(前回からの続き)
韓国の外貨準備に話を戻します。
これまで本稿で書いてきたような外貨建て借金の大きさの割には頼りない通貨防衛力を強化するうえで、昨年の秋、日韓両国の間で交わされた通貨スワップ協定の拡充は韓国にとって有り難かったとみるべきでしょう。
財務省HPの「日韓通貨スワップの総額700億ドルへの拡充について」(2011年10月19日)によれば、日韓両国は同日、金融市場の安定を目的に、日銀と韓国銀行の間で期間1年(今年10月末まで)の300億ドルの通貨スワップを新たに結びました。これらにより、日韓スワップの総額は、それまでの130億ドルから700億ドルに拡大されています。
一応は日韓双方がドルを融通し合える体裁をとってはいますが、言うまでもなくわが国には韓国が持つドルに対するニーズはないため、同協定は実質的には日本の韓国に対するウォン救済策といえるでしょう。
先月の韓国大統領の竹島上陸、さらには天皇陛下に対する戦争責任に関する謝罪要求などを受け、わが国政府内では同協定の期限延長の取り止めが検討されているようです(個人的には同取り止めは当然のことと考えているのですが・・・)。
これに対して韓国では「通貨スワップ拡充は日本が先に提案した(→日本に同拡充の必要はまったくないので「韓国が先に要請した」[日本政府筋]とみるのが自然でしょう)」とか「スワップ枠縮小でウォン安となって損をするのは国際市場で価格競争力が低下する日本の方だ(→ウォン「安」を通り越してウォン「暴落」となりそうですが、韓国は大丈夫なのでしょうか)」などと、強気な発言や論調が目に付きますが、本音では同取り止めにともなう通貨防衛のセイフティネットの弱体化を大いに心配していることでしょう。現に先月末、韓国の企画財政相は「竹島領有権問題と通貨スワップ期限延長問題は分けて考えるべき」といった趣旨の発言をしていますが、わが国からのサポートが減らされることに対する内心の「あせり」が如実に感じられるコメントですね。
で、同協定ですが、現行の枠組みがそのまま延長されるかどうかはともかく、個人的には何らかの形で継続されることは確実だろうとみています。
先に記したように、韓国の外貨流動性は乏しいため、かりにウォン危機が起こったら、韓国はその他の外貨建て資産を売却してドル資金を確保せざるを得なくなります。それらの中にはアメリカの不動産関連の証券類が多く含まれているもようです。したがって、もし韓国がこれらを売り始めると、世界中の投資家の売りまで誘発するおそれが出てきます。そんなことになったら一番困るのはアメリカでしょう。
同協定に似た構図は欧米間などでも見られます。昨年、FRBはドルのスワップ協定を発表し、欧州を中心とした各国中央銀行を通じてドルを無制限に供給する行動に出ましたが、これも「金融システムの安定」の名目のもと、欧州の金融機関がドルを確保しやすくすることで、彼らが所有するアメリカの不動産担保証券を投げ売りしたりしないですむようにする意図があると推察しています。
そんな意味で、日韓通貨スワップは、アメリカのドル覇権の一端を支える重要なスキーム。その効力を薄めるようなこと(つまり同拡充期限延長の取り止め)が、はたして現在の日本政府にできるのかどうか・・・。
(続く)