9月12、13日に開かれた連邦公開市場委員会(FOMC)で、米連邦準備制度理事会(FRB)は新たな金融政策、いわゆるQE3(量的緩和策第3弾)の開始を決定しました。
先月、バーナンキFRB議長は講演の中で「必要があれば追加の金融緩和策を実施する」と予告していたので、今回の決定はそれに沿ったものとなりました。直前に発表されていた市場予想を下回る雇用統計結果(雇用数の伸び悩み)やいっこうに改善されない失業率(8%台で高止まり)を受け、FRBとしても景気浮揚のために新たな金融政策の発動に踏み切らざるを得なかったということなのでしょう。
個人的には、次のQEこそ「切り札」だから、2008年のリーマン・ブラザーズのような大銀行の経営破綻やギリシャのデフォルトといった決定的な金融危機が起きるまで、FRBはあらたな量的緩和策を発動しないだろうと予想していました。以前から指摘しているように、過度の金融緩和策には激しいインフレや金利の高騰といった副作用を引き起こすおそれがあるので、こうした副作用もいとわずにQEに突入するのはよほどの危機的な緊急事態に直面するとき以外にはないだろうと考えたからです。
そのためQE3開始の知らせを聞いた感想は「FRBは堪え切れなかったか・・・」というもの。「財政の崖」に象徴されるように、財政政策等の展開の余地がほとんどないアメリカにとってはもはや金融政策しか経済を活性化する手が残っていません。
先日のさえない雇用指標の公表の後は、マーケットでは「もう新たなQEしかない!」といったセンチメントが支配的になっていました(実際、通常ならばネガティブな統計結果が出された直後は株価が下がるのに今回のFOMC直前はQE3期待で逆に上昇しました)。だからバーナンキ議長の本音を勝手に推測すれば「切り札(QE3)はもっと先まで持っていたかったけれど、これほどまでにFRBが頼られるのならば仕方あるまい・・・」といったところではないでしょうか。
そのようなわけでFRBは現時点のリスクが顕在化していない局面でQE3カードを切ってしまいました。
そのためアメリカおよびFRBは、次の量的緩和、つまりQE4に追い込まれるのはほぼ確実だとみています。なぜなら近い将来、上記のようなリーマン・ショックをも上回るほどの金融危機に見舞われ、混乱するマーケットを沈静化するために大量のマネーを金融システムに供給するしかなくなるだろうと想定されるからです(2008年の同ショック直後に行われたQE1と似た構図ですが、はるかに規模がデカいはず・・・)。そしてその次のQEこそ、少しオーバーな言い方をすれば正真正銘の住宅バブルの最終清算に対処する手立てとなるだろうと予想しています。
(続く)