2014年、シッチェス・カタロニア国際映画祭ほか、世界各地の映画祭で話題
アカデミー外国語映画賞にオーストリア代表作品でノミネートされたスリラー、日本上陸
といってもヒューマントラストシネマにて今年も開催中の未体験ゾーンの映画たちのなかでの限られた上映のみ。
予告編も一切観ずにその評判から去年から楽しみにしてたので早速初日のレイトへ。
観る前は、そのチラシのビジュアルなどからも完全なホラーだと思っていたから
怖さを期待してたし、ホラーとしての気味悪さをうたっているけど、
実際は、ホラーっぽい気配を漂わせながらも スリラーという方が近いかな。
それも、後味の悪い系ね。
森とトウモロコシ畑に囲まれた家に暮らす9歳の双子の男の子エリアスとルーカスが、
美容整形を終え、顔に包帯を巻いて帰ってきた母親を別人であると疑ったことから壊れていく母と子の関係。
圧倒的に映像美と子供たちと、全体的な演出に拍手。
そっくりで可愛いけど、どこか狂気を秘める双子ちゃんは実名で出演。
母親を演じるのは、ドイツ人ボクサー=マックス・シュメリングの伝記映画
「ザ・ファイト 拳に込めたプライド」(11・未)のスザンネ・ヴェスト。
オーストリア映画「パラダイス」シリーズで脚本を務めたヴェロニカ・フランツが、
短編ドキュメンタリー「Kern(原題)」の監督セヴェリン・フィアラとタッグを組み、共同監督した。
森と畑に囲まれた田舎の一軒家で母親の帰りを待つ9歳の双子の兄弟。ところが、帰ってきた母親は顔の整形手術を受けており、頭部が包帯でぐるぐる巻きになっていた。さらに性格まで別人のように冷たくなってしまい、兄弟は本当に自分たちの母親なのか疑いを抱くように。
8/10(82点)
美しい風景の中の不穏な雰囲気、
双子は無邪気に外で遊んでいる。
家に帰ると包帯ぐるぐる巻きのママが、何だか冷たい。
ドスドス家の中を歩き、怒ったり、優しかったはずのママはどこへ?
このママが思わせぶりで、かなり不気味で不可思議な言動なので惹き付けられる。
本当にママなのか、それとも別の何かが、ママに乗り移ったのか?という疑念が
少年二人と同時進行で湧き出てくる。
けっこう早い段階で、もしやアレ?と気づいてしまったので
オチには驚かなかったし、むしろその告白をいつまで引っ張るんだろう?という気持ちで観てしまったのだけど
それでもその思わせぶりな演出含め、面白く楽しむ事ができる。
ここからネタバレあり感想
恐怖の対象の移行。
はじめは母親がめちゃくちゃ怖いのに、だんだんと恐怖の対象が入れ替わっていく様が素晴らしい。
子供の怖さは、ある意味 ハネケの作品を観てるので慣れているというか
驚かなくなってしまってるけど、
疑う事で、恐怖の対象物が逆転し、その存在よりも、もっと恐ろしい「行為」に及んで行くという
脚本のアイディアがお見事。
こーんなぐるぐる包帯の顔で、なんだか冷たいし子供は疑うよね。
最初はほんとにママが怖い感じなので一体何者??
背景に不気味なバービー風の人形いたりしてなかなかのセンス。
随所に虫がいたり、虫を体内に入れるシーンなどからまさか虫で出来た人間系か?などと思えてしまうけど
「シックスセンス」に倣う、はじめから死んでました系?をまず疑った。
男の子の一人にしか話しかけないし、渡したものも、ひとつしか受け取らないし、
飲み物も一人にしかあげない、三人でゲームしてても一人にしか相手にしてない。
ということでこれは事故で男の子を亡くした母親が、塞ぎ込んで、そして整形手術をしたかなにかで
顔を覆っている、(でもその割に直射日光にあたらないようにしてたりはしてるし思わせぶりがいっぱい)
そうしたらまさにその通りだったんだけど、母親だと確信できない子供が、母親を監禁状態にして
ーという、展開に。
どっちがどっちか分からないように髪も同じにしよう。
そうなるともう、怖さと面白さが少し半減しちゃうんだよね。
前半はだからすごく面白かった。
母親が謎のほうが、ホラーとしてだったら格段に面白い。
けど、その手のパターンならあるし、いくらでもSFだったら宇宙人にしたり、虫にしたり、バケモノにしたりで失望しちゃう。
子供達が怖くなるから、の恐怖であるとは思うんだけど
観てると子供がそんなに力あるかー?とか、接着剤で口を塞ぐけどそんなにすぐ口くっついちゃうか?とか
たったひとりでオトナを縛り付けてどうやっても取れないように出来るか?とか
ツッコミが増えてっちゃう。
ママの思わせぶり
スプレーで家の外壁まで掃除!
子供部屋で何かを漁る!
紫外線ダメ、ホクロも悪性なのでとった。
「人が来たらママは寝てるからと言って」
部屋を歩く時はドスドスと凄い音を立てる
寝てる時にビスケットみたいなのをベッドの中持ち込んでていきなりかじる。
ヘンな時間に足の爪やすりかける。
そっくりな雰囲気の女とのツーショット写真
壁の写真が何枚か剥がされてる。アルバムの結婚式の写真も剥がしてる(多分旦那とは別れた)
子供が帰って来たら、外してた包帯をぐるぐるまた急いで巻き付ける
森へ入っていき、いきなり全裸になって首をめちゃくちゃに振る。
誰かに、「もうフリを続けられない」と言う。
包帯取ると、実はフツーのママ。
子供の頃、わたしが好きだった絵本に「やまんばがやってきた」というのがあって (←写真見つけた!)
てつたくんが留守番をしてる時に、お婆ちゃんがやってきて、
勝手に冷蔵庫あさってなにか作ったり、並んだぬいぐるみを見て「たべちまいたいくらい可愛いねぇ」と言って
舌なめずりしたり、佃煮とか虫みたいなものを食べてたり、ふーふー言ったりっていうのが
子供目線でみてると全部怖くて、やまんばに見えて恐怖に怯えるも、実は母親が帰宅してわかる
本当にただの自分のお婆ちゃんだった。というのがあって、それに近いものがあるなぁと。
←にしても、これ怖すぎだろッ!
子供の目線から見たら、ちょっとでも母親の様子が変わると 恐怖の対象に見えてきて
というのが。ただネコが死んだのを水槽の中にいれたり、虫を大量に飼ってたりと元々
ちょっと異常なところのある子供だったのかもしれない。
結局のところ、ルーカスの方は事故で亡くなっていて、そのショックで双子のもう一人エリアスが
ずっとその死を受け入れずに横にいて喋っている、という それは他の人には誰にももちろん見えずに
母親はそれに合わせて食事も最初は二人分作り、話しかけというのをやっていたらしい。
でもそれを本人(エリアス)にハッキリと言わずに監禁されても
最後の最後のほうまで引っ張るから、観てる方は早くいいなよ、と思ってしまう。
エリアスはそれを信じる事も受け入れる事も出来ずに、
母親を痛めつけることがエスカレートして、とうとう 石油をまいて火をつけ、家ごと燃えてしまう。
その前に、赤十字の人が家に来て 母親は二階で縛られたまま、助けを求めるけど
口を塞がれてて声が出ず、気づかれずに行ってしまう というどきどきな展開は、もはやホラーではお約束。
このシーン最高に良かった。
それにしても、森で全裸になることもなかろうに。 笑
というわけで、期待を裏切らない、なかなかの作品でした
怖いといっても、ホラーな怖さではないので、気になる人はぜひ劇場で!
『グッドナイト・マミー』予告編 VIDEO
公式サイト
Ich seh, ich se
2014年 オーストリア
99min
未体験ゾーンの映画たち にて上映
海外版ポスター、怖すぎでしょ!
2014年ヴェネチア映画祭にて
可愛い、二人とも瓜二つ。
ママも素顔は怖くない。
監督二人と。
また何かに出演するのかな? 今後も期待の二人。