Straphangers’ Room2022

旧Straphangers' Eyeや習志野原の掲示板の管理人の書きなぐりです

数字は何を物語る5

2015-07-08 23:35:00 | 交通
今回、一種の「誤解」をしたとしか言いようがありません。と言うと風説ガー、と鬼の首を取ったように騒ぐ人が大勢でてくるでしょうが、しかし、これは責任転嫁ではないですが、この会社の決算というか会計処理が「独特」というか、有り体に言えば「おかしい」ことが原因です。(全検費用であるということが大前提であり、そうでないと議論は元の木阿弥で危機的な事態という判断になります)
すなわち、前記の通り全検費用が運送費に計上され、未払費用に計上された、と整理しましたが、保守点検や保全に関する費用は本来未払費用に計上されません。ほかの鉄道会社の決算書を確認すれば一目瞭然ですし、下記の「鉄道事業会計原則」のルールからも逸脱しています。

(鉄道事業会計原則 別表第一 勘定科目表から)
未払金:未払物品代、未払工事代、未払配当金等未払費用以外の未払額
未払費用:未払賃借料、未払利息等主として決算整理において費用として見越計上されるもの

一般事業法人だと工事代とかは買葛煌ィ定を経由しますが、どうも鉄道事業の場合は買葛煌ィ定を使わないようで、未払金に計上されるようです。JRなんかも買葛煌ィ定はありませんが(民鉄の場合買葛煌ィ定がありますが、鉄道以外の事業で計上しているケースでしょう)、いずれにしてもそれなりに未払金が計上されているところに未払費用が計上されていることがおかしいわけで、常識的な分析を行えば、未払費用に全般検査で計上する保全費などの費目は入らないので、突然増えた未払費用で首が回らなくなるという判断になります。

また、2013年12月に発生した脱線事故の処理費用の計上も謎です。この手の費用は特別損失に計上すべきですが、それがありません。
補助金で処理するにしても、特別損失計上と補助金による特別利益計上をグロスで表記させる必要があります。

前記の通り、2010年度の運送費は2011年度の運送費とほぼ同じで、社長が導入費用として30百万円かかった、といっているのに、その費用が見えません。震災以降の燃料費高騰との相打ちというには数字が大きすぎます。だいたい、2010年度は今回と同じ3月の全検なのに、未払金が1百万円、未払費用が5百万円ですから、キャッシュで払ったのでも無い限り説明がつきません。(補助金も例年並みなので、補助金を原資に支払ったとも考えらえない。寄附金収入も2010年度、2011年度ともに1百万円台)

さらに、今回の運送費の増大が全検費用であれば、損益に与えるインパクトが大きいのですが、これは会計上修繕関係の引当金として毎期計上して平準化するのが正しい会計処理ではないでしょうか。そのほか退職給付引当金などの引当金勘定が全く見えませんが、発生した期にいきなり損益が大きく悪化する、というのもどうでしょうか。見方を変えれば、発生しない期はその分損益がゲタを履いているのです。
おおかたの引当金は税務上否認されるので(加算項目)、税務申告での調整を考えると面唐ュさい、として計上していない、というわけではないでしょうから、企業会計の原則に従った計算をしたほうがいいでしょう。

ついでに、頂いたご指摘の中には決算の発表時期についてのものもありましたが、私の指摘としては総会が終わり、新聞記事になっているのに自社サイトで公表が無い(さらに言えば、10月にまとまっている中間決算も出ていなかった)、というものです。
会社法では、取締役会での承認がまず求められており、会計監査人がいる会社の場合は、承認前に監査を受けているので、株主総会では報告すれば足りますが、いない会社の場合は総会での承認も必要になります。
ただ、それはあくまで決算の「確定」であり、取締役会など然るべき決裁を前提に、確定前の決算の数字を公表することは一般的です。つまり、上場会社の「決算短信」は会社法での承認前に発表されていますから、会社法で規定されている承認は絶対ではありません。



数字は何を物語る4

2015-07-08 23:29:00 | 交通
ようやく財務諸表(計算書類)を確認することの重要性に気付く人が増えてきましたね。

さて、前回指摘したキャッシュフローの件ですが、未払費用はキハ2両の全般検査ではというご指摘を頂きました。
今でもあちこちで孫引きされる当ブログの過去記事で、ここの社長が全検費用が賄えないのでキハを廃車する、と発言したことを批判しましたが、その中で社長は、2015年にキハ2両の全検費用が50百万円かかると言っています。2015年度のことと勘違いしていましたが、キハ52の入線と全般検査終了が2011年3月ですから、次回(今回)の検査は2015年3月、つまり2014年度で今回の決算に反映されることになるようです。費用計上は3月ですが、支払いは翌月以降ということでしょうし、数字的に見合います。

従って、約50百万円は、キハ2両の全般検査(実際には法定8年の検査周期の中間に実施する重要部点検)の費用として、PL上は2014年度の運送費に計上され、BS上は未払費用に計上されているとするのが妥当と私も考えます。
ただ、キハ52導入時、つまり2010年度(平成22年度)の決算を見ると、翌年と対比して運送費も未払費用も突出していないのが説明がつかないのがネックですが。

これが全検費用であれば補助金で対応することは十分考えられるので、支払期日にあわせて補助金が出ればキャッシュは回ります。(予算化とその執行が各自治体の議会で通っていればです)
さらに補助金部分は費用項目への補填なので特別利益に計上されますから、2015年度の決算は2014年度と逆に「良くなる」ことになります。
正味の当期純損失が50百万円以内に抑えられれば当期純利益を計上できますから、純資産は3期ぶりに増加に転じるので、債務超過は取り敢えず遠のく格好です。そういう意味では、一連の費用が全検費用であり、補助金が紐付いているのであれば、キャッシュショートも債務超過も取り敢えず無いといえますので、これまで述べてきた懸念は「いちおう」払拭される格好です。
(債務超過:資産<負債の状態。簡単に言うと、BSの資本の部の純資産合計がマイナスになる状態であり、純資産と当期純損失の水準を見比べれば、あとどのくらいで純資産を食いつぶして債務超過になるかが見えてきます。回避するためには補助金を増額して当期純利益を計上する、増資して資産の部と資本の部を膨らませる、)

とはいえキャッシュについてはつなぎ融資?で凌いでいる資金繰りですし、定期客の減少が続いているなか、安定性という意味では定期客に劣る定期外客の状態次第では、予算化されている補助金で埋めきれず、再び純資産を食い潰す方向になります。そういう意味では結局は自治体の「出血」が止まらない状態は継続しています。
「キハ」人気にしても、レストラン列車などを計上している旅行業の収入が2014年度は前年度比116%増(2.16倍)と好調ですが、費用を差し引いた営業利益ではなんと横這い、厳密に言えば4千円の減少です。つまり、コストは149%増(2.49倍)になってしまい、営業利益は横這い(2.8百万円)では、経営の下支えとは到底言えません。だいたい、人件費や車両関係の費用などの按分が正確になされているかも怪しく、それを正しく配賦したら「赤字事業」になっている可能性すら指摘できるわけで、投下した資本の回収も出来ない赤字の上積みの懸念が払拭できません。

ローカル鉄道は赤字で当然、と開き直っているようですが、確かに都市部も含めて公共交通を営利事業として成立させていくことは困難です。しかし、税金を投入するのであれば、あるべき公共交通のサービスをデザインして、コストを確定させ、どこまで回収できるかを見積り、その足らず前を補助する、ということが大前提になります。
いすみ鉄道の足下の経営はどうなのか。「公共交通の維持」ではなく「電車ごっこ」に税金が使われているのではないか。納税者として当たり前の疑問と、公共交通の維持は決して矛盾しないと考えます。