容赦ない太陽をうけて、モミジアオイ:紅葉葵(アオイ科)の大きい緋色の花びらも、これまた大きい掌状の葉も少しげんなりしているようです。
北アメリカ南部原産の大型多年草で、明治時代後半に日本に渡来したといわれます。英名Scarlet Rose‐Mallow(緋色のバラ葵)の通りよく目立つ一日花です。
根元から数本の太い茎を出し、高さ1.4~2mになります。花は大きく直径15cmくらいあり、濃い緋色です。花の大きさの割には花弁の幅が細く重なることがなく十分に展開するので、ハイビスカス類特有の花柱を突出させています。
モミジアオイの名はたぶん5裂した葉の形から来たものと思われますが、コウショッキ(紅蜀葵)の別名もあります。これに似た種類で中心部が紫で黄色い花弁のトロロアオイ(オウショッキ:黄蜀葵、花オクラ)がありますが、街ではあまり見かけないようです。


混乱するデイゴの名前、サンゴシトウ:珊瑚棘桐 

2005-08-14 06:12:55 | 植物観察1日1題
昨日取り上げたアマリカデイゴの横に、これもよく似たサンゴシトウ:珊瑚棘桐(マメ科デイゴ属)がやや細い花をつけていました。アメリカデイゴと草本性のエリツリナ・ヘルパケアとの交雑種です。アメリカデイゴに似ていますが、耐寒性にやや劣り、小葉はひし形の卵型、花は6~8月新梢の上部に20cmほどの総状花序をつけ、アメリカデイゴより旗弁が狭くて長い蝶形花をつけます。葉の形からヒシバデイゴとも呼ばれます。
本種を一時デイゴと呼んだこともあったそうですが、沖縄の本当のデイゴと混同するというので、少し前からはサンゴシトウ:珊瑚棘桐と呼ぶようになったとあります。
昨日のアメリカデイゴを含め、一般には、デイゴ、海紅豆、ヒシバデイゴなどは混同して呼ばれることが多いようですが、鮮紅色、南国、夏などイメージに共通するものがあり、あまり目くじらを立てるほどのことでもないようです。

お役所公認の間違いアメリカデイゴ:亜米利加梯沽(または梯悟)

2005-08-13 06:49:36 | 植物観察1日1題
高槻市にある京大農学部の温室前に真っ赤な房状の花が夏空に向かって咲いています。
アメリカデイゴ:亜米利加梯沽(マメ科デイゴ属)は、ブラジル原産で江戸時代に日本に入り、関東以西で栽培されている高さ2~4mの落葉低木です。葉は長柄のある3出複葉で互生、卵状楕円形で、棘があります。夏、新梢上部に総状花序をつけ、鮮紅色で旗弁の広い蝶形の花を多数つけます。
鹿児島県は、このアメリカデイゴを「海紅豆」と呼んで県の木に指定していますが、本来海紅豆は中国名で、相思樹、孔雀豆などとも呼ばれるナンバンアカアズキのことですので、
お役所が堂々と間違った名を用いている例となります。
実際に栽培されているのは矮性種のマルバデイゴが多いそうです。
また、THE BOOMの島歌の中の“でいごの花が咲き 風を呼び 嵐が来た・・・”のデイゴは、沖縄の県の花となっています。やはりよく似た真っ赤な蝶形の花を開きますが、こちらは4月ごろ葉が出る前に開花し、沖縄以外ではあまり見ることができません。

禊か溝か、ミソハギ:禊萩

2005-08-12 06:52:12 | 植物観察1日1題
水辺や湿地に咲くミソハギ(ミソハギ科)は、名はハギでも七草の萩とは関係がありません。夏から秋にかけて高さ50~100cmの直立した茎の上部に、小さな集散花序をつけ紅紫の小さい花が3~5個集まって咲き、長さ30~40cm花穂をなします。
小さい花はあまり見栄えがしませんが、長雌ずい花、中雌ずい花、短雌ずい花の三つの形があり、それぞれの長さの雄蕊の花粉を受け止めて、自家受粉を避ける工夫がされており植物学的には興味があるつくりだそうです。ただルーペで見てみましたが定かにはわかりませんでした。
精霊花、水掛花などの別名もあり、花時がお盆のころのため、盆花、仏花として昔からおなじみの花です。子供のころから見慣れたこの花、溝に咲くからミゾハギと思い込み、ずっとそう呼んでいたのに、ごく最近、祭事に使われたから禊萩ということを聞き恥かしい思いをしました。ところがこの記事を書くために調べた本で、初めてミゾハギ(溝萩)からの転訛説もあると知り、自分ひとりの間違いではなく、子供のとき田舎では皆間違いなくミゾハギと呼んでいたのに間違いないと自信を取り戻しています。