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まこの時間

毎日の生活の中の小さな癒しと、笑いを求めて。

父、屋根から落ちる

2009-08-28 | 事件簿
「爺ちゃんが屋根から落ちたんや!!」母からの電話。
「今どこにおるんや?うちにきてほしいんやけど・・」
焦っている様子。
「今、会社の帰りや。すぐ行くけど、どんな様子?」

父は救急車で病院へ運ばれて、母は一度タクシーで家に帰り、入院の支度をしてまた病院へ行くために、電話をかけてきたのだ。
とっさに、首の骨は?頭は?腰ならついに寝たきり・・と、思った。
屋根から落ちたらただごとではすまないでしょう。
ついに来たなと思った。
母は弱々しいふるえ声だ。

実家に着くと、母は「入院の手続きの書類」を書いて欲しいという。
1ヶ月前に同じものを書いている。
「看護婦さんに家族を聞かれたし言うたら、あらぁと言われたわ。」
そりゃあ言うでしょう。おまけに、もう今月で退院できる姑の隣の部屋。

ことの顛末。
小屋の屋根がトタンなので、ちょくちょく父はコールタールを塗って、錆止めをしていた。
しかし、今ではひざが痛くて杖をついて外出している身で、屋根へあがるなど自殺行為だ。
母は、執拗に止めたらしい。
わたしも先日、姑が骨折したことで、くれぐれも怪我はしないようにと言ってはいたが、何かの約束だろうか、強く止めるのも聞かずに屋根へのぼったらしい。
おまけに、
「近いところにいてくれ。もし落ちたら救急車呼んでもらわんといかん。」
と冗談のつもりで言っていた。
高いところでは、気をつけていたらしいが、低いところで気が緩んだのか本人もなぜ落ちたかよくわからないと言う。
とにかく1回転したとのこと。
手に持っていたコールタールを頭から被った。
母は、近づいて「父ちやーん」と、いうと、
「あいたたた・・失敗してしもた・・」と、声を発したので、まず意識があると確認し救急車を呼んだ。
時間は3時頃。
母はあんなに引き止めたのにと思ったし、もっと、引き止めればよかったと後悔したが、後の祭り。
本人はずっと母に「ごめんなさい・・」と、繰り返し謝っていたとのこと。
そして、すごく悔しがっていたとのこと。

幸い、低いところからだったので、背骨にひびが入っただけで、手術の必要もなく安静にして回復を待つしかないらしい。
しかし、歳も歳なので回復は焦らず待たなくてはいけない。

夜に母を連れて行くと、父はマスカラが崩れて流れたような顔と、黒い手に点滴。
看護師さんたちが、よってたかってコールタールを拭いてくれたらしいが、取り切れず、本人は恥ずかしがるし、相変わらず笑わせるわと思った。
開口一番「命があって良かったんね。」
「まだ、逝かれん。○○に祝いをやるまでは」
私の娘の結婚が決まるまでという意味だ。
おまけに、看護師に
「入院はいつまでやろ、一週間くらい?」
答えた看護師さん
「当分、屋根には上れんよ」と、かわしていた。
当分入院ですね。

「明日、寝たきりで風呂へ入れてもらえる・・」と、
嬉しそうだった。
まだ、大丈夫だろう。