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QE3発動が示すFRBの危険な賭け「バブルよ、もう一度」④

2012-09-29 00:02:11 | アメリカ

(前回からの続き)

 とはいえ、近い将来、アメリカはこのGSE発行のMBS(不動産担保証券)の政府保証の有無に関する「あいまいさ」を明確にせざるを得ない局面に至るだろうと予想しています。不動産価格がいっこうに再上昇軌道に乗っていかないなかで、ローン破産者の増加や金融機関等の破綻が今後も相次ぎ、MBSの実質的な価値がますます低下し、しびれを切らした内外の多くの投資家から米政府はMBSに対する保証をするよう迫られてしまうだろう、と考えているからです。その結果がもたらすものは前回書いたとおりです。

 アメリカの不動産価格のピーク時の価格を100(2006年春)とすると現在は約68(今年6月)で、ピークから約32%も下落した状態です(全米20大都市圏指数による)。2006年から現在までの6年間の通算インフレ率は約13%だから、2006年当時の100を現在価値に換算すると約113です。よって(少し荒い計算ですが)インフレを勘案したピーク時に対する現在の不動産価格は68/113=約60%にしかならないことになります。

 一方でファニー・メイとフレディ・マックの両GSEのMBS残高だけで現時点で3兆ドル以上もあります。これらのベースとなる不動産価格がこれだけ落ち込んでいるのだから、いかに早くこの価格を再び高めていくことが大事なのか、容易に想像できるというものです。

 さもなければ、時間の経過とともに住宅ローン返済に耐えられずに破産に追い込まれる世帯が増加し、不動産債権の多くがどんどん不良化していき、これらMBSの価値が激しく損なわれてしまうことは明白だからです。そうなれば両GSEの経営危機がさらに深刻化し、投入された公的資金が消失するばかりか、QE3でMBSをさらに大量に(6000億ドル?)抱えることになるFRBの財務も傷ついて、ドルの信認が大きく揺らぐことになってしまうでしょう。

 ということで、今回のQE3(量的緩和策第3弾)発動でFRBは、「MBSの無期限の買い入れ」を選択したことで、マーケットに対して「アメリカ経済の再生には不動産バブル再膨張による資産効果しかない!」という悲壮な覚悟(?)をあらためて示したと思っています。

 これはきわめて危険な賭けでしょう。バブルが思惑通りに膨らまなければ先に述べたようなリスクがあることに加え、量的緩和で大量に散布されるドルが悪質なインフレ金利高騰を引き起こし、市民生活を一層苦しめる可能性が極めて高いからです(個人的にはそうなるしかなさそうだと悲観しているので、ドルの大洪水に備える意味で、商品インフレに強く不換紙幣のアンチテーゼとなる世界共通通貨・金[ゴールド]の保有を推奨しているわけです)。

 そんなことはバーナンキFRB議長は百も承知。それでもMBSを買い入れてマネーのバラマキをするしかないところに、FRBとアメリカ経済の苦悩の深さが感じられます。まさにアメリカとドルは正念場を迎えつつあるといっても言い過ぎではないと思っています。

(「QE3発動が示すFRBの危険な賭け『バブルよ、もう一度』」おわり)

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