(前回からの続き)
先月の金融政策決定会合後の記者会見で日銀の黒田総裁は、(物価上昇は)2014年の夏までは順調だった、と語っています。その理由の第一は、前述のとおりこのころが世界的な資産バブルのピークだったから。
そして同総裁にはもう一つ、この夏を順調と評した理由があるはずです。それは、エネルギーをはじめとする輸入物価の高騰です。象徴的なのはガソリン価格。まさに2年前の夏(6月下旬)の記事でご紹介のとおり、資源バブルと日銀の円安誘導策(異次元緩和策)とが相まって何と!1リットル170円台に達していました。このバカ高いガソリン代に代表されるエネルギーコストは、モノやサービスの原価で大きなウェートを占めるもの。よって同コストが上昇すれば「アベノミクス」待望のコストプッシュ型(悪い)インフレが巻き起こることに・・・。事実この間の物価、とくに電気・ガス代や食料品の価格はこちらで示したとおりの上昇傾向を示しています。なので当時、このままいけばインフレ年率2%の目標は達成か、なんて期待が高まっていた(?)のは無理からぬところ・・・
・・・ということで、2014年の夏までは順調だったわけです、黒田日銀的には。でもこれって・・・わが国の実体経済的には明らかにマイナスでしょう。賃金のバブルならいざしらず「ガソリン代のバブル」なんて、アベノミクス関係者以外(?)、誰も望んじゃいないのでは・・・?
・・・そんな「順調」だった季節から2年あまりが経ちました。ここを峠として資産バブルは急速に崩壊、とくに資源価格は逆オイルショックとも表現されるほどの暴落プロセスをたどったのはこちらの記事等で綴ったとおりです・・・。あれほど期待をかけたバブルは縮み、頼みのエネルギー価格まで下がってしまった・・・ホント、黒田日銀は無念でならないでしょう。
では国民にとってはどうか?・・・って、ガソリン代が分かりやすいバロメーターになりそうですが、現在は安いところで1リットル105円(レギュラー8/3時点:東京)と、当時より4割ほども下がっています。いかがでしょう。いまのほうがよほど「順調」だとは思えないでしょうか、大半の人々にとっては・・・
そして実体経済のほうでも「いま」のほうが順調そうな数字が出ています。先月25日に財務省が発表した今年上半期の貿易統計によると、貿易収支は10年下半期以来、5年半ぶりの黒字(黒字額:1兆8142億円)になったとのこと。この久々の稼ぎをもたらした最大の要因は輸入額の減少(前年同期比17.2%減)です。もちろんそれは原油価格の下落と最近の円高傾向の恩恵・・・