Straphangers’ Room2022

旧Straphangers' Eyeや習志野原の掲示板の管理人の書きなぐりです

安全と利便性

2015-07-01 23:26:00 | 交通
新幹線の放火事件はテロの類ではなく、焼身自殺ということで落ち着きそうです。
開業以来51年の歴史で初めての事態であり、公式にも「火災事故」として初めて認定されていますが、気になるのはこの手の事故、事件が発生すると雲霞の如く沸いてくる「会社擁護」がまたぞろ出てきていると言うこと。

会社の対応を云々すると、会社は被害者だから批判すべきではない、とか、事故ではなく事件だ、とか、安全神話なんて周囲が言ってるだけの話だ、とか、あらゆる擁護が返ってくるわけですが、まあ一言で言えばひいきの引き唐オです。
「事故」かどうかは監督官庁の定義次第ですし、「安全神話」にしても、ャWティブな話題の時には評価の題材として積極的に使っていたのをだんまりです。

もちろん今回は責任事故では無いですが、だからといって乗客に死傷者が出て、ダイヤが乱れたという結果に対して、事業者が何も言わないというのもどうでしょうか。
JRCのサイトのどこにも30日の事故(事件)に関する文章は無いというのもある意味不思議な感覚にとらわれます。死亡した被疑者の責任とはいえ、普通の感覚であれば、まずは自社のサービスにおいての事故ですから、「亡くなられたお客様へお悔やみを申し上げるとともに、お怪我をされたお客様にはお見舞い申し上げます。またダイヤの混乱でご迷惑をお鰍ッしましたことをお詫び申し上げます。」と言上したうえで、「事故の容疑者、原因につきましては現在警察で調査、確認中であり、弊社も捜査に全面的に協力しております。弊社の受けた被害、ならびに復旧状況、さらには今後の対応につきましては、改めてご案内申し上げます。」という感じで報告するでしょうに。

今回の事故(事件)は確かにJRCも被害者ですが、一方で列車を運行していた当事者として、事故(事件)への対応が適切だったかという点についてはきちんと検証する必要があります。

一部には復旧のプロセスへの批判もあるようですが、逆に事故(事件)の見極めもつかない段階で運転を再開する、というのは逆に早すぎるともいえます。つまり、単なる焼身自殺ではなく、テロの類だったらどうなのか。別の列車、新幹線で「同時多発テロ」になる可能性を考えたら、まず水平展開して安全を確認するくらいの慎重さがあっても良い話ですし、そうでないことが確認できてはじめて運転再開すべきです。

そしてN700系はその登場時に鉄道車両として初めて防犯カメラを設置したと話題になったのですが、今回の事故(事件)で何か役に立ったのか。
防犯カメラの映像にャ潟^ンクを取り出して自分でかぶる犯人が映っていたそうですが、その前から怪しい行動をしていた犯人をマークするといった対応につながらないのであれば、「見てるだけ」にもならないわけで、その運用が問われる事態です。

航空機の場合はCAが嫌らしいまでに客を「監視」しているわけで、サービスに見える「弁当を遣い出したらすぐウエットティッシュや飲み物が来る」というのも、客の一挙手一投足をウォッチしているからできる兼魔ナすが、新幹線の場合は、防犯カメラに、なにやら液体をまいて炎上するシーンが映っても即応できない、という結果が残ってしまいました。

さて、そもそもの問題は、セキュリティチェックのあり方でしょう。
新幹線だけでなく、通勤電車であっても、セキュリティチェックは「物理的に不可能」ではないのです。時間と人出をかければ可能であり、通勤電車にしても、構内に入る際に金属探知機を通り、大きな荷物は有人改札に併設されたX線検査のラインにつく、というイメージであれば、決して不可能とはいえません。

電車に乗るのに時間がかかる、という批判も十分承知していますが、利便性のために安全性をどこまで犠牲に出来るのか。妙な例えで恐縮ですが、何もなければ起動や操作がサクサク動くはずのPCも、セキュリティソフトだ何だとセキュリティ対策を強化することで起動は遅く、その後の操作も遅くなるのが通例ですが、それが嫌なのでセキュリティソフトを入れない、という人はごく少数派、と言うことに似ています。

少なくとも現状の「何もしない」という状態を続けうるのか。世界最悪ともいえる鉄道を舞台にしたテロである「地下鉄サリン事件」を20年前に経験している我が国ですが、あの当時と今ではあらゆる状況が違うのです。キャリーバッグのような大荷物を持ち込むことが一般化しており、そして「テロとの戦い」の一方当事者になったことで我が国も国際テロの標的になる可能性が高まっていると言う環境下におけるリスクは20年前の比ではありません。

その対応がどうなるのかは全くわかりませんが、利便性に属する部分の何かが確実に損なわれるでしょう。
駅構内入場、あるいは列車への乗車時に時間がかかるようになるのか、それとも荷物の持ち込みそのものに規制がかかるのか。少なくとも現行の規制ではガソリンであっても3リットルまでは大手を振って持ち込めるわけで、それは極端な例としても、荷物に関する規制が緩いから鉄道にするという利用志向が確実に存在するという現実は、リスクと裏腹であることは認識すべきでしょう。

個人的には、まさかこんなことになるとは思わずに、先日、鉄道は大荷物と親和性が無い、と書き込みましたし、それこそ「預け荷物」にしたくない荷物がそれなりに多い場合は新幹線で出張をしていただけに、思わぬ逆風です。
まあ航空機もそれこそ20年位前だと、国際線の機内に大きなカバンを持ち込めましたし(Cクラスのスペースを「活かして」足下に積めた)、中身をそこまで問われませんでしたが